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「景気は最近 めざましく回復しつつある」という報道があった。
《 実質GDP、4─6月期は年率+4.0% 消費がけん引し6期連続プラス 》
内閣府が14日に発表した2017年4─6月期国民所得統計1次速報によると、実質国内総生産(GDP)は前期比プラス1.0%、年率換算プラス4.0%と、6四半期連続のプラス成長となった。15年1─3月期のプラス4.8%以来の高い伸びを記録した。個人消費や設備投資といった内需がけん引しての高成長となった。
プラス成長に最も寄与が大きかったのは民間最終消費支出で前期比プラス0.9%、14年1─3月期の消費増税駆け込み前の同プラス2.4%以来の伸び。
民間設備投資も同プラス2.4%としっかりした伸びとなった。企業収益が好調であることや、企業の景況感が高水準にあることなど、投資環境が良好なことが背景にある。
( → ロイター 2017年8月14日 )
これは1次速報の数字だが、この数字は誤りであったと判明した。2次速報で大幅に数字が訂正されたのだ。
内閣府が8日発表した2017年4〜6月期の国内総生産(GDP)の2次速報は、物価変動の影響を除いた実質で前期より0.6%増だった。この状態が1年間続いた場合の年率換算では2.5%増。6四半期連続のプラス成長で、比較的高い成長率を維持したが、8月に公表した1次速報の1.0%増(年率4.0%増)からは大幅に下方修正された。
内閣府によると、現行の調査方式になった10年4〜6月期以降、1次速報と2次速報の実質成長率の差で、最大の下方修正になった。
成長率が下方修正された主な要因は、企業の設備投資。1次の2.4%増から0.5%増に縮んだ。1次の段階では公表されていなかった4〜6月期の法人企業統計を反映させた結果、仮置き値で試算していた1次より成長率が下がったという。
( → 成長率0.6%増に下方修正 4〜6月期GDP2次速報:朝日新聞 2017-09-08 )
朝日の参考記事には、グラフもある。

出典:朝日新聞
これを見ると、設備投資について、絶対額がわかる。
・ 2008年のリーマンショックで大幅減
・ そのあと少し回復していく。
・ 2011年の東日本大震災のあと、低迷が続く。
・ 2013年ごろから回復していく。(上昇基調)
・ 2017年でようやく、2008年レベルに戻る。
まとめれば、こうだ。
「リーマンショックと東日本大震災のあと、少しずつ回復していったが、それでも現時点では、2008年レベルに戻っただけだ」
これは次の2点を意味する。
(1) 悪くはなくなったが、良くなったわけではない。
(2) 10年間にあったはずの成長を、取り戻していない。
このうち、(1) の点については、次の波及的な効果もある。
「アベノミクスの時代は、リーマンショックと東日本大震災の影響を脱しつつある時期に重なった。また、民主党の時期は、リーマンショック余波と東日本大震災の時期に重なった。かくて、アベノミクスは実際以上に過大評価され、民主党政治は実際以上に過小評価された」
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結論。
「安倍首相のアベノミクス(という経済方針)はすばらしい。少なくとも民主党時代よりはずっといい」
と思われてきた。
だが、実は、それは、ただの錯覚にすぎなかった。単に時期的に安倍首相の時期は回復の時期に重なっただけだ。
したがって、「今後もアベノミクスで経済は回復する」というようなことはない。実際、現状でも、ろくに回復していないのだ。やっと 2008年レベルに戻っただけにすぎない。
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最近では、もっとひどいとも言える。国債の利回り(金利)がマイナスになったのだ。
→ 長期金利、9カ月半ぶりにマイナス 北朝鮮問題の影響で:朝日新聞 2017-09-02
→ 金利:国債先物が大幅高、長期金利は4営業日ぶり-0.010%に低下:ロイター 2017-09-08
北朝鮮問題の影響があるとはいえ、異常とも言える数値だ。こんな状況では、設備投資が回復しているとも言えないし、景気が回復しているとも言えない。
米国や欧州では、景気回復にともなって金利が上昇していくようだ。近い将来の利上げも話題になっている。一方、日本は、置いてけぼりだ。
これが日本経済の真相だ。アベノミクスの真相だ、とも言える。
→http://blog.goo.ne.jp/keisai-dousureba/e/8f28dca314d17efb323fa572a6a2f915