◆ TPP はなぜ まとまらないか?:  nando ブログ

2014年04月26日

◆ TPP はなぜ まとまらないか?

 TPP が、まとまりそうで、まとまらない。なぜか? 経済学の基本で考えればわかる。数量を決めたいときに、価格で決めようとするからだ。

 ──

 TPP の交渉が、まとまりそうで、まとまらない。
 オバマ訪日のあとで、表面的に見れば、共同声明では「TPP前進の道筋を固めた」というふうに肯定的にとらえている。読売や NHK はその方針で報じている。
  → 日米、共同声明発表…TPP「重要課題に道筋」 : 読売新聞
  → 日米共同声明「TPP前進の道筋を特定」 NHKニュース

 これは公式表明をそのまま記事にしただけだ。ただの大本営発表である。実質はどうか? 記事の詳細を読めばわかるように、「まとまらなかった」とわかる。( ※ ただし、最後に 【 追記 】 あり。)

 その点、朝日は逆の見解を示している。
  → TPP共同声明、日米でズレ 早期妥結は見通せず:朝日新聞
 一部抜粋すると、次の通り。
 牛肉は、関税をゼロに近い水準まで下げるよう求める米国に対し、日本は 20%前後にとどめる考えを示し、結論は出なかった。
 豚肉も、安い肉ほど関税が高くなる「差額関税制度」で、撤廃を求める米国と、畜産農家を守るため制度自体は残したい日本の対立は続いている。 甘利氏は「首脳が加速を指示して1日、2日でまとまるなら、こんな苦労はしない」と難航していることを認めた。 「年内妥結」は困難との見方が浮上している。

 双方とも、妥結する意思はあるが、妥結しない。ではどうして妥結しないのか? そこが問題となる。

 ──

 この問題については、すでに先に論じた。
  → TPP : 税率か 数量か
 一部抜粋すると、次の通り。
 私としては、「関税の税率を高めに設定するよりは、輸入数量を制限する方がいい」と思う。つまり、「税率よりは数量を指標とする」という発想だ。

 ここでは、解決のための方法を提案した。

 ──

 さて。本項ではあらためて、この問題を論じよう。
 先に示したのは、解決のための方法だった。一方、本項では、「なぜ解決しないか」を論じよう。
 なぜ解決しないか? それは、上の方法の裏返しだ。つまり、上の方法を取らないからだ。

 では、その意味は? こうだ。
 「双方はそれぞれ、数量を目的としている。米国は一定量の輸出をしたい。日本は輸入量を一定量以下に留めたい。どちらも、数量を目的としている。ならば、合意できる範囲を数量で決めればいい。ところが、数量ではなくて価格で決めようとするから、合意できない」
 
 たとえば、日本と米国の妥協できる量が、次のような量だったとする。(日本の輸入品シェア)
  ・ 1年後 …… 5%
  ・ 20年後 …… 20%

 このような形で、20年をかけて、輸入品のシェアを5%から 20%まで増やすことは可能だ。このくらいの数量で合意すればいいだろう。(前出項目でも似たことを述べた。)

 ところが現実には、数量ではなく、価格(正確には税率)で決めようとした。すると、双方は次のように心配する。
  ・ 日本 …… そんな税率にしたら国内農家は壊滅する。
  ・ 米国 …… そんな税率では対日輸出はろくに増えない。

  具体的な数値予測では、たとえば、次のように推測する。
  ・ 日本 …… 輸入品のシェアは50%以上になるだろう。
  ・ 米国 ……  輸入品のシェアは 10%以下になるだろう。


 こういうふうに、それぞれの予想数量がまったく異なる。だからこそ、合意ができなくなる。

 ──

 ここまで見ればわかるだろう。合意できない理由は、妥協点が見出せないからではない。無用の心配をしすぎるせいだ。心配のしすぎのせいで、妥協点よりもはるかに悪い状況になると勝手に予想して、その勝手な予想のせいで、合意できなくなる。
 ならば、勝手な予想をやめればいいのだ。代わりに、合意できる点を、きちんと数量ベースで決めればいいのだ。たとえば、次のように。
 「輸入品のシェアは、1年後には 10%で、20年後には 20%」
 このような形で表現すれば、合意は可能となるはずだ。

 ──

 結論。

 TPP で合意ができないのは、妥協点が見出せないからではない。心配性のせいで、妥協点を悪い方に予測してしまうからだ。
 これは一種の「誤認」である。ゆえに、「誤認」(または錯覚)をなくして、物事を正確に数量ベースで決めればいい。こういうふうに数量をきちんと決めることで、問題の解決が可能となる。



 【 追記 】
 今回の交渉の結果については、「まとまらなかった」という報道がほとんどだが、読売だけは、「実質的にはまとまった」という逆の報道を示している。「牛肉は 20年かけて9%まで関税引き下げ」というような内容。(紙の新聞にある。)
 報道が異なるので、真偽は不明だ、ということかもしれない。本項では「まとまらなかった」ということを前提として記述しているが、読売の報道が正しければ、ほとんどはまとまったことになる。
 なお、読売によると、実質的にはまとまっているのに、あえてそうでないと偽る理由は、27日にある鹿児島補選への影響を考えてのことらしい。27日までは漏らさないでくれ、ということらしい。

( ※ なお、本項は報道を前提とした話なので、報道が間違いだと、本項もあまり意味を持たなくなりそうだ。だとしても、本項が間違っていた、ということではないので、いちいち文句を書かないでくださいね。もし読売が正しくても、その場合、本項ではなくて、前提となる各社報道が間違っていた、というだけのことです。)




 【 関連項目 】

  → TPP : 税率か 数量か
 
 
posted by 管理人 at 10:04 | Comment(2) | 経済 このエントリーをはてなブックマークに追加 
この記事へのコメント
自動車についてですが、数量ベースでの交渉もされているようです。
http://blog.livedoor.jp/columnistseiji/archives/51580223.html
Posted by のぐー at 2014年04月27日 14:34
 米国自動車は、上限ではないし下限です。つまり、輸入制限ではなく、輸入促進義務です。TPP(貿易自由化)とは完全に正反対のものでしょう。
Posted by 管理人 at 2014年04月27日 16:20
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