◆ 世界恐慌の危険:  nando ブログ

2010年06月28日

◆ 世界恐慌の危険

 サミットは世界的な「財政緊縮」路線を宣言した。このことで、世界恐慌がもたらされる可能性が(いくらかは)ある。

 ──
 
 サミットは世界的な「財政緊縮」路線を宣言した。
 G20サミットは27日午後(日本時間28日朝)、先進国が財政赤字を2013年までに半減させる努力目標を盛り込んだ首脳宣言を採択して閉幕した。
 ただ、財政悪化が深刻な日本については、「日本の成長戦略と財政健全化計画を歓迎する」と明記し、事実上、例外扱いとすることを容認した。
 財政健全化では、単年度の財政赤字を13年までに半減させることに加え、16年までに累積赤字を対GDP比で安定化もしくは低下させる目標を打ち出した。
( → 読売新聞 2010-06-28
 ここでは、「成長に目配りをする」という留保はあるものの、基本的には「財政緊縮」となっている。

 ──

 しかし、このような世界的な財政均衡主義は、世界恐慌をもたらす危険がある。Wikipedia から引用しよう。世界恐慌の直前は、次のようであった。
 《 アメリカ 》
 フーヴァー大統領は古典派経済学の信奉者であり、国内経済において自由放任政策や財政均衡政策を採った。
 《 イギリス 》
 労働党のマクドナルド内閣は失業保険の削減など緊縮財政を敷く
( → Wikipedia 「世界恐慌」
 日本もまた同様であった。日本では「金本位制」が取られたが、その方針もまた「緊縮財政」であった。
  《 日本 》
 濱口や井上は、金解禁や財政再建とともに重要視していたのは、産業の構造改革であった。……金解禁によるデフレと財政緊縮によって一時的に経済が悪化しても、問題企業の整理と経営合理化による国際競争力の向上と金本位制が持つ通貨価値と為替相場の安定機能や国際収支の均衡機能によって、景気は確実に回復するはずであると考えたのである。
( → Wikipedia 「金解禁」
 以上はいずれも、世界恐慌の前夜の状況であ。そこでは、いずれも「財政緊縮」という方針が取られた。その理由は、それ以前に、次の3点があったことだ。
  ・ 米国では長らく、バブル期(好況)があった。各国も好況。
  ・ そのバブルが破裂して、米国は景気悪化した。各国も景気悪化。
  ・ 景気悪化にともなって、財政状況が悪化した。

 このような形で、財政は悪化した。
 そのあと、「財政緊縮」という路線が取られた。その結果は、狙いに反して、景気の改善どころか、世界恐慌であった。

 ここまで見ればわかるだろう。世界恐慌に至る歴史と、現在の状況とは、よく似ている。上記の3点は日本や米国によく当てはまるし、「財政緊縮」という路線もサミットの宣言によく当てはまる。
 この路線がそのまま取られれば、世界恐慌に突入するとしても、不思議ではないだろう。特に、民主党が「消費税増税 10%」という方針を取れば、少なくとも日本だけは、大不況ないし恐慌になるはずだ。(そうなる可能性がある、というのではなく、不可避的にそうなる。)



 【 補説 】
 恐慌になったあとでは、各国は財政緊縮路線を捨てた。
 米国ではルーズベルトがニューディール政策を取った。イギリスでも財政緊縮路線は捨てられた。ただし、いずれも、めざましい効果はなかったようだ。
 めざましい効果があったのは、ケインズ政策を大規模に実行したナチス・ドイツであった。ヒトラーは慧眼にも、シャハトのケインズ的な経済政策を実行した。そのおかげで、急激に経済は回復し、失業率もゼロになった。……しかしながら、それは軍事面でのケインズ主義であったため、軍事国家の膨張という副作用があった。それは第二次大戦に至った。これはシャハトの意思には反するものだった。経済は、ふくらんだあとで、鬼子のように暴走したことになる。(戦争へ至った。)
 日本も同様で、高橋是清蔵相が財政緩和路線を取り、景気は大幅に回復した。これはシャハトに匹敵する業績だった。しかしながら、ナチスの場合と同様の問題が生じた。軍備費用の膨張にともない、軍が増長した。軍備費用を抑制しようとした高橋是清は、軍に暗殺された。ここでも、高橋是清の意思に反する形で、歴史は進んだ。経済は、ふくらんだあとで、鬼子のように暴走したことになる。(戦争へ至った。)

 歴史的に言えば、正しい経済政策を取った国では、軍の膨張を抑えきれなくなった。逆に言えば、軍の膨張を推進する国だけが、正しい経済政策を取ったことになる。比喩的に言えば、悪人だけが利口で、善人はこぞって馬鹿だったことになる。……これでは戦争は不可避だろう。
 今でも同様のことになる可能性はある。世界各国がこぞって世界恐慌に突き進むなかで、どこかの軍事国家が、財政緩和路線を取り、急激に成長する可能性がある。たとえば、次のようなストーリー。

 ──

 《 架空ストーリー 》
 (読まなくてもよい。)
 小泉か菅直人みたいな首相が、財政緊縮路線を取る。そのせいで、国家経済が破綻する。財政破綻とともに、恐慌状態になる。町には失業者があふれ、犯罪も野放しとなる。
 ここで、軍が立ち上がり、軍による独裁政権が成立する。その政権は、ヒゲもじゃの経済学者の政策を取ったので、「現在の減税と将来の増税」という方針を取る。「一挙に 30兆円の減税」を実施する。すると、景気は急激に回復し、失業者は皆無となる。国民は軍事政権に拍手喝采する。
 そこで、軍事政権は、軍備費をどんどん拡大する。ヒゲもじゃの経済学者は、「そりゃ駄目ですよ、景気回復後は増税を」と主張するが、「うるさい!」と怒鳴られて、牢屋に監禁される。
 その後、軍の膨張は止められなくなり、核武装し、軍事侵略に乗り出す。「北方領土の回復! 尖閣諸島の占拠!」などを唱えて、ソ連や中国と戦争を始める。緒戦は見事に成功し、ソ連の半分と、中国の半分を、支配する。
 しかし、それに恐れをなしたアメリカが反発して、日本に「石油禁輸」を申し渡す。日本は仕方なく、米国の真珠湾を奇襲する。そして最後は……

 それにしても、歴史というのは、ためになる。今の政治がやっている愚かさと同じことが、1世紀ぐらい前にもなされていたのだ。このまま、世界恐慌に突入し、そのあと第三次世界大戦が起こっても、不思議ではない。
 財政破綻よりも怖いのは、財政破綻を避けようとしたあげくの、世界恐慌や世界大戦だ。
 だからこそ、財政問題について、正しく理解することは大切なのである。



 [ 余談 ]
 物事をちゃんと認識しないと、危険を回避しようとして、かえって危険と正面衝突する。……それと似たことが、レクサス LFA と BMW の衝突で起こったようだ。
 → http://blog.inmycab.com/?p=3157

 レクサスの側は、衝突を回避しようとして、左側路線にハンドルを切った。しかしそこはドイツなので、右側通行であり、左側路線ではかえって正面衝突してしまう。……こうして、危険を回避しようとして、かえって危険と正面衝突するという結果になった(らしい)。

 物事を正しく認識しないまま、下手に衝突を回避しようとすると、最悪の事態を招く、というわけだ。
( ※ 財政破綻を回避しようとして、かえって世界恐慌を招く、というわけ。) 
  
  
posted by 管理人 at 19:51 | Comment(3) | 経済 このエントリーをはてなブックマークに追加 
この記事へのコメント
 クルーグマンが同趣旨のことを書いている。日付も本項と同じだ。
http://abetch.exblog.jp/10889811/

 今になって上記記事に気づいたのだが、同じころに同じことを考えていたわけだ。
 
Posted by 管理人 at 2010年07月09日 14:17
>日本も同様で、高橋是清蔵相が財政緩和路線を取り、景気は大幅に回復した。
>これはシャハトに匹敵する業績だった。しかしながら、ナチスの場合と同様の問題が生じた。
>軍備費用の膨張にともない、軍が増長した。軍備費用を抑制しようとした高橋是清は、軍に暗殺された。
>ここでも、高橋是清の意思に反する形で、歴史は進んだ。
>経済は、ふくらんだあとで、鬼子のように暴走したことになる。(戦争へ至った。)

とのお言葉ですが,以下のお言葉と合致されておられない部分があるように感じられました。。

ニュースと感想  (8月24日)
「太平洋戦争の原因」について。
http://www005.upp.so-net.ne.jp/greentree/koizumi/a07_news.htm

>あの当時の状況を良く理解しよう。なぜ人々は、「強力な軍」を望んだか? 理由は、こうだ。

>当時の民間人政府は、まったくの無能だった。
>恐慌があったときに、それに正常に対処するどころか、金本位制によって、状況をますます悪化させた。
>何もしなければ状況は不変だっただろうに、余計な経済政策を取ったせいで状況がひどく悪化した。
>特に農家は悲惨だった。人々は生きるために借金をするしかなく、借金をしても返済する手段がなかった。
>残る手段はただ一つ。娘を女郎屋に売ることだけだ。こうして多くの子女が女郎屋に売られた。
>彼女らの兄であった青年将校は憤慨した。
>「国民はこれほどの不幸に苛まれているというのに、政府の高官や豪商は状況を利用してさんざん遊びふけっており、
> 女郎屋通いをしている。こんな無能な腐敗した政府は、打倒するべきだ」

>こうして「政権を打倒するべきだ」と思った人々の代表が、二・二六事件を起こした。

>この事件のあと、民間人の政府高官はびびりだし、軍が勢力を伸ばした。そして、その結果は、めざましいものだった。
>盧溝橋事件のあと、日本が満州やアジアに進出すると、日本の景気は軍需景気によってとても好転した。
>一種のケインズ政策ではあるが、馬鹿な民間人にはできなかったことを軍人がやって大成功を収めた。
>つまりは、民間人の経済政策よりも、経済音痴の軍の経済政策の方が、はるかに正鵠を射ていたわけだ。
>国民は、不幸から幸福に転じたのを見て、軍を大賛美した。

>ここまで見ると、わかるだろう。
>当時、国民が軍を支持したのは、国民が好戦的だったからではない。当時の経済政策がデタラメすぎたからだ。
>あの時点で軍に逆らうことなどできるはずがない。
>なぜなら、軍は正しいことをしており、政府は間違ったことをしていたからだ。── 少なくとも、経済政策については。
>つまり、人々の財布や生存については。


高橋是清蔵相は二・二六事件の犠牲となられた方のお一人ですが,
世界恐慌以降の政府に対する
「当時の民間人政府は、まったくの無能だった。」
「当時の経済政策がデタラメすぎた」
「政府は間違っていた」
といったお言葉からしますと,
恐慌に対処した高橋財政の存在が念頭に置かれていないように見えるのですが,
こちらはどの様にお読みすればよろしいのでしょうか?

(余談ながら,民間人政府といいましても事件当時の岡田首相や
 その先代の斎藤首相などは元海軍大将でしたし,閣僚にも元軍高官が含まれる場合もありましたので,
 実質的に武官と文民の完全な色分けは難しいのではないかと存じます。)
Posted by 検校 at 2013年01月19日 23:55
1929年 NY株価大暴落
1930年 井上の金解禁(金本位制復帰)
1931年 井上の緊縮財政
  → http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%87%91%E8%A7%A3%E7%A6%81

1931年 高橋の蔵相就任。金輸出再禁止。リフレ政策とその成功。
その後 軍事予算の膨張を止めようとする → 軍の恨みを買って暗殺(1936.2.26)
1937年 盧溝橋事件
 ──

> 恐慌に対処した高橋財政の存在が念頭に置かれていない

 そうですね。失念していたようです。ご指摘に従って、該当箇所を書き直しておきます。
Posted by 管理人 at 2013年01月20日 16:02
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