◆ 貿易赤字と税逃れ:  nando ブログ

2017年02月19日

◆ 貿易赤字と税逃れ

 米国が多額の貿易赤字を出しているのは、資本収支で多額の黒字があるからだが、これは国際的な税逃れと関係する。

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 米国が多額の貿易赤字を出しているのは、資本収支で多額の黒字があるからだ。資本収支では、知的財産権収入や、金融収支(借金)などで、多額の黒字がある。前に述べたとおり。
 米国の場合は、どうか? 近年は知的財産権の収入があり、資本収支が黒字になっているが、それまでは資本収支が黒字にならず、差額は借金で補っていた。(この場合は、資本収支のかわりに金融収支が黒字になっていた。借金をすればするほど金融収支は黒字となる。一方で、借金残高は増える。)
 要するに、米国はずっと貿易赤字が続いてきたが、それは、借金をすることで、商品を輸入する金を得てきたからだ。借りた金で、外国から商品を輸入してきたので、貿易赤字が続いてきた。
( → 年金資金を米国に投資?: nando ブログ

 ここでは、次の式がおおむね成立する。
   貿易赤字の額 ≒ 外国からの借金


 ただし、差分がある。それは、知的財産権の収入など、借金でない形の純然たる資本黒字だ。

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 さて。この資本黒字は、実は、国際的な税逃れと関連する。別項からの孫引きになるが、引用する。
 トヨタが、5年間も税金を払っていなかった最大の理由は、「外国子会社からの受取配当の益金不算入」という制度です。これは、どういうことかというと、外国の子会社から配当を受け取った場合、その95%は課税対象からはずされる、ということです。
 たとえば、ある企業が、外国子会社から1000億円の配当を受けたとします。この企業は、この1000億円の配当のうち、950億円を課税収入から除外できるのです。つまり、950億円の収入については、無税ということになるのです。
 トヨタは詳細を公表していませんが、この「受取配当の非課税制度」を利用して、税金を免れていたことは明白です。

 このことを貿易赤字と絡めて、考え直そう。
 1兆円の商品を海外に販売して、1000億円の利益を得たとする。
 通常ならば、1兆円の貿易黒字となり、1000億円の利益には日本で課税される。
 税逃れをすると、1兆円の商品を輸出するとき、1000億円引きの 9000億円で輸出する。貿易黒字は 9000億円だが、黒字の対象(相手国)は、多くの国ではなくて、子会社のあるタックスヘイブンの国(アイルランドなど)となる。また、1000億円の利益は、日本では発生しないで、タックスヘイブンで発生する。ここで少額の納税(10億円?)をしたあと、残りの 990億円は日本に送金されるが、これはすでに課税済みの金なので、990億円は(法人所得税なしで)企業の懐に入る。また、資本収支では 990億円の黒字が記入される。

 結局、この事例では、企業が税逃れをすると、こうなる。
  ・ 日本の貿易黒字は 1000億円減る。
  ・ 日本の資本黒字は 1000億円増える。

 トータルの国際収支では、日本の黒字額は増えも減りもしない。(総額で 1兆円である。)
 しかしながら、その内訳では、貿易黒字が 1000億円減って、資本黒字は 1000億円増える。

 これをどう評価するか? 
 常識的には、国際収支の黒字の総額は1兆円で、同じ額なのだから、国に与える影響はプラスでもマイナスでもない。(税逃れで国税収入が減るが、それだけだ。)
 一方、「貿易収支だけが大事だ」と思って、「資本収支のことなんか知ったこっちゃない」と思うと、「貿易黒字が減った!」とか、「貿易赤字が増えた!」とか思うことになる。現実には何の影響もないとしても、会計項目の貿易収支では、赤字が増える( or 黒字が減る)ので、「貿易収支が悪化した! 大変だあ!」と騒ぐことになる。
 これが、トランプ大統領だ。

 ──  

 以上をまとめると、こうなる。
 「企業が税逃れをすればするほど、米国の貿易赤字は増える。それは、ただの会計項目の問題であるから、別に、どうってことはないのだが、会計項目をまともに読み取れないと、『大変だあ!』と騒ぐことになる」


 というわけで、トランプ大統領には、次のように勧告したい。
  ・ 国際収支の会計について勉強する。
  ・ 企業の税逃れを阻止する。


 こうすれば、「貿易赤字が増えて、大変だあ!」と騒ぐことがなくなる。



 [ 付記 ]
 実を言うと、国際収支で貿易赤字が増えることは、別に何の問題もない。貿易赤字が増えても、資本黒字も増えているからだ。
 真に問題なのは、企業の税逃れだ。Google も Amazon もアップルも、まともに税を納入していない。(ついでだが、Amazon ジャパンも、日本では納税していない。)
 こういう企業の税逃れを解決することこそ、米国にとっては必要なことだ。
 なのに、あろうことか、トランプ大統領は、「法人税減税」という方針を取っている。これではまるで、「脱税の公認・推奨」だろう。呆れる。
 やるべきことが、正反対だ。本当は、米国における「貧富の格差の是正」こそ、米国経済にとっては必要なことなのだが。ピケティも言っているし、私も本日別項で述べた。下記。
  → ロボットは雇用を奪うか?: Open ブログ
 
posted by 管理人 at 16:37 | Comment(0) | 経済 このエントリーをはてなブックマークに追加 
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