◆ 歴史的な分水嶺:  nando ブログ

2011年11月22日

◆ 歴史的な分水嶺

 歴史学者のポール・ケネディが、大局的な視点から、現在という時点を「歴史的な分水嶺」と見なして評論している。これについて私なりに見解を示す。

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 現代は「IT革命の時代だ」と言われて、「歴史的な分水嶺だ」と見なす考え方がある。いかにも現代的な発想だが、同時に、軽薄な発想でもある。
 こうした浮かれた風潮のなかで、歴史学者のポール・ケネディが、大局的な視点から、現在という時点を「歴史的な分水嶺」と見なして評論している。(読売新聞・朝刊・1面 2011-11-21 )
 趣旨は次の通り。

 (1) コロンブス、グーテンベルク、蒸気機関などは、歴史の大転換をなした。
 (2) 同様に、第一次大戦のあとで、第二次大戦の準備がなされていた。しかしながら当時の人々は、将来の世界大戦やホロコーストを予想していなかった。
 (3) 現在でも、歴史的な分水嶺と見なせる点はいくつかある。
  (a)準備通貨としてのドルの位置。ユーロや人民元や円などに地位を浸食されつつある。
  (b)欧州共通通貨ユーロの不成功。解決策が見当たらない。
  (c)東・南アジアにおける軍備競争。
  (d)国連の衰退。拒否権による機能マヒ。


 歴史学者の見解として、尊重するにたる見解だ。こういう新たな視点を提供してくれることには、敬意を払いたい。毎日の新しい情報ばかりに追われている人々に、百年単位の視点を提供してくれることは、貴重だ。

 ──

 ただし、ここで新たな視点を提供されたからには、ここを出発点として、さらなる議論を深めるべきだろう。そこで、この土俵の上で、私なりの見解を示したい。引用した上で、コメントする。

 (1) コロンブス、グーテンベルク、蒸気機関などは、歴史の大転換をなした。


 この話は、重要だ。私も興味を持っていた。
 「人類の三大発明」というものがあり、それは、火薬・羅針盤・活版印刷術だ。このうち、最後のものが、グーテンベルクだ。コロンブスは、羅針盤と関係する。火薬は、欧州のアジア・アフリカ侵略と関係する。
 この件は、いつかまた論じることにしよう。

 (2) 同様に、第一次大戦のあとで、第二次大戦の準備がなされていた。しかしながら当時の人々は、将来の世界大戦やホロコーストを予想していなかった。

 
 大切なものが一つ抜けている。「原爆による大量虐殺」と「核兵器の軍拡競争」だ。

 (a)準備通貨としてのドルの位置。ユーロや人民元や円などに地位を浸食されつつある。


 ドルの位置が低下するのは、ドルの経済力が相対的に弱体化しているからだ。それhせかいかっこくの経済力が拡大しているからだ。それは世界全体が経済成長しているからだ。……となれば、当り前のことだとわかる。もともとドルの1強体制が不自然だったのだ。
 ただ、歴史的には、次の意味がある。
 「ソ連崩壊のあとで、『米国の1極集中』という見解が広まったが、そんな見解はもはや過去の遺物になった」
 90年代には「世界は米国を中心に回る」と見られたが、そういう見解はもはや葬り去られたのだ。あの当時の大騒ぎは、今にして思えば、「なあんだ、馬鹿馬鹿しい」と思えるぐらいだ。
 結局、世界を動かすものは、軍事力ではなく、経済力なのである。その経済力のてんでは、米国の位置はどんどん低下しつつある。その理由の一つは、米国の過剰な軍事支出である。ここには歴史の皮肉がある。そこに着目するといい。

 (b)欧州共通通貨ユーロの不成功。解決策が見当たらない。


 もともと間違った夢を見ていただけのことだ。不可能な夢が破れて、現実に戻りつつある、というだけのことだ。「解決策が見当たらない」というのは、「不可能な夢を実現するための方法が見つからない」というだけのことだ。
 とすれば、取るべき策は、「夢を実現する方法を探すこと」ではなくて、「不可能な夢を捨てること」である。この点では、ポール・ケネディもまた、夢から覚めずにいる。情けないことだ。
( ※ 欧州共通通貨が根源的に間違っている、というてんについては、声れまでにも何度も示したので、そちらの項目を参照。)

 (c)東・南アジアにおける軍備競争。

 別に騒ぐほどのことじゃない。たしかに中国の軍事力は脅威だが、それは今さら論じても仕方ない。ロシアの軍事力に比べれば、ずっと弱体な軍事力だから、たいしたことはない。アジアを支配したいアメリカが大騒ぎしているだけだろう。
 心配するべきは、中国の軍事力よりは、中国の政治体制だ。また、北朝鮮の核配備も危険だ。

 (d)国連の衰退。拒否権による機能マヒ。

 これについて一番の問題は、中国やロシアの拒否権ではなくて、パレスチナ承認などについての米国の拒否権だ。全会一致によるパレスチナ承認を、米国が独りで拒否権を使っている。
 米国のこういうイスラエル寄りの姿勢が、世界を不安定にしている。9・11事件もまた、根源には、米国の頑なな姿勢がある。
 はっきり言って、世界を不安定にさせている根源は、米国の「親ユダヤ」という姿勢だ。この点をはっきり指摘しないと、世界の不安定さを解決できない。ポール・ケネディは、物事の一番核心的な問題点を見失っている。それでは困る。
 彼は英国人なので、親米的な態度を取りがちなのだろう。しかし、人が歴史に学ぼうとするのは、なぜか? 未来の予測をするために、歴史に学ぶのではない。過去の過ちを反省して、未来では過ちを繰り返さないため、歴史に学ぶ。その際に一番大切なことは、自己反省だ。ポール・ケネディは、その自己反省が欠けている。つまり、欧州や米国の傲慢さが、世界を何度も破滅させてきた、という自己反省だ。
 こういう傲慢さに気づかないのでは、歴史学者としては物足りない。



 [ 付記 ]
 欧州の債務危機が南欧から東欧に広がってきたようだ。
  → ハンガリー支援要請
 このことからしても、欧州共通通貨の問題は、ギリシャという単独の国の問題ではなく、根源的なものだとわかる。すでに、ギリシャ、ポルトガル、アイルランド、ハンガリーが危機的状況にあり、イタリア、スペイン、フランス、オーストリア、ベルギーも危機の疑いで見られている。
  → ドイツ除くユーロ国全部危ない(J-CAST)
 


 【 関連項目 】

  → 書評ブログ「文明の歴史(銃・病原菌・鉄)」

 欧州が世界を征服できたのはなぜか、という視点から書かれた本。「欧州の優秀さ」という立場から、侵略が成功した理由を探る。
 この本の根源にあるのは、「優勝劣敗」というダーウィン的な視点だ。著者は進化論学者なので、進化論の立場から歴史を解釈するわけだ。「勝者が優秀だ」という発想で。
 しかし同じ人間(同一種)同士で「優勝劣敗」なんかを論じるのは、根本的にイカレた発想だ。たとえそれが比喩的な「優勝劣敗」だとしてもだ。
 むしろ、「平和よりも戦争を好む残虐性」に焦点を当てた方がいい。欧州人が世界を征服したのは、優秀だったからというより、残虐だったからだ。……そして、その残虐さが、アメリカやイスラエルに見て取れる。
 この本の著者(ジャレド・ダイアモンド)であれ、ポール・ケネディであれ、欧米系の人々には、白人優勢論を根底として、自己反省が欠落していることが多い。「黄色人種が負けたのは、欧州人種が劣っているからだ」というふうに、平然と見なしている人々が多い。
 そういう傲慢さ(自己反省の欠如)を、私は本項で指摘しておきたい。

  
posted by 管理人 at 19:35 | Comment(0) | 歴史 このエントリーをはてなブックマークに追加 
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