中和政策の変形で、新・中和政策というものを提案したい。「現在の減税と将来の増税」のうち、「増税」を「1年後の消費税増税」という形にする。
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中和政策とは、「現在の減税と、将来の増税」という政策である。
ここで、「将来の増税」は、「景気回復後の増税」というものだった。主に消費税の増税を狙っている。
さて。新たに、次のタイプを提案したい。
「増税は、1年後の消費税増税という形にする」
具体的には、次のようなタイプ。
「現時点で、国民一人あたり30万円の現金を給付する。1年後に、消費税を5%から 10%に上げる」
このことの効果は、二つある。
・ 1年後に消費税が上がるので、「上がる前に買う」という消費促進。
・ 増税がしっかり担保されるので、減税額を多めにできる。
(1) 消費促進
1年後に消費税が5%上がるならば、消費税が上がらないうちに買う方が得だ、と思われるので、消費拡大効果が出る。このことで「需要不足」という問題を一掃する。
この効果は、最初の1年間しか続かないが、とにかく、消費拡大効果が最も望まれているときに、その効果を強めることができる。
( ※ なお、2年目以降はどうするか、という問題には、こう言える。「いったん不況を脱出すれば、金融政策が有効になるので、金融政策で物価上昇率を調整することで、消費拡大を見込める」……つまり、2年目以降は、消費税のかわりに物価上昇率を4%ぐらいに維持することで、消費促進を継続する。 → 需要統御理論簡単解説 )
(2) 減税額の拡大
従来の「中和政策」では、「将来の増税」はしっかり担保されていないし、かなり先のことになるので、その分、歳入が少なくなる。
一方、1年後にさっさと増税するのであれば、その分、歳入が増える。だからその分、最初の減税額を多めにできる。従来の「中和政策」では、10万円〜20万円の現金給付だったが、新中和政策なら、30万円の現金給付でも問題ない。このことで、初期の景気刺激効果を大きくできる。……ひどい不況のときには、これが有効だろう。
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小泉政権ができた頃に比べると、今は状況がいっそう悪い。
・ 国民の所得レベルはさらに低下している。
・ 長年の不況で貧乏化が進んでいる。(貯蓄が減る、など。)
・ 米国もまたひどい不況に襲われている。(輸出を頼れず。)
不況がこれほど深刻化すると、最初の減税額も大幅にする必要がある。ただし、いきなり大幅な減税をして、そのあとで増税のない期間が続くと、次の増税のときの変動のショックが大きくなりかねない。急激なインフレになる可能性もなくはない。……そういう危険を避けるために、あらかじめ増税を組み込んでおくといいだろう。このことで、1年後のインフレ暴走の危険の芽を、事前に摘むことができる。そして、それゆえ、最初の減税額を大きくすることが可能となる。
いや、南堂さんの案のポイントは「一挙に減税をした後、規模の大きい増税」ですのでフェルドシュタインの案とは意味は違ってはいるわけですが…似ていると思ったので書いてしまった。
私は現金支給は望ましくないと思います。国民が受け取った30万円をすべて消費にまわしてくれないと、意味がないですから。一年後に消費税が10パーセントになるとしても、国民の大半がいまは買いたいものがあまりないから半分の15万は貯金しよう。とされてしまったら十分な効果は期待できないような気がします。特に教育費に不安のある家庭が、支給された30万円の大半を貯蓄に回したら、マクロ的な効果が薄らぐ。
だから、減税をするなら法人税の大幅減の後、消費税の大幅引き上げの方が、まだ効果が望めるような気がします。
仮に日本で法人税を大幅に下げたとしても日本に来たがる海外企業はあまりないかもしれないですが、そんなことはどうでもいいか…
ただのバラまきだと国債の評価が低下し、その影響で企業が海外で長期的な安定取引をするさいに支障が出るので望ましくないですね。輸出が重要な日本経済においては、国債の低下につながるばら撒きは論外だろう。
私は2000年代前半に深尾光洋の本や経済学者の本をそれなりに読んだので、この記事のないようにいくらか引っかかりを感じてしまいましたので、コメントさせていただきました。
> 半分の15万は貯金しよう。
全然構いません。そのことはもともと考慮されている。
→ http://www005.upp.so-net.ne.jp/greentree/koizumi/89_kaise.htm
貯金することで 何万円も損するのに、わざわざ損しようとする人がたくさんいるとは思えません。
また、仮に国民の大半が貯蓄するなら、物価上昇は起こらないので、その場合には、増税は自然に延期されます。
増税は大幅な物価上昇があった場合(大規模な景気回復があった場合)のみ実施、という「中和政策」の根本を理解していない誤読です。
減税にしても現金を撒くにしても政府の負債が撒いた分は増える。すると国債の信用が低下します(あるいは低下の可能性が大きくなる)よね。
これが危険なので、減税後の増税の額は少し大きめにしないとまずいのではないでしょうか。
だから、ただ20数兆円減税するのは国債の信用低下の危険があるので望ましくないと思います。
国債の評価が低下すると企業が海外で取引するさいにいくらか不自由になると思います。
それから、20万円を国民に渡したときに、もしその20万円の大半をドルやユーロなどの外貨にされたらどうなるのでしょうね、円安になって日本の輸出産業が好況になるだろうか。鉄鉱石など資源の調達に問題は出ないだろうか。(面倒なときは答える必要はないです。ただの疑問です)
このブログの経済関連の記事はおおよそ読ませていただきましたが、政府紙幣の説明をされている箇所でも、日本の国債の格付けが世界のなかで低下した場合どうなるのか説明されていない気がします。私が特に気になって仕方がないのはそのことです。
仮に日本以外の国がデフレになって大規模な減税をしたとして、日本の企業がその大規模減税をした国の企業と、安定的な取引をするのか疑わしいですから。
簡単に言えば、多大な失業者が、ちゃんと働けるようになります。わかりやすく言えば、健康なくせに布団で寝たいる国民ばかりの国で、国民がせっせと働くようになります。
これがポイント。働けば、収入も得るし、税金も払います。
経済とは、生産活動のことです。このポイントを理解しないと、駄目。帳簿のことだけを見ていては、経済は理解できません。
この記事も、わかりやすいのでかえって本当だろうかという疑問が浮かんだので、コメントしたのです。
経済学者の書く本は慎重なというか穏健な態度が目立つ。なにごとかの策を講じても、その策によってもし日本経済がめちゃくちゃになったら、ハイパーインフレが起きたら、という不安を気にしすぎている雰囲気ですしね。この記事のようにわかりやすい主張は驚きでした。ここに書くのは少しずれていますが、バーナンキの背理法の問題点の指摘なども面白かったです。
ポイントのご教示ありがとうございます。