◆ 財政赤字は 若い世代へのツケか?:  nando ブログ

2010年06月30日

◆ 財政赤字は 若い世代へのツケか?

 財政赤字は若い世代へのツケだから、そんなことをしてはいけない、という主張がある。これは正しいか?

 ──
    ( ※ 本項の実際の掲載日は 2010-07-19 です。)


 「財政赤字は若い世代へのツケだ」
 という主張がある。これをもって、
 「だから財政赤字を拡大してはいけない」
 と結論しているようだ。(自分の借金を他人に負わせるから。)

 しかし、論理的に言えば、これは成立しない。
 
 ──

 論理的に言えば、次のことが成立する。
 「借金を次の世代にツケ回ししても、次の世代はそのまた次の世代にツケ回しをすることができて、永遠のツケ回しが可能となる」
 ゆえに、次世代へのツケ回しは、ちっとも問題ではないわけだ。

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 そもそも、あらゆる国において、財政赤字は存在し続けた。財政が黒字またはトントンであった国など、歴史的に見て、たぶん一つも存在しないだろう。(近代以降では。)
 これは当然の話で、現在の 1億円は、ものすごい価値をもつが、同じ1億円は、未来においてはたいした価値はないからだ。(たとえ利子を払うとしても。)
 たとえば、戦争直後の日本人の生産力は、きわめて貧しかった。人間一人が自動車を月に1台も生産することもできなかった。しかし現代の人間は、自動車を何台も生産できるぐらいの能力がある。(機械を使うことで。) 同様のことは、農業生産を始め、あらゆることについて成立する。
 したがって、いくらかの借金をすることは、全然問題ではないわけだ。
 「子孫にツケ回しをする」
 ということは、ある範囲内であれば、咎められることなく、まったく許容されるわけだ。

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 このように、経済成長があるおかげで、ツケ回しは可能となる。正確に言えば、次の二点が可能となる。
  ・ ある世代は、ツケを次世代に回せる。
  ・ 次世代は、先代から受け継いだツケに、自分のツケを上乗せして、
   その次の世代にツケ回しできる。


 話がうますぎるようだが、これは実際に成立するのだ。「ある範囲まで」という条件のもとで。

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 問題は、「ある範囲まで」という条件だ。その範囲までは、ツケ回しができる。しかし、その範囲を越えると、ツケ回しができなくなる。(無限大の巨額まで借金が可能になるわけではない。)
 だから、問題は、その範囲だ。どのくらいまで、財政赤字を拡大できるか?

 ここまで考えると、この問題は、すでに次の項目で扱ったとわかる。
  → ドーマーの定理ドーマーの定理の否定

 つまり、借金の利子払いが暴走しなくなる範囲で、可能となる。正確に言えば、借金の利払いが、生産性の向上を上回らない範囲で、可能となる。(……原則としては。)

 つまり、「ツケ回しをしてはいけない」のではない。「ツケ回しの額があまりにも増えると、もはやツケ回しができなくなる(破綻してしまう)から、ツケ回しの額を増やしすぎてはいけない」のである。ツケ回しそのものがいけないわけではない。

 ── 

 結局、財政赤字を拡大してはいけないのは、若い世代にツケ回しをするからではない。近い未来に、財政が破綻する危険があるからだ。
 そして、財政が破綻することの被害を受けるのは、近い未来において生きている国民全体である。それは、数年後(〜 十年後)に死んでしまう人々を除いた全員だ。国民の9割以上が該当する。
 つまり、財政赤字を拡大してはいけないのは、息子や娘が損をするからではなくて、いま生きているわれわれ自身の生活が将来的に崩壊してしまうからなのだ。
 ここのところを勘違いしてはいけない。
 
 ──

 なお、次の項目も参照。
  → 日本の財政破綻財政破綻は必然財政破綻のポイント

 これらの項目には、大切なことが記してある。
 「財政破綻は、徐々に危険状態に踏み込むのではなく、あるとき突発的に、財政破綻が起こる」

 つまり、「今年は全然平気だったら、来年もきっと平気さ」ということは、成立しない。

 また、次のことも記してある。
 「財政破綻は、不況のときには起こりにくい。不況が終わったあとで、ものすごい物価上昇の起こるインフレ(またはスタグフレーション)という形で起こる」


( ※ 実例としては、アルゼンチンの例がある。日本の石油ショック時代のような高率な物価上昇が、10年ぐらい続いた。通貨も下落した。そのせいで、国民生活は、かなり貧しくなった。ただし、大幅な賃下げの効果で、失業そのものは減った。)

 ──

 ともあれ、財政赤字の問題を、「他人の問題」として考えてはいけない。それは「他人にツケ回しをするからいけない」という倫理の問題ではない。「自分の人生が破滅するから、自分自身のために、借金をしてはいけない」ということだ。
 財政赤字の問題を、「若い世代にツケ回しをしてはいけない」と述べる人は、自分が死んだずっと後まで、財政破綻は起こらない、と思っているのだろう。
 違う。財政破綻は、もはや目と鼻の先にまで近づいているのだ。それは、遠い将来(自分の死後)の問題ではなく、近い未来の問題なのだ。
 それは、サラ金に似ている。サラ金から金を借りたあと、「借金は50年後の孫に請求してくれ」と告げても、サラ金は待ってくれない。あなたの人生を破滅させる。そういうことなのだ。「若い世代にツケ回しをするからいけない」と考えている人々は、あまりにも甘すぎる。

( ※ たとえば、2010-07-19 の読売夕刊コラムの筆者は、そう考えている。)


 
 [ 付記 ]
 最近、増税について話がかまびすしいが、「借金を若い世代にツケ回しするから、今の世代が増税でまかなうべきだ」という主張は、あまりにもトンチンカンすぎるのだ。「財政再建のために増税を」という発想は、最初から最後まで、すべて間違っている。増税をすれば、かえって財政は悪化してしまうのだ。
  → 増税で財政再建?財政再建の過去例
 
 
posted by 管理人 at 22:34 | Comment(0) | 経済 このエントリーをはてなブックマークに追加 
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