「これを読めば頭が良くなる」という本を紹介してほしい……という要望に回答する。
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「これさえ読めば、たちどころに頭が良くなります。利口になる秘密が記してあります」
そういう本が欲しいんですね?
結論から言おう。そんな本はない。あるわけないでしょ。
( ※ あれば、みんながそれを読んで、みんなが利口になる。すると、誰もが凡庸になる。 → 自己矛盾。)
それでもどうしても私の体験を知りたければ、私の体験を教えよう。こうだ。
「図書館に行って、頭が良くなりそうな本を探して、手当たり次第に全部読む」 (^^);
ただし、これでは非効率だとわかったので、もっと能率的な方法を編み出した。こうだ。
「百科事典を全部読む。ジャンル・ジャポニカという分野別百科事典を、全巻 読む」
この方針を貫徹したわけじゃないが、ある程度は実行して、いろいろと知識を獲得した。
しかしまあ、誰にでもお勧めできる方法じゃない。量が多すぎるし。
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それでも「この一冊」というのを欲しければ、下記だ。
→ 思考訓練の場としての英文解釈
※ 絶版だが、中古で入手できる。
ただ、これを読むべきは、若い時期に限られている。東大受験生(のうちのトップクラス)ならば、高校時代。それ以外なら、大学時代。
大人になってからじゃ、手遅れかも。
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以上の話を聞くと、読者は不満に思うだろう。
「肩すかしみたいな話をしやがって。タイトル詐欺だよ。いつもは詐欺を批判して、『本質を探れ』なんて語るくせに、インチキな文書を書くな!」
ごもっとも。そこで、このあとでいよいよ、話の核心を書く。
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「これを読めば、頭が良くなります」
という本はない。しかし、代わりに、次の方法がある。
「これをやれば、頭が良くなります」
それは何か? 「書くこと」だ。
文章を書くこと。特に、論理的な文章を書くこと。特に、論理的な文章を書きながら、論理的に思考すること。……そういう訓練をするといい。
実は、私がいろいろと文章を書くのも、思考を文章に変換しているのではない。文章を書くことで、思考を絞り出しているのだ。
文章を書くまでは、思考ははっきりとしていない。書くべきことは漠然とわかっているし、中核となる文章もいくつかは決まっている。たとえば、本項で言えば、要点となる文章は三つぐらいは(書く前に)決まっていた。
しかし、その要点以外の細かなことは、書く前には決まっていなかった。そして、書くことで、細かなことがしだいに形になっていった。
ここでは、書くことによって、思考が明晰化していくのである。
そして、思考が明晰化していくことで、思考が発展し、思考が体系化されていく。
こういう訓練を繰り返せばいいのだ。つまり、「思考を論理化する」と言うことを、「文章を書くこと」によって鍛錬すればいいのだ。……そのことで、思考力が発達する。
私だって、若いころには、書くことに難儀していた。ただ長い文章を書くことはできたが、思考が分散して、なかなかまとまらない文章を書くことが多かった。
しかし、「泉の波立ち」や「 Open ブログ」を書く訓練をすることで、思考を明晰化していく訓練ができた。こうして、短時間で大量の文章を書きながら、同時に、思考を体系化して発展させることができるようになった。
だから、若い人には、こうお勧めする。
「ブログなどで論理的な文章を書け。自分の思考を言語化せよ」
これこそが、誰もができる、最高の方法だろう。「頭が良くなる」ということのためには。
【 関連項目 】
同じカテゴリ内から:
→ 考える力
→ 知的生産の方法
→ 学習の方法
→ なぜ言語力が重要か?
→ 思考力と教育
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別ブログ(Openブログ)から:
英語における「書くこと」「話すこと」の重要性。
→ 英語で授業:その是非
※ 最後の [ 補足2 ] の箇所だけ。
「本質を考える」という発想法。
→ 兼坂弘の教え
スティーブ・ジョブズに見る、天才の発想法。
→ 天才の思考過程(イノベーションの本質)
→ ジョブズが求めたものは?
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別ブログ(書評ブログ)から:
→ 論理力を付ける本
※ 論理力に絞って、知性アップをめざすための本。
もしかしたらこれが、一番のお役立ち本かも。
(範囲は限られているが、まさに頭は良くなる。)
2013年12月14日
この記事へのコメント
「これを読めば頭が良くなる」という本、私にとってその本を読んで感動したり、思考したりするのが頭が良い本ですよ。(笑)
Posted by 藤 at 2014年11月18日 16:12
大変勉強になります。南堂さんはどこかで講演などされていますでしょうか。もしご予定がございましたら是非とも聴講したく存じます。
Posted by 諸々 at 2020年03月12日 11:12
やっていませんが、激励ありがとうございます。
Posted by 管理人 at 2020年03月12日 21:05
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