◆ イラク戦争の総括:  nando ブログ

2016年07月07日

◆ イラク戦争の総括

 英国で、ブレア政権のイラク参戦への評価をする報告書が出た。ここで、イラク戦争全体を総括してみる。

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 英国で、ブレア政権のイラク参戦への評価をする大々的な報告書が出た。朝日新聞 2016-07-07 では、特集を組んで報道している。
  → 英のイラク参戦 検証報告書
  → 英国、問われた米追従 イラク戦争調査委報告書 「無条件支持、必要なかった」
  → イラク戦争の政府対応検証、今なぜ必要?

 ここには、「イラク侵攻をすれば、体制崩壊後にテロが増える」という内容が含まれる。こういう逆効果の面があった(むしろ逆効果ばかりだった)ということについては、私も前に論じた。「現在のイスラムのテロの跋扈(ばっこ)は、(子)ブッシュのイラク戦争に根源がある」というふうに。
  → イスラムテロの根源 (2016年06月13日)

 というわけで、今回の英国の報告と、先日の私の項目は、ほぼ同じ時期に、ほぼ同じ趣旨のことを述べていたことになる。(時期の一致は、たまたま、ではあるが。)

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 さて。結論となるべきことは、すでに上に示した通りだ。(報告書なり、本サイトの別項なり、そちらを読めば詳しくわかる。) イラク戦争から現在のイスラム・テロ頻発への道のりが、はっきりとわかる。
( ※ バングラデシュのイスラム・テロも、この流れのうちの一つにすぎない。)

 それとは別に、(現在のテロの根源となった)イラク戦争全般について、ここで総括してみよう。歴史を振り返る形で。

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 9.11 へのヒステリー


 2001年9月11日に、9.11 NYテロがあった。これは全世界を震撼させたが、特に米国民にはひどい心の傷を残した。



19:40 ビル倒壊


 米国民は悲しんだ。そして、自分たちをこれほどにも傷つけた敵に、何が何でも仕返ししたくなった。しかし、その敵であるビン・ラディン(アルカーイダ)は隠れている。どうしたらいい? かくて、行き所のない怒りを胸に含んだ

 フセインとブッシュ


 子ブッシュには、格好の攻撃相手がいた。それは、イラクのフセインである。父ブッシュは、イラクを敗北させたが、イラク内部には進行しなかったので、フセインはそのまま大統領の座に居座っていた。
 ここで子ブッシュは、「こいつを何とかやっつけたい」と思った。しかし、名分がない。フセインはもはやクウェートを侵略していないのだ。では、何とかして、フセインを倒す口実は見つからないか? 子ブッシュは理由探しを部下に命じた。
 ここでは、「攻撃する理由があるから攻撃する」のではなく、「攻撃をするために理由を見つける」というふうに、本末転倒の状態が起こった。

 大量破壊兵器


 イラクを攻撃するとしたら、最も適切な名分は「核開発」である。しかし、イラクの核開発は、「攻撃を受けて挫折した」という歴史がすでにあった。イスラエルによるイラク核開発への爆撃である。
  → イラク原子炉爆撃事件 - Wikipedia
 こうした歴史的事実があるので、今さらイラクを「核開発」の疑惑で攻撃するのは、荒唐無稽だ。(存在しないと判明している。)
 そこで、うまいアイデアが思い浮かんだ。
 「生物兵器と化学兵器は、貧者の核兵器とも言われるように、核兵器に似ている。そこで、核兵器と同様のものだというふうに、世間を洗脳してしまえばいい。世間をだませばいい」
 こういうアイデアにしたがって、「大量破壊兵器」という言葉が導入された。この言葉を聞いた人々は、単に「生物兵器や化学兵器」とは思わず、核兵器と同様のものだと信じ込んだ。
 こうして、作戦の第一歩が進んだ。イラク侵攻へ、一歩近づいた。

 生物兵器


 では、生物兵器は、本当に危険なのか? 実は、生物兵器は、実用レベルにはないと判明していた。こんなものはほとんど使い物にならないのである。
 ところが、たまたま、少し前に「炭疽菌騒動」というものがあった。実用的でない。この記憶が新しい米国民は、「生物兵器はものすごく危険だ」という誇大宣伝を、あっさり信じた。
 こうして、作戦の第二歩が進んだ。イラク侵攻へ、また一歩近づいた。

 化学兵器


 同様にして、「化学兵器も危険だ」というふうにも示した。イラクはすでに化学兵器(マスタードガス)を使ったという証拠があるが、これも核兵器と同様に危険なものだから、イラクはやはり大量破壊兵器を持っているのだ、という趣旨だ。
 実を言うと、イラクの化学兵器は、かなり前に使われた証拠はあっても、この時点では保有されている証拠はなかった。それでも米国政府は、危険性を訴えた。
 実は、これは、奇妙なことである。なぜなら、アメリカ自身が、大量の化学兵器を保有していたからだ。
 2009年7月、アメリカ陸軍化学物質局によると、アメリカ合衆国は31,100トンの神経ガスおよびマスタードガスの備蓄のうち63パーセントの廃棄を終えたという。2006年までに廃棄された化学兵器のうち、500トンだけがマスタードガスであり、その大部分はVXやサリンといった他の薬品であるという。残りの86パーセントは2006年4月に廃棄された。 ( → アメリカ合衆国の大量破壊兵器 - Wikipedia

 廃棄は 2006年〜2009年だ。とすれば、2003年のイラク戦争の当時は、アメリカも大量の化学兵器を保有していたことになる。
 アメリカ自身が化学兵器を大量に保有していたのだから、攻撃するのなら自分自身を攻撃すればいいのだが、そうはしなかった。「自分の方がよほど大量の化学兵器を保有している」という事実を隠して、逆に、化学兵器なんかろくに持っていないイラクを名指して、「イラクは化学兵器を大量に持っている」と非難した。泥棒他人を「泥棒」と呼ぶようなものか。
 ともあれ、こういうインチキによって、世界の人々はだまされた。「イラクは大量破壊兵器を持っている」という宣伝を、世界中の人々が信じた。
 こうして、作戦の第三歩が進んだ。イラク侵攻へ、さらにまた一歩近づいた。

 大量破壊兵器があっても配備されない


 では、大量破壊兵器は、本当にあったのか? この時点では、判明していなかった。米国は「ある」と言ったが、「ない」と断定するだけの根拠はなかった。(調べたのが米国自身だから、米国が「ある」と言えば、それを否定するのは困難だった。)
 とはいえ、あるかないかとは別に、「あっても配備されない」という問題がある。これは、私が当時指摘した。
 武力行使という選択がかろうじて容認できる場合もある。それは、イラクの危険性が実際に認められる場合だ。つまり、次のことが成立する場合だ。
  •  イラクが大量破壊兵器を隠している。
  •  その大量破壊兵器によって、他国を攻撃する可能性がある。
 「両方とも認められる」というのが、米英の主張だ。しかし、その両方は、同時には成立しないのだ。
 大量破壊兵器があるとして、それをどこかにこっそり隠しているのでは、実戦には使えない。実戦に使うためには、配備する必要がある。そして、配備したなら、その段階で、あっさりと探知されてしまうのだ。
 つまり、「隠している」のならば、「使えない」ことになる。「使える」ためには、「隠さずに配備する」ことが必要となる。「隠す」と「使える」とは、両立しないのだ。なのに、両者が両立すると主張しているところに、米英の論理矛盾がある。
 矛盾した論理で戦争を始めようというのだから、気が狂っているのは、イラクよりは、英米なのだ。われわれは、イラクの独裁者を心配するより、米英の狂人を心配した方がいい。 ( → 泉の波立ち 2003年2月22日c

 化学兵器を使うとき、いきなり爆発させたら、自分自身も化学兵器で死んでしまう。だから、化学兵器を使うときは、化学兵器をミサイルや空爆で飛ばすしかない。しかし、ミサイルも空爆も、イラクには手段がないのだ。その手段がないのだから、化学兵器の心配などは、もともと不要であるわけだ。
( ※ というか、そもそも、イラク近辺まで赴かない限り、化学兵器を浴びる心配もない。化学兵器の心配など、もともと必要なかったのだ。)

 なお、イラクにはミサイルがないという点については、下記の情報がある。(国連イラク特別査察団の報告。)
 ミサイルについてはイラク国内の技術が未熟で、長距離弾道ミサイルの製造能力がない。監視は続けるべきだが、開発には試射などが必要で探知可能。現状は、国連決議で認められた短距離ミサイル能力を維持しているにすぎず、それも完璧な監視下にある。
( → イラク戦争という愚行

 大量破壊兵器はなかった


 国連イラク特別査察団の報告では、そもそも、大量破壊兵器はなかった(あるとは言えない)のだと判明した。
 化学兵器はサリン、タブン、VX製造の前科があり、VXについては96年まで国連査察団から必死に隠したが、最終的にはすべて焼却処分され、製造施設も破壊された。少量を隠した可能性は否定できないものの、5年たてば変質して毒性を失う。
 生物兵器に対する査察はもっとも厳格で、イラクはこれも必死で隠したにもかかわらず、95年に相当量の炭そ菌とボツリヌス菌が発見され、菌も製造施設も破壊された。俗説のように天然痘やエボラ熱などの菌を製造していた形跡はない。炭そ菌もボツリヌス菌も数年で効力を失うため、少量が残っていたにせよ脅威ではない。
( → イラク戦争という愚行

 また、次の情報もある。国連の査察で何も見つからなかった、という報告。
 UNSCOMによる査察活動(1991〜1998年)を取りまとめた報告で指摘された多数の疑惑は、UNMOVICによる査察活動(2002年11月〜2003年3月)においてもほとんど解明されなかった。
( → [外務省] UNSCOM/UNMOVIC報告による主なイラクの大量破壊兵器疑惑

 大量破壊兵器があるというのは、嘘


 国連の査察では大量破壊兵器は見つからなかった。ではなぜ、ブッシュは「大量破壊兵器がある」という虚偽を語ったのか?
 それは、そういう嘘をついた人(虚偽を証言した人)がいるからだ。その嘘をついた本人が、「あれは嘘でした」と告白している。呆れた話だが。
 《 「イラクの大量破壊兵器情報はうそ」、情報提供者が認める 》
 米国が2003年のイラク攻撃を正当化する根拠とした大量破壊兵器(WMD)に関する情報を提供したイラク人科学者が、サダム・フセインを失脚させるためにうそをついていたことを認めたと報じた。
 1995年にイラクを出たジャナビ氏は、ドイツ連邦情報局に、フセイン大統領はトラックで移動が可能な生物兵器を所有しており、兵器工場を建設しているとうそを語った
 同氏は、情報を提供したのは、亡命を確実にするためではなく、あくまでもフセイン政権を倒したかっただけだと主張した。
 自身が偽の情報を提供したことについて、ジャナビ氏は「正しかったもしれないし、間違っていたのかもしれない」と語る。「彼らは、私にフセイン政権を倒すため作り話をする機会をくれた。わたしも息子たちも、われわれがイラクに民主化のきっかけをもたらしたこと誇りに思っている」
 さらに、同氏は「祖国のために、何かをせねばならなかった。捏造はそのためだ。わたし自身は満足している。イラクから独裁者はいなくなったのだから」と付け加えた。
( →  AFPBB News 2011年02月16日

 捏造したことを、自分自身で認めている。ただし、そのことを、「善意ゆえだから正しい」というふうに弁護している。「結果的に独裁者を倒したのだから、捏造は正しかったのだ」と。
 STAP よりもさらにひどいね。

 捏造ゆえのイラク戦争


 ともあれ、こうして、証拠(証言)を捏造したことで、まともな証拠なしのまま、イラク戦争に突き進んだ。
 というか、証拠が記す限りは、「大量破壊兵器はない」というふうに判明していたのに、あえてたった一つの偽証を信じて、「大量破壊兵器は存在する」というふうに信じて、ブッシュの暴走が生じた。
 ここでは、都合のいい証拠だけを取る(他の証拠をすべて捨てる)ということをしている。これ自体が、「チャンピオンデータを取る」という方式であって、小保方さんのやっていたことと同様だ。まったくの捏造ではないにせよ、結果的には捏造と見なされてもおかしくないことになっている。
( ※ 「STAP 細胞は捏造だ」と主張する人々の価値判断に従うなら、「大量破壊兵器がある」という政策決定もまた捏造であったことになる。たった一つの好都合な証言[チャンピオンデータ]を取るからだ。)

 結果としてのイスラム・テロ


 こうして、イラク戦争はなされた。結果的に、独裁者を倒すことはできたが、イラクという体制が崩壊したせいで、多数の小さなテロ組織が生じた。そこから、アルカーイダ系の小組織が多数発生したほか、IS という特別に強力なテロ組織が発生した。
 この IS は、統率された強力な組織なので、統率されずにすぐに逃げ出したイラク政府軍が残した米軍の兵器を奪った。かくて、米軍の装備は次々と IS の手に渡った。戦車、ヘリコプター、ミサイルまでが IS に奪われた。イラク空軍の戦闘機(Mig)まで奪って飛ばしているそうだ。
  → イスラーム国 vs アメリカ軍 装備のヤバさが ……

 これほどにも、イスラム・テロが世界で伸長した。バングラデシュのイスラム・テロも、その一つだ。
 結局、独裁者を倒したことで、結果はかえって悪化してしまったのだ。

 「こんなことならフセインを残しておいた方がよかった。そうすれば、イラク国民はいくらか虐待されただろうが、アラブの各地で大量の死者や難民が生じることはなかっただろう。現状よりもずっとマシだっただろう」
 という判断も出た。この件は、別項で紹介した。
  → イスラムテロの根源 ( nando ブログ)
 
 まったくそうだ。嘘を信じてイラク戦争を始めたことは、状況を改善したのではなく、状況を悪化したのである。今日のイスラム・テロという厄災は、嘘・捏造によってもたらされたイラク戦争に根源があるのだ。

 そして、その最大の罪は、子ブッシュにあるが、同時に、英国のブレア首相や、日本の小泉首相にもある。(肩書きは当時)
 今日のひどい世界的なテロ状況は、決して歴史的な必然であったわけではない。ブッシュというたった一人の、ほんの恣意的な気まぐれみたいなものから生じたのだ。
 そして、それを止める機会は十分にあったのに、ブレアや小泉がブッシュをヨイショしたから、今日の悲惨な状況を招くに至ったのだ。




 【 補説 】
 歴史の皮肉は、これだけではない。そもそも子ブッシュが大統領になったのは、選挙の不正のおかげだった。大統領選は、こうだった。
 民主党候補アルバート・ゴアが、一般投票でブッシュの得票を50万票ほど上回っていたが、選挙人投票でブッシュが5票多く得票した。実弟ジェブ・ブッシュが知事を務めるフロリダ州の、一般得票でゴアをわずかに上回り、25人の選挙人を獲得したためである。
 しかし、選挙終盤のフロリダ州における選挙の運営方法への問題点も指摘され(ブッシュ陣営がジェフ・ブッシュを通じて不正選挙を行ったと主張する意見もある)
( → ジョージ・W・ブッシュ - Wikipedia

 弟ジェブ・ブッシュが知事を務めるフロリダ州では、かなりひどい不正選挙があったことが知られている。ずいぶん古いことなので、もうネット上にある情報は限られているようだが、当時は新聞などでもけっこう報道されたものだ。
 ともあれ、ネット上に残されたものを、いくつか紹介しよう。
  → Google 検索
 この検索結果一覧から、該当のページがいくらか見つかる。
 要するに、フロリダ州の選挙不正という局地的な犯罪行為のせいで、子ブッシュが大統領となった。それが、「大量兵器がある」という捏造を選択することで、イラク戦争をもたらし、のちには、現代のイスラム・テロの頻発をもたらした。
 フロリダ州の選挙不正という局地的な犯罪行為が、世界中で莫大な死者をもたらし、かつ、応手の難民問題を発生させて、欧州を大混乱に導いている。……英国の EU 離脱もまた、この一環なのだ。
 世界の巨大な大混乱が、すべて、フロリダ州の局地的な犯罪行為の結果なのである。フロリダ州でバタフライが飛ぶと、世界の構造が変わる、という感じだ。
  → バタフライ効果 - Wikipedia

 [ 付記 ]
 意外なことだが、フロリダ州の選挙不正では、バタフライが使われた。冗談みたいだが、本当だ。これは、バタフライ・バロットというもの。下記に詳しい。
  → 2000年大統領選挙
 
posted by 管理人 at 23:59 | Comment(0) | 政治 このエントリーをはてなブックマークに追加 
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