◆ 米国のTPP離脱は問題ない:  nando ブログ

2017年01月22日

◆ 米国のTPP離脱は問題ない

 トランプ大統領が TPP離脱を表明して、安倍首相があわてふためいている。しかし、問題ない。

 ──

 トランプ大統領が TPP離脱を表明した。
  → トランプ大統領、TPP離脱を正式表明(声明全文)

 ここで安倍首相が「自由貿易の推進を米側に粘り強く働き掛ける意向だ」ということだ。
  → 同盟強化と自由貿易追求=安倍首相(時事通信)
  → 安倍首相 トランプ大統領と来月前半にも会談へ(NHK)

 しかしこれは、いかにもセンスがない。米国大統領が最重要の基本方針として示したことを、たかが属国みたいな小国の首相が翻意させるなんて、およそあり得ないことだ。そんなことを夢見ているんだから、妄想も甚だしい。
 では、日本はどうするべきか? 

 ──

 まず、私としては、米国の TPP離脱を評価して、「たいしたことはない」(問題ない)と指摘したい。
 なるほど、TPP の参加国のうちでは、米国の比率は圧倒的だ。参加10カ国の国内総生産(GDP)合計に占める日米両国の割合は96%に達する。
 しかしながら、GDPでなく貿易を見ると、日本にとって、10カ国のうち米国の占める比率は52%まで減る。
  → なぜ日米FTAではないのか TPPを知る
 
 さらに重要なのは、日本にとっては、TPPの枠外の東アジア諸国との貿易比率が高いことだ。


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     出典:読売新聞( naver 経由)


 ここで RCEP というのは、東アジア地域包括的経済連携 のことだ。「米抜きの東アジア・オセアニアの自由貿易協定」と言える。
 上図でわかるように、日本の輸出の半数近くはRCEP諸国向けになっている。TPPよりも RCEP の方がより重要度が高いと言えるわけだ。

 実は、歴史的に言うと、RCEP がどんどん進展していくのを見て、米国が焦った。そこで、「仲間はずれになりたくない」と思いながら、「むしろ中国を仲間はずれにしてしまえ」と目論んだのが、TPP だ。
 かくて TPP は、今日までの政権で推進されてきた。また、日本にとっても悪くはない話なので、日本も対米協調の方針で推進してきた。
 しかしながら、「米国のため」になるはずの TPP を、「米国のためにならない」とトランプ大統領は曲解した。ここには、大いなる錯覚がある。(政治的無知。)

 これを見た安倍首相は、「困った。米国がいないと、TPP は有名無実化する」と思って、「TPP推進を訴える」という方針を取ろうとする。しかし、これもまた、大いなる錯覚なのである。
 米国が TPP からいなくなっても、日本は特に困らない。もともと TPP は米国の圧力が大きいので、日本にとってはあまり有利ではないのだ。米国がいなければいないで、日本には別の方策がある。
  ・ RCEP
  ・ 米抜き TPP

 この二つを、順に説明しよう。

 (1) RCEP

 RCEP(東アジア地域包括的経済連携)は、「米抜きの東アジア・オセアニアの自由貿易協定」と言える。日本、中国、韓国、インド、オーストラリア、ニュージーランドの6ヶ国を含めた計16ヶ国でFTAを進める構想である。
 これは、TPP とは別に推進中だ。だから、これをどんどん進めればいいだろう。
 唯一の難点は、中国と韓国が極端に対立的になってきたので、中国や韓国との貿易比率を高めることが、ちょっと問題っぽくなってきたことだ。
 それでも、東アジア諸国との貿易の自由化を推進することは、日本にとって大切だ。
 先の図をまた見てほしいが、日本にとっては、米国や他の TPP諸国よりも、RCEP 諸国の方がずっと重要な輸出先なのである。(米国の2倍ぐらいの量だ。)
 日本が貿易の自由化という方針を重視するなら、TPP や米国よりも、RCEP 諸国との間で、RCEP を推進する方がいい。(あとで米国は「仲間はずれにしないでくれ」と泣きついてくるだろうが、そのときはそのときだ。)

 (2) 米抜き TPP

 TPP に米国が参加しないのなら、「米抜き TPP 」という形で推進すればいい。実際の TPP は、米国が参加しないと発動できないという条項があるから、そのままでは無理だろう。しかし、新たに TPP2 とでもいような名前の新条約を締結すればいい。そこでは、「米国が参加しなくても発動できる」というふうに、一つだけ条項を書き直す。あとはすべて TPP と同じように定めればいい。
 この場合、日本は、豪州や NZ などから、安価な牛肉や酪農品を輸入できる。このせいで、米国の牛肉や酪農品のシェアは、大幅に低下するだろう。米国にとっては、「トンビに油揚げをさらわれた」という感じになる。あとで泣き面になる。
 TPP がないと、米国は大損するが、しかし、日本は別に損はしない。そもそも日本が望んでいた「対米輸出の自動車の関税引き下げ」は、大幅に値切られてしまって、実現するのははるか先だ。日本としては、出すものばかりがあって、得るものは少ない。だったら、米国なんかは参加しない方が、日本にとっては有利なのだ。
 というわけで、「米抜き TPP」をどんどん推進すればいい。

 ──

 以上、(1)(2) のいずれにしても、「米国を仲間はずれにする」という方針は共通する。
 そして、そのあとで、仲間はずれになった米国が「やっぱり私(米国)も、きみたちの仲間に入れてよ」と言い出したら、そのときは、元通りの TPP に戻ればいい。
 これで、万事落着。

 

 [ 付記 ]
 日本は、全体としてみれば、米国の TPP 離脱で困ることはない。
 ただし、である。日本のなかでも、トヨタだけは、事情が異なる。
  ・ トヨタだけは、自動車の対米輸出比率が高い。
  ・ トヨタだけは、メキシコに自動車工場を新規建設する。

 こうなると、トランプ大統領の保護貿易方針や、TPP離脱のせいで、割を食う可能性が高い。しかしまあ、トヨタだけのことだ。トヨタはもともと儲けすぎ気味だ(賃金への還元比率も低い)から、あまり気にしなくてもいいだろう。銭ゲバがちょっとぐらい損をしたからといって、気にすることはあるまい。(お灸を据えられた、というぐらいのことだ。)

 ま、米国以外も、少しは困る会社が出てきそうだ。(米国の牛肉を取り寄せる吉野家とか。)しかしまあ、その程度のことは、我慢してもらうしかない。別に、現状より悪くなるわけじゃない。何だったら、オーストラリアから安い牛肉を取り寄せればいいだけだ。

posted by 管理人 at 07:14 | Comment(0) | 経済 このエントリーをはてなブックマークに追加 
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