◆ インフレ目標の率:  nando ブログ

2008年10月16日

◆ インフレ目標の率

 インフレ目標を実施するとして、その目標となる率はどのくらいか? 2%ぐらいか? いや、2%では景気は改善しない。

 ──
    ( ※ 本項の実際の掲載日は 2010-07-16 です。)


 インフレ目標の目標値として、2%ぐらいの物価上昇率が適切だ、という見解がある。たとえば、下記。
  → 2%のインフレターゲットが必要=みんなの党

 しかし、2%の物価上昇率は、経済の拡大を意味せず、停滞はまたは縮小を意味する。これでは、「インフレ目標」ではなく、「デフレ目標」だ。

 ──

 まず、経験則を知るために、歴史を見よう。
 物価上昇率が2%〜3%の場合、どうなるか? 経済は慢性的に(弱い)不況となる。そのことは、欧州の歴史が示している。日本ほどひどい(強い)不況ではないが、慢性的に(弱い)不況となっている。失業率は 10%ぐらいが珍しくなく、若者に限っては 40% ぐらいの失業率である国もある。

 つまり、物価上昇率が2%〜3%の場合、それは、「インフレ」を目標とせず、「デフレ」を目標としている。「インフレ目標」政策ではなく、「デフレ目標政策」と呼ぶべきだ。(みんなの党の政策もそうだ。)
 以上は、経験的・歴史的に、判明している事実だ。

 ──

 次に、理論的に見よう。
 物価上昇率が2%〜3%の場合、インフレにならないのは、なぜだろうか? このことは、私が前に説明した。
 「生産性の向上率が 2%〜3% ぐらいあるので、その分、失業増加の圧力となる」

 該当箇所を引用すると、次の通り。
  生産性の向上があると、失業者が発生するので、その失業者を吸収するために、経済全体が拡大しなくてはならない。
 具体的な数値を使って例示しよう。国全体で生産性が 2.0% 向上したとする。これにともなって、労働力が 2.0% 余る。
 ( → 需要統御理論 該当箇所
 細かい点は別として、モデル的にはこれでわかりやすく説明される。
 たとえば、靴を毎日 100個生産していた工場が、生産性の向上で、靴を毎日 102個生産できるようになる。ここで、需要が伸びればいいが、人間の足の数は変わらないから、毎日 100個生産すれば十分だ。そこで、生産性の向上の分だけ、労働者を削減する。そのせいで、この向上では、労働者が 2% 解雇される。こういうことが日本中で起こると、新たに失業者が 2% 発生する。
 こうして、生産性向上に応じて、失業増加の圧力が生じる。

 ──

 以上は、量的な例だが、価格的にも当てはまる。
 たとえば、パソコンの性能が毎年いくらか上昇するのに応じて、旧型のパソコンは投げ売りされて、価格が下落する。パソコンの性能が質的に向上するのに応じて、旧来のパソコンの価格は低下する。こうして、性能向上に応じて、価格下落の圧力が生じる。

 ──

 要するに、生産数量が増えたり、性能がアップしたりして、生産性が向上すれば向上するほど、数的にも質的にもデフレの圧力が強まる。
 だから、それを打ち消す分、インフレの圧力が必要だ。それが物価上昇の圧力だ。

 生産性の向上によるデフレ圧力が年2〜3%あるのだから、それを打ち消すには、物価上昇率が2〜3%は必要だ。
 物価上昇率が2〜3%である場合、経済はほぼ安定する。不況なら不況のまま安定する。
 一方、物価上昇率が1〜2% ならば、生産性向上によるデフレの圧力に負けてしまって、状況は悪化する。これは長年の欧州の状況だ。(物価上昇率はプラスであるにもかかわらず、すごく高い失業率をいつまでも続けている。)
 他方、物価上昇率が 3% 以上ならば、生産性向上によるデフレの圧力を打ち消して、なおかつインフレ圧力が生じる。インフレ傾向となる。ただし、3% ぐらいでは、ほとんど変わらないだろう。4〜5%ぐらいの物価上昇率で、ようやく景気回復の圧力となるだろう。

 ──

 結論。

 物価上昇率は、生産性向上率と、比較されるべきだ。次のように。
  ・ 物価上昇率 < 生産性向上率 ………… 景気悪化
  ・ 物価上昇率 ≒ 生産性向上率 ………… 景気安定
  ・ 物価上昇率 > 生産性向上率 ………… 景気改善


 というわけで、「物価上昇率を2%に」というのは、インフレ目標ではないのだ。「デフレ目標」と言いたいぐらいだ。

( ※ 物価上昇率が1%なら、物価上昇率がプラスになるという点では、デフレではない。だが、高い失業率や高い倒産率という点では、不況と言える。「デフレ目標」という言葉は変なので、「不況目標」と呼ぶべきかも。いや、プラスの物価上昇率と、不況状態の併存という意味では、「スタグフレーション」と言えるから、「スタグフレーション目標」と言うべきか。みんなの党の政策は、「スタグフレーション目標」である! )
 


 [ 参考 ]
 関連情報として、次の報道もある。
  →  菅直人:「1─2%」を実質的な目標にすべきと発言 (4月20日)

 インフレ目標への否定的な見解もある。
  → インフレターゲットで日本経済は救えない ( Richard Katz )
 結論は私と同様。
 「日本政府は資金を直接消費者の手に渡す財政政策を使って消費拡大を図るべきである。」
 
posted by 管理人 at 20:35 | Comment(2) | 経済 このエントリーをはてなブックマークに追加 
この記事へのコメント
yahooのページはもう消えてます。下記の東洋経済のサイトの方をどうぞ。

http://www.toyokeizai.net/business/society/detail/AC/afe191f545b117c510ddf3d587d023b9/
Posted by jiangmin at 2010年07月18日 06:36
 ご連絡ありがとうございます。修正しました。
Posted by 管理人 at 2010年07月18日 07:20
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