◆ 税の自然増(特に法人税):  nando ブログ

2010年06月21日

◆ 税の自然増(特に法人税)

 景気回復があれば、税の自然増が見込める。その額はどのくらいか?
 法人税だけで 20兆円以上の税収増が見込める。(他に所得税も。)

 ──

 財政赤字は、本年度で 44兆円。消費税増税による増収は、5%アップでもたった 10兆円程度。だが、景気回復があれば、それだけで税の自然増が大幅に見込める。それはどのくらいか?
 
 (1) 法人税

 法人税は 20兆円以上の増収が見込める。
 バブル破裂前の 1988年には、 約19兆円の税収があった。この時点の GDP は、408兆円であり、現在の8割以下である。現在も同程度の好況ならば、25兆円ぐらいの税収があることになる。一方、本年度の法人税の税収は、ゼロどころかマイナスである。(景気悪化による還付金があるので。) 結局、景気回復によって、20兆円以上の増収が見込めることになる。
  → Wikipedia 法人税
  → Wikipedia GDP
  → 法人税収がマイナス

 なお、「法人税率を下げよ」という保守派の論調に対しては、反論がある。「日本の法人税は海外より高いというが、実際に払っている税は少ない」という見解だ。自治労のサイトから引用しよう。
 資本金10億円以上の大企業(金融・保険業は除く)の経常利益は32.8兆円(2006年)と史上最高を更新し、バブル期のピークであった1990年の18.8兆円の1.74倍に達しました。その内部留保も239.8兆円(2007年)と大もうけをためこみました。それに対して、税負担は13.9兆円から13.7兆円へとむしろ下がっています。
 アメリカ発の金融危機の影響で、企業の利益の落ち込みがいわれていますが、トヨタ自動車でいえば2000年から比較して株主への中間配当は5倍に、内部留保は1.74倍に増え、なんと14兆円にもなりました。大企業は十分負担する体力があります。
 本来の法人の実効税率は40%なのに、トヨタ自動車は28%(2007年)です。また大銀行13行に至ってはわずか4%しかありません。その結果日本の企業(自動車産業の場合)は、税金と他の外国と比べてもフランスの73%、ドイツの82%しか負担していません。
 社会保障費に限っても、日本の「事業主負担」は、イギリス、ドイツ、フランスの水準よりかなり低く、逆に本人が支払う「保険料」は最も多い部類に入ります。
 ──
 政府は、税率引き下げなどをしないと「企業が海外に逃げる」ことを理由としています。しかし、海外進出を計画している企業に、その理由を聞いた設問に対する回答では、「労働コスト」「海外市場の将来性」などが上位で、「税負担」は5番目にすぎません(経済産業省委託調査「公的負担と企業行動に関するアンケート調査」より)。
( → 自治労のサイト
 なお、日本の法人税があまり高くないわけは、各種の控除がたくさんあるからだ。これを廃止することで、課税ベースをひろげることができる。この点、広く指摘されているとおり。


 (2) 所得税・その他

 景気回復があれば、所得税も自然増が見込める。
 また、社会保障の支出は、景気回復にともなって減額される。(失業手当や、生活保護費や、労働訓練費など。)

 ──

 結論

 財政赤字は 44兆円。ここで、消費税の税率アップで 10兆円を期待しても、財政赤字は解消しない。まだ 34兆円が残る。
 それよりは、景気回復により、法人税で 25兆円、所得税で 10兆円、社会福祉費の減額などで5兆円、計40兆円の増収を計るべきだ。残りは4兆円の赤字。この分だけを、消費税の増税で埋めればいい。……これなら、計算が成り立つ。
 一方、「財政赤字が 44兆円あるから、消費税の税率アップで 10兆円」というのは、全然、理屈になっていない。それでは焼け石に水も同然だ。



 [ 付記 ]
 法人税の税率について、私の見解を言えば、次のようになる。
 日本の法人税と、米国の法人税は、実効税率はほぼ同じぐらいである。このくらいが世界標準だ。この割合から下げる必要はない。
 香港などでは、税率が低いが、これは、外国から企業を招こうという国策だ。自力では産業や企業を構築できないような小国の政策である。見習う必要はない。

 欧州では、税率が低いが、これは、次の二点による。
  ・ 欧州は統一市場である
  ・ 欧州は税制が別である
 市場は統一されているのに、税制が別だから、企業は域内で、税率の低いところへ行きたがる。そのせいで、各国は税率の引き下げ競争をする。しかしそのせいで、各国は自分で自分の首を絞めることになる。見習う必要はない。

 日本だって、同様にしたければ、法人税を「国税」でなく「県税」にすればいい。そうすれば、各県は企業を招こうとして、法人税の引き下げ競争をするだろう。しかし、そのせいで、日本全体の法人税収は激減するだろう。各県は自分で自分の首を絞めることになる。

 結局、欧州の法人税が低いのは、企業を活発にしようとしているからではなくて、各国が無駄に引き下げ競争をしているからだ。そして、そういう馬鹿げたことをするのは、欧州が「市場は統一するが、税制は統一しない」という、歪んだ制度をもつからだ。当然、見習う必要はない。



 [ 参考1 ]
 ついでだが、日本の企業は、法人税率がどうのこうのという以上に、労働分配率が低すぎる。多額の金を内部留保に回している。そのせいで、金が死蔵され、一国経済がどんどん縮小していく。
 いずれにせよ、企業が金を内部留保に回している状況では、法人税の税率を下げたところで、「企業の体質が強化される」ことにはならない。まして、「企業が外国に逃げていく」ということもない。
 「企業が外国に逃げていく」という説は、噴飯ものだ。もしそれが正しければ、先端企業はみんなケイマン諸島に行って、低い税率で、観光業でもやっているはずだ。しかし、ソニーやキャノンは、ケイマン諸島で観光業なんかやるより、先端企業として日本で仕事をすることを選ぶ。
 企業というものは、税率の低い国を選ぶのではなく、たっぷりと稼げる国を選ぶのだ。一般に、「法人税の税率を下げよ」と述べている企業経営者は、すべて無能である。優秀な経営者は、「たっぷり稼いで、たっぷり税金を払おう」と考えるものだ。無能な経営者は、脱税ばかりしたがる。
(例。「当社は税金をちっとも払ったことがない」というふうに威張っていた堤義明。人間として最低だね。……しかし、堤義明を笑えないな。最近の経営者や論客はみんな堤義明に似てきたようだ。民主党までそうなってきている。呆れたものだ。)
 
 [ 参考2 ]
 別の問題もある。残業代が低すぎるせいで、長い労働時間による過労死が出る。まずは、「残業税」という形で増税をするのが先決だろう。この場合、サービス残業をさせた企業は、残業代を払わないので残業税も払わないことになる。すると、脱税したことになるので、国税庁の摘発の対象となる。
posted by 管理人 at 19:16 | Comment(3) | 経済 このエントリーをはてなブックマークに追加 
この記事へのコメント
管理人様

いつも、目からうろこのエントリ、ありがとうございます。

ニュースでは毎日のように消費税の増税が大々的に扱われ、アゴラなどのWeb討論でも、著名な論客の方々は、みな消費税増税、法人税減税をうたっています。(dankogaiさんは違いますが)

消費税増税に賛成している方は、結構多いように思います。

個人的には、日本人は心配性ですから、

消費増税→経済悪化が心配→消費抑制
消費減税→財政悪化が心配→消費抑制

どっちに転んでも悪くなる気がしてきました。
もはや「財政問題は話題にしない」のが一番なのかも・・・。

消費税は累進性があるのか、逆進性があるのかなど、基礎的な事実だけでも、専門家の間で合意いただけると、素人としても判断しやすいんですけどね・・・。

せっかくワールドカップで気分が盛り上がってるんだから、消費税の話は総理にはしないで欲しかった(笑)
Posted by odbpp at 2010年06月24日 23:36
 増税も減税もどっちも駄目というのが私の見解です。

 今は減税で、将来は増税、というのが私の見解。同じことを述べる人はいませんね。頭が二者択一になっている。短期と長期の区別もできないから。

 なお、アゴラは、池田信夫が編集長をやっていますから、彼と気の合う人(経済学の知識はなくて、自由と市場原理ばかりを唱える人)が、結集するようです。
 アゴラなんて、読むだけ無駄。経済学のレベルになっていない。素人の与太論議。どうせなら、ネットで適当に検索した方が、よほどまともな見解が見つかる。たとえば「ドーマーの定理」とか「バーナンキの背理法」とか「インフレ目標」とかの用語で検索。

Posted by 管理人 at 2010年06月24日 23:55
管理人様、さっそくのコメント、ありがとうございます。

私も、減税して景気を回復した後で増税という方法は、他ではあまり聞いた事がありません。

専門家の間では、ちゃんと議論されているのかな?

アゴラに集まる人は池田さん派が多いのは事実だと思いますが、反論する人の意見ものりますし、他にこういう議論の場ってないんですよね・・・。
Posted by odbpp at 2010年06月25日 07:38
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