ここで、中国問題の本質を考えてみる。問題の背後には深い本質がある。
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中国はたしかに強圧的である。では、なぜ?
いきなり結論を言うと、その背景には、中国の国家エゴイズムがある。
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話は飛ぶが、中国の「通貨レート維持」という問題を考えよう。ここでも、通貨レートを維持しようとすることには、国家エゴイズムが背景にある。
国家エゴイズムにおける「エゴイズム」とは、「自分だけよければいい」という発想だ。
さて。こういうふうに「自分だけよければいい」という発想を各国がすべて取ると、合成の誤謬ふうになって、世界状況は悪化する。
そこで、国家エゴイズムを抑制するという方針が取られるようになった。その一例は、WTOだ。(たがいに関税を下げる、というふうな。)
また、国連という場もある。
そして、このような国際協調からはずれる国があれば、その国は、協調からつまはじきにされて、かえって損をする、……というのが、通例だった。
ところが、中国の場合、かつては「途上国だから」という名目で、大甘の査定が通った。関税障壁や非関税障壁があっても、中国は「最恵国待遇」を受け取った。
特に、通貨レートに介入して、通貨レートを過剰に引き下げるということをしても、それでもまだ、「最恵国待遇」を受け取った。途上国の段階を抜け出して、世界最大の貿易黒字国になっても、いまだに途上国並みの大甘の条件を受けている。
比喩的に言えば、巨大な肉体を備えたガキであるジャイアンが、赤ん坊並みの自由放縦放縦な権利を与えられている。
こうして、「巨大な肉体と自由な権利」という形で、国家エゴイズムが生じる。
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歴史的に言えば、国家エゴイズムは、実は、今に始まったことではない。20世紀半ばまでは世界の常識であった。列強は侵略をしたし、アジアの途上国は侵略を受けた。そしてその結果、第二次世界大戦が起こり、世界は破壊された。
そして、これを教訓として、国家エゴイズムへの反省が起こった。世界各国は、国家エゴイズムを抑制する方向に進んだ。
ところが中国は違った。中国は現在の大国のなかで唯一、侵略を受けた国だ。そのせいで、「侵略するのはいけないことだ」ということは、自己反省としては起こらず、「日本への敵視」という形の他者攻撃として起こった。
他の国は、
「侵略はいけないことだ。国家エゴイズムはいけないことだ」
と反省したのだが、中国は、
「侵略はいけないことだ。だから自国は正しい。侵略に対抗する国家エゴイズムは正しい」
というふうに居直った。あげく、
「祖国の敵であった日本をやっつけろ」
というふうに威張り散らして攻撃的になった。(反省とは対極的。)
ここでは、「国家エゴイズムの反省」もないし、「国際協調の重視」もない。あるのは、「偉大なる中国を拡大せよ」という覇権主義(国家エゴイズム)だ。
要するに、他の国は、第二次大戦以降、平和と国際協調という基準を取るようになったのだが、中国はいまだに第二次大戦以前の、国家エゴイズムという基準を取っているのだ。国家方針が1世紀遅れている。
ここに物事の本質がある。
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ここまで考えれば、われわれがどうするべきかもわかる。それは、
「国家エゴイズムは駄目だ」
と諭して、
「国家エゴイズムを抑制した国際協調が大切なのだ」
と教えることだ。
ただし、である。そう教えても、教えるだけでは、理解できない。相手はガキだからだ。頭はジャイアン並み(ジャイアント・パンダ並み?)であるから、人間的な理念は理解できない。
その場合には? 尻をひっぱたいて、体罰による痛みを与えるしかない。つまり、「エゴイズムをつらぬくと、痛い目に遭いますよ」ということを、身をもって知らせるしかない。
では、その方法は?
一つは、戦争だが、それは過激すぎる。
となると、現実的なのは、経済制裁だ。
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領土問題であれ何であれ、その根源には、国家エゴイズムがある。そして、その対策は、真っ正面から論じ合うことではなく、相手に経済制裁を加えることだ。それも、一国だけでなく、国際協調の形で。
特に、「通貨レートの固定相場制」というのは、国際基準を無視した、ひどい方針なのだから、これについては、明白な制裁を与えるべきだ。
この件は、すでに「泉の波立ち」で何度も述べたとおり。
[ 付記1 ]
すでに「泉の波立ち」で何度も述べたことを、再論しよう。
中国への制裁としては、「中国通貨の引き下げを強要すること」だ。そのためには、「ダンピング課税」(輸入課徴金)を課すればいい。たとえば、20%。
これを、日本・米国・韓国・欧州で協調して、中国に課する。(中国が通貨レートを固定化することへの制裁として。)
→ 泉の波立ち: 9月24日 〜 9月27日
[ 付記2 ]
仮に中国が対抗して、同じ率で輸入関税を課したならば? そのときは、同率を上乗せすればいい。
さらに中国が対抗して同じ輸入関税を課したら? 同じことが繰り返されて、たがいに貿易関税が 100%を越えるようになる。最終的には、無限に高くなる。この場合、中国は、輸出入とも停止する。
中国が輸出入とも停止した場合、日本や米国は、少しは痛みが出るが、別に、たいして困らない。レア・アースだって、当面は在庫があるし、将来は米国から輸入することが可能だ。
→ 中国がレアアース輸出規制したって怖くない理由
つまり、中国の輸出入が停止することで一番困るのは中国自身。ほとんど国家は破滅するだろう。特に、バブル破裂により、途方もない破滅に至るはずだ。
一方、他の国はほとんど困らない。かえって景気がよくなりそうだ。(特に不況のときは供給過剰だから、中国からの供給が途絶えることで、国内産業は回復しそうだ。通常ならばインフレ圧力になるが、不況期にはインフレ圧力があっても構わない。不況期ならば、中国との貿易が途絶えても構わないのだ。)
[ 付記3 ]
要するに、「国際的な自由貿易」の恩恵を最も受けているのは、中国である。にもかかわらず、中国は、「国際協調」の大切さを理解していない。
そこで、「国際協調」の大切さを理解させるために、「世界貿易からのつまはじき」という状況に陥れればいいのだ。そうすれば、初めて、「相互に譲り合うことの大切さ」を理解するようになる。
そして、世界がそのお仕置きをするまでは、中国は覇権主義を止めないだろう。南シナ海でもどこでも、攻撃をしかけてくるだろう。また、日本に対しても、「謝れ」とばかり主張する敵視政策をするだろう。あまりにも幼稚だ。
こういう幼稚な連中には、どうしても、お仕置きをする必要がある。「月にかわってお仕置きよ!」
[ 余談 ]
中国は幼稚だが、中国人が人種的に幼稚なのではないので、間違えないように。台湾は世界最大の親日国だ。
( ※ つまり、同じ華人だって、本土でなくて台湾に住んでいる人々は、別なのだ。その点、「中国人である」というだけで中国人嫌いになる2ちゃんねらーは、中国本土の連中と同レベルだ。)
【 追記 】
読者からの質問に答える。
《 質問 》
> 尖閣諸島問題に於ける中国への対抗策について、「中国通貨の切り上げの国際協調」は良い案と思いますが、仕掛けた場合の中国の反応が恐ろしくて日本政府は出来ないでしょう。
《 回答 》
米国内部で、「中国通貨に課徴金を」という声が盛り上がっている。それを後押しするだけでいいはずだ。日本が主導しなくても、米国の一部の議員の声を拡大するだけでいい。
たとえば、その人を日本に招くとか。その上で、米国に協調を持ちかけるとか。米国にとって得する話なんだから、乗ると思う。もしそうすれば、莫大な対中貿易赤字を解消させることができる。米国の不況もかなり解決する。そう教えてあげればいい。
何しろ米国は世界最大の対中貿易赤字国なんだから。
ま、日本がびびっているなら、米国を矢面に立てればいい。 (^^);
とにかく、日本単独では駄目、というのがポイント。日本が主導しても、実施国が世界各国であれば、日本だけが恨まれることはない。そもそも、すでに恨まれている。これ以上恨まれたって、どうってことないね。
なお、中国がやたらと「侵略を謝れ」と言ったら、日本は「そっちが先に元寇を謝れ」と言い返すべきだ。 (^^);
《 参考 》
ジャイアンにいじめられてばかりいると、どうしようもなくなる。たまには、のび太 みたいに、「負けても喧嘩するぞ」という気概を持つべし。
→ ジャイアンに勝つ のび太 (漫画)
もっといい方法もある。ジャイアンよりも強いケンシロウ みたいな友人を連れてきて、彼の後ろ盾で、彼といっしょにジャイアンと戦う。
ケンシロウ のかわりに、セーラームーンでもいいけど。 (^^);
言われてみれば…岸田秀の日本の戦後のトラウマ論を
読んだ時みたいな色々と納得でき、理解できる感覚。
こういうのを売れる本に仕立てて売りさばいて、
もうちょっと日本全土に影響力を発揮してくださると
助かるのですが
米国の失業率10パーセント
EU平均の失業率10パーセント
中国の失業率未公表(10パーセントは越えてる?
失業率から見ると日本経済問題なし。と思える
のに為替介入したために元問題での発言資格を
失ったと感じる
一方、中国の方は、20〜25%と見込まれる。
だから、日本の方は全然問題がない、というふうに、(中国の通貨切り上げを主張する)米国の側が説明しています。
ごく稀に、小規模に介入することがあっても、日本は変動相場制という原則を守っています。
>台湾は世界最大の親日国だ。
尖閣諸島には台湾も領有権を主張していて、大陸中国と同調している動きを見せているのにですか?
>こうしてすべては物と金のレベルの問題となる。
なりませんよ。ケ小平時代の中国国家発展戦略で提唱された「戦略的辺彊」から30年近く、戦略的に領土拡大に動いているのですから。
>「月にかわってお仕置きよ!」
自分がお仕置きされた方が良いでしょう。
これは目から金属製の鱗が落ちたような気分でした。
現在の無節操な領土拡張要求で、中国は実質的に「国民を賄う充分な(天然)資源を持たない」国であることを自ら暴露している訳で(巨大市場?では中国国民の『売り』とはいったいなんだ?安価な労働力で伸びてきた所が、次は何を求心力にするのか)。
また、もし戦争でも起きれば「自由貿易の恩恵」で手に入れた世界各国の資源は当然そのままにされる事はないでしょう。
南堂様の今回の論説を読んでしみじみ思ったのですが、既に中国はかなり強度の自己矛盾を起こしておりますね。
一方、台湾は今回のゴタゴタの直後、運動家が尖閣に向かいつつ、日本側の呼びかけに無言で帰国・・・当然、駆け引きとしての要素があるでしょうが行動自体は大人ですね。