◆ 需要拡大の方法:  nando ブログ

2009年04月10日

◆ 需要拡大の方法

 政府は需要拡大の政策を出した。3年間で 40〜60兆円の需要を創出するというもの。
 しかしこれは、マクロ的には正しくない。ただの個別政策の寄せ集めにすぎないからだ。

 ──

 政府の方針は、次のようなものだ。
 環境など3分野への集中投資で 2020年には国内総生産(GDP)を、現在より 120兆円押し上げ、400万人の雇用を創出する。とりわけ今後3年間は 40兆〜 60兆円の需要と 140万〜 200万人の雇用創出を目指す。3分野は、
  ・ 環境技術を生かした「低炭素革命」
  ・ 医療、介護の人材や施設を充実させる「健康長寿社会」
  ・ アニメなどの産業の輸出を育てる「日本の魅力発揮」
( → 毎日新聞 2009-04-10
 記事では、これは中長期の構想であって、別途、短期の対策(財政支出規模 15兆円)があるという。
 とはいえ、この政策が、いわゆる「緑の公共事業」と同じであることは一目瞭然だ。そこには当然、難点がある。(前述。下記の通り。)
  → 緑の公共事業
  → 公共事業の難点

 ──

 このような政策は、次の発想から来ている。
 「需要を増やすには、投資を増やせばいい」(古典派)
 「民間の需要が足りないのなら、政府投資を増やせばいい」(ケインズ政策)


 しかしながら、何度も述べたように、これらは見当違いである。なぜか? 不況というものは、投資不足から来るのではなく、消費不足から来るからだ。……ここを根本的に勘違いして、次のように思う。
 「消費不足も、投資不足も、どちらも需要不足だ。だから、投資を増やせば、需要が増える」
 もちろん、これは駄目だ。次の発想と同じだからだ。
 「砂糖が足りなければ、塩を足せばいい。どちらも白い調味料だから、どっちだって同じさ」

 ──

 具体的に言おう。
 不況とは、次の状況のことだ。
 「マクロ的に消費が減っているので、マクロ的に全産業において売上げが減少する。そのせいで、全産業で、稼働率が低下する」


 これに対する対処策は、次のことだ。
 「マクロ的に消費を増やして、マクロ的に全産業において売上げを増大させる。そのことで、全産業で、稼働率を上昇させる」

 これは好況になるということだ。そのことで不況は解決する。

 一方、見当違いの対処策は、次のことだ。
 「マクロ的に消費を減らしたまま、部分的に特定産業の需要だけを(公共事業や補助金で)増やす。マクロ的に全産業において売上げが減少している状況は放置して、特定産業だけで売上げを増大させる。そのための設備は存在していないから、そのために投資させる」


 これは、具体的には、次のことを意味する。
 「太陽光発電など(緑の公共事業)の分野だけに、特に多額の資金を注入する。その一方、他の全産業については、おこぼれ効果(経済波及効果)だけをもたらす」


 比喩的に言うと、次のことだ。
 「人々が飢えているときに、緑のジャイアンだけに特別に贅沢な美食を食べさせる。彼が食い散らかした残りの食いカスを、のび太・しずかちゃん・他の人々がもらう。おこぼれてとして」

 さて。そこへ、ヒゲもじゃの変人が登場して、こう諭す。
 「緑のジャイアンだけにごちそうをたらふくあげても駄目です。全員に同じように食事をあげましょう」
 しかし、それを聞いた先生は、大反対する。
 「なんだと! おまえは生徒たちがおこぼれをもらうのを否定するのか! おこぼれを食べられなくなって飢え死にすればいいと言うのか! おまえはトンデモだ!」

 ──

 不況とは全員が等しく貧しくなっている状況である。そこでは全員が等しく「消費不足」という問題に直面している。
 そして、それを解決するには、「消費の拡大」という政策を取ればいい。そうすれば、全産業で売上げが増加して、不況は解決する。
 これがマクロ的な認識だ。ここでは、国全体の「総消費の不足」という根本原因に着目している。

 しかしながら、マクロ経済学を理解できない人は、「総消費の不足」という根本原因を認識できない。そこで、かわりに、「部分消費」や「部分投資」を積み重ねようとする。次のように。
  ・ 環境分野の産業成長
  ・ 介護分野の産業成長
  ・ オタク分野の産業成長

 しかし、このように部分的な成長をいくらやっても、効果はほとんどない。なぜか? 総消費が一定であれば、その産業が増えた分、他の産業が減るからだ。
 たとえば、人々が太陽電池やエコカーを買えば、その分だけ総需要が増えるのではない。人々は同じ所得のなかで、太陽電池やエコカーを買うから、その分、他の産業の売上げが減ってしまうのだ。たとえば、家電やパソコンや外食費などが減ってしまう。それらの産業で働く人々にとっては、かえって売上げ減少が起こる。
 だから、たとえおこぼれ効果があっても、「他分野に金を食われる」というのと相殺しあって、効果はほとんどない。もしくは、効果はマイナスになる。
 政府が太陽電池やエコカーを推進すればするほど、他の産業はますます貧しくなりかねない。

 ──

 では、どうして、こういうことが起こるのか? それは、政府にマクロ政策が欠けているからだ。
 不況のときには、個別産業を(公共事業ふうに)伸ばせばいいのではない。全産業を伸ばす必要がある。
 そして、その方法は、「特定の産業への補助金」ではなくて、「全産業への補助金」なのである。そして、それを意味するのが「減税」だ。
 政府は太陽電池やエコカーのために補助金を出せばいいのではない。何を買っても構わないような「全分野への補助金」を出せばいいのだ。それが「減税」だ。

 ──

 マクロ経済学的には、こういうふうに正解は判明している。しかし人々は、それを理解できない。物事を「全体の視点」からとらえることはできず、「個別のものの足し算」としてしか認識できないからだ。

 比喩的に言おう。
 四角いマスに玉が百個入っている。マスにぴったりだ。しかしあるとき、マスが急激に縮小してしまった。そのせいで、マスに入っていた百個のうち、20個があぶれてしまった。そこで、ASS さんは、こう考えた。
 「あぶれた 20個を、マスに押し込めばいい。この 20個は、緑色に塗ってから、マスに入れよう。これが緑の政策だ」
 なるほど、そのことで、マスには緑の玉が 20個入った。しかしその分、他の玉が 20個、はみ出てしまったのだ。
 では、どうすればいいか? ここでは、個別に「どの玉を選べばいいか?」と考えるような最適配分の方法は役立たずだ。むしろ、全体を考えることが必要だ。そうすれば、「マスを大きいマスに変える」という正解がわかる。そのことで、マスに玉を百個入れることができるようになる。

 物事を考えるには、個別に一つずつ追加しようとする発想と、全体を見て全体量を考える発想とがある。
 森を作るには、「木を一本ずつ増やそう」という発想と、「多数の木を増やして森を作ろう」という発想とがある。この二つの発想はまったく別のものだ。

 ──

 マクロ経済学とは、物事の全体を認識する発想だ。それを理解しないと、個別のものを増加させようとするだけで、結局は、全体を増加させることができなくなってしまうのだ。
 猿が、バナナの入った瓶に手を突っ込んで、バナナをつかんだ手を抜き出せなくなるのに似ている。目先のことにとらわれて、全体像を見失う。



 [ 付記1 ]
 こういう「木を見て森を見ず」という発想は、広く見られる。環境問題でも、似たような例はある。
 「都会で一本ずつ植樹して増やしながら、田舎で広葉樹を大量に伐採する」
 「レジ袋で石油を1ccずつ節約しながら、高速道路無料化で石油を 5000ccも浪費する」
 「エコキャップで石油を 0.1ccずつ節約しながら、その運搬のために 0.1ccの石油を無駄遣いして、差し引きゼロにする。それでいて、石油節約のつもり」

 [ 付記2 ]
 エコ自動車に対する減税は、1台あたり 40万円程度になるという。プリウスで 40万円、インサイトで 36万円。( NHKニュース 2009-04-10 による。)……こうして、特定の人々だけにこれほどの巨額の金を贈与するわけだ。
 このように巨額の補助金は、社会的な公正さを逸脱している。ほとんど国家の富を盗む泥棒に等しい。理由は下記。
 (1) もし景気刺激を目的とするのであれば、自動車だけでなく全員に均等に富を分配するべきだ。
 (2) もし環境改善を目的とするのであれば、環境改善の車で減税にする分、環境汚染の車に増税して、トータルで増減なしにするべきだ。

 なのに、「エコ」という名目で、国家の富を勝手に得る。
  ・ お金があって、空気を汚染して、石油を浪費する人には、巨額減税。
  ・ お金がなくて、空気を汚染しない自転車に乗る人には、減税なし。

 つまり、「悪をなす金持ちには減税し、「善をなす貧乏人には減税なし」というわけだ。明らかに社会的公正さを欠いている。頭が異常である。

 特に朝日のような環境馬鹿は、レジ袋の節約ばかりに目を奪われて、高速道路や自動車による浪費には目をつぶる。それでいて、均等割の2万円(給付金)にはさんざん反対する。
 ほとんど狂気。(自民党も民主党も狂気。)



 【 関連項目 】
  → 緑の公共事業
  → 公共事業の難点
  → ハイブリッド減税は? 【 追記 】

posted by 管理人 at 19:43 | Comment(4) | 経済 このエントリーをはてなブックマークに追加 
この記事へのコメント
こんにちは
経済には全く素人なのですが、需要を増やすというのは、よくわかりますしその通りだと思うのですが、日本の場合国内より輸出に頼った
企業が多いと思います。
国内で減税をしても、効果は少ないのではないでしょうか?
Posted by jakpot at 2009年04月28日 14:52
次の企業の輸出比率はどのくらい? 
ドコモ,JR,東京電力,土建産業,不動産屋,ヨーカドー,近所のパン屋。
まずはGDPにおける輸出比率を調べましょうね。
Posted by 管理人 at 2009年04月28日 22:43
輸出企業の場合、国内生産が輸出にまわる
分が少なく、海外生産が主になると思うんですが
単純にGDPにしめる輸出の割合では測れないのでは
ないでしょうか?
Posted by jakpot at 2009年05月01日 13:56
企業経営の話なんか誰もしていません。
経済学と経営の区別もつかないようですから、本サイトには書き込まないでください。

Posted by 管理人 at 2009年05月01日 14:05
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