◆ ギリシャ問題の核心(2015):  nando ブログ

2015年06月29日

◆ ギリシャ問題の核心(2015)

 ギリシャと EU の対立が問題となっている。その本質は何か?

 ──

 ここで対立となっているのは、次の点だ。
  ・ EU ………… 財政健全化を要求する
  ・ ギリシャ …… 財政健全化を拒む


 具体的に言うと、EU の要求とギリシャの主張はこうだ。
 債権者団ではIMFが最も強硬で、ギリシャが提出した財政再建策が企業への増税などに偏り過ぎているとして、年金支給額の削減や支給開始年齢の引き上げの前倒しなど、歳出構造にメスを入れるよう迫っている。
 一方、ギリシャ議会与党・急進左派連合の報道官は25日、「要求は壊滅的な措置を再び交渉に持ち込んでおり、ギリシャへの脅迫だ」と批判。チプラス政権が「越えられない一線」とこだわる年金支給額削減への抵抗は強い。さらにギリシャ側は、3000億ユーロを超える政府債務の返済負担軽減も求めており、対立点はなお多い。
( → 毎日新聞 2015年06月25日

 では、これらの主張を実現すれば、何とかなるのか? いや、ならない。実は、多くの人は見失っているが、これらの政策は、4年前に取った政策なのである。
  ・ ギリシャの財政改革
  ・ ギリシャの債務の半減

 これらの政策を、4年前のギリシャ危機の際に取ったのだ。

 財政改革については、次の記事がある。
  → 改革先送りのギリシャ 年金減、増税で痛み味わう

 債務の半減については、次の記事がある。(引用)
 ギリシャ国債を保有する銀行や保険会社は、元本の 53.5%を自主的に放棄するという条件を受諾した。利子も含めると、民間の債権者は本来受け取るべきだった金額の70%をあきらめることになる。
( → 日経ビジネス 2012年2月24日

 要するに、今回 EU が要求していること(財政改革)も、ギリシャが要求していること(債務減免)も、どちらも4年前に実現していたことなのだ。「それで問題は解決」と見込んだのだが、実は、ただの問題の先送りにすぎなかった。かくて、あれから4年後に、また問題が再発した。
 とすれば、今ここで財政改革や債務減免をしたところで、やはり一時しのぎ(問題の先送り)になるにすぎない。これらは本質的な解決にはならないのだ。

 ──

 では、どうすれば本質的な解決になるか? それには、物事の本質を見ればいい。
 まず、4年前の記事で、こう書いた。
 ギリシャの破綻回避のために、EFSF(欧州金融安定基金)を利用する方向で進んでいる。しかしこれは無効だ。バケツの穴があいているからだ。
( → ギリシャ対策(EFSF)は無効

 ここで、「バケツの穴があいている」という表現をとった。これは適切な表現である。ただ、ここでは、この言葉を「財政赤字の垂れ流し」という意味で用いたが、これはちょっと抽象的すぎたかもしれない。
 「バケツの穴があいている」ということは、もう少し具体的に言うと、次の二点である。
  ・ 歳出が多すぎる (公務員が多すぎる)
  ・ 歳入が少なすぎる(徴税が不完全で脱税天国)


 公務員が多すぎる点については、次の記述がある。
 ギリシャは消費税を2006年の18%から2010年には23%へ段階的に引き上げ、計5%増税しました。にもかかわらず、ギリシャは財政破綻したのです。ギリシャは日本以上に「公務員天国」だということです。
 政権交代のたびに、政治家が支持者を公務員にしてきたため、国民4人に1人が公務員なのです。しかもギリシャの公務員は民間の2〜3倍の高給をとっており、若年層の給料比較では民間企業が1,000ユーロ(約12万円)なのに対し、公務員は2,000ユーロ(約24万)という統計もあります。
 さらに、年金も高い。現役時代の給与水準との比較(所得代替率)でいうと、ギリシャは96%で、老後も現役世代の給料並みの年金をもらっているのです(日本は「夫40年勤続・妻が専業主婦」モデルで59%、「男性単身世帯」は34%) 。
( → ギリシャの教訓とは何か?

 徴税が不完全で脱税天国である点については、次の記述がある。
 ギリシャにはいわゆる闇経済がはびこっていて、その規模は市場全体の三分の一にも達するそうです。闇経済・・・つまり納税しない経済がはびこっているということです。
 ギリシャは貧富の差が激しく、富裕層は税金をほとんど払っていないのが現実。アテネの最高級住宅地にはざっと250軒の豪邸があり、その多くがプール付きだというが、うち税金を払っているのは3軒のみだとか。
 なぜそんな簡単に脱税できるのか。それが「3分の1ルール」です。これは、例えば100万円の税金を払わなければいけないという時、3分の1を実際に納税し、残りの3分の1は賄賂に回す。そして最後の3分の1は払わずに済ませるのだそうです。
( → ギリシャはなぜ破綻したのか
 ギリシャで財政赤字が膨らんだ原因の一つに、脱税の横行がある。政府が把握できない地下経済の割合は、国内総生産(GDP)の3割程度にのぼるとみられている。
( → 朝日新聞グローブ (GLOBE)

 これが「バケツの穴があいている」(財政赤字がひどい)ことの実状だ。こういう実状があるのだから、「バケツの穴を2割ぐらい小さくしよう」というような解決策では、とうてい問題が解決しない、とわかる。EU の示した支援条件は、もともと一時しのぎの方策に過ぎず、問題の根本的な解決策とはならないのだ。

 ──

 では、どうする? 
 もちろん、歳出を大幅に減らすだけでなく、歳入を増やすことが必要だ。ただし、そのためには、国家を改造するぐらいの大変革が必要だ。「ちょっと修正する」というぐらいでは足りず、「国家を再構築する」ぐらいの大変革が必要だ。
 そして、それは、容易ではないし、数年ぐらいの期間ではとうてい実現できない。とすれば、答えはただ一つ。
 「ユーロを離脱すること」(共通通貨から離れること)

 である。これしかない。

 そもそも、「ギリシャというバケツに穴があいている」という状況では、「ユーロという通貨圏全体のバケツに穴があいている」ということに等しい。これを補うためには、他のユーロ諸国が毎年多大に財政援助をするしかない。つまり、毎年毎年、巨額の債務減免をするしかない。しかし、そんなことは不可能だ。
 これまで「一度限り」のつもりでやったし、今度はふたたび「一度限り」のつもりでやるらしいが、何度やったところで、バケツに穴があいている状況では、解決しない。永続的にギリシャに資金援助するしかない。だが、それは不可能だ。
 とすれば「バケツに穴があいている」というギリシャそのものを、ユーロから切り離すしかないのだ。
  ・ ギリシャに多額の資金援助を与え続ける。
  ・ ギリシャをユーロから離脱させる。

 この二者択一なのである。(

 ところが現実には、次の政策が取られた。
 「一時金を贈与するが、そのためにはバケツの穴を少しだけ小さくすることを条件とする」

 しかし、こんな提案は無意味だ。バケツの穴を少しだけ(2割ぐらいだけ)小さくしたところで、穴から赤字が垂れ流しという状況はほとんど変わらない。また、財政緊縮をすれば、GDP がどんどん縮小するので、逆効果だとすら言える。このことは前にも論じた。
  → ギリシャ問題の混迷 (グラフあり)

 結局、上記()のような二者択一があるだけだ。そして、この二つのうちで、前者が取れない以上は、後者を取るしかない。つまり、ギリシャをユーロから離脱させるしかない。
 この後、(緊縮政策のかわりに)通貨の切り下げをともなう形で、インフレと GDP 拡大を同時に実現すればいい。そういう形で、財政を健全化することができる。
  → ギリシャとユーロ離脱
  
 ただし、これは、通貨面での効果だけだ。これとは別に、財政面での効果も狙うべきだ。具体的には、こうだ。
  ・ 歳出を減らす (公務員や年金の削減)
  ・ 歳入を増やす (増税よりも脱税撲滅)


 以上のようにして、通貨面と財政面の双方で、ギリシャを抜本的に改革するべきだ。これが正解だ。
 一方、次の政策は、不正解だ。
  ・ 債務を減免する。
  ・ 年金や公務員給与をいくらか下げる

 こんなことはただの一時しのぎにしかならない。抜本策とは程遠い。

 ギリシャがなすべきことは、きちんと生産活動をすることだ。公務員や老人が、自分の手足を動かして、きちんと金を稼ぐことだ。農業でもいいし、観光でもいいし、とにかく何らかの形で生産活動をするべきだ。それが正解だ。
 なのに、帳簿のことだけを見て、「公務員給与を減らせ」「年金を減らせ」なんていうふうに数字を減らすことばかり狙っていては、ギリシャ国民が「餓死してしまう」と反発するだけだろう。
 ギリシャ国民は、餓死するほど支出を減らせばいいのではない。ろくに働かずにいる状態をやめて、きちんと生産活動をすればいいのだ。ここが本質だ。
 この本質を見失って、金額の数字のことばかりを考えて、数字の帳尻を合わせることばかりを考えているから、EU とギリシャは混迷のさなかで迷うことになるのだ。

( ※ 特に、緊縮策は、最悪だ。GDP がどんどん低下すれば、国全体の生産力が低迷して、浮上するきっかけを失う。比喩的に言えば、病人は、金を返すために食費を節約したあげく餓死すればいいのではない。むしろ、食事を取りながらちゃんと働けばいい。めざす方向を間違えてはならない。)
 


 [ 付記 ]
 実を言うと、ギリシャ問題は大した問題ではない。ギリシャの GDP は日本の 20分の1の規模で、EU 全体の3%程度にすぎないからだ。アイルランド並み。この程度の規模であれば、いくらか変動したとしても、欧州全体を揺るがすほどの問題ではない。(西独と東独との合体の方がよほど大きな影響があった。)
 世間が大騒ぎしているのは、「これをきっかけにスペインやポルトガルなども雪崩を打ってユーロから離脱するのでは?」という疑心暗鬼に駆られているからだろうが、ろくに徴税もできないギリシアと他国では事情がまったく異なる。心配は杞憂と言うべきだろう。
 今回、世間で大騒ぎになっているのは、(疑心暗鬼による)一種の妄想のようなものだ。実際には、大した問題ではない、とわかる。また、赤字の垂れ流しであるギリシアがユーロから出ていけば、ユーロの状況は悪化するどころか改善する、ともわかるはずだ。
 なるほど、デフォルトになれば、貸し付けた金が焦げ付くだろうが、しかし、その金はすでに焦げ付いているのも同様の扱いである。損金に算入済み。今さら急に焦げ付きが出るのとは違う。
 今回の支援金だって、貸し出した後で返済される見込みはないし、ただの贈与みたいなものだ。だったら、そんな支援金は出さないまま、ギリシャをさっさとユーロの外におっぽり出した方が、欧州諸国としては得なのである。
 ギリシャのユーロ離脱を、「理想の崩壊、世界の終わり」みたいに感じている人々が欧州には多いようだが、「別にどうってことはないのだ」と現実的に理解すれば、大騒ぎする必要はない、とわかるはずだ。もちろん、株価の暴落などは、馬鹿げている。むしろ株価は上昇してもいいくらいだ。



 【 追記 】
 すぐ上では「あまりたいしたことはない」と記したが、さらに「ちっともたいしたことではない」という感じの話を、次項で記した。
  → ギリシャ危機の解決策(2015) (次項)

 上の話が正しいので、本項の前半(本文)で述べたことは、ちょっと大げさであったようだ。マスコミの報道に惑わされすぎてしまった。真相は、次項にある。次項を読んでほしい。



 【 関連項目 】

 2011年に、ギリシャ問題を扱ったシリーズ(連続もの)があるので、そちらをご覧ください。最初の項目はこれです。
  → ギリシアの通貨バブル

 これを含めて、6項目の連続シリーズがあります。

 
posted by 管理人 at 22:32 | Comment(5) | 経済 このエントリーをはてなブックマークに追加 
この記事へのコメント
日本もギリシャと同等という説があるようなんですが…。

http://blog.livedoor.jp/columnistseiji/archives/51630597.html
>で、最後の方に、全然余裕がないという国が4つ挙げられているのですが…
>キプロス、ギリシャ、イタリア、日本。

もしよろしければ、これに反論願います。
Posted by のぐー at 2015年06月30日 14:03
 日本との比較は、次項に記してあります。
Posted by 管理人 at 2015年06月30日 20:28
ありゃ。反論どころか賛同しちゃいましたか。
http://nando.seesaa.net/article/421566628.html
とすると南堂さんが普段から主張していた
「赤字財政(財政出動)で景気回復」
という路線(よく病人にたとえていらっしゃいましたよね)は(少なくとも日本については)間違っていた?そんな余裕は無い?
Posted by のぐー at 2015年06月30日 20:46
 短期的には赤字財政で減税すべき。
 長期的には赤字を圧縮すべき。

 というか、長期的に赤字を圧縮するためには、短期的には赤字を拡大しなくてはならない、ということ。迂回経路。
 長期的な赤字を圧縮するために、短期的に赤字を削減すれば、かえって長期的には赤字が増えてしまう、とも言える。

 ここを理解できない人が多すぎる。何度も示したので、サイト内検索で「迂回」という語の言及箇所を見てください。
  → http://is.gd/E1DRd1
Posted by 管理人 at 2015年06月30日 22:26
  Walk Don't Run ベンチャーズですね 管理人さん 

 その時間差が我慢できないのが 奴らでしょ  問題は

 <市場>経済  なんでしょ ダメなのは  


  つながり ないですが 投機的企業が 迂回しろなんて 面白いですね
Posted by k at 2015年07月01日 21:01
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