◆ 英国は EU を離脱するか 5:  nando ブログ

2016年06月25日

◆ 英国は EU を離脱するか 5

 英国と EU の交渉は、たぶん無期限延期になるだろう。新たな理由が見つかった。(ゲーム理論で説明される。)

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 これまで、「英国は EU を離脱するか」シリーズの 1〜3 では、「延期になるだろう」という見通しを示してきた。ここで、新たに別の理由が見つかった。これはかなり強力な理由だ。
 その理由とは、「思惑違い」である。英国と EU の思惑が違うので、交渉に入れそうにないのだ。

 (1) 英国の思惑

 英国(離脱派)の思惑は、こうだ。
 「 EU を離脱するが、EU 各国とは自由貿易協定を結ぶ。手間はかかるが、何とかして実現する。そうすれば、現状の無関税貿易が実現する。ゆえに、関税が高くなるという残留派の懸念は、心配しなくていい」

 (2) EU の思惑

 EU としては、英国の国民投票を皮切りに、各国で同様の事態が起こることを恐れる。それは EU そのものの完全崩壊を意味する。それだけは絶対に避けたい。とすれば、「 EU を離脱するが、EU 各国とは自由貿易協定を結ぶ」という英国の思惑を打破する必要がある。ゆえに、英国が自由貿易協定を求めてきても、断固、これを拒否する。英国には、懲罰的な高関税を課する。
 これが、EU の思惑だ。読売の記事にもある。
 EUは、EU離脱を求める英国との交渉に、厳しい姿勢で臨む方針だ。域内への物品の無関税輸出など EU単一市場の特権を、英国から剥奪する方向で検討している。反 EU の動きをけん制し、離脱のドミノ現象の回避に全力を挙げる構えだ。
( → 読売・朝刊・3面 2016-06-25[紙の新聞])

 ──

 以上の (1)(2) のように、英国と EU の思惑は違う。
 これを受けて、離脱派の急先鋒で、次期首相の最有力候補であるジョンソン前ロンドン市長は、離脱の手続き開始(= 通知)を遅らせる方針を示した。
 次期首相候補で離脱派のジョンソン前ロンドン市長は 24日、早期の離脱通知に慎重な姿勢を示した。離脱派は、いったん通知すれば、2年後にEUの単一市場から締め出されるため、不利な交渉を迫られると懸念し……
( → 読売新聞 2016-06-25

 離脱を通知すれば、2年後には自動的に離脱となる。条件交渉はできない。「無関税輸出を維持してくれ」と言っても、EU の側に拒否される。圧倒的に不利な立場に立たされ、交渉の余地がない。自分で自分の腕首を縛っている状態だ。(選択の余地がない。)
 これではまずい。とすれば、英国としては、自分で自分の腕首を縛るのをやめようとする。つまり、「離脱を通知しない」というふうにする。要するに、
 「離脱の方針を(国内的に)示すだけで、( EU との)手続き上では何もしない。特に、通知をしない」
 というふうにするわけだ。

 すると、どうなるか? 通知をしないので、交渉もしない。「 EU と事前交渉をしたい」というのが、英国の離脱派の願いだが、EU はそれを突っぱねる。
 結局、何も始まらないまま、いつまでも現状維持が続く。
 これはつまり、「離脱は無期限延期」ということだ。これが現実的な解となるだろう。

 以上が、私の見通しだ。



 [ 付記 ]
 それ以外に何があるか?
 「交渉してもらえる」という離脱派の妄想を除けば、現実にあるのは、「一方的な通知」だけである。その場合、「交渉してもらえる」という妄想に反して、現実には交渉がないので、2年後には離脱となる。すると、英国は高関税を課されて、壊滅する。自殺も同様だ。スコットランドと北アイルランドも道連れか。
 現実には、そうはならない。英国であれ、スコットランドであれ、北アイルランドであれ、自殺する道には進むまい。となると、残る道は、ただ一つ。前述の通りだ。



 【 補説 】
 これは要するに、「囚人のジレンマ」みたいなものだ。(正確には、タカ・ハト・ゲーム

 通常、交渉というものは、「ギブ・アンド・テーク」になる.双方が少しずつ譲歩することで、妥協して、双方にとって少しずつ利益が上がるようにする。正確に言えば、双方が 10のマイナスと 20のプラスを求める。どちらにも 10のマイナスが発生するが、それでも、20のプラスを得るから、総合的にはどちらも 10のプラスを得る、というふうになる。……これは、たとえば、TPP の交渉で見られる。
( ※ 何もしないと、プラスもマイナスもゼロで、現状維持と見えるが、他の仲間はそれぞれプラス 10を得ているので、自分だけが取り残される感じだ。)

 一方、今回は、かなり異なる。英国の側が「自分だけが一方的に得をすること」を求める。(これは、タカ・ハト・ゲーム におけるタカ戦略。)
 英国(の離脱派)は、「自分だけが得をする」ことを望む。つまり、
 「移民の受け入れ(という負担)は拒むが、無関税輸出という利益は失いたくない」
 というわけだ。
 これに対して EU は、
 「おいしいところだけを取るような、つまみ食いは許さん。交渉打ち切り」
 というふうに拒否する。こちらも、タカだ。

 かくて、タカとタカのつっぱいあいで、どちらもが傷つき、どちらもが大損する。(英国が自分だけの利益を狙い、EU も強硬に拒否するので、双方が大損、という結果。)

 この場合、戦いに入れば、双方が大損するとわかっている。とすれば、現実的には「戦いに入らない」(何もしない)というのが、唯一の解となるだろう。
 これが、ゲーム理論からの理論的な帰結だ。

 なお、こうして膠着状態が長く続けば、そのうち情勢が変化するので、英国の側の方針( EU 離脱)も変化するだろう。たとえば、スコットランド独立の動きにともなって、英国民の見解も変わっていく。そして、英国民が「タカ」という選択肢を捨てたとき、このゲームは「ハト・ハト」の形で安定するようになるだろう。

 逆に言えば、英国が「自分はタカだが、 EU は軟弱だからハトになるだろう。ゆえに強硬派の自分たちばかりが得をする」なんていう甘い見通しを取っている限り、問題は解決せず、膠着状態が続くはずだ。無期限延期。





( ※ 次項に、続編があります。上記の道に失敗した場合の話。 → 次項
 
posted by 管理人 at 13:36 | Comment(0) | 政治 このエントリーをはてなブックマークに追加 
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