◆ 保守主義とは何か?:  nando ブログ

2010年07月03日

◆ 保守主義とは何か?

 前の3項目から部分抜粋する形で、「保守主義とは何か」を示す。それは「リベラリズム」の対語であり、「ネオリベラリズム」に相当する。

 ── 

 前の3項目を読んでいれば、本項を読む必要はない。本項は、「保守主義とは何か」をネットで検索してきた人を対象として、用語の解説をする。


 ──

 保守主義という言葉を聞くと、「保守的な主義のことだな」と思う人が多いようだ。Wikipedia にも、その趣旨の記述がある。次のように。
 古くからの習慣・制度・考え方などを尊重し、急激な改革に反対すること。伝統を保守することを重要視する政治思想である。対義語は革新若しくは進歩主義。
 これは、Wikipedia が頼りにならないことの見本だろう。てんでピンボケだ。このような老人的な趣旨で「保守主義」という言葉が使われることは、現代ではほとんどない。

 ──

 むしろ、はてなキーワードの説明の方が妥当である。引用しよう。
 既成の思想や制度を尊重し維持するために、その変革に反対する立場。
 (しかし)政治の文脈においては物事はそう単純ではない。例えばリベラルに対して用いられる保守主義は、リベラルが築いてきた諸制度を解体し、積極的または消極的自由を目指す「新自由主義」と分かちがたく結びつくことがある。
 ここでは、「保守主義」が「新自由主義」(ネオリベラリズム)と結びついていると示されている。この認識は正しい。
 現代の用語で使われる「保守主義」とは、ネオリベラリズムとほぼ同義なのだ。

 ──

 では、ネオリベラリズムとは? 具体的には、次のような論者がいる。
  ・ レーガン (レーガノミックス)
  ・ サッチャー (サッチャリズム)

 他にも、米国の保守党、日本の読売新聞、民主党の 小沢一郎などだ。
 ともあれ、これらが「保守主義」だ。その特徴は、「小さな政府」だ

 したがって、「保守主義」の対語は、「改革主義・進歩主義」ではなく、「大きな政府」を信奉するものだ。それは、リベラリズムだ。
 リベラリズムは、(米国を除いて)世界の先進国では主流の考え方である。日本は、自民党政権を別とすれば、国民の意識調査では「大きな政府」(高福祉・高負担)が支持されている。(ただし、「小さな政府」を支持する人も、半数以下ではあるが、かなり多くいる。その点は、欧州とは違う。)

 ──

 こうしてみると、「保守主義」という言葉が「保守性」とは関係ないことがわかるだろう。 
 具体的には、小泉純一郎を見るといい。彼は「自民党をぶっ壊せ」と主張して、「構造改革」を唱えた。このような改革主義に基づく政治主義が、「保守主義」の典型である。その特徴は、「小さな政府」であり、「保守性」ではない。
 レーガンであれ、サッチャーであれ、小泉純一郎であれ、いろいろと政治を改革しようとしたのだ。ただしその方向は、「右寄り」の方向の改革だ。
 このように、「右寄り」(小さな政府)の方向の改革をめざすのが、「保守主義」である。保守性とは関係がない。間違えてはならない。用語で混乱してはならない。( Wikipedia は混乱している。)

  ────────────

 では、「右寄り」(小さな政府)の方向とは、何か? それは、先の項目で示した。
  → 自由とは何か? (政治)
 この項目では、リベラリズムとは何かを示しているが、その反対のものとして保守主義が説明されている。
 保守主義の特徴は、「自由」を追求することだが、その「自由」とは「エゴ」のことである。そして、「エゴ」を善と見なすことの原理は、社会的な自然淘汰主義である。
 この件については、上記項目に詳しく記してあるので、そちらを読んでほしい。つまり、「保守主義の本質は何か」ということは、リベラリズムと対比することで説明される。
 


 [ 付記 ]
 本項のポイントは、次のことだ。
 「保守主義の本質は、保守性ではない。保守主義はむしろ、改革を主張する。(右寄りの改革)」
 ここでは「言葉と実態がズレている」というふうになっている。そこで、「保守主義」という言葉の実態が何であるかを説明し、言葉のまぎらわしさを排除しようとする。用語の誤解をなくそうとする。……それが本項の目的だ。
 本質的なことの説明は、前の3項目に委ねている。
  


 [ 余談1 ]
 余談だが、「小さな政府」という言葉もまぎらわしい。「小さな政府」というのは、文字通りの意味ではない。次のことを意味する。
  ・ 経済介入は 小さく
  ・ 福祉は 小さく
  ・ 軍事は 大きく


 少なくとも軍事面では、「強大な国家」をめざしている。レーガンはミサイル防衛網や通常兵器で軍を強大化しようとしたし、サッチャーは軍事費だけは聖域として歳出削減の対象からはずした。
 逆に言えば、「小さな政府」主義は、「強大な軍事国家」を構築するために、他の政府部門を小さくしようとしたのだ。「福祉を削って兵器を買おう」という路線。( → 「ミルク泥棒」と呼ばれたサッチャー
 その点では、ナチスのヒトラーや、戦前の軍国主義日本と、似た傾向の路線である。
 
( ※ 保守主義というものがどうして胡散臭いかも、このことからわかる。「小さな政府」と唱えて、「強大な軍事国家」をめざすという、詐欺的なことをやっているからだ。「自由を守るため」にイラクで戦争を始めたブッシュと同様だ。ペテン。)

 [ 余談2 ]
 現在の自民党の方針は、「保守主義」どころか、本当に「保守的な伝統を守る」ということであるようだ。
  → 自民党の運動方針(池田信夫の解説)原文
 靖国神社への参拝などだ。まったく伝統的・保守的。こういうのは、何と呼ぶべきだろうか? 「守旧派」かな。「アナクロニズム」かも。小泉なら「抵抗勢力」と呼ぶかも。
 
 cf. 世間の感想 その1その2
     
posted by 管理人 at 10:52 | Comment(3) | 政治 このエントリーをはてなブックマークに追加 
この記事へのコメント
保守主義の定義が微妙ですね。
慣習や伝統を軽視し過ぎていませんか?

少なくとも日本に於いて革新思想の新自由主義と保守主義が一緒くたになることはあり得ません。
あえて言えば拝金主義者の詭弁かと。
Posted by 烏賊煮 at 2014年02月04日 09:22


シュミットの基本権テーゼ:自然権思想は主権者である国民の意思決定によって憲法に採用されたものであり、国民以外の憲法改正員会には改正できない(ナチス阻止)
 ↓
シュトラウス・テーゼ:自然権不可侵(国民でも改正できない)
 ↓
70年代の米国民主党右派による新保守主義(ピューリタンの伝統にもどり、自然権不可侵)


アメリカの保守主義というのはですね、ピューリタニズムの伝統に戻れというものです。



>これらが「保守主義」だ。その特徴は、「小さな政府」だ

おk。理由は、自然権である財産権に基づく経済活動に干渉するべきでないから。

>「大きな政府」を信奉するものだ。それは、リベラリズムだ。

たしかに財産の再分配は現代リベラリズムの特徴(多元主義)ではあります。


>「保守主義」という言葉が「保守性」とは関係ないことがわかるだろう。 

これは間違い。
ピューリタンの伝統に戻れよーというものです。

>保守主義の特徴は、「自由」を追求することだが、その「自由」とは「エゴ」のことである。

アメリカの保守主義者が「社会的な自然淘汰主義」に賛同しているというわけではありませんよ。
困ったひとをみれば、隣人愛の自然な発露として、慈善の手を差し伸べることは、キリスト教の観点から、徳に決まっております。
ただ、それは自然な感情の発露によらねばならないとするわけで。


本当に勘弁してあげてください。
あなたの言い方によると、保守主義者は倫理的に破綻した人間のゴミクズばかりというように響きますよ。


聖書が禁じた義務を守ることで、その反射として「自由」が生まれるという理解の方が正しいと思われ。

16世紀フランスのユグノーの『自由の擁護』にまでさかのぼると言われます。
もっと古い4世紀のアウグスティヌスの「自由は罪の起源となりうる」からすれば、革新なのですけれどね。
神の意思を人間が直接に知ることができるというのは、キリスト教徒として、傲慢の罪につながりかねないので、自然権主義者は聖書の引用を心掛け、自然権の範囲を限定します。



☆シュミットは、我が国では、ナチスの理論家として誤解されることが多いけれども、実は真逆であったことは近年の研究でわかっている。
☆ユダヤ人であるシュトラウスは、すでに大家であったシュミットから若年の頃より才幹を認められて、対等の友人として扱われ、著作の出版などに大いに援助を受けた。
☆経済的には、新保守主義は自然権である財産権絶対の新自由主義と当然に結びつく。
Posted by 通りすがり at 2015年09月08日 03:09
 本項はアメリカの保守主義に限定した話じゃないですよ。世界レベル(特に日本)のことです。アメリカ以外のどこであっても、ピューリタニズムの伝統なんかはありません。
 繰り返します。本項はアメリカの保守主義に限定した話じゃないですよ。

 あと、特に、経済面に話題をフォーカスしています。
 生活態度のことは、各国ごとの民族性に依拠するので、世界レベルでの共通性はありません。日本なら靖国だろうし、英国なら王制だろうし、フランスなら王制もフランス革命もナポレオンもあるので伝統はない。生活態度の保守性は、話の範囲外。

> あなたの言い方によると、保守主義者は倫理的に破綻した人間のゴミクズ

 そんなことはないでしょう。彼らは「国家を強固にする」という理想があるので、その理想に向かって邁進しているだけです。
 福祉費用を削って、ミサイルに費用を投入するとしても、それは、理想が違うというだけで、別に人間のゴミクズというわけではありません。
 また、国防費用を削って、福祉費用ばかりを重視しようとする人が、心優しい善人であるとは言えません。「日本に難民を移入させよう」と唱えている朝日新聞が、理想的な優しい人格者だとは言えません。下記参照。
  → http://openblog.meblog.biz/article/26189181.html

 本項は人格のことについては論じていません。あくまで(主に)経済面から、競争原理を基準として分類しています。それだけです。
Posted by 管理人 at 2015年09月08日 20:35
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。