「日本では法人税率が高いから企業は外国に逃げ出す」という説がある。しかし、日本では配当率が低く、外国では配当率が高い。外国に出れば、企業に残る利益は減る。
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「外国に出れば法人税が低いから企業に有利だ」
と思っている企業経営者が多い。しかし、日本では配当率が低く、外国では配当率が高い。日本企業の配当率はごく低いが、外国企業の配当率は 10%ぐらいが多く、20%ぐらいになるのもざらだ。40%を配当することもある。(利益に対して。)
とすれば、法人税率が日本ではいくらか高いとしても、配当との合算では、企業が払う金は少なくなる。つまり、内部に残る金は多くなる。
だから、「外国に出れば法人税が低いから企業に有利だ」と思って、外国に出れば、「当てはずれ」になるわけだ。
「利益がいっぱい残るかと思ったら、国には金を取られないかわりに、株主に金をいっぱい取られてしまった。結果的に、企業に残る金は、かえって減ってしまった。そのせいで、社長であるおれの取り分も、かえって減ってしまった。悔しい!」
というふうに。
欲張り婆さんが損をする、という「舌切り雀」みたいな話。
[ 付記 ]
日本では配当課税が極端に低い。「その分、企業は配当を削れる」という見方もできる。こうして考えると、「法人税 + 配当課税」の合算では、「日本では企業課税がかえって低い」と言えるだろう。
「法人税を少しだけ引き下げて、その代わり、配当課税を大幅に上げる(分離課税をやめる)」というふうにすれば、国の税収は大幅に上がる。そのように是正するといいだろう。
また、企業に対しては、「配当を増やす」という方向に促すといいだろう。「法人税は引き下げてあげるから、配当をたっぷり払ってね」という方向に促すといい。そのために制度改正をするといいだろう。
企業は「法人税を下げてほしい」と望んでいるのだから、その望みを叶えてあげるといい。そして、その代わり、別の道で企業からはたっぷりと徴税するといい。企業は「外国並みにせよ」と言っているのだから、外国並みにすればいいのだ。今のような課税免除(分離課税)をやめればいい。
【 関連項目 】
→ サイト内検索「法人税」
【 関連サイト 】
→ http://d.hatena.ne.jp/kojitaken/20100619/1276918374
高所得者ほど所得税の税率が低い、という事実を、山型のグラフで示している。
こうなる理由は、配当課税が分離課税で、低率だから。外国では総合課税だから、金持ちはたっぷりと税金を払うのだが。ただし外国では、配当の率も高いから、外国の金持ちが損をしているわけでもない。
企業は配当をたっぷり払えばよく、金持ちは税金をたっぷり払えばいい。それで国は良くなる。税金を払わないことばかり考えている日本の企業経営者は、合法的な脱税ばかり考えているようなものだ。そんなことばかり考えているから、肝心の経営がお留守になる。
2012年05月04日
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