◆ ドーマーの定理:  nando ブログ

2010年06月22日

◆ ドーマーの定理

 ドーマーの定理とは、
   名目成長率 > 国債金利

 であれば、財政破綻しない、という経済学の理屈。(長期的な場面で。)

 ──

 何を当り前のことを……という気もするのだが、これを数式でごちゃごちゃと書くと、経済理論となって、論文を書ける。  (^^);
 ネットで検索すると、いろいろと理屈が見つかる。

 ──

 これから得られる結論は、何か? 通常、次のように言われる。
 「経済成長をすることが大事だ。経済成長があれば、借金ができる」
 そりゃまあそうですけど、当り前。何を今さら。
( ※ 「借金を返済する能力があれば、借金できる」というのと同じこと。)

 まともな見解としては、次の見解があった。
 「どこかで不況下での財政引き締めを行わなければいけなくなる」
 ( → 該当サイト
 詳しい話はリンク先にあるが、とにかく、これは妥当だ。

 ──

 ただし、実を言うと、ドーマーの定理というのは、もともと有益ではない。なぜなら、これは財政破綻があるかないかを示すには力不足だからだ。
 たとえば、デフレ期には、名目成長率はマイナスになるので、ドーマーの定理に従えば、財政は破綻するはずだ。しかし現実には、破綻しない。ドーマーの定理は成立しない。

 ドーマーの定理では、「 名目成長率 > 国債金利 」と書くときに、名目成長率や国債金利の値は、固定値となっている。そこが問題だ。
 現実には、名目成長率や国債金利の値は、変動する。そして、その変動に応じて、財政破綻が起こったり起こらなかったりする。
( ※ この件は非常に重要である。次項で詳しく述べる。)

 ──

 短期的には、デフレが起こっても、それが短期で済む限りは、「将来的には大丈夫」という見通しが立つ。だから、ドーマーの定理の破綻しない条件( 名目成長率 > 国債金利 )が一時的に成立しなくても、問題ないのだ。

 財政破綻が起こるとしたら、「将来的には大丈夫」という見通しが立たなくなったときだ。そして、それを引き起こすのは、主として、人間心理なのである。多くの人々が「もう駄目だ」と思ったときに、資金の引き上げが起こり、金利が急上昇する。(ギリシアの例と同様。) (そして、その後、資金難から、国家の歳入がろくに得られなくなり、福祉などの金が大幅に削られる。……これはまた別の話。)

 ともあれ、財政破綻の原因としては、ドーマーの定理はあまり関係ない。ドーマーの定理は、長期的な見通しを示すことができるくらいだ。(つまり当り前のことだけだ。本項の前半で述べたとおり。)
 財政破綻の直接の原因としては、ドーマーの定理ではなくて、人間の心理がある。そして、人間の心理に影響するのは、先への見通しだ。その見通しは、将来における国債償還の見通しだ。それは、「 名目成長率 > 国債金利 」という条件(ドーマー条件)を満たすかどうかに依存する。ここでようやく、ドーマーの定理が出てくる。
 
 ドーマーの定理で重要なのは、今現在の数値ではなく、将来の数値である。そして、将来の数値は、人間の頭で予想されるものだ。人間の頭しだいなのだ。
 財政赤字が高まれば、財政破綻の危険は増える。そうなれば国債金利は上昇する。(ギリシアと同様。)そうなれば、ドーマー条件が満たされず、国家財政は破綻しそうだ。そういうふうに人々が思えば、まさしく資金が逃避して、財政破綻が起こる。

 結局、ドーマーの定理は、人間の心理と組み合わせて、初めて、経済理論の形を取れる。ドーマーの定理に現実の数値を当てはめても、そこからは何も得られない。また、ドーマーの定理だけをいじり回しても、お遊びにしかならない。
  


 [ 付記1 ]
 本項の話で、何か役立つことがあるのか? ドーマーの定理という、重箱の隅みたいな経済概念を知ることで、何か有益なことがあるのか? 
 実は、ドーマーの定理それ自体は、たいして有益ではない。まさしく重箱の隅みたいな概念にすぎない。
 
 ただし、この理屈を上記のように適用することで、わかることがある。それは、「人間の心理が財政破綻にどう影響するか」という思考過程だ。
 財政破綻を直接的にもたらすのは、人間の思考だ。ただし、人間の思考とはどういうものであるのか、つかみにくい。そこで、その思考過程を、はっきりと定式化するために有益なのが、ドーマーの定理だ。
 ドーマーの定理は、現実の何かを示すものではない。人間の思考過程を示すものだ。「現実はこうである」と示すのではなくて、「『将来の現実はこうなるだろう』と人間が思考する」という思考過程を示す。
  
 ドーマーの定理が有益なのは、人間の思考過程を見るときだけだ。そして、人間の思考過程を見るときには、ドーマーの定理が役立つ。
 財政破綻が起こるときには、突発的に財政破綻が起こる。その突発的な現象がいかにして起こるか? ちょっと不思議に思えるかもしれない。しかしそこでは、人間の思考過程にドーマーの定理が働いているのだ。そういうふうに、財政破綻の真実を理解するために、ドーマーの定理が役立つ。
( ※ 特に、「財政破綻なんか起こるはずがない」「突発的な現象なんか起こるはずがない」と信じ込んでいる人を説得するために、役立ちそうだ。)
  
 [ 付記2 ]
 ついでだが、ドーマー条件に従って、現実を調べても、ほとんど意味のないデータが得られるだけだ。たとえば、次のような統計が得られる。
  → OECD諸国でドーマー条件を満たす国の数 (グラフ)
 これを見ればわかるが、ドーマー条件を満たすか否か調べても、ただの統計データが得られるだけだ。現実を見る限り、ドーマーの定理がどうのこうのというのは、ただの統計しか得られない。



 [ 余談 ]
 ドーマーの定理を微分方程式で解く、というのは、あまりにも数学センスがなさ過ぎる。
 これは、「収入の伸び率 g が、支出(返済)の伸び率 i を上回れば、破産しない」ということだ。当たり前すぎ。微分方程式の出る幕じゃない。(一般的に、微分可能なあらゆる関数は、ただの多項式で十分に近似できる。理由はマクローリン展開。)
 経済学者はやたらと無意味な微分方程式を使いたがるが、数学者の目から見れば、馬鹿馬鹿しすぎる。「牛刀を以て鶏を割く」という言葉がぴったり。
 ま、本当は、読者を煙に巻くための効果が狙いなんでしょうけど。あるいは、偉そうに見せかける。コケ威し。

 
 
posted by 管理人 at 20:10 | Comment(3) | 経済 このエントリーをはてなブックマークに追加 
この記事へのコメント
いつも楽しく拝見しております。
こんな質問も何なんですが、普通の人から見れば、学校行って就職しただけで後になって身に覚えもない借金1000兆円を返せ、と言われる訳ですよね。
普通の感覚からして、誰が返すか、使った覚えもないものを(怒)、となるわけで、もしかしたら、財政破綻したほうが借金を返さなくて済んで、その方が普通の人の可処分所得が増えて、財政破綻した方がいいかも知れないという可能性はないのでしょうか?
Posted by 影丸 at 2010年06月20日 14:04
> 学校行って

学校には公費がかかっています。

> 財政破綻した方がいいかも

 破綻したら、学校も医療保険もみんな自腹になりますから、普通の生活は送れなくなります。道路は補修されずに穴ぼこだらけとなり、信号の電気は止まって事故多発。救急車も来ないし、警察も来ない。泥棒が活躍して、あなたの家にも空き巣に入る。誰も犯罪者を逮捕しない。
 そのときようやく、自分がどれほど公費に頼っていたか理解できます。

> 身に覚えもない借金

 借金が急に増えたのは、ここ 20年ぐらいのことですから、20歳以上の人は完全に借金の恩恵を受けています。10歳の子供ならば半額。生まれたばかりの赤ん坊ならばゼロ。
Posted by 管理人 at 2010年06月20日 14:37
やっぱりそんな事はないですよね。。
それにしても、単純に1000兆円÷1億人=1000万円は多すぎるよ・・・て思います。
100万円くらいなら何とかなるのに。
Posted by 影丸 at 2010年06月20日 15:15
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。