◆ ウクライナと鯨と……:  nando ブログ

2014年05月06日

◆ ウクライナと鯨と……

 ウクライナと鯨の問題には、共通性がある。それは西欧の唯我独尊だ。

 ──

 この二つの問題は、どちらも「西欧の唯我独尊」という概念で理解できる。

 (1) ウクライナ

 西欧が独自の価値観を押しつける。ウクライナには、西欧的な価値観とロシア的な価値観が共存していて、両者が譲り合って宥和していた。
 ところが、親欧派の政権の失敗のあとで、ロシア派の政権が出現すると、親欧派の人々がクーデターを起こして、ロシア派の政権を転覆させた。
 ここでは、いったん両者が妥協で合意していたのに、親欧派の人々が合意をひっくり返してクーデターを起こした、という滅茶苦茶が起こった。これを西欧がたしなめれば良かったのに、逆に、西欧はこれをけしかけた。かくて、親欧派の人々は図に乗って、ロシア派の人々を弾圧した。(ロシア語の禁止など。)
 こうなると、もうロシア派の人々は耐えきれない。かくて、国内で分離独立などの動きが発生した。それを親欧派の新政権は弾圧した。その弾圧を西欧諸国は後押しした。
  → ウクライナ問題の解決案

 ここに見て取れるのは、明らかに、西欧の唯我独尊である。
 「自由と民主主義こそ正しい」
 「資本主義による自由経済が正しい」
 こういう自己流の発想のもとで、社会主義の色合いが残るウクライナを自己流に染め変えようとした。しかし、いまだにロシア経済圏に含まれるウクライナに、それは現実無視の無理難題というものだった。
( ※ 比喩的に言えば、「日本に米作優遇や農業優遇をただちにやめろ。完全な自由経済にしろ。それができなければ政府を転覆させる」というようなものだ。いきなりやれというのは過激すぎる。)

 (2) 捕鯨禁止

 これもまた、西欧の唯我独尊である。鯨の生息数は激減しているわけではないし、鯨は絶滅危惧種ですらない。むしろ近年では、増えすぎて困っている種もある。
 なのに、「鯨は頭が良くて可哀想だから」という西洋流の価値観で、日本の捕鯨を否応なしに禁止しようとする。「犬や猫はペットでかわいいし、鯨も同様だ。かわいいものを殺すなんて許しがたい」という、西欧独自の発想による。
 こういうことは、牛を神聖視する(ヒンズー教の)インドだって要求しないし、豚を忌むイスラム教国家だって要求しない。西欧だけが独自の文化の押しつけで、鯨を神聖視して、捕鯨を禁止しようとする。これは明らかに、西欧の唯我独尊である。

 (3) 死刑廃止

 さらには図に乗って、日本の「死刑廃止」を強引に禁止しようとする。
 日本で人権侵害や民主主義に反する事態が起きた場合、EPAを停止できるとの「人権条項」を設けるようEUが主張していることが5日、分かった。日本は猛反発しており、EPAをめぐる一連の交渉で今後の大きな懸案になりそうだ。
 EU当局者によると、日本が違反した場合、EUがEPAを停止できる仕組みを盛り込む方針を内部決定した。
 EU当局者は、日本に対して人権条項が発動される事態は考えにくいと強調するが、EUは日本で死刑が執行されるたびに「死刑は残酷で非人道的だ」と批判する声明を発表している。死刑廃止を目指すEUが日本に働き掛けを強める上で、人権条項が無言の圧力になる可能性はある。
( → Yahoo 時事通信

 日本に対して「人権重視」というと、ほとんどの項目では当てはまらない。唯一、当てはまるのが、死刑だ。つまり、この上項は、日本に対して「死刑廃止」を押しつけることだけを狙いとしている。
 ここで注意。EUは次のことを主張しない。
  ・ 米国に対する「死刑廃止」
  ・ 中国に対する「人権弾圧の停止」

 これらについては、だんまりなのだ。
 米国は、あまりにも強すぎて、欧州が自己流を押しつけることはできない。押しつけても、あっさり蹴飛ばされる。
 中国は、これまでも何度も欧州が人権を問題視してきたが、そのたびに中国が「だったら貴国の製品を輸入制限する」と個別劇はすると、どの国もだんまりになってしまう。ドイツであれ、フランスであれ、個別に中国から「輸入制限」をちらつかせられると、人権についてすぐに黙ってしまうのだ。
 ちなみに、ドイツの輸出の非常に多くの割合が中国に依存している。たとえば、フォルクスワーゲンの中国における販売台数は年 350万台。世界全体で 970万台だから、4割近い。中国の影響は多大すぎる。これはフォルクスワーゲンの数値だが、他の産業も似たり寄ったりで、中国における販売台数が突き抜けて大きい。
 こういう状況で中国から輸入制限をされると、ドイツは国家が崩壊してしまう。だから、欧州が中国で人権を何か言うたびに、中国から「輸入制限」をちらつかせられて、そのたびに口を噤んでしまうのだ。
 で、そういう状況だから、中国に対して何も言えないかわりに、おとなしそうな日本をいじめてやれ、というわけだ。(ジャイアンの横暴を阻止することはできないから、かわりに のび太をいじめてやれ、というスネ夫かな。)
 これが西欧の方針である。
 
 ──

 結論。

 欧州はあまりにも唯我独尊であり、「自分は正しい」という押しつけばかりをする。そのせいで、世界各地で、大問題を引き起こしている。
  ・ ロシアはいじめられたあとで、反攻した。
  ・ 日本は(捕鯨で)いじめられたが、素直に服従した。
  ・ 日本はさらに(死刑廃止で)いじめられる。


 はっきり言って、死刑廃止をどうするかは、日本人が内部で決めるべき内政問題だ。外国の押しつけで決まるものではない。それさえも理解できない西欧は、民主主義を否定していることになる。
 「東洋の猿には人権感覚がないのだから、おれたちが人権感覚を教えてやろう。猿にも人権は必要だしね。おっと、猿権か。……え、なぜか自分たちに決めさせないかって? 猿には民主主義は不要なのさ。民主主義が成立するのは、人間である西欧人だけなのさ。猿の民主主義なんて、成立するわけがないだろう?」
 こういう発想が、世界各地で軋轢(あつれき)を生むわけだ。

 《 参考 》

 (3) の「人権の押しつけ」については、はてなブックマークでも同様の見解(欧州批判)が、かなり見られた。
  → はてなブックマーク
   ※ 当初は欧州に共感する声が多かったが、その後、
     欧州に批判的な見解が多くなった。



 【 関連サイト 】

 → 【海外の反応】 外国人「これはいかに日本人が欧米人より文明化されてるかを表してる」
 → 海外の反応 海外「まるで世界が違う」日本の子供の交通マナーに海外が感服
 → 【海外の反応・並ぶ日本人】日本は地球上に残った唯一文明のある国だと思う
 
posted by 管理人 at 19:31 | Comment(5) | 政治 このエントリーをはてなブックマークに追加 
この記事へのコメント
この3つを一緒くたにするのは感心しませんね。

ウクライナでは毎回選挙のたびに大モメ、毎回伯仲し毎回不正が疑われたり明るみに出たりしています。今回はヤヌコビッチがEU派のクチマの後継と目されながら就任するやロシア寄りの政策を鮮明にしたために暴動にまで発展したわけです。
EUがこれを支持するのはあくまで建前です。

一方ロシアの行動には利害の計算だけがあります。軍まで動かしたのはEUに破綻寸前のウクライナを引き渡しての債務を引き受けさせようとしているわけです。デフォルトされたら大損害ですからね。別に元凶がEUではない。彼らはリアクションしているだけ。

おそらくプーチンは東側を併合したりはしないでしょう。クリミアを獲ったのはあくまでEUを動かすため。東側には「お前らはウクライナに残って借金を払え」。

鯨についてはその通りだと思いますが、人種差別だ唯我独尊だと相手の本音を突いたところで何も変わりません。欧米の建前に日本がまったく対処できていないのが問題なのです。
捕鯨問題に関してはもっと相手の論理を研究し、「クジラはただの動物である」という点をしっかり主張すべきです。日本人にとってはバカバカしいですが、これが西洋思想の核だからです。

死刑制度は堅持すべきだと思いますが、以前と異なり、近年はあっさり次々と執行されている点はもっと問題にされなければなりません。かつての歴代法務大臣は執行指令に印を押すのに慎重でしたが、これがある種のバランスを保っていました。
現法務大臣の谷垣禎一という人は、野党党首時代も自分の思考を立場にすべて投げ入れる傾向がありました。このような人間は人を動かす人間として信用ならないと感じます。
Posted by tubird at 2014年05月08日 20:33
本項は個別の政策についてどう対応するべきかという、個別の政策論ではありません。

三つの出来事を見て、その根底にあるものは何か、と考えて、「根底にある本質を探ろう」というものです。個別の現象の底にある源流を探ろうというものです。個別の現象への対応はもともと考慮の外です。

そして、その根底にあるのが「欧州は世界の最優秀民族であるから、未開なアジア人や遅れたロシア人はおれたちの文化に従え」という文化の押しつけです。

> 「クジラはただの動物である」という点をしっかり主張すべきです。日本人にとってはバカバカしいですが、これが西洋思想の核だからです。

 これは科学の問題ではなくて文化の押しつけの問題だ、と理解するべきです。そこを理解しないで、科学的な議論ばかりをしているから、日本は裁判で負けたんです。
 比喩的に言えば、宗教裁判所で科学をいくら主張したところで、勝てるはずがありません。ガリレオみたいなものです。いくら「地球は動く」とつぶやいたって、勝てるはずがないんです。
 tubird さんの主張は「正しいことを主張すれば勝てる」というものですが、それではガリレオの二の舞でしょう。発想が甘すぎる。
 本質を理解しないで、個別の政策の議論だけで勝とうとするから、日本裁判では負けるんです。真実が勝てるとは限らない、ということをはっきりと認識するべきです。(多数の例がある。)

 何よりも大切なのは、個別の現象の底にひそんでいる、巨大な源流です。それは見えにくいので、人々は気づかない。
Posted by 管理人 at 2014年05月10日 20:43
むしろ南堂さんが「正しいことを主張すれば勝てる」と主張しているように思えたので上のコメントを書いたのですけどね。

唯我独尊なんていうのはどこでも一緒なんですよ。日中韓露みんな唯我独尊です。海外の反応なんてのを観て溜飲を下げる。「ふはは。我が国ではこんなことは当たり前なのだよ。」
これが唯我独尊です。

日本を賞賛する外国人は自分の世界の常識で判断しています。つまり唯我独尊です。彼らにとって公共の道徳心とは、「自我を完全に確立した個人が次の高次へ進んではじめて発揮されるもの」だからです。だから日本は凄いんじゃないかと好意的に誤解してしまう。この問題の根底にあるのは考え方の順序の違いです。

宗教vs科学ということで言えば、「動物と人間は同じ」というのが科学、「人間は動物と違う特別な存在」とするのが宗教です。欧米の鯨信仰はキリスト教(というより牧畜民族としての必要性ですが)に科学(脳が大きい云々)が接ぎ木された「科学という宗教」です。だから科学で反論する必要があるのです。

宗教に対して別の宗教で反論すればそれは戦争にしかなりません。「宗教論争」は、あくまで相手の宗教論理の中で成ち立ちます。その意味で日本の反論が科学であるとはとうてい思えません。増えたの減ったのとデータを示すだけでは科学ではありません。おそらく担当の人間は科学が元は哲学であることを知らないのでしょう。多勢に無勢なのだからちゃんと武装しないといけません。「データを示せば分かってくれるだろう」というのは「嘆願」に過ぎないんです。論争する勇気がないまま利益だけは確保しようとしている。この(日本が勝てないという)問題の根底にあるのは、日本の唯我独尊です。

どこも唯我独尊なんですが、欧米の唯我独尊が目立つのはもちろん強いからです。「欧米」というくくりは巨大すぎて中身が薄いですね。「反捕鯨」にもっとも強硬なのは欧米の辺境のオーストラリアです。それにはもちろん個々の事情があります。たとえ巨大な源流が消滅してもそっちは残りますよ。なぜならそっちの事情の方が個々にとってもっと重要だからです。
Posted by tubird at 2014年05月13日 18:56
結論が変わってしまうのでコメントを分けました。

「欧米の唯我独尊が怪しからん」として、この件の最大の問題は、その欧米の唯我独尊に従った方が結局はいいじゃないの?というところです。

ウクライナ問題で国益、つまり領土返還を得たいのなら、ロシアに恩を売る必要があります。それなら欧米に「ウクライナを助けましょう!」と率先して働きかけるのがいい。(失敗すれば元も子もないですが)(日本一国で助けるとなれば四島くらい返してくれますよ)(財政的に無理ですが)

捕鯨は本当に日本に必要なのか?あの魚臭い固い赤肉を、牛肉が安く手に入る時代に国策漁業で諸外国と戦ってまで本当に食いたいのか?そこまで大事な文化か?鯨ヒゲのからくり人形とか今でも必要か?

この問題の解決策は完全自由化です。完全自由化すれば、日本に関してはいずれ今より規模が小さくなるはず。しかし途上国ではそうではないかもしれません。獲り尽くすかも。じゃあ「欧米の唯我独尊」に従った方がいい。くやしいのう。

死刑制度は人間が人間社会から抹殺すべき犯罪を起こしてしまう限りは必要だと思います。しかし冤罪の可能性を秘めた容疑者をサクサク処刑してしまう現状はどうなのか。でもこれは国内論議では議論にならない。あちら側の人間(=社会の敵)と思われるだけです。外圧に頼る方が効率がいい。くやしいのう。

---
ところで東ウクライナが勝手に独立しましたが、このままいくと南堂さんの解決策のシナリオ通りになりそうです。プーチンは頭が切れますが、発想が前時代なのが失敗でしたね。クリミア併合を認めず「欧米の唯我独尊」に従っていればもっとうまくやれたかもしれません。
Posted by tubird at 2014年05月13日 19:38
 私は政治家じゃないので、解決策を示すことには(あまり)興味がありません。
 どちらかといえば学者ふうに「原因は何か?」を探ること(真実の探求)に興味があります。
 で、真実を知ったあとで、どう対処するかは、人それぞれ。
 一方、真実を知らないまま、自分たちが勝手に「真実だ」と思っていることの上に立って議論し合っている限り、争いは終わらないでしょう。
 それが予想。

> 南堂さんの解決策のシナリオ通り

 ??? 私は解決策なんか出したっけ?
 「こうなりそうだ」という予想は出したけど。

 私の提案する解決策は、「最終的にはみんなで(少しずつ我慢して)仲良くいっしょに」ということですから、「勝手に喧嘩別れする」というのは、解決策になっていません。その逆です。
 「残念なことにそうなりそうだ」という予想は出したけど。
  
 ──

 なお、理不尽な欧米の横暴に「はいはい」と従っていれば、次々と理不尽な要求を呑む必要が出てくる。
  ・ 著作権の戦時加算の延長。
  ・ 温暖化ガスで日本だけ厳しい扱い。
  ・ 国連分担金で巨額の負担で権利なし。
 金を取られるだけ取られて、欧米の圧迫に従うだけ。ただの植民地みたいなものです。
 それに満足するなら、いっそ欧米の植民地になればいい。たとえばアメリカに併合されれば、「アメリカ人になれた」とお大喜びする人がいっぱい出てきそうだ。……アメリカ自治領みたいな扱い。(選挙権はなし。納税義務はあり。)
Posted by 管理人 at 2014年05月13日 20:10
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