◆ 戦争と平和の理論2:  nando ブログ

2007年05月07日

◆ 戦争と平和の理論2

 「戦争と平和の理論」(06年11月13日)の続き。

 ──

 前回分では、「戦争の抑止のためには経済こそが大事だ」という趣旨の話をした。つまり、「経済封鎖は有害であり、経済交流が有効である」と。
 これについては、「金じゃ片付かないよ」という趣旨の反発もあった。なるほど、戦争というものには、憎悪や妄想などがつきものだ。しかしそれは、「原因」である。原因への対策もいいが、それとは別の観点から、「経済的に戦争を抑止する方法」を考えた。

 さて。この件についての具体的な話が見出されたので、紹介しよう。

 北アイルランドでは、カトリック勢力とプロテスタント勢力との抗争が長年続いていた。(これは、宗教対立とも見なせるが、ケルト系民族とアングロサクソン民族との対立とも見なせるだろう。)前者は独立派で、後者は独立反対派である。図式的に書くと、
  IRA =  カトリック  =  ケルト系   =  独立
  DUP = プロテスタント = アングロサクソン = 独立反対

 
 この抗争は、長らく続いてきたが、このたびようやく、解決しつつあるという。つまり、「戦争から和平へ」という移行が、見事に成功したことになる。では、その理由は? 
 朝日新聞(朝刊・国際面・コラム 2007-05-06 )から要約すると、経過は次のようになる。
  長年の抗争に、人々がうんざりしていた。人々は和平を求めていたが、当事者(対立する両派)の行きがかり上、和平は困難だった。(タカとタカ)
  04年12月に、IRAが銀行強盗をした。すると、資金援助をしていた米国のアイルランド移民が、IRAを見限った。(米国のアイルランド移民の影響は非常に大きい。かつてアイルランドから大量に移住した。)
  IRAは干上がって、暴力闘争を放棄した。(タカからハトへの転換)
  しかしプロテスタント側のDUPは、和平をいやがった。(相手が先にハトになったなら、タカはハトになりたがらない。)
  そこで、英国政府が経済的に圧力をかけた。「和平を受け入れよ。さもないと、実質増税。一方、和平を受け入れれば、実質減税」と。つまり、「アメとムチ」である。
  するとDUPも、圧力を受けて、和平を受け入れた。
  両方が和平を受け入れたので、双方がハトとなり、ともに平和の利益(平和の配当)を受け取ることができた。英国政府もまた、一定の支出をすることで、平和の利益を得ることができるようになった。
( ※ なお、英国政府は、損をしたように見えるが、損をしていない。外国に金を払ったわけではなくて、英国の内部で金の流れが少し変わっただけだから、英国全体では損得はない。全体としてみれば、平和の利益だけが増えている。)
 以上の核心を言えば、こうだ。
 「和平にはアメ、戦争にはムチ」という「アメとムチ」の政策を取ることで、和平を促進できる。」


 もちろん、これだけですべてが解決するわけではない。ただし、和平の機運が高まっているときには、この方針で、和平をもたらすことができる。メンツがからまって実行できないときに、メンツを取り消すことが可能になるわけだ。
 「アメとムチ」の政策は、経済的な政策だが、これはまさしく、和平の促進に有効なのだ。そのことが、上記の例からわかる。

 ──────

 [ 応用1 ]
 パレスチナの問題に応用すると、次のようにするといいだろう。
 「イスラエルおよびパレスチナに対して、アメとムチという政策を取る。そのことで、双方に和平を促す」
 では、現実には? こうなっている。
 「イスラエルに対しては、戦争に対するアメを与える。パレスチナに対しては、戦争に対するムチを与える」
 ここでは、かなり偏った政策が取られている。特に、イスラエルに対して、戦争に対するアメを与えることが問題だ。アメリカはイスラエルに戦争促進策を取っている。こんなことでは、なすべきこととは正反対だ。
 では、どうすればいいか? イスラエルに対しても、パレスチナに対しても、「和平への配当」を与えるといいだろう。

 [ 応用2 ]
 イラクの問題に応用すると、次のようにするといいだろう。
 「スンニ派とシーア派に対して、アメとムチという政策を取る。そのことで、双方に和平を促す」
 では、現実には? こうなっている。
 「スンニ派とシーア派に対して、ムチだけという政策を取る。つまり、米軍が双方を武力で抑圧しようとする。しかし現実にはそれができないで、混乱が高まるばかり」
 つまり、戦争を抑制するには、「戦争を武力で抑圧しようとして自分自身が戦争をする」のではダメだ。「戦争を抑制するために、そのための戦争をする」というのは、一種の自己矛盾である。

   ──

 以上の二つの応用例を見るとわかるように、「ムチ」ばかりに偏重する武力政策は、平和を構築するのには役立たない。そのことは、長年の北アイルランド紛争からもわかる。
 戦争を抑制するには、戦争そのものを武力的に抑制しようとするよりは、戦争のかわりに和平をしようとする方が有効なのだ。
 戦争という行動をなくすには、人の行動を無理に動かそうとするよりは、人の心を変えるように促すべきなのだ。
 比喩的に言えば、ぶんなぐろうとする人を止めるために、相手をぶんなぐるのは、あまり賢明ではない。むしろ、言葉で説得する方がいい。言葉で説得して、心を動かしたあとで、最後の決め手として、金をちらつかせれば、たいていの場合はカタが付く。

 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 【 参考 】

 「泉の波立ち」の過去記事。「戦争と平和」をテーマとする話。
 8月11日11月13日12月11日4月14日c 重要2月24日b

posted by 管理人 at 20:23 | Comment(0) | 政治 このエントリーをはてなブックマークに追加 
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。