◆ 日本の対米黒字は巨額か?:  nando ブログ

2018年03月25日

◆ 日本の対米黒字は巨額か?

 トランプ大統領は、日本にも新たな鉄鋼関税をかけることを表明した。その理由は、日本の対米黒字が巨額であることだが、それは真実か?

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 トランプ大統領は、日本にも新たな鉄鋼関税をかけることを表明した。これについては、明白に「安倍首相の失政」と言えるだろう。もともとは欧州や韓国が対象となっていて、日本はどうするか不明扱いだったのだが、いざ蓋を開けてみると、欧州や韓国は対象外となっている一方、日本は対象に含められてしまったからだ。
 どうしてこうなったかというと、次の違いによる。
  ・ 欧州 …… 報復関税の対抗措置を表明した。
  ・ 韓国 …… 二国間交渉に応じるので一次猶予。
  ・ 日本 …… 報復関税も二国間交渉もなし。


 韓国はもともと TPP に未加盟だから、二国間交渉に応じる。TPP を推進する日本とは事情が異なる。結局、欧州のように報復関税の対抗措置を取るかどうかだけが、分かれ目となった。
 で、日本はそのかわりに何をしたかというと、「日本は仲良しの国だから免除してね」と言って、尻尾を振っただけだ。しかし、いくら尻尾を振っても、トランプはまるきり無視した。「尻尾を振ってだまそうとしてもだまされないぜ」というふうに述べた。
 下記に解説がある。
 安倍首相。ついには「ドナルド・シンゾー」コンビと胸を張っていたアメリカ合衆国のトランプ大統領からも名指しで批判されてしまいました。
「こんなに長い間アメリカ合衆国につけ込めるなんて信じられんな」とほくそ笑んでいる日本の安倍首相を始めとした偉大な我が友人たる各国首脳たちに言っておきたいことがある。そんな日々はもうこれで終わりだ。
( → 「『アメリカに長い間つけこんできた』とほくそ笑んでる」トランプ大統領が安倍首相を名指しで批判 | BUZZAP!(バザップ!)

 これはどういうことかというと、次の意味だ。
 「仲良しのフリをして、米国につけ込んで、巨額の貿易黒字を貯め込んできたのだろうが、そうやってだまそうとしても、もうだまされないぜ。これからは巨額の貿易黒字を貯め込むことは、まかりならん」
 これがトランプの真意だ。とすれば、「尻尾を振れば何とかなる」という安倍首相の方針は、まったくの失敗だったことになる。むしろ、報復完全を示した欧州のようにふるまえば、問題を回避できただろう。その意味で、これは完全な安倍首相の失敗だ。
 ジャイアンのそばでスネ夫のできることには限界がある、ということだ。

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 とはいえ、物事の本質は、別のことにある。
 そもそも、日本には巨額の対米貿易黒字があるというのは、本当か? ……そういう問題だ。

 これについては、前に否定的に論じた。
 米国の貿易赤字は巨額だが、国際収支全体では、赤字はずっと少ない。なぜなら、知的財産権の収入などの、貿易外の収支が大幅黒字だからだ。
 たしかに、輸出入の商品だけを見れば、米国は大幅な赤字だ。つまり、貿易収支は、大幅な貿易赤字だ。
 しかし、知的財産権の収入などの所得収支は大幅な黒字になっているし、金の移転を意味する金融収支も大幅な黒字になっており、資本収支は大幅な黒字だ。
 そして、その両者は釣り合っているのだから、何も問題はないのだ。
( → トランプ大統領の誤りは?(輸入課税): nando ブログ


 同様のことは、日本の対米貿易黒字についても言える。対米収支では、貿易収支の黒字に比べて、国際収支の黒字は、ずっと小さいのだ。
 米商務省が7日発表した2016年の貿易統計(通関ベース)によると、モノの貿易での対日赤字は689億ドル(約7兆7千億円)となり、相手国別では3年ぶりに中国に次ぐ2位に浮上した。トランプ大統領が「不公平だ」と批判する自動車関連も対日赤字が526億ドルに増加。10日に開く日米首脳会談では、貿易不均衡を巡って議論になりそうだ。
( → 米貿易赤字 日本2位に 16年、車が拡大  :日本経済新聞

 財務省が8日発表した2017年1〜3月期の地域別国際収支状況によると、米国との間でのモノやサービスなどの取引状況を表す経常収支は3兆6422億円の黒字だった。前年同期から8%減った。知的財産権等使用料の受け取りが減少し、サービス収支の赤字が拡大した。企業が海外子会社から受け取る配当金などを示す第1次所得収支も減少した。
( → 1〜3月期の対米経常黒字、前年比8%減 財務省調べ:日本経済新聞

 貿易収支に比べて、国際収支では、黒字幅は半減している。トランプ大統領がいくら「日本の対米貿易黒字は巨額だ」と言い張ろうが、貿易外の収支では米国が圧倒的に黒字なのだから、差し引きすれば、総額では、日本の黒字はたいしたことがないのだ。
 実際、額を見れば、20兆円にすぎない。
 財務省が11日発表した国際収支状況によると、2016年度の経常収支は20兆1990億円の黒字だった
( → 対米黒字、円高進行で5年ぶり減 16年度経常黒字は9年ぶり高水準

 ついでだが、米国の経常収支も、赤字幅は小さい。(近年、縮小した。)
 貿易収支に海外からの利子や配当の受け取りなどの所得収支も加えた経常収支で見ると、米国の赤字は2006年には国内総生産(GDP)比で6%近くあったが16年は2%台にとどまる。
( → 国際収支の不均衡はいま大きな問題か:日本経済新聞

 要するに、貿易収支だけを見て、経常収支(国際収支)を見ないのは、物事の半分しか見ていないのも同然だ。そして、物事の半分でなく全体を見れば、「実は問題などはない」とわかるのだ。
 これが経済学的に正しい認識だ。なのに、それを主張しない日本政府は、経済学のことを何もわかっていない、と言えるだろう。

( ※ なお、貿易交渉の担当は、経産省だ。外務省ではない。間違えないように。で、経産省がバカすぎるから、まともに交渉できないわけだ。……ま、それというのも、「尻尾を振るだけにしろ。言い返すな」と命令したらしい安倍首相に、根本原因があるのだろうが。)




 [ 付記 ]
 日本はともかく、中国の対米貿易黒字は巨額となる。日本は 689億ドルだが、中国はその数倍だ。
 中国政府は14日までに、昨年の対米貿易が15%伸び、黒字幅が過去最高を記録したと発表した。米国政府がまとめる昨年の貿易収支はまだ公表されていないが、対中貿易の赤字は大規模になるとの見方が強い。
 米政府の統計によると、中国との物品貿易における赤字幅は2016年に3470億ドルに達していた。
( → CNN.co.jp : 中国、17年は対米貿易が15%増 黒字幅は過去最高に

 3470億ドルを上回るようだ。日本の5倍以上の巨額になりそうだ。経常収支で見れば、さらに格差は大きくなるだろう。

 ちなみに、欧州はどうかというと、……
 欧州全体の統計はちょっと見当たらなかったが、ドイツは対米貿易黒字が巨額であるそうだ。日本の対米貿易黒字とほぼ同額。ドイツの GDP は日本より小さいのに、このありさまだ。つまり、ドイツの方が黒字の程度が大きい。また、ドイツの場合、知的財産権などの収支も、対米で大幅赤字の日本とは違うだろう。(赤字幅が小さいか、黒字になっているだろう。)
 というわけで、米国にとっては日本よりもドイツの方が目の上のたんこぶであるはずだ。なのに、今回は、日本ばかりが課税対象となってしまった。
 安倍首相の失政のせいだね。
posted by 管理人 at 20:36 | Comment(0) | 経済 このエントリーをはてなブックマークに追加 
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