◆ 英国は EU を離脱するか 12:  nando ブログ

2016年06月29日

◆ 英国は EU を離脱するか 12

 英国の離脱について、この先を予想してみよう。大筋としては、前に述べたとおりで、「延期」となるだろう。では、もう少し細かく見ると? 

 ──

 まず大事なのは、「キャメロン首相は、離脱を実行するつもりは、まったくない」ということだ。これは事実であり、かつ、重要なことなので、理解しておこう。
 これが事実か否かと言えば、事実だ。本人がはっきりそれを表明している。「自分は離脱の通知をしない。それは次期の首相(党首)に委ねる」と。

 これは重要なことだ。仮に、離脱をするつもりであるなら、辞職をしないで、自分で離脱通知をしたはずだ。彼は「国民投票にかける」と公約しただけであって、「国民投票に負けたら辞任する」というようなことは公約していないからだ。常識的に言えば、「国民投票の結論通りに実行する」というのが、もっとも責任ある行動だろう。つまり、自分自身で離脱の通知をするのが、もっとも道理に則った行動だ。
 しかし、彼はそうしなかった。なぜか? 「離脱」を実行するのが、絶対にイヤだったからだ。ここでは、「離脱を実行するくらいなら、首相の職を辞した方がマシだ」という主義があることになる。

 これは、普通の政治家とは違う。普通の政治家は、何よりも権力維持を重視するからだ。政策は二の次だ。
 たとえば、舛添ならば、住民投票で自分の方針が否決されたなら、その否決という方針に従いながら、都知事の椅子にしがみついたことだろう。都知事の椅子にしがみつくことが最優先であり、政策は二の次であったはずだ。「君子豹変す」とでもうそぶいて、さっさと方針を転じたはずだ。
 安倍ならば、世論調査や選挙などで自分の方針が否定されたなら、自分が辞職するようなことはしないで、世論調査や選挙などを単に無視しただろう。憲法であれ、何であれ、自分の思うとおりにならないものは、何でも無視して、勝手に自己流の方針を貫徹しただろう。独裁流。
( ※ ちょうど、「憲法違反だ」と判断した法制局長官の首をすげ替えて、「合憲だ」と判断する法律の素人を着任させたように。安倍にとっては、憲法違反なんて、朝飯前だ。 → 検索
 キャメロン首相は違う。彼は、物事の道理を通そうとする。そのためには、職を辞すことも厭わない。要するに、彼は、自分の職を投げ打つことによって、英国を離脱の危機から救おうとしたのである。彼はそれほどにも、離脱を実行したがらない。……これが重要だ。

 ──

 ここまで理解すれば、今後の方針も、ある程度は見通せる。それは、こうだ。
 「キャメロン首相を初めとする、保守党の残留派(これは大幅な多数派である)の方針によって、離脱の通知は延期される。最低でも数カ月。実際には、数年ぐらいは、延期されるだろう」


 では、延期は可能か? 単純な延期は不可能だろう。国民投票をあからさまに無視することはできないからだ。
 しかるに、重要な情勢の変化があれば、情勢を見極めるために、延期は可能となる。

 では、重要な情勢の変化とは? 具体的には、こうだ。
  ・ スコットランド独立への動き(住民投票など)
  ・ 北アイルランドとウェールズでも同様のこと。
  ・ 世論調査の結果で残留派が多数派になること。


 特に、最後の「世論調査」が重要だ。世論調査は、国民投票とだいたいは同じような意味合いをも持つ。(国民の意思の調査。)
 そこで、残留派が 55%以上を安定的に維持して、離脱派が 45%以下を安定的に維持するのであれば、「世論はもはや離脱を支持していない」というふうに見なせる。この状況で、離脱を実行することは、「民意に従う」ことにはならず、「民意に反する」ことになる。
 だから、「離脱の取りやめ」とまでは行かなくとも、「離脱の延期」をする名分にはなる。十分に、その名分になる。

 というわけで、上記の三点のような情勢の変化が起こったあとで、「延期」という方針が確実に取られるようになるだろう。……それが私の見通しだ。

 ──

 なお、近いうちに、上記の三点は次々と実現に向かうだろう。スコットランドや、北アイルランドや、ウェールズは、次々と独立に向かう動きを進めて、それが実現していく過程が報道されるだろう。
 また、世論調査では、(スコットランド独立などの報道を受けて)残留派がどんどん優勢になっていくだろう。
 こういう風な情勢の変化が起こるはずだ、と予想しておこう。

( ※ 当たり前すぎるとも言える。だから、「当り前だろ」と読者は思うかもしれない。しかしながら、ドイツやフランスの政府は、その当たり前のことを理解できないでいるのだ。だから「早く離脱しろ」というふうに注文する。「裸の王様」と同じで、当たり前のことを理解できていない人が圧倒的に多数なのだ。……例外は、本サイトの読者ぐらい。)



 [ 付記1 ]
 仮に「延期」という方針が正式に取られないとしても、「通知」のあとで、猶予期間はある。「通知のあとで2年間は交渉できる」という猶予期間だ。この期間は、実質的には、「延期」と同様の効果をもてる。なぜなら、2年後の期限切れまでは、いつでも「取り下げ」ができるからだ。
  → 英国は EU を離脱するか 6

 EU の規定(リスボン条約)は、離脱の条項はあまりにも簡単なものなので、「取り下げ」については何も規定されていない。しかし、英国が「取り下げ」を申請したなら、「取り下げは駄目」という権限は EU にはないので、「取り下げ」を認めるしかあるまい。常識的に言って、当然だ。
 というわけで、「延期」という方針が取られようが取られまいが、2年間の猶予期間は与えられる。その間に、上の三点の情勢変化が起これば、いつでも離脱は「取り下げ」ができるのんだ。
 
 [ 付記2 ]
 「延期」のあとでは、どうなるか? いつまでも宙ぶらりんの状態にするわけには行かないが。
 残留派が多数だ、という状況が安定的に続くようであれば、遠からず、再投票がなされるだろう。再投票は、今すぐは、もちろん無理だ。とはいえ、「延期」が長く続いたあとでは、方針を安定させるために、「再投票」が必要となるだろう。
 ただし、その時期は、1年後ということはなくて、もっと先だろう。当面は、不安定な状況が、1年以上も続くと思える。その間に、スコットランド独立のような動きも盛り上がるだろう。
 そういう不安定な状況が長く続いたあとで、ようやく「再投票」の時期が来る。それがいつかというと……まったくのヤマカンだが、2年後ぐらいかな? 

 [ 付記3 ]
 本項では、いろいろと述べているので、以前に述べたことと矛盾している点もありそうだな……と思えるかもしれない。
 しかし、本項で述べたことは、国民投票の結果が出た直後に記したことと、ほぼそっくりだ。
  → 英国は EU を離脱するか 3
 ここに書いてある「見通し」と、本項で記したこととは、ほとんど同じである。(二番煎じみたいだ。)
 ただ、上記の項目を書いたあとで、細かな情勢の変化などが生じたので、ちょっと情報の追加などをして、細かな点を書き足したわけだ。

posted by 管理人 at 23:24 | Comment(7) | 政治 このエントリーをはてなブックマークに追加 
この記事へのコメント
私は再投票は2から3ヶ月後だと思っています。
Posted by かーくん at 2016年06月30日 05:40
独仏は現段階で英国のワガママは受け入れない。英国自身の態度変化を待っている。
離脱宣言は英国のカードだから早く出せと促す。
宣言によって2年後の離脱が成立すると英国自身が崩壊する(ケルト連邦とイングランドの分裂でもいい)。英国はそれを出さずに済むための、崩壊を防ぐ方策を練っているが、離脱派が薔薇色生活へのマイルストンとシナリオをキチンと説明できないから、解は無い。
9月の英国議会で新首相が決まるだろうが、ここで残留派が残留を公約にして圧勝。
新首相は解散総選挙で民意を問う。そして残留派の圧勝となって国民投票は覆される。そして離脱派は政治生命を絶たれる。
残留派はEU内部で改革するのだ!と気炎をあげ、官僚機構に立ち向かうかな⁇
Posted by 京都の人 at 2016年06月30日 08:08
 この問題についての解説記事。
  → http://toyokeizai.net/articles/-/125057

 本項とだいたい同趣旨。離脱はしないで、そのうち再投票になる可能性が高い、という趣旨。
 特に変わったことが書いてあるわけではないが、最近の英国の情勢などを紹介している。
Posted by 管理人 at 2016年06月30日 19:05
キャメロン首相の後任を選ぶ与党・保守党の党首選への立候補が30日締め切られ、離脱派のリーダーだったジョンソン前ロンドン市長が出馬見送りを表明。

オークションで調子に乗って高値をつけたら落札してしまったような。と言う表現をよく見ましたが、逃げ出してしまいましたね。

解説記事から考えると有力候補のメイさんが「再投票」と言って元の鞘に戻すようになりそうです。
あとは振り上げた拳の振り下ろし先は離脱首謀者たちに向かうとして、周辺諸国を巻き込んだツケを誰かが支払わなければならないので、拠出金を増やすか、ポンドを諦めるか、シェンゲン協定を受け入れるか・・・・。
根が深いのは英国で移民と仕事を奪い合っている方々にとってはEUや国際取引とかは関係のないはなしと信じていることでしょう。
よそからお金を引っ張ってくる(外貨を稼ぐ)ことの重要性は難しいからわからないけど外貨を稼がなくても内需のバラマキのみで経済活性化ができる。と信じているのかもしれません。(その元金がEU拠出金と言う嘘はバレました。)
また脱離によってポンドがユーロに対して大幅に下落するとEU産食材価格が高騰して英国民は困ることになります。
この辺は考えをまとめることが難しいのでさわりだけで割愛した方が良さそうです。

あとはロイヤルファミリーが国民をなだめるような声明でも出して分裂を回避するかな。
まさかアルゼンチンがフォークランド諸島奪還とか言ってちょっかいをかけはしないと思いますが。一芝居打ってもらう口先介入ならありうるかもしれません。

ほろ酔いで思いつくまま書き連ねてしまいましたが、この茶番はその程度のものかもしれません。
Posted by 京都の人 at 2016年07月01日 00:59
キャメロン首相が何だか立派な政治家のように書かれていますが、残留派が勝つだろうと思って国民投票を実施したところ、裏目に出て英国解体の危機をもたらした張本人です。

http://jp.reuters.com/article/idJP00090300_20160627_00120160626

パナマ文書に名前が出て非難を受けたことも、残留派への打撃となりました。
Posted by ふらんくりん at 2016年07月03日 22:35
 まあ、政治家というのは、成功した点も失敗した点もあるものです。成功ばかりとか失敗ばかりとかになることはまずありません。石もて追われた舛添都知事だって、ちゃんとした仕事をしたこともある。

 政治家を褒めるとか何とかは、どうでもいい。現在の事実と、将来の方向性が重要です。次項をお読みください。
Posted by 管理人 at 2016年07月03日 23:52
今日は英国独立党の党首も逃げました。この人たちはピエロですか?
Posted by 京都の人 at 2016年07月04日 23:34
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