◆ 保守主義とエゴイズム:  nando ブログ

2017年01月22日

◆ 保守主義とエゴイズム

 トランプ大統領の方針は、馬鹿馬鹿しくて理解しがたく感じられるが、エゴイズムという概念から統一的に理解できる。

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 一般に、保守主義というものは、エゴイズムという概念で理解できる。
 エゴイズムとは、「自分だけが良ければいい」という発想だ。利己主義とも呼ばれる。
 これに対比されるのは、利他主義ではなく、利全主義である。つまり、「自分と他人がいっしょに利益を得よう」という発想だ。
 ここでは、「自分だけ」の対比としてあるのは、「自分も他人も」である。(「他人だけ」ではない。)

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 利己主義というものは、わかりやすい。それは最も原始的なものであるからだ。自然界の動物にもしばしば見られる。
 利全主義というものは、ちょっとわかりにくい。そこではたがいに助け合うという意味の「共助」があるが、その際、「他者の意思への信頼」が必要とされるからだ。当然、そこでは、何らかのコミュニケーション(意思伝達)が必要とされることが多い。そして、それには、言葉を必要とする。
  ※ 言葉を使えない動物の場合には、本能で済ませるが。

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 このような「他者の意思への信頼」が生じるのは、人と人との結びつきの強い状況だ。たとえば、下記のような。
  ・ 村落共同体
  ・ 都市共同体


 村落共同体の場合には、共助としての農耕活動をすることがある。たとえば、溜池づくりとか。
 都市共同体の場合には、近所づきあいなどは少ないが、人口密度が高いなかで、発達した公共サービスを得ることで、公共サービスの必要性を理解して、共助の発想を取りやすい。

 一方、都市ではない地方(過疎地)では、事情は異なる。特にアメリカにおいては、地方は、人口密度が低くて、人と人との結びつきは少ない。頼れるものは自分だけであり、「自助」の発想を取るので、「共助」の発想を取りにくい。「自分の身を守るものは、自分の銃だけだ」という発想を取りがちだ。

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 以上において、次のような対立図式を取れる。
   利己主義 ←→ 利全主義
    自助  ←→  共助
    地方  ←→  都市
   保守主義 ←→ リベラル


 このような対立図式は、どの国でも成立するとは言えないのだが、少なくとも米国においては、ぴったりと成立する。それは
    共和党 ←→ 民主党

 という対立でもある。
 
 ──

 この対立図式は、通常は「共和党 v.s. 民主党」という枠組みで済む。ただ、今回、トランプが登場すると、この図式が極端に一方の極に行くことになる。その対局は、サンダースだろうか。
   トランプ ←→ サンダース

 というわけだ。
 トランプは、利己主義の発想を、極端に押し進めた。それは、国レベルでも利己主義を極端に貫くもので、米国の孤立主義と言ってもいいぐらいだ。
 サンダースは、その逆で、大学教育の無償化などを唱えて、共助の方針を極端に貫くものだった。

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 トランプ大統領の方針は、まともな頭の人から見ると、あまりにも非合理すぎるので、理解しがたい。
 しかし、「彼の発想は利己主義で固まっているのだ」と考えれば、理解しやすい。
 普通の政治家ならば、「こうすればこうなる」という論理で、最終的な損得によって合理的に判断する。ところが、トランプは、そうしない。最終的には米国にとって損になる道を突っ走る。だから、人々は、トランプを理解しがたく感じる。「何だってわざわざ自殺行為みたいに損をしたがるのか?」と。
 しかし、本項の話を見れば、トランプ大統領の発想が理解できる。彼は、「こうすればこうなる」という論理で、最終的な損得によって合理的に判断するのではない。彼は直感的な印象で「自分にとって利益になる感じがする」か否かを考えるのだ。

 (1) 「米国への輸入を阻害する」というのは、「そうすれば米国の赤字が減る」と感じるからだ。実際には、輸入を阻害すれば、輸出も阻害され、輸出入の双方が阻害されることで、貿易が阻害され、経済は縮小する。しかし、そういう経済学は理解しない。単に「輸入をすれば米国の赤字が減る」とだけ信じる。
 (2) 「日本から米軍を引き揚げる」というのは、「そうすれば米国の軍事出費が減る」と感じるからだ。実際には、引き揚げれば、日本の分担(全体の7割)がなくなる分、それを自分で出費する必要が生じて、かえって出費は増えてしまう。たとえば、沖縄の米軍をグアムに移設すると、米軍の出費はかえって増えてしまう。しかし、そういう損得勘定は理解しない。単に「日本から米軍を引き揚げれば米国の軍事出費が減る」とだけ信じる。

 結局、トランプ大統領というのは、合理的な思考で判断するのではなく、ただの直感(みたいな感情)で判断するだけだ。そして、そこでは「利己主義」だけが判断基準となる。……そう理解すれば、トランプ大統領の思考回路も、わかりやすくなるはずだ。

 ──

 当然ながら、対策もまたわかる。
 トランプ大統領は、まともに合理的な思考ができていないのが問題だ。だから、「真実はこうだ」と教えて上げればいい。
 たとえば、上の (1)(2) のような真実を教えて上げればいい。そうすれば、方針を改めることも可能だろう。なぜなら、彼はそれを理解するだけの知能はあるからだ。
 ただし、その話を聞いてもらえるかどうかが、問題だ。彼はちょっと、聞こうとしない傾向もあるからだ。門前払いとなる恐れも多い。そうなると、真実を拒否したまま、愚かさの砦に閉じこもる結果にもなりそうだ。



 [ 付記 ]
 なお、利己主義が高まるのは、人々の危機感が強まっているときだ。自分の生存が脅かされそうになっていると感じると、人々は利己主義に走る。(一種の防衛本能だ。)
 現在のアメリカでは、自動車工場のある地域や、移民の多い地域で、白人労働者が雇用を脅かされていると感じている。こういう状況では、危機感を抱いて、自己防衛本能が働くせいで、人々は利己主義に傾きがちだ。
 現代の英国や欧州でも、移民によって生存を脅かされていると感じる人が多いので、この場合も、利己主義や孤立主義に傾きがちだ。英国の EU 離脱も、この流れのなかで理解できる。



 【 関連サイト 】

  → 孤立主義の歴史、繰り返すのか(朝日新聞 2017-01-22)

 米国では、第1次大戦後に、国際連盟の創設に尽力したウィルソン大統領がいる。しかし彼のあと、米国は孤立主義に染まった。その後、世界大恐慌が起こり、世界中が孤立主義に染まり、不況なかでヒトラーが勢力を伸ばして、第二次大戦に結びついた。ひょっとしたらトランプ大統領は、そういう歴史(孤立主義のもたらす悲惨な歴史)をなぞろうとしているのかも……という話。
 興味があれば、読むといいだろう。(朝日・朝刊・国際面 2017-01-22 )

 ──

 トランプが当選したのは、大統領選の選挙人の配分が、地方に有利だったからだ……という話もある。「地方 = 保守主義」なので、実際にはクリントンの方が得料率は高かったのに、選挙制度の歪みのせいで、地方が優先されて、そのせいで、得票の少ないトランプが当選してしまった……という話。

( ※ 出典は不明。どこかで読んだが、思い出せない。捜しても見つからない。冷泉彰彦の話だったような気もするが、良く覚えていない。)


posted by 管理人 at 20:12 | Comment(2) | 政治 このエントリーをはてなブックマークに追加 
この記事へのコメント
利己主義に近いのは孤立主義or新孤立主義の方じゃないですかね。
保守主義をどういう意味で使っているかわかりませんが、少なくともバークがいっているような保守主義が利己主義に近いとは思えませんが。
Posted by 通りがかり at 2017年01月23日 11:26
> バークがいっているような保守主義

 それは「反フランス革命」という意味なので、バークと同じく 18世紀の概念です。今どき意味を持たない。

 本項で言っている「保守主義」は「リベラル」と対比されるものです。共和党と民主党の対比と同じ。上に述べた通り。

 同様の話は、下記にもあります。
  http://nando.seesaa.net/article/155278896.html
 「保守主義とは何か?」

 その冒頭にも示してあるように、直前の3項目に、より詳しい話があります。
Posted by 管理人 at 2017年01月23日 17:34
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