2010年11月24日

◆ 欧州共通通貨 (まとめ)

 欧州共通通貨(または通貨統合)の問題点については、「泉の波立ち」で何度も述べてきた。そこで、これらを本項でまとめて示そう。

 ──
  
 まず、基本は、次のことだ。
 「各国ごとに所得水準や経済成長率は異なる。共通通貨の導入当初は、各国ごとに所得水準が表示されて安定するが、その後、国ごとの経済成長の差にともなって、経済状態が変わる。経済の強い国と弱い国とが長じる。その場合、経済の弱い国は、通貨レートを下げて、賃金水準を下げる必要がある。さもないと、経済が弱体化したまま、企業の経営が悪化する。すると、失業が増える。つまり、経済状況が悪化したときは、賃下げか失業か、二者択一だ。通貨レートを下げれば、賃下げにより、経済状態を安定させることができる。通貨レートを下げることができなければ、失業が生じて、経済状態が最悪のデフレとなる。……ゆえに、経済が弱体化した国では、通貨レートの切り下げが必須だ。そのためには、欧州共通通貨という制度から離脱する必要がある」


 本来ならば、共通通貨を導入するためには、経済状況や経済体制も共通化する必要がある。つまり、税制や財政も共通にして、経済状態を共通にする必要がある。なのに、経済そのものを共通化せず、通貨だけを共通化すれば、歪みが生じる。その歪みは、不況という状況で、一挙に噴出するのだ。
 だから、不況の場面にも対処するには、共通通貨からもともと離脱している必要がある。最悪でも、不況になった時点で、共通通貨から離脱するべきだ。(小さな不況ならば、不況脱出策で済むが、大きな不況だと、共通通貨から離脱しない限り、不況脱出そのものが不可能となる。)

 以上が基本だ。
 この方針で、これまでも何度も述べてきた。それらを紹介するため、一部抜粋の形で拾い上げよう。

( ※ 出所は「泉の波立ち」の過去ログ。「欧州共通通貨」や「通貨統合」という用語で検索できる。)
( ※ それぞれの箇所では、冒頭の日付にリンクがある。リンクをクリックすれば、該当箇所に飛べる。)
  



2002年1月02日c
 ユーロ(欧州の通貨統合)発足。これは成功するだろうか?
 「失敗する」という根拠は……ある。景気調整の難しさだ。

2002年9月23日b
 「通貨統合」は、たしかに、メリットはある。しかし、「金融政策によるマクロ調整機能を失う」という大きなデメリットもある。このデメリットが、大量の失業者の発生だ。「通貨統合」を実施している限り、この「大量の失業者」という問題は、根本的に解決できない、と思える。
 経済格差があるという現実を無視して、通貨だけを強引に統合すれば、歪みが出るはずだ。それが「大量の失業者」である。
 どうしても「通貨統合」をするのだとしても、経済規模に即した形にするべきだろう。つまり、所得レベル別に、「ドイツとスイスとオーストリア」「イギリスとフランスとイタリア」「スペインとポルトガル」というふうに、個別の小グループに分ける。
 「経済における欧州統合」というのは、妄想だ、と私は思う。異なった現状に対して、無理に統一した政策を当てはめれば、かえって現状への対応が不可能になるだけだ。
 必要なのは、通貨統合や金融政策の統合ではない。「市場統合」だけだ。これだけを進めればよい。どうしても通貨統合を実施するのであれば、先進国では、大量の失業状態(膨大な無駄)や、賃金の低下を、甘受するしかない。
 通貨は、為替レートを通じて、異なる制度を「翻訳」するような機能がある。その機能によって、異なる制度がスムーズにつながる。ここで、この「翻訳」機能を廃止して、いきなり統合すれば、とんでもない混乱が起こるのは自明だ。

2004年11月27日
 欧州共通通貨の導入は、問題の根源ではないが、問題の解決手段を奪ってしまっているのだ。

9月30日
所得水準ごとに、異なる通貨政策を取る必要がある。
  ・ 所得水準の高い国 …… 低い成長率。低い金利で、低い物価上昇率。
  ・ 所得水準の低い国 …… 高い成長率。高い金利で、高い物価上昇率。
 この二通りだ。そして、この二通りを取らない場合は、折衷的な政策となる。その場合、先進国では、こうなる。── 「所得水準の高い国 …… 高めの成長率を想定して、高めの金利と財政緊縮。」
 この場合、経済は必然的に、緊縮政策が続く。当然、景気後退が長く続き、失業率は高くなる。その一方で、所得水準の低い国では、低めの金利と高すぎる成長率が続く。それは、(所得水準の低い国の)企業にとっては好ましいことだが、(所得水準の低い国の)国民にとってはつらいことだ。いっぱい働いても、物価上昇のせいで、生活が苦しくなるからだ。

1月12日
 要するに、「共通通貨」というのは、「完全な固定レート制」とほとんど同じなのである。

3月04日b
 追加統合について、人々は経済学的な理解もなく、単に「統合すればうまく行くだろう」というふうに夢見ているだけだ。「世界政府を作るための一里塚」というふうに。夢想主義。   (^^);

 現実には、統合には、メリットもデメリットもある。特に問題なのは、「貨幣レートの調整ができなくなる」という点だ。本来ならば貨幣レートの調整で国家経済を最適に運営できるはずなのに、それができなくなる。「貨幣レートの調整」という非常に重要な経済手段を失ってしまう。

4月28日
 アイスランドで経済が破綻して、通貨が暴落している。それで国民が大騒ぎで、選挙の争点となっているという。通貨クローネが暴落したから、欧州共通通貨ユーロを採用しよう、という声が高まっているという。
 しかし、自国通貨が暴落しなければ、どうなるか? 日本で言えば、日本経済が弱体化したときに、円レートが下がらなければ、どうなるか? こうなる。
  ・ 円安にならないので、輸出が増えない。輸入は増える。
  ・ そのせいで、国全体で失業が大幅増加。

2月20日b
 クルーグマンがユーロ(欧州共通通貨)を批判している。
   ……(略)……
 以上がクルーグマンの趣旨。これは、私が前に述べたことと、ほぼ同じである。

5月09日
 要するに、国ごとに成長の違いがあるのだから、国ごとに通貨も異なるべきなのだ。なのに、同一の通貨を使えば、国ごとの成長の違いをうまく吸収できない。歪みが溜まる。そして、そのひずみが極限に達したとき、経済危機が起こる。(地震の発生みたいなものだ。)

 私は何度も述べたが、欧州共通通貨(ユーロ)という理念そのものが、経済学的には、根本的に狂っている。
 欧州が本当に、「欧州共同体」という理念に従おうとするのであれば、まずは、欧州の言語を統一するべきだ。それが先決となる。その後に、社会保障や税制を共通化し、賃金水準を統一するべきだ。ドイツもポーランドも賃金水準を統一するべきだ。つまり、ドイツやフランスからポーランドやスロバキアなどに大幅に富を移転するべきだ。そして、そのように欧州が一体化したあとで、ようやく、欧州共通通貨が導入される。……これならば、問題は起こらない。
 しかし、現実には経済がバラバラなのに、通貨だけを共通にすれば、現実と理念との食い違いから、歪みが生じる。当然、経済危機が起こる。経済危機は、起こるべくして起こったのだ。

 なお、欧州共通通貨(ユーロ)というものは、導入した時点では、問題は起こらない。各国の賃金水準の違いに応じて、別々の賃金水準がユーロ表示で実現する。
 しかし、その後、経済成長に差が出る。ある国は高い経済成長をなし、ある国は低い経済成長をなす。こうなると、以前のままの賃金水準では、食い違いが生じてしまう。これを何とか解決するには、高い物価上昇が起こればいいのだが、現実には、物価上昇を避ける経済政策が取られている。となると、食い違いを自然解消する可能性もなくなる。

 失業問題を解決するには、需要統御理論の方法を使えばいい。では、フランスの失業問題を解決するにも、そうだろうか? 需要統御理論の方法を使えば、それで本当に片付くだろうか?
 実は、日本や米国なら大丈夫だが、(フランスを含む)欧州先進国では大丈夫ではない。なぜなら、欧州には、「欧州共通通貨制度」というものがあるので、需要統御理論の方法を使えないのだ。つまり、通貨が固定されているので、政策の選択肢が限られてしまい、状況に応じた最適の選択肢を取れない。( → 4月13日

5月18日b
 ここで、世間より先を行く私は、新たなテーマを出そう。こうだ。
 「ギリシアがユーロを離脱するには、どういる手順で離脱するべきか?」

 この問題が生じる。そこで、私は世間よりも一足先に、以下のように答えよう。
 ( ※ 以下、ユーロを離脱するための手順を示す。省略。)




 以上のほか、nando ブログでも、次の項目がある。

リスボン条約とは (その後半)
 「経済的な統一政策を取るということは、経済的な可変政策を取れる自由度をなくすことだ」
 この意味で、統一通貨という政策は、よろしくない。むしろ、次の政策が好ましい。
 「同じレベルの所得をもつ国家同士でのみ、共通通貨をもつ」
 
アイルランドと法人税
 アイルランドでは、欧州共通通貨を採用している。そのせいで、通貨レートの変動ができない。
    ……
 アイルランドの場合には、「法人税の引き下げ」は、現状で有効かもしれない。つまり、次の方策だ。
  ・ 法人税をさらに引き下げる。ゼロにしてもいい。(企業減税)
  ・ その分、所得税や消費税を引き上げる。(個人増税)

 こうすれば、実質賃金が引き下げられたのと同様の効果がある。つまり、通貨レート引き下げと同様の効果がある。
 ただし、それが有効だとしても、それは不況期に限った話だ。

 以上はいずれも、一部抜粋である。詳しくは、リンク先を参照。
 
 
posted by 管理人 at 19:18 | Comment(0) | 経済
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