◆ 政府のコメ政策の矛盾:  nando ブログ

2013年11月26日

◆ 政府のコメ政策の矛盾

 政府が減反廃止という新たなコメ政策を打ち出した。しかしこれは論理的におかしい。

 ──

 ここではいちいち経済的な議論はしない。単に論理的なおかしさを示すだけにする。

 まず、事実を示そう。
 政府が減反廃止という新たなコメ政策を打ち出した。その趣旨は、
  ・ 減反を段階的に廃止する。
  ・ 生産量の過剰を防ぐために、飼料コメの生産を増やす。
  ・ 同じ目的で、作りすぎないよう、消費量の見通しも示す。
  ・ 減反補助金のかわりに、一定の補助金を出す。
  ・ 以上によって、数量と価格を維持し、農家の所得を維持する。


 出典は、各種の記事にあるが、たとえば下記。
  → 減反5年後廃止を決定 政府、コメ政策転換:日本経済新聞
  → 減反見直しても農家所得13%増 農水省試算、補助金増:朝日新聞
  → 減反5年後めど廃止、正式決定 1970年以来の大転換:朝日新聞
  → 河北新報 東北のニュース/コメ政策見直し

 ──

 さて。これら(上記5点)は政府の狙いだが、これらは成立するか? 個別には成立するかもしれないが、5点がすべて成立することはありえない。理由を示そう。

 減反を廃止すれば、生産量は青天井となる。
 生産量がどんどん増えれば、価格はどんどん下がる。やがては暴落する。
 価格の暴落は、消費量の見通しを示すぐらいでは、阻止できない。また、通常の補助金でも阻止できない。(補填できない、と言うべきかも。)
 結果的に、「数量と価格を維持し、農家の所得を維持する」ということはできない。

 ──

 以上の論旨のポイントは、次のことだ。
 「政府の方針では、生産量の急拡大と、それによる価格暴落を、阻止できない」

 換言すれば、こうなるはずだ。
 「減反廃止のあと、生産量の急拡大と、それによる価格暴落が起こり、農業所得は激減して、農家に大混乱が起こる」

 以上が私の結論だ。要するに、日本の農業生産に、とんでもない大混乱が起こる。
 なのに、政府はそのことを理解できていない。破局が予想されている状況に、あえて飛び込もうとするようなものだ。狂気の沙汰だ。



 [ 付記1 ]
 では、それを避けるには、どうすればいいか?
 簡単だ。あるべき状況を示して、そこへなだらかに移行すればいい。では、あるべき状況とは? こうだ。
 「価格をなだらかに低下させて、農業の潜在的な生産量をなだらかに縮小する」

 
 その意味は、こうだ。
 「現状では減反が必要なのは、消費量に比べて潜在的な生産量が多すぎるからだ。その理由は、価格が高すぎるからだ。ゆえに、価格を下げることで、潜在的な生産量を引き下げることができる。かくて、正しい市場価格へなだらかに移行できる」


 結局、「価格をなだらかに引き下げること」が、事態をなだらかに正常化させる。
 なのに、政府の案には、「価格を引き下げる」という核心が抜けている。そのせいで、過剰生産が起こり、そのあとで「過剰生産ゆえの暴落」という混乱が起こる。このことは、「消費量の見通し」には依拠しない。なぜなら、生産量の拡大によって起こるからだ。

 ともあれ、「正しい見通しができないせいで大混乱が起こる」という破局が、近い将来に予想されているわけだ。
  
 [ 付記2 ]
 現実には、上に述べたほどひどくはならない。というのは、減反廃止は一挙に実現するわけではなく、数年をかけて段階的に実現するからだ。
 それでも、「価格の引き下げ」という核心部を明示していない限り、どこかで突発的な混乱が起こる可能性は十分にある。(減反されていた農地が、減反補助金をもらうことをやめて、一挙に増産に転じる可能性があるからだ。)
 それを防ぐためには、「価格の引き下げ」という核心部を明示しておくことが必要なのだ。
 にもかかわらず、政府は「農業所得の増加」というような楽観的な見通しを示している。そんなことを示せば、生産量が急増して、かえって価格暴落を引き起こすのだが。
 政府はどうも、市場原理というものを理解できていないようだ。いつまでたっても、統制価格の時代の発想でいる。
 
posted by 管理人 at 19:15 | Comment(2) | 経済 このエントリーをはてなブックマークに追加 
この記事へのコメント
 後継者不足で10年後は危機的状況というのが農業従事者の共通の認識としてあります。60代が町で一番若いとかザラですから・・。
 ほっといても大幅に縮小していく市場なので、社長が畑に出ないといけないとかいうアホな参入障壁を取っ払って、大規模農業が可能になるようにしないと、作ってくれる人がいなくなる。こっちの対策するほうが先なんですけどね。
Posted by てんてん at 2013年12月15日 13:34
>  後継者不足で10年後は危機的状況

 それ、何十年も前から同じことが言われていますが、いつになっても農業従事者は大幅に過剰になっています。不足するという見通しは常にはずれてきた。
 なぜ? 定年退職者が次々と農業に参入するからです。60歳の新人が毎年大量に補充されるので、常に過剰です。
Posted by 管理人 at 2013年12月15日 13:43
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