◆ 英国は EU を離脱するか 11:  nando ブログ

2016年06月28日

◆ 英国は EU を離脱するか 11

 スコットランド、北アイルランドに続いて、ウェールズも独立の意向を示した。こうなったらもはや、物事を逆転して、イングランドだけを独立させればいい。

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 前項 では、スコットランド、北アイルランド、ウェールズが独立したあとで、イングランドだけが(英国として)EU を離脱するという危険を、避ける方法を示した。それは、イングランド英国から独立することだ。

 とはいえ、イングランドが英国から独立するのなら、スコットランド、北アイルランド、ウェールズは独立する必要がなくなる。むしろ、スコットランド、北アイルランド、ウェールズは英国(連合王国)に留まって、イングランドだけが英国から独立する方がいい。こうすれば、イングランドだけが EU から離脱して、他の3つは(英国として)EU に残留できる。これなら、余計な手間がかからない。もっともシンプルに、イングランドの EU 離脱が実現する。

 ま、イングランドが単独で EU から離脱するかどうかは、どっちでもいい。「やっぱり離脱はやーめた」と言い出してもいい。その点は、ご自由に。
 とはいえ、イングランドが EU から離脱するかどうかはともかく、イングランドは( EU 離脱するなら)英国から独立するべきだろう。その方が問題がシンプルになるからだ。
  ・ イングランドは英国から独立して、EU から離脱。
  ・ イングランドは英国から独立せず、EU には残留。

 この二者択一になる。そうすれば、話はシンプルになる。だから、この二者択一を、新たにイングランドの住民投票の形で実施するべきだろう。
 それが、現在なすべきことだ。(私の提案)

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 では、なぜ、そんなことをするか? それは、情勢がすっかり変わってしまったからだ。特に、スコットランドと北アイルランドに続いて、ウェールズまで独立の意向を示したからだ。
  → ウェールズにも独立の動き 英連合王国、解体の危機
  → ウェールズでも独立の声 民族党党首、早期独立への転換表明
  → EU離脱引き金に「イギリス解体」の危機 ウェールズでも独立の動き

 これらの報道からわかるように、ウェールズでは独立の気運が高まっている。なるほど、国民投票の時点では、ウェールズでは離脱派が多数を占めた。しかしその後、(イングランドを含めて)各地で「後悔している」という声が多数出た。「できれば前回の投票を取り消して、残留に投票し直したい」という声が続出している。
 そして、ウェールズにおいては、「独立」によって EU 残留が可能になる、という道が残されている。だからこそ、ウェールズは「独立」プラス「 EU 残留」を実行しようという気運が高まっているのだ。

 となると、スコットランド、北アイルランドに続いて、ウェールズまで独立する方向なのだから、国民投票の時点とはまったく情勢が変わってしまったことになる。
 あの時点では、次の二者択一だった。
  ・ 英国全体の離脱
  ・ 英国全体の残留

 この二者択一だった。そういう形で国民投票はなされた。
 しかるに、現在では、「英国全体の離脱」という道は存在しなくなっているのである。なぜなら、スコットランド、北アイルランド、ウェールズが独立する方向だからだ。つまり、情勢がまったく変わってしまっている。となると、国民投票そのものが意味を失っている。

 ここに気づくのが大切だ。ここでは、「あのときと今とでは事情がまったく異なっている」というふうに、現実を正しく理解することが必要だ。
 特に、二者択一は、英国全体の「離脱/残留」という選択方法はもはや消失しており、イングランド単体の「離脱/残留」という選択方法だけが残っている、ということに気づくことが必要だ。

 なのに、多くの人々は、このことに気づかない。情勢がまったく変わってしまった、という現実に気づかない。残された選択肢は、イングランド単体の「離脱/残留」であるのに、相も変わらず、英国全体の「離脱/残留」について論じている。
 特に、EU の側(独仏)は、英国に「さっさと離脱しろ」なんて言っていて、英国というものがもはや分裂状態であることに気づいていない。要するに、現実を理解できていない。

 人々は現実を理解できていない。これはもはや「裸の王様」のような状態だ。現実に目の前で「英国の分裂」という事態が進行しつつあるのに、それを理解できないまま、「統一された英国の離脱」というものばかりを考えている。

 目を開け。現実を見よ。……そういうふうに、私は勧告しておこう。
 とにかく、今の人々は、「裸の王様」のような状態にある。特に、政治家はそうだ。まったく、困ったことだ。せめて、マスコミが指摘すればいいのだが、マスコミすら、おろおろとうろたえて困惑しているばかりだ。まったく、困ったことだ。

( ※ 理解しているのは、本項を読んだ読者ぐらいだろう)



 【 補説 】
 スコットランド独立の動きがあるが、これが現実には困難であることを指摘する声がある。
  → イギリスのEU離脱とスコットランド――独立への茨の道 | SYNODOS
 ここでは、法的手続きの大変さを指摘している。特に、スコットランド独立の住民投票に、英国政府の許可が必要であることを指摘している。
 しかし、法的な手続きは特に必要ない。実際に住民投票を実現する必要もない。「住民投票をしよう」という声を上げて、世論調査によって「住民投票をすればまさしく独立が実現する」ということを示すだけでいい。
 なぜか? ここでは、スコットランドの独立が目的ではないからだ。本項の冒頭に示したように、なすべきことは、スコットランドの独立ではなくて、イングランドの独立なのである。イングランドだけが英国から出て行けばいいのであって、スコットランドが英国から出て行く必要はないのだ。(むしろ英国に残留するべきだ。)
 スコットランドの独立をめざすとき、それ自体は目的とならず、代わりに、イングランドの独立が目的となる。したがって、法的手続きが必要なのは、イングランドの独立の方だ。ここでのみ、英国政府の許可が必要となる。

 ただし、ここでも、本当は英国政府の許可は必要ない。なぜなら、イングランドが英国から独立したがるはずがないからだ。そんな「庇を貸して母屋を取られる」ようなことを、望むはずがない。
 だから、ここでも、「イングランドが英国から独立することの是非」を問うのは、イングランドを独立させるためではなくて、イングランドを独立させないためである。(住民投票で否決するためである。)
 そして、その最終的な目的は、英国全体の残留だ。

 要するに、英国全体の残留という最終結果をめざすために、「イングランドの独立(の住民投票)」が必要となる。
 そして、それをめざすために、あらかじめ「スコットランド、北アイルランド、ウェールズの独立(の住民投票)」が必要となる。
 だから、「スコットランド、北アイルランド、ウェールズの独立(の住民投票)」は、それ自体は最終目的とはならない。とはいえ、当面は、そこをめざすべきなのだ。

 このように、近い目的と、遠い目的とを、きちんと区別することが大切だ。逆に言えば、この両者を混同するべきではない。たとえば、上記ページ( SYNODOS )のように、「スコットランド独立は茨の道だ」なんてふうに考える必要はない。スコットランド独立は最終目的ではないからだ。スコットランド独立は、途中の経由点であるにすぎない。最終目的は、スコットランドが英国に残ったまま EU に残留することだ。その際、イングランドがいっしょに残留するかどうかは、イングランドしだいであり、どっちでもいい。スコットランドとしては、スコットランド独立が目的なのではなく、スコットランドが EU に残留することが目的なのだ。……ここを勘違いしてはいけない。



 [ 付記1 ]
 そもそも、国民投票には、法的拘束力はない。
 まず、勘違いしてはならないのは、今回の国民投票には「法的拘束力はない」ということです。この点について、イギリス国民ですら意識から飛んでいるのか、知らされていないのか、すでにEU離脱が「決定事項」であるかのように、「残留派」と「離脱派」で熱狂と落胆が入り交じっています。
 しかし、イギリス議会が今回の決定を無視・黙殺しても、法規上は、なんら問題はありません。
( → 離脱しないかも?<日経BPnet>
 国民投票そのものに法的拘束力はなく、結果が出ても法的には何も決まってはいない。
 理論的には、政府が国民投票の結果を無視することもできる。だがそうなれば、離脱に1票を投じた 52%の怒りを買うのは確実だ。
( → CNN.co.jp : 再投票実現の可能性は 法的には障壁無し

 というわけで、法的拘束力はない。

 ※ なお、「 52%の怒り」とすぐ上に書いてあるが、そんなものはもはや存在しない。離脱派の多くはすでに態度を変えているのだ。このような情勢の変化を理解するべきだろう。

 ──

 ついでだが、次の話もある。
  → EU離脱、バラ色のはずが…旗振り役が「公約」を反故
  → 公約「うそ」認める幹部 「投票後悔」の声も

 つまり、「離脱」に投票した人々の根拠がすでに失われている。人々は「だまされた!」と怒っている。
 離脱に1票を投じた 52%の怒りを買うのは、国民投票を蒸ししようとする人々ではなく、嘘をついて国民投票をミスリードした人々(離脱派の政治家)なのだ。
 嘘に基づいて投票された結果をかたくなに守ろうとするのは、捏造データを守ろうとするのも同然だ。そう理解するべきだろう。

 [ 付記2 ]
 スコットランド、北アイルランド、ウェールズは、それぞれ別個に独立するよりは、統一して独立を求める方がいいだろう。その場合には、単なる「独立」ではなくて、「英国の分割」という形になる。「3地域 v.s. イングランド」という形で英国を分割するわけだ。
 ここで、3地域が英国に残るのなら、「英国からイングランドを除名する」(追い出す)ということになる。こういう形で住民投票をするといいだろう。

 あるいは、次の形でもいい。
 「自分の地域は、EU 残留を前提に、英国に留まる」
 これには、3地域は賛成するはずだ。イングランドは、賛成して残留しても、反対して離脱しても、どっちでもいい。ただし、EU から離脱するなら、同時に、英国からも独立することになる。……こういうふうにすれば、万事OKだろう。

     《 補注 》
     細かな手続き論を述べておこう。
     「英国からイングランドを除名する」なんてことはできないぞ……と思う人が多いだろう。
     だが、さにあらず。次のようにすればOKだ。
     「英国からイングランドが出ていくが、英国という名前だけはイングランドが引き継ぐ。他の3地域は『ケルト連邦』というような名前を冠する」
     この場合、英国という名前はイングランドが引き継ぐから、イングランドとしては文句はないはずだ。一方、EU に残留する政体としては、現状の政体がそのまま引き継ぐから、この3地域はそのまま EU に残留できる。(ただし、この政体は、英国からケルト連邦へと名称変更する必要がある。名称だけは、イングランドに譲与される。)

     なお、ケルト連邦には、3地域のほかに、現在のアイルランドも加わるべきだ。その分も合わせると、計4地域が合体することになる。


 
posted by 管理人 at 23:54 | Comment(3) | 政治 このエントリーをはてなブックマークに追加 
この記事へのコメント
付記2は愉快です。
今朝の日経のFTのコラムはその様な愉快な手は示していませんが、EUが「一定数以上の移民流入時に発動できる人の移動の自由を制限する非常ブレーキ条項」(シェンゲン協定への追加と思われる)をお得意の「法文改定」「修正なんたら」で定めたら(デンマークやスウェーデンなどの加盟国からの提案が望ましい)、英国で国民投票のやり直しが可能で、すでにデンマークがマーストリヒト条約でEUから譲歩を引きずり出して再投票した事例を示しています。
混乱に乗じて先物で儲けた人がいそうですね。
Posted by 京都の人 at 2016年06月29日 05:59
「国民投票をやり直すべきではない」という調査結果もあるようです。

イギリス人がEU離脱の結果に悔やんでいるという報道は本当か?
http://ichikawa-ken.hatenablog.com/entry/20160630/1467233602
6月27、28日に、国民投票のやり直しについて賛成・反対を尋ねた結果、
 賛成:31% 反対:58% 分からない:11%
という結果でした。
この結果で興味深い点は、離脱に投票した人では、91%がやり直しに反対だということです。
Posted by 横断中 at 2016年07月01日 01:45
 はてブのブコメで指摘されているが、離脱派の1割が態度を変えるだけで、結果はひっくり返る。

> 91%がやり直しに反対

「やり直すべきではない」が多数派だということは、「やり直せば逆転する」ということを理解しているということ。やり直しても離脱だと信じるなら、「やり直してもよい」が多数派になる。

 あと、「やり直し」じゃなくて、「新状況で新規に国民投票」となる。情勢はまったく変わっているのだから。詳しくは、あとで別項で書きます。
Posted by 管理人 at 2016年07月01日 07:51
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