◆ イスラム国(ISIS)をどう呼ぶか?:  nando ブログ

2015年02月07日

◆ イスラム国(ISIS)をどう呼ぶか?

 「イスラム国」という名称が不適切だというので、代案がいくつが上がっているが、どれが適切か?

 ──

 「イスラム国」という名称が不適切だと言われる。「イスラム教徒がみんなテロリストだと思われるので、迷惑だ」と主張するイスラム団体などの見解。
  → 「イスラム国」という名称の変更を希望します

 これに対しては、「賛成だ」という見解が多い。たとえば、
  → はてなブックマーク (上記について)
  → はてなブックマーク (別項について)

 しかるに、マスコミでは、「イスラム国」を使う会社が多い。その理由は、「他の名称は旧称だから」というようなもの。
 先に nandoブログ でも記したが、それを丸ごと転載しよう。

    ───

 「イスラム国」の表記については、ISIS 、ISIL など、いろいろある。この件は、朝日の記事が興味深い。(リンクだけ示しておく。)
  → 「イスラム国」どう呼ぶ? 政府は「国家と認めない」

 この記事には、朝日自身の方針も示してある。
 カギ括弧つきで「イスラム国」と表記することを原則にしています。表記は、彼らが自称する英語表記「Islamic State」を日本語に訳したものです。国家ではなく過激派組織であること、括弧をつけることで一般のイスラムとは異なる、固有の組織名であることを意味しています。別名の ISIS または ISIL は過去の組織名であることから、現在では使っていません。
( → 朝日新聞 2015年1月31日

    ───

 上記のこと以外に、Wikipedia にも記述がある。(一部、伏せ字)
旧称は……「イラクとシャームのイスラーム国」という意味、略称:(ダーイシュ))。
( → Wikipedia

 つまり、「ダーイシュ」という略称もあるのだが、これもまた旧称であって、妥当ではない。

 ──

 では、妥当なのは、何か?
 アラビア語の英訳は Islamic State であり、略称は IS である。これをそのまま用いるのであれば、妥当だろう。(日本語になっていないが。)
 Wikipedia によれば、国際連合、日本国政府、米国政府はISIL という名称を公式に用いているとのことだが、これは、根拠にならない。本人たちが用いていない名称を勝手に付けるのでは、妥当性がない。この理屈が成立するなら、各国政府が「阿呆」と名付けたなら、「阿呆」と呼ばなくてはならないことになる。筋が通らない滅茶苦茶だ。(ただし保守的な人々は、政府べったりなので、政府の言いなりになるかも。)

 比較的まともなのは、ISIS だ。これは旧称だが、かなり通用している。たとえば、NY Times は、タイトルでは ISIS という略称を用いて、本文中では the Islamic State を用いている。
  → NY Times の記事

 ──

 以上をまとめると、Islamic State が最も妥当だとわかる。その略称としての ISIS も使っていいが、あくまで略称だと弁えるべきだろう。

 ただ、Islamic State は英語なので、これを日本語に訳す必要がある。では、どう訳すか? それが問題だ。

 通常は「イスラム国」と訳されるが、これは妥当とはいいがたい。「State」と「国」は等価ではないからだ。仮に「State」を「国」と訳すのであれば、「 United States 」は「連合国家群」または「(諸)国家連合体」というふうになる。ここでは、米国は「国の集合」という形になり、「一つの国」ではないことになる。……しかし、それはおかしい。その意味で、「State」は必ずしも「国」とは言えない。(米国の場合には 「State」は「州」に相当する。「州」といっても、現在の州ではなくて、国家形成時における歴史的な意味での州だが。)

 では、どう訳すか? 通常のやり方ならば、そのまま音訳すればいい。つまり「イスラミック・ステート」だ。これで問題ないはずだ。
 ただし、これでは、長すぎる。となると、例によって日本語の略字化機能を用いて、頭の2音ずつをつなげた略語を作ればいい。
    イスラミック・ステート → イスステ 

 つまり、「イスステ」と呼べばいいのだ!  (^^)v

 とはいえ、この言葉は、現実には通用していない。一社だけがとんがって、勝手に使っても、通用しない。
 そこで、マスコミが協定して、みんなでそろって「イスステ」と呼ぶことにすればいいのだ。「赤信号、みんなで渡れば、怖くない」というわけだ。
 実際、これであらゆる問題は解決する。
  ・ “「イスラム国」”という7字よりも3字少ない。
  ・ 「国」という語が入っていない。
  ・ 旧称ではなく現在の名称である。
  ・ イスラム教徒から「混同される」という批判が来ない。


 というわけで、あらゆる問題をクリアしている。(一般には普及していない、という問題を除けば。)

 ────


 さて。イスラム教徒から「混同される」という批判があるとのことだが、これについては、「あまり神経質になることもないだろう」というのが、私の個人的な感覚だ。この手の言葉で、いちいち他人の文句を聞いていたらキリがない、という気もする。
 とはいえ、最近は人権意識が強いので、「人権的な被害が寄せられるならば、そのような人権を尊重する」という風潮もある。それについてはいちいち反対するつもりはない。
 というわけで、この件については、特に賛成も反対もしないでおく。

 ただし、この点については、いっそう本質的に解決できる。
 そもそも、イスラム教徒が「混同される」という批判するのは、なぜか? それは、ISIS が「イスラム国」というふうな名称を使って、あたかも「自分たちがイスラム教を代表する国である」というふうに思わせるような名称を使っているからだ。
 つまり、ここには「誇大表示」という問題があるのだ。比喩的に言えば、どこかのテロ組織が「キリスト国」と名乗って、「自分たちがキリスト教を代表する国である」というふうに思わせるようなものだ。どっちみち、誇大表示である。
 そして、その誇大表示ゆえに、その名称で呼ばれる本来の人々が、迷惑を被るわけだ。
 とすれば、ここでは、問題なのは、「他の人が迷惑を被る」ということ自体ではなくて、詐欺的な「誇大表示をする」ということなのだ。
 したがって、ISIS 自体がどう自称するにせよ、その自称が「誇大表示である」という場合については、その自称を使うべきではないのだ!

 ここまで考えれば、「イスラム国」という語を使ってはならない理由もはっきりするだろう。この語を使ってはならないのは、イスラム教徒に迷惑がかかるからではなくて、誇大表示の詐欺的な名称であるからだ。
 したがって、「彼らが自称している言葉をそのまま用いる」という方針自体が、間違っていることになる。「旧称よりも新しいから」というような理屈も通らない。詐欺的な名称を使うということ自体が、このテロ団体の宣伝に協力していることになるからだ。
 したがって、このテロ団体をどう呼ぶにせよ、「イスラム国」という意味を持つような語を用いてはならない。当然ながら、Islamic State という英語名称もダメだ。

 では、「イスステ」は? これは問題ない。ここには「イスラムの国」という意味は含まれていないからだ。語源としては「Islamic State 」があるが、「イスステ」という略語そのものには「イスラム」という語は含まれていないのだ。(それは ISIS の I が「 Islamic 」という意味を持たないのと同様だ。)
 つまり、略語はあくまで略語なのである。それゆえ、ただの略語である 「イスステ」や 「ISIS」や「ISIL」は、用語としての正当性がある。
 ただ、日本語としては、「ISIS」や「ISIL」はありえない。となると、残るのは、次のいずれかだろう。
  ・ イスステ
  ・ イスイス

 これに「団」を付けてもいい。
  ・ イスステ団
  ・ イスイス団


 以上をもって、私の見解とする。
 


 [ 余談1 ]
 「日本語の略字化機能を用いて、頭の2音ずつをつなげた略語を作ればいい」
 と述べたが、類例は、下記。
   ラジカセ、クロカン、デジカメ、ドラクエ、メルアド。
 3字のものもある。
   地デジ、スマホ。

 [ 余談2 ]
 「ダーイシュ」という略称もあるが、これは、旧称であるということ以外に、別の難点もある。「ダルビッシュ」に似ているという点だ。こんな名称を使ったら、ダルビッシュが大迷惑をこうむるだろう。
 テレビでニュースを聞いたときも、たいていの人は「ダルビッシュ」というふうに聞いてしまうだろう。「ダルビッシュはイラン人だからテロリストなんだな」という誤解も広まりそうだ。これぞ風評被害。
 


国際指名手配



 【 追記 】
 「 ISIS 」または「 ISIL 」では、どこがまずいか? 
 それは、これらが日本語になっていない、ということだ。具体的に言えば、発音できない、ということだ。
 米国人ならば、発音できる。だから、これらの略語を用いても、特に問題はない。
 日本人ならば、これを発音できない。英語式に発音しても、誰にも通じないだろう。
 日本語式に発音するなら、「 ISIS 」は「アイシス」または「アイサス」(この方が英語発音に近い)だろうが、「アイシス」または「アイサス」とアナウンサーが発音しても、その発音が「 ISIS 」という文字を意味するとはわかりにくい。また、「 ISIS 」という文字を見て、「アイシス」または「アイサス」と発音するのだと理解する人も多くないだろう。
 さらに言えば、日本語の「アイシス」または「アイサス」では、最後に母音の「ウ」という音が含まれてしまう。ローマ字式に書けば、「 aisisu 」である。(最後に u という母音が含まれる。)これは「 ISIS 」とは異なる。
 というわけで、「 ISIS 」という英語表記は、日本語では不適切なのだ。「 ISIL 」もまた、同様の事情にある。
 「政府が ISIL に決めたから ISIL にする」なんていう発想では、「どう発音するか」という問題が解決しないのだ。「 ISIS 」もまた同様である。
 ※ 「イスイス」というカタカナ表記ならば、問題はない。
   これなら、文字と発音は一致する。

posted by 管理人 at 22:10 | Comment(6) | 政治 このエントリーをはてなブックマークに追加 
この記事へのコメント
私も基本的には「ISIS」を使用しています。
Posted by あるみさん at 2015年02月07日 23:26
東京駐在のトルコ大使館が、声明を出しています。
表題は「大使館からのお知らせ」
宛名は「在京報道各社各位」
署名は、大使ではなくトルコ国営放送特派員。
http://tokyo.be.mfa.gov.tr/ShowAnnouncement.aspx?ID=226985

さんざん日頃「トルコは親日! トルコは親日!」とやたらめったら褒めそやしていながら、こんな切実な要請に一切拒絶するような輩どもには、テロ組織とは別の意味で嫌悪感を持たずにいられません。エルトゥール号事件を執拗に取り上げながら、日本帝国が執拗に不平等条約にこだわり対等条約を求めたオスマン帝国と最後まで国交を拒絶していた事実に一切触れない恥知らずどもですから、意外性はありませんが。
Posted by 無神論者 at 2015年02月08日 06:05
トルコ政府がいい子ぶっててワラタ。

-----引用始め-----
トルコとIS(ISIL)との関係は、表面には出ていないが、お互いに邪魔しない無言の良好な関係にある、と言ってもいいのではないかと思われる。それはこれ迄の間、IS(ISIL)が必要とする戦闘員や武器や資金が、どうもトルコを経由して、IS(ISIL)の手に渡っていたようだからだ。

したがって、これまでトルコは大きな被害を、IS(ISIL)から受けることは無かったし、たとえあっても、意外にスムーズに解決することが出来てきている。たとえば、イラクのモースルのトルコ領事館がIS(ISIL)によって支配されたとき、48人の外交官や警備員が人質となったが、長期にわたる人質期間にもかかわらず、彼らは極めて健康な状態で、釈放されている。

その後、比較的最近に起こったのは、トルコの軍人が密輸取り締まりや、麻薬取り締まりなどを目的として、シリア領内に入りIS(ISIL)によって、取り押さえられたことがあった。しかしこの場合も、トルコの軍人は難なく釈放されている。[後略]

中東TODAY:NO3612『トルコとIS(ISIL)の間にも問題はある』[2015年01月29日(Thu)]
http://blog.canpan.info/jig/index-2.html
-----引用終り-----
Posted by 王子のきつね at 2015年02月09日 11:27
↑のコメントのURLをまちがった。orz
http://blog.canpan.info/jig/archive/5350
Posted by 王子のきつね at 2015年02月09日 11:32
NHKが呼称を改めました。
http://www3.nhk.or.jp/news/is/0213is.html
Posted by haim at 2015年02月14日 18:16
イスステをもう一歩進めて、
イスステ+テロ+少数のグループ=イステロ団ではいかが?
すわるとかみつかれる椅子みたいでもありますが(笑)
Posted by あら? at 2015年02月18日 14:52
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