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( ※ 本項の実際の掲載日は 2010-07-09 です。)
前項 では、バーナンキの背理法を説明するモデルとして、「冷蔵庫を押す」というモデルを示した。また、池田信夫は、これを改めて、「冷蔵庫を傾ける」というモデルを示した。
よりわかりやすいモデルを示そう。いっそう直感的で、わかりやすい。
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例1。
雪崩のモデル。
雪が積み重なる。少しずつ積み重なっても、雪崩は起こらないが、ある程度まで積み重なると、一挙に大規模な雪崩が起こる。
例2。
箱を積み重ねる。少しずつ積み重ねても、箱の柱(トーテムポール状)は崩れないが、ある程度まで積み重ねると、一挙に大規模に崩れる。
(下図)

ここで、次の対応がつく。(比喩で。)
・ 箱を積み重ねる …… 量的緩和をする
・ 箱が少し崩れる …… マイルドインフレ
・ 箱が崩れない …… 流動性の罠
・ 箱が崩れる …… ハイパーインフレ
量的緩和論者(リフレ論者)は、次のように主張する。
「箱を積み重ねれば、上の方が少し崩れるから、横で待ち受けている人が、落ちた箱を受け取れる」
現実には、次のようになる。
「ある程度までは、いくら積み重ねても、上の方は崩れないから、横で待ち受けている人は、一つも受け取れない。しかし、ある程度を越えると、全体が一挙に崩壊するから、横で待ち受けている人は、一つだけを受け取るのではなく、莫大な箱を落とされて、つぶされてしまう」
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ここでの本質的な意味は、こうだ。
「この現象は不連続である」
小さな穴のあいた器ならば、そこに水を少し入れると、水が少し漏れるようになる。水をたくさん入れると、たくさんの水が漏れるようになる。多く入れれば入れるほど、多くの水が漏れる。これは連続的な関係だ。
一方、箱を積んで柱にする場合は、まったく異なる。ある程度までは、柱はまったく崩れない。しかし、ある程度を越えると、一挙に全体が崩れる。
このように不連続的な現象がある。
にもかかわらず、「連続的になるだろう」(¶)と思い込んでいるところに、「量的緩和論者」(リフレ論者)の勘違いがある。
( ¶ 「少しずつ量的緩和を増やせば、少しずつ物価上昇が起こるだろう」という発想。)
[ 付記 ]
上記の「箱のモデル」を使えば、バーナンキの背理法は、次のような論理となる。
(i) 箱を無限に積み重ねることは不可能である。
(ii) ゆえに、箱を積み重ねれば、必ず崩れる。
(iii)ゆえに、箱を3段積み重ねれば、必ず崩れる。
《 注釈 》
(ii) では、「何段積み重ねるか」ということが、曖昧になっている。
(iii)では、その曖昧さを利用して、3段の場合に強引に当てはめている。