◆ 首長は何をするべきか?:  nando ブログ

2013年02月12日

◆ 首長は何をするべきか?

 知事・市長などの自治体首長は、何をするべきか? トップダウンとボトムアップのどちらを採るべきか? 

 ──
 
 自治体の首長は何をするべきか? どのような政治をするべきか? そう考えると、二人の人物が思い浮かぶ。橋下市長や石原都知事だ。この二人に共通するのは、トップダウン型の政治だ。
 そこで考える。トップダウンとボトムアップのどちらを採るべきか? ……実は、この問題は、昔からあるが、どちらがいいという結論は出ていない。どちらも一長一短だからだ。
 要するに、この問題についての定説はない。既存の「正解」などはない。
 で、そういう状況で問題の解決を図ろうとするのが、私だ。

 この問題について、私なりに長年考えてきたが、ここでいきなり結論を下そう。下記だ。



       ── 提案 ──

 自治体の首長がなすべきことは、何もしないことである。つまり、個別の案件については、いちいち自分が「こうしろ」と指示するべきではない。自分は何もしないでいい。何かやるとしたら、せいぜい、最後に承認の判子を押すことだけだ。(その際、承認できない場合には、突っ返してもいい。ただしその場合は、その案件について、部下よりもよく知っていることが条件だ。ただの思いつきや好き嫌いで不承認にしてはならない。)

 では、首長は、何もしないというだけでいいのか? それならば猫でもできる。猫を首長にすればいいのか? まさか。
 首長がなすべきことは、「自分が何もしなくても済むようなシステムを構築しておくこと」である。一言でいえば、「システムの構築」である。このシステムがあるからこそ、首長は個別の案件ではいちいち何もしなくていい。

 このシステムは、次の2部門からなる。
  ・ 定常的な業務の実行部門
  ・ 意思決定の判断部門


 このうち、前者は、通常の官僚部門だ。これはどの自治体にもすでに存在するから、いちいちいじらなくてもいい。
 後者は、通常は存在しない。かわりに、たいていは次の2類型がある。
  ・ 事務部門の上級者の会議 (≒ 企業の重役会議)
  ・ 審議会 (= 外部の審議委員による提案や報告)


 この2類型を廃止する。かわりに、次の部局を新設する。
 「新たな施策について研究する判断部門

 これは、人間で言えば、「脳」に相当する。一方、実行部門は、人間で言えば「肉体(脳以外)」に相当する。
 人間では、脳が考えて、肉体が作業をする。それと同様に、自治体でも、脳にあたる「判断部門」が考えて、肉体にあたる「実行部門」が実行する。

 この判断部門は、次のような構造をもつ。
  ・ 提案をする下層部
  ・ 提案を処理する中層部
  ・ 提案の取捨選択をする上層部

 提案をするのは、自治体の全部門や住民の全員を含めていい。これらは、判断部には含まれず、外部構造となる。
 一方、判断部門それ自体も、自治体の全部門の一つであるから、判断部門もまた提案をすることができる。
 こうして寄せられたさまざまな提案を受けつけるのが、中層部だ。中層部は、意見を集めて、簡単にまとめる。(ここまでは下っ端職員に任せていい。)
 最後に、提案の取捨選択をするのが、上層部だ。さまざまな提案を検討して、どの提案が最適であるかを、検討して判断する。甲論乙駁のあとで、意見が集約されることが好ましい。こうして意見が集約されたら、その結論を首長に報告する。そして承認を受けて、実行部門に送る。実行部門はその結論を受けて、結論を実施する。

 例1
  Q 電車にベビーカーを乗せるのは是か非か?
  A ベビーカーは女性専用車両に乗ってもらう。
    混雑したら、他の女性が別の車両に移る。
    以上のことをポスターにして駅に掲載する。

 このように結論がまとまれば、そのまま結論を実行部門に送る。
 結論がまとまらない場合には、両論併記の形にして、賛成論と反対論の双方を並べて、首長に報告書を渡す。

 首長は、その報告書を受けたら、自分で最終判断を下す……というのが常識的なのだが、そうはしない。今はネット時代だ。そこで、首長は、この報告書をネットで公開する。そして、どうするべきかを、民意に問う。特に、掲示板を作って、論議してもらう。(IT民主主義)
 その論議を受けた上で、首長が最終決断する。

 例2
  (1) 質問「福島で全ゲノム解析をするべきか?
  (2) 市民や専門家からから圧倒的な批判が寄せられる。
  (3) 批判を受けて、首長は判断部門に再考を促す。
  (4) 判断部門は、「やらない」という結論を主張に出す。
  (5) 首長はそれを承認する。

 ──

 ま、以上のような感じだ。
 この方式で万事が解決するというわけではないが、非常に判断の難しい事例を除いて、たいていの問題はこれで間違いなく解決するはずだ。
 また、判断の難しい事例は、どっちみち正解がないことがほとんどなので、どの結論を採るにしても、間違いとは言えないだろう。
 以上を私の提案ないし結論とする。



 [ 付記1 ]
 この方式は、橋下や石原のやる「トップダウン」と違って、「間違いが起こらない」という美点がある。トップダウンは、決断は早いが、決断が間違うことが多いという難点がある。
( ※ たとえば橋下の「文楽の補助金廃止」や「原発の停止」など。これらは自分で主張したあとで、最終的には自分が間違いだと気づいたので、自分で撤回した。また、「石原銀行」では、千億円規模の無駄遣いが生じた。これは、初期の段階で十分で検討したなら、撤回されたはずだ。石原は橋下よりも我が強いので、間違いだと気づいても、途中で方針を変えたりはしない。その点では橋下の方がマシだ。)

 本項で述べた方式は、トップダウンとは違って、基本的にはボトムアップである。ただし、首長が方針を指示することはできる。「文楽の補助金の停止」や「原発の停止」や「石原銀行の創設」などを、判断部門に指示することができる。ただし、判断部門は、それを天下り的に受け入れるのではなく、他の提案と同様に、「一つの提案」として受け止めるだけだ。その点が決定的に違う。当然、判断部門の独自の判断により、首長の方針を「駄目だ」と結論することもある。
 その意味で、本項の方式は、「トップダウン」でもなく「ボトムアップ」でもなく、それらの双方を複合的に含む総合的な方式だ、とわかる。

 [ 付記2 ]
 図形的に示そう。
 ピラミッド型の組織があるとする。


        

 トップダウンは、命令が頂点から底辺へ流れる。
 ボトムアップは、提案が底辺から頂点に向かう。
 本項の方式は、その双方がどちらも起こる。ただし、重要なのは、上下の矢印ではない。頂点に届く直前で、そのすぐ下で、判断のための議論が水平的になされる。そこでは多大な議論がなされる。(場合によっては市民の議論を含む。)
 このような水平的なレベルで議論が起こることこそ、本項の最大の特徴だ。
 そして、その水平的な議論が集約して、一つの点になったところで、その点(つまり結論)がトップにあげられる。このとき、トップは、自分では何も判断する必要はなく、最終的な結論を承認するだけでいい。
 結局、このシステムでは、トップは何もしなくていいのである。トップが何かをなす必要があるとしたら、それは、システムがうまく働いていないことを意味する。従って、トップがなすべきことは、そのシステムのメンテナンスだ。人事を変えたりして、システムが最適に機能するようにするべきだ。それこそがトップのやるべきことだ。
 トップは、行政の業務は何もしなくていい。そのかわり、行政の業務をやる組織(つまりシステム)を構築する。つまり、組織の大改革。それこそが、トップのやるべきことだ。
( ※ ここでいう行政の業務とは、窓口事務のような単純な事務作業ではなくて、個別の政策立案のこと。たとえば文楽の扱いがどうのこうの。……こういう個別のことは、トップがいちいちやるようなことじゃない。)
 
 [ 付記3 ]
 比喩的に言えば、トップは、部屋のお掃除をする必要はない。部屋のお掃除は、ルンバに任せておけばいい。あとはルンバがきれいに掃除をしてくれるので、トップは何もしなくていい。
 ただしときどき、ルンバが動かなくなったりする。そういうときには、トップがルンバのメンテナンスをして上げればいい。(たとえば、充電するとか。ひっくりかえったのを直すとか。販売店に修理を依頼するとか。新品に買い換えるとか。……、そういったことをするだけでいい。自分では掃除をする必要はない。)
 要するに、トップは、システムを整備することだけが大切なのであり、個別の掃除のような業務をする必要はないのだ。
 

          
自動掃除機 ルンバ    自動掃除機 ルンバ(直輸入)




 【 追記 】
 基本的には、上下の方向の伝達だけがあるピラミッド型の組織のかわりに、水平方向の意見形成を追加することで、組織の複合的なネットワークふうの情報交換を大きくします。「有機的にする」と言ってもいい。

 比喩的に言うと、脳が手足の動きの命令を出すときに、次の二通りがある。
  ・ 脳から手足にトップダウンの命令を下す
  ・ 目や耳や触覚や他の器官などの感覚を得て、
   フィードバック的に手足の動きを制御する。

 前者の場合、最初の命令があるだけなので、もし間違った運動を指示しても、修正が効きません。
 後者の場合、感覚のフィードバックを受けて微修正が可能なので、複雑な運動を正確に制御できます。(たとえばスケートの三回転ジャンプとか、体操の高度な技。)

 後者のようにすれば、単なるトップダウンよりも、はるかに高度なことが正確に実行できます。

 
posted by 管理人 at 21:39 | Comment(10) | 政治 このエントリーをはてなブックマークに追加 
この記事へのコメント
自治体、うんぬんって大ざっぱすぎますよ
大阪市も自治体、青ヶ島村も自治体ですが
規模が違いすぎる
>判断のための議論が水平的になされる。
大阪市規模になると、このように議論が水平
的になされる、などと言うことはありえません。
 
Posted by mugu at 2013年02月12日 22:50
 規模は違っても方式は同じでいいんです。

 水平的な議論は、それがなされるように、組織を形成します。重役会議に似ている。企業の規模がどれほど違っても、重役会議という組織は形成可能です。
 重役の下に、別の水平組織も存在する。
 そのような水平組織が多重的に存在すればいいだけ。そのような上下の層が何重にもなるかもしれない。その層の多寡によって、組織の規模の大小を吸収できる。
 
 ……と考えることができたので、mugu さんの意見は貴重でしたね。良いご意見です。

 ──

 なお、【 追記 】 を加筆しておきました。
Posted by 管理人 at 2013年02月12日 23:38
なるほど、ネットを使った直接民主制をやろうということですね。仔細項目に渡る議論になると中間層が仕切るのが大変でしょうね。それでもまとめ役がでてきて、なんとかなりそうです。あとはディバイドされた方々の簡単なネット参加法次第でしょう。
利害者によるオープンコンサルはEUで導入されつつあります。EU委員会がイニシアチブを取らない所がこの考えに近いですね。
Posted by 京都の人 at 2013年02月12日 23:46
> ネットを使った直接民主制をやろう

 あれ? それ、別項で書くはずだったのに、本項で書いちゃったっけ? と思って、焦った。書いてないですよね? ……いや、よく見たら、ちょっとだけ書いてあった。

 まあ、「ネットを使った直接民主制」というアイデアはあります。本項ではあまり書いてなかったけど、掲示板と Google 評価メソッドを使う方式。ついでに「いいね」ボタン or はてブスター or Amazon「よい」評価の方式。

 ここに書いちゃったから、もう書かなくてもいいかな。
Posted by 管理人 at 2013年02月12日 23:55
直接民主制はおいといて…
通常の自治体の「議会」は何をするのでしょうか。
おそらく「判断部門」のもう一つの機関として、相互チェックを行うことになるのでしょうね。
逆に、「役所」の中だけで 判断部門⇒首長の決定となると、「議会」は横から文句(あるいは翼賛)するだけになってしまいます。

「直接民主主義」的にやるのであれば、議会は不要でしょう…ただし「判断部門」をチェックする部門は必要かも…
Posted by あるみさん at 2013年02月13日 00:37
議員の仕事は立法です。直接民主制になっても提案するプロは必要です。
直接民主制になると地域住民の代表の振りをした特定利益団体の代弁者になる愚を避けられるかもしれません
Posted by 京都の人 at 2013年02月13日 06:31
もう1つ機関が必要です。
提案の実行とその効果を判断して、上層部の判断者を査定する機関。
その評価によって上層部の評価が左右されるようにしないと、無責任な判断がまかり通ることになります。
効果の判断は、市民の判断を取り入れる形にした方が良いかもしれませんが、だとしても公平な判断をサポートする機関はかならず必要です。
Posted by T.M. at 2013年02月13日 10:48
> 提案の実行とその効果を判断

 事後チェックをするのは、市民およびマスコミです。さもないと、「チェックをする機関、のチェックをする機関、のチェックをする機関、のチェックをする機関……」というふうに無限段階化してしまいます。

 一般の商品でも、製品をリリースした(販売後)には、ユーザーがチェックします。
 で、ユーザーの不評があれば、その不評を見当するための別機関を設置します。
 不評というほどではなくても、好評・不評を知るためには、常設のアンケート機関があればいい。これもアンケート結果を周知広報する。その結果を見て、何らかの意見が起こって、問題点や改良点などが浮かび上がったら、その場合も、別機関を設置します。

 このような新機関の設置は、システムのメンテナンスみたいなものですが、そのための副次的な機関もあってもいい。……ただしそれは、立法機関であってもいい。
 例。育児所が不足しているという声が上がったので、育児所を増やす法律を立法する。

 ただし、首長の側が独自に予算編成することも可能。この場合には、「予算編成機関」みたいな常設機関があるといい。

 ──

 あれこれ意見を聞いていると、どんどん話が膨らむな。  (^^);
Posted by 管理人 at 2013年02月13日 12:25
このシステムだと意思決定に時間がかかりすぎますね
昔から小田原評定とか大企業病とかいわれる判断の遅さで
議論してる間に状況が変化して最初の議案が無意味になり
新しい議案を最初から議論してる間にまた変化してのループでなにも決められなくなった
事例を見たことがあります
また普段やってないことをいきなりやれといわれてできる
人間はほとんどいませんから戦争や大災害といった
議論してる間に同時多発的に状況が変化する状況では麻痺してなにもできなくなるんじゃないでしょうか
人間の運動だってボールを打ち返すのをフィードバックで
やったらキャッチャーミットにボール入ってから
振ることになるので脳からのトップダウンで振ります
Posted by RFT at 2013年02月13日 23:53
> 意思決定に時間がかかりすぎますね

 普通は急ぐ必要がないので、通常モードでOK。
 急ぐ必要があるときは、トップが「急げ」と命じればいい。
 それでもまだ遅れそうなときには、トップが別の緊急システムを稼働させればいい。非常バッテリーみたいな緊急チームを用意しておいて、それに任せればいい。
 ただしそれは緊急用ですから、早いのだけが取り柄で、正確で高機能な作業は望めません。そのことはわきまえておいてください。「早くて高性能の万能のもの」を求めるのは、コストが高くなりすぎです。そういう優秀な人材を普段は眠らせておくとしたら、かえって全体的には損をします。
 ただし「緊急時には最優秀の人材を一時的に振り替える」というのは可能。そのような柔軟なシステムを用意しておくことは賢明ですね。

> 小田原評定とか大企業病とかいわれる判断の遅さ

 それはシステムが機能していないことになるので、システム設置そのものが駄目だったことになります。何でもいいからシステムを設置すればいいというものではない。まともなシステムにする必要があります。

> 普段やってないことをいきなりやれ

 もともとシステムを設置していなかったのが原因であり、システムそのものが不十分です。(システム設置者であるトップの責任。)
 私の場合には、すでに「防災庁を設置せよ」という提案をしています。
 → http://openblog.meblog.biz/article/5444512.html
 このようなことを自治体レベルでも行なうべきでしょう。

> 議論してる間に同時多発的に状況が変化する状況では麻痺してなにもできなくなるんじゃないでしょうか

 上記の防災庁を設置しておけば、そういときには防災庁が「まさしく想定されていた事態だ。おれたちの出番だ」と大活躍するでしょう。

> 人間の運動だって……脳からのトップダウンで振ります

 それはちょっと違います。バットを振るときには、脳はいちいち命令を下しません。「バットを振れ」という信号を送ったあとは、手足が自動的に動きます。これは、「小脳によるパターン運動」であり、「大脳による随意運動」とは違います。前者が自動的で高速であるのに対して、後者はいちいち指示する必要があるので低速です。

 災害の場合に戻って考え直すと、「いちいち判断システムが判断する」のは後者であり、遅くなります。一方、「防災庁が規定によって稼働し始める」のは前者です。この場合は、いちいちどうするかを考えることはなく、すでに決まっている計画に従ってただちに行動開始するだけです。
 災害への対策は、「判断システム」を稼働させることで対処するのではなくて、「判断システムよりも下位にある実働部隊」を稼働させます。判断システムの出番は特にありません。ただし、想定外の出来事が起こって、実働部隊が行動に迷ってしまったときには、実働部隊が上位の判断システムに指示を仰ぎます。このとき、判断システムは、緊急度と正確性の兼ね合いを考えて、次のような指示を与えます。
  ・ 急ぐものには応急の判断結果を与える(同時にトップには報告する)
  ・ 急がないものには判断システム全体で考える

 福島原発の例で言うと、緊急事態に相当するので、
 「緊急システムを稼働させてから、緊急度に応じて、期限内に最善と思える応急の判断結果を支持する。その一方、トップには事態を報告する。トップはそれを受けて、さらに別の緊急システムを稼働させるとか何とか、システム状況を調整する」
 このようにするので、トップ自体が「原子炉に水を注入するかどうか」「住民を避難させるか」を判断することはありません。防災庁と緊急チームが対処します。いずれも専門家です。
 それでも対応しきれなくなったときだけ、トップがシステム状況を調整します。トップ自体が専門的な判断を下すことはありません。(ここがこの提案[本項]の重要なところ)

 ※ この件は、緊急事態にどうするか、という質問への回答になりますね。なかなかよい質問でした。建設的な結果が得られた。
Posted by 管理人 at 2013年02月14日 06:19
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