◆ 「テロとの戦い」の真相:  nando ブログ

2009年04月21日

◆ 「テロとの戦い」の真相

 「テロとの戦い」という言葉は、実は、まやかしであった。戦うべき相手は、テロではなくて、別のものだったのだ。

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 右翼や保守派の人々はしばしば、「テロとの戦い」を唱える。特に、アルカーイダやタリバンが標的となる。
 ここで、疑問が湧く。どうしてアフガニスタンばかりがテロの温床になるのか? どうしてそこにはタリバンというテロリストがいるのか? その真相は、意外なところにあった。

 ──

 米軍はアフガニスタンのタリバンを攻撃しているが、なかなか撲滅できない。なぜか? それは、タリバンがパキスタンに保護されているからだ。
 米軍がタリバンを撲滅しようとしても、アフガニスタンで攻撃している最中に、タリバンの連中は国境を越えて、パキスタンに逃げてしまう。するともはや、米軍は手を出せなくなる。
 そこで、米国はパキスタンに「何とかせよ」と要求しているのだが、残念ながら、パキスタンは「主権」などを名目に、頑として要求を聞き入れない。
 ここまでは、すでによく知られたことだ。Wikipedia その他にも、いろいろと情報が出ている。

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 さて。ではなぜ、パキスタンはそれほどにも米国の要求を拒むのか? その事情はなかなか知られていなかったが、読売新聞に興味深い報道があった。以下、記事の要旨。
 パキスタンという国は、まともな近代国家ではない。国家制度がまともに成立していない。
  ・ 国民は、富裕層と小作層に分断している。
  ・ 小作層は、地主から土地を借りて耕作するが、収奪される。
   (小作層は所得がゼロの人が多い。)
  ・ 富裕層は、土地の生産物の大半を受け取り、収奪する。
  ・ しかも富裕層は、税金をまったく払わない。
  ・ 国家には徴税システムがまともに成立していない。
  ・ 近代的な国家制度が成立していない。
  ・ 富裕層が国家権力を握っている。
   (読売・朝刊・特集 2009-04-21 )
 ──

 以上が報道だ。これからわかることは、こうだ。
 「パキスタンは、昔の封建国家と同様である。領主が小作民を奴隷化して、富を収奪する。そういう領主たちの代表となる王がいて、王が国家を牛耳る」
 ま、王がいるかどうかは別として、領主のような富裕層が国民を奴隷化しているという封建制度は、そっくりそのまま成立している。

 そして、封建制度が成立しているところでは、その先は、歴史的に次の二通りとなる。
  ・ 中間層(ブルジョアジー)の発達
  ・ 革命による制度破壊


 前者ならば、資本主義へと移行する。
 後者ならば、革命をめざすことになるが、革命といっても、社会主義革命ならばまだマシな方だ。通常は、独裁的な王が打倒されて、別の独裁的な王が誕生する。アフリカでは、その繰り返し。

 アフガンは、後者の道をたどりつつある。それが現状に対する正しい認識だ。

 ──

 ここまで認識すれば、「テロとの戦い」なんてものは、まったくのまやかしであった、とわかる。
 アフガンにあるのは、「テロ活動」なんかではない。正確に言えば、「近代資本主義に対するテロ活動」ではない。連合赤軍みたいなテロリストは、近代資本主義に対するテロ活動であり、先進国各国はそれに悩まされてきた。しかし、アフガンにあるのは、そういうテロ活動ではない。基本的には、「封建主義に対する革命運動」なのである。その矛先は、「自由な市民社会」ではなくて、「自由を弾圧する封建社会」なのである。

 とすれば、アフガンのテロリストの原因もまたわかる。それは「宗教的な狂信」なんかではなくて、パキスタンという「貧困と飢えをもたらす独裁的な封建社会」なのである。
 西側社会がなすべきことは、アフガニスタンで爆弾を振りまくことではなくて、パキスタンの独裁的な封建国家を健全化することなのだ。それが実現すれば、タリバンを生む原因が消える。
 日本はパキスタンに 1000億円もの開発援助をするという。馬鹿げたことだ。パキスタンの富裕層は、日本人よりもはるかに豊かだ。連中は金を湯水のように使って、贅沢三昧をしている。そんな贅沢をする連中のために、どうして日本が莫大な金を払う必要があるのか? 馬鹿げている。
 パキスタンに欠けているのは、金ではない。欠けているのは、「富の公正な分配」という制度だ。その制度を整えることが必要だ。

 だから、どうせならば、「テロとの戦い」なんかをするより、「テロの援助」をする方がマシだ。ただし、テロの矛先は、米軍やアフガン政府ではなくて、パキスタンであるべきだ。
 「パキスタンの富裕層を攻撃せよ。そうすれば、連中の富を莫大に奪えるぞ」
 と教えてやって、それを援助してやればいい。そうすれば、連中は、西側に被害をもたらそうとするよりも、もっとうまい方法を見つけることができる。
 これが正解だろう。

 ──

 ただし、現実には、そうならない。なぜか? 阿呆な西側社会がそうしないでいるうちに、かわりに、パキスタンの悪質な連中がそういう方法を取っているからだ。連中は、自分の財産を守るために、タリバンに援助している。
 「ほうら、大金を上げるぞ。武器を買っていいぞ。どんどん攻撃していいぞ。ただし、金を与えるおれたちを、攻撃するなよ。おれたちを攻撃すると、金づるを攻撃することになるぞ」
 こういうふうに金を出すことで、タリバンを買収している。まったく、悪賢い。悪党というものは、そういうものだが。

 ──

 結論。

 「テロとの戦い」なんて主張してタリバンと戦うのは、愚の愚だ。それではパキスタンの悪党連中の思うがままだ。
 西側社会がタリバンとの戦いになかなか勝てないのは、こちらの戦力が不足しているからではない。こちらがあまりにも愚かであり、パキスタンの悪党があまりにも悪賢いからだ。
 かくて、西側社会がタリバンといざこざを起こして、愚劣な戦いをしている最中に、パキスタンの悪賢い連中は、自国民の富を収奪し、さらには、西側諸国からも援助の名目で金を奪い取る。パキスタンの悪党こそ、悪の根源である。
 そして、愚かな西側諸国は、パキスタンに操られて、身代わりのタリバンと戦って消耗し、あげく、パキスタンのカモになって、さんざん金をむしり取られる。

 そして、西側諸国がこれほどにもコケにされて大損していながら、そのことに気づかないでいるのは、「テロとの戦い」なんて言葉を取って、自己陶酔しているからだ。「自分は正しいことをしている」と信じているから、それを利用される。パキスタンから、「正しいことをしてください」と言われて調子に乗り、「正しいことのためにお金を出して下さい」と言われて、ホイホイと金をパキスタンに差し出すわけだ。その金がタリバンに回るとも気づかないで。
 悪魔にまんまと操られている阿呆。
 


 [ 付記 ]
 パキスタンの手口をうまく説明する言葉がある。「マッチポンプ」だ。
 自分で火をつけて、自分で火を消す。それと同様に、自分でタリバンをのさばらせ、自分でタリバン対策をする。そして、タリバン対策の名目で、西側から金をふんだくる。その金で、また火をつけて、タリバンをのさばらせる。
 で、その結果、どうなるか? パキスタンの富裕層はますます富み、パキスタンの貧困層はいつまでたっても貧しいままだ。……そして、その構造に気づかない連中が、表面の下に隠れている本質を見失ったまま、「テロとの戦い」という威勢のいい言葉ばかりを語っている。(まんまと食い物にされていると気づかずに。)
 


 【 後日記 】
 最近の報道によると、タリバンはパキスタンを攻撃しつつあるという。(朝日・朝刊 2009-04-24 )

 上記本文では、
 「テロの矛先は、米軍やアフガン政府ではなくて、パキスタンであるべきだ」
 と皮肉を述べたが、その皮肉が現実化しつつある。あれれ。  (^^);

 どうやらタリバンは、パキスタンにとって「鬼子」になってしまったようだ。うまく飼い慣らしているつもりだったのに、いつのまにか強大になりすぎて、飼い主が主人をかみ殺すようになってしまう。(思惑違い。)

 上記記事によると、「タリバンがパキスタンを支配しそうなので、米軍は憂慮している」とのことだが、あまり憂慮することもないだろう。パキスタンの政権が崩壊すれば、パキスタンを一挙に瓦解させればいいからだ。それによって、パキスタンが核保有をしているという問題も、いっしょに解決がつく。
 
 タリバンは主に山岳地帯にいるので、根絶は難しいだろうが、基本的には、「パキスタンの民主化」という方法で解決がつくはずだ。この最終到達点に近づくためには、タリバンの攻勢(=パキスタン政府の崩壊)は、かえって好ましい。

 なお、ここで一番肝心なのは、「当地におけるイスラム教を尊重する」ということだ。ブッシュみたいな方針だと、「キリスト教による十字軍侵略」と見なされて、失敗する。だから、あくまで現地の人々の宗教を尊重するべきだ。そして、その上で、民主化を導入する。── この方針は、「イスラムの世俗主義」ということだ。(世俗主義は原理主義に対する概念。)
 こういう文化的な概念を理解していないと、ブッシュみたいに大失敗することになる。

( ※ アメリカが日本の統治に成功したのは、日本人の天皇維持という意思を尊重したからだ。「天皇を絞首刑にする」なんていう残酷な方針を取らなかったから、日本の統治に成功した。GHQが直接支配するのではなく、日本の官僚統治を通じて間接的に統治した。……これが成功のコツだ。一方、イラクでは、すべてその逆をやった。だからイラクでは大失敗した。特にひどいのは、イラク政府を解体したことで、このせいで、イラクは無政府状態になってしまった。そのあとで民主的な政府をゼロから作り直そうとしたが、そんな理想主義は机上の空論にすぎなかった。)
 

 
posted by 管理人 at 19:23 | Comment(3) | 政治 このエントリーをはてなブックマークに追加 
この記事へのコメント
パキスタンでテロ組織を支援しているのは彼らみたいです。
http://obiekt.seesaa.net/article/110424114.html
Posted by 巫女の竜 at 2009年04月21日 20:46
だからビンラディンが隠れていられたんですね。
Posted by peace68 at 2011年06月22日 11:11
 アフガン問題を解説する専門家の記事があった。(朝日・朝刊・投稿欄 2012-07-07 多谷千香子) 以下で紹介する。

  ・ 「タリバンがテロリストをかくまっている」という理由で米軍が対テロ戦争を始めた。2001年10月。
  ・ しかし効果は上がらず、現状はかえって悪化している。
  ・ なぜか? 私の考えでは、理由の第1は、米国の無理解だ。
  ・ 米国の攻撃の理由は、「タリバンがアルカイダのビンラディンの引き渡しを拒否したことだ」と信じられている。
  ・ しかし公開された米外交文書によると、タリバンの最高指導者オマール師はビンラディンを、条件つきで引き渡すことを約束していた。
  ・ ところが米国はその流儀を読み損ない、アフガン内のアルカイダにミサイルを発射させて、オマール師を怒らせてしまった。
  ・ 第2に、パキスタンがタリバンを支持するのは、インドと対立するタリバンを支援することが国家戦略的に必要だからだ。それを理解するべきだ。
  ・ 第3に、タリバンはアフガンの民衆に受け入れられている。(ソ連侵攻後の無秩序状態で、治安を回復したからだ。)その事実を理解するべきだ。
  ・ 以上のことからして、結論としては、タリバンとアルカイダの関係を断絶させるべきだ。そのためには、国際テロに無関心なタリバーンの要請を飲んで、米軍は早期に撤退するべきだ。

 ── 

 以上をまとめれば、こうなるだろう。
 「タリバンとアルカイーダとは違う。急進派のアルカイーダの絶滅をめざすべきだが、穏健派のタリバンは容認するべきだ。その違いを理解した上で、両者の間に楔を打ち込むべきだ」

 なるほどね。11年たって、ようやく本質が見えてきたらしい。

 p.s.
 本項の本文を書いたのは、2009年04月21日です。
 一方、このコメントを書いたのは、2012/07/07 です。三年あまりたって、こういう認識にたどり着いた。

 なお、本項の本文の話は、このコメントの話とは直接的には関連しない。否定も肯定もしない。

Posted by 管理人 at 2012年07月07日 08:49
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