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この問題は「少子化」社会という話題でしばしば述べられるが、本格的に調査した書籍がある。下記。
→ 単身急増社会の衝撃(藤森克彦)
朝日新聞・書評欄( 2010-08-01 )にも紹介がある。今から 20年後の 2030年の予想。(人口統計からの綿密な予想。)
・ 50〜60大の男性の4人に1人が一人暮らし。
・ 一生独身の男性は 29%、同・女性は 23%。
家族をもたず、独身の通行年が急増。問題は貧困、介護、孤立。
独身者は低所得のケースが多く、失業車や非正規労働者が多い。無年金者も多い。
これまでは家族や企業が面倒を見てくれるのを頼っていたが、もう頼りにならない。対策は? 著者の案はこうだ。
・ 最低賃金の引き上げ
・ 給付付き税額控除
・ ベーシックインカム
以上だと、財源が問題となる。Amazon の書評欄では、「日本は世界の現状からみても超低負担低福祉だ」ということであるから、国民の負担増を求めていることになる。具体手的に言えば、消費税の増税だろう。菅直人の言うように、「増税で介護」ということになる。
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最後の結論の「増税で介護」について言おう。
これは、景気対策としては全然ダメだが、国家の方針としては「あり」だろう。高福祉高負担に近づくわけ。というか、「超低負担低福祉」から「中負担中福祉」への移行」だ。
だが、私なりに見解を述べれば、これは物事の本質を突いていない。
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若者の非婚率が高まっているのは、なぜか? 言うまでもない。不況が原因だ。不況のせいで、貧しい若者が増えて、結婚したくても出来ないでいるのだ。結婚すれば、子供を生んで育てることになるが、子供を生んで育てることができない。特に、女性は、産休を取って子育てをする余裕がない。それがわかっているから、男としても(産休中の)妻子を養う金がなくて、結婚できない。そして、男女とも、子供を生まずにいるから、将来的には子供に面倒を見てもらうことができない。
この根源は、不況である。とすれば、正しい対策は、高福祉なんかではない。貧しい人々に高い給付を与えることではない。貧しい人々そのものをなくすことだ。
それには失業率を引き下げることが大切だ。そのためには不況を解決すること(景気を回復すること)が大切だ。これこそが根源なのである。
病気の人に高額の薬やベッドや料理を与えればいいのではない。病気そのものを治すように仕向けることが大切だ。高額の薬を与えても、病人に冷水をぶっかけていては、何にもならない。何よりも不況を解決することが大切なのだ。
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この点で、上記の本は、社会福祉の議論にはなっていても、経済学の議論にはなっていない。
もっとも、そのことで、本書の重要性が低くなるわけではない。とはいえ、経済が基盤だということは、はっきりとわきまえておいた方がいい。マルクスが述べたように、経済は社会構造の基盤なのである。このことを理解しないと、マルクスよりもはるかに遅れていることになる。
( ※ ついでだが、第二次世界大戦だって、その原因は経済だった。経済はそれほどにも多大な影響を及ぼすのだ。)
[ 付記 ]
池田信夫は、「高齢者から若者への所得移転がある」としばしば語る。しかし、若者だって、将来的には高齢者になるのだし、そのときには、悲惨なことになるのだ。
「若者は所得を奪われているから、若者に所得を」
というのが池田信夫の発想だが、そういうふうに若者と高齢者を(二つの人種のように)分断して考える発想に比べれば、本項で紹介した発想の方がまともだろう。つまり、「若者も将来的には高齢者になる」という発想だ。
若者と高齢者は別の人間ではなく、同じ人間の時期が違っているだけだ。そして、「若いときには金を与えて、高齢者になったら金をもらう」という社会保障制度は、人間としてはきわめて賢明なのだ。アリとキリギリスふう。
池田信夫みたいに、「若いときには金をたっぷりもらって、それを使い切ってしまい、高齢者になったら、金がなくなって餓死すればいい」という発想は、市場原理主義者にはありがちだが、イカレているとしか思えない。
(「優勝劣敗」という発想に従えば、「役立たずの老人なんかくたばってしまえ」ということなのだろう。まったく、市場原理主義者というのは、度しがたい。)