◆ 赤字企業を存続させるべきか?:  nando ブログ

2018年12月09日

◆ 赤字企業を存続させるべきか?

 赤字企業を存続させるべきか? それとも、さっさと倒産させるべきか?

 ──

 赤字企業を存続させれば、従業員の失業や、不渡りの波及など、いろいろと社会的な問題が発生する。
 しかし、だからちって、非効率な企業を存続させれば、赤字を垂れ流して、社会が非効率化する。
 では、どうするべきだろうか?

 これを巡って、朝日新聞に記事があった。
  → (平成経済)第5部・リーマンの衝撃:12 大変革迫られた中小企業:朝日新聞 2018-12-09

 趣旨は次の通り。(中小企業をめぐる話。)
 (1) リーマンショック後は、経済の縮小にともなって、売上げ減少で経営悪化した中小企業が増えた。その倒産を未然に防ぐため、政府は銀行に返済猶予や融資などの措置を取ることを要請した。おかげで倒産数は減った。しかし「非効率なゾンビ企業が生き残った」というふうに批判する声もある。政府の措置には賛否がある。
 (2) それから 10年たった今では、中小企業では人手不足倒産が発生している。これはリーマンショックのときのような臨時的な問題ではなく、構造的な問題だ。対処は容易ではない。

 ──

 二つの事象を単純に並置しているだけで、何の解明もない。そこで私が説明しておこう。
 「市場競争による劣者退場で、全体効率の改善」
 ということは、原理的には成立する。しかしそれはあくまで「市場競争による優勝劣敗」という原理が働いている場合のことだ。この原理の有無が重要だ。

 では、リーマンショックのときはどうだったか? そこで赤字化した企業は、競争で敗れたのか? 違う。市場が急激に縮小した(半減した市場もある)ことで、経営が悪化した。ここでは、優勝劣敗という原理は働かない。むしろ、逆だ。急成長している優秀な企業は、急成長ゆえの投資と借金で財務基盤が弱いせいで、市場の縮小にともなってあっさり倒産しやすい。一方、旧態依然の劣悪な企業は、ろくに投資もしないわりには昔の蓄積があって財務基盤が強いせいで、市場の縮小には抵抗力がある。このように「優勝劣敗」とは逆の原理が働く。「急成長しつつある優秀な企業は倒産しやすく、過去の遺産で生き残っている老舗企業は倒産しにくい」というふうに。こういう状況で、「赤字化した企業は倒産しろ」という方針を取れば、日本全体が、効率アップするよりも効率ダウンしてしまう。
( ※ 実は、それが、リーマンショック後では日本の大企業全体を襲ったとも言える。だから日本経済は今も低迷しているのだ。)

 他方、今現在の「人手不足倒産」はどうか? こちらは、純然たる「優勝劣敗」だと言える。「人手不足倒産」は、「最低賃金ぐらいしか払えない人件費の安い劣悪企業には、人が来ないので、倒産しやすい」というだけのことだ。給料を多く払う優秀な企業には、いくらでも人が来る。人が来ないのは、まともに給料を払えないような劣悪な企業だけだ。だから、こういう企業が倒産してしまうのは、かえって好ましいのだ。これらの企業は、今現在では赤字ではないので、「赤字倒産」ではないし、それゆえ、「ゾンビ企業」というわけでもない。とはいえ、まともに給料も払えないのだから、「マイナス状態」ではないにしても、「プラス状態がとても小さい」ことになる。そういう企業は「プラス状態が大きい」というライバル企業に負けるのは当然だし、「劣者退場」の形でさっさと倒産するのが好ましいのだ。(ゾンビ企業ではなくとも。)

 ──

 以上で、真相がわかった。
 企業が退場するべきかどうかは、「ゾンビ企業か」というようなことで判断するべきではない。経営の赤字か黒字かで判断するべきではない。かわりに、社会状況で判断するべきだ。
 リーマンショックのときには、社会的に経済が縮小したせいで、市場原理が働きにくくなった。「優勝劣敗」ではなく、「全員が劣者」という状況だった。こういう状況で「優勝劣敗」を言い出せば「全員が退場」というふうになってしまう。それはまずい。だからここでは「優勝劣敗」という原理を緩和する必要があったのだ。
 一方、現状では、社会的に経済が縮小していない。こういう状況では「優勝劣敗」を進めていい。だから「人手不足倒産」が発生しても、それをどんどん推進していいのである。「これは構造的な問題だから解決が大変だ」なんて嘆くのではなく、「これは好ましいことだからどんどん推進しろ。ブラック企業をどんどん倒産させろ」というふうにするべきなのだ。

 朝日の記事では、良いことをした政府方針を批判し、良くなりつつある社会状況については嘆いている。(前者はリーマンショック時の融資支援。後者はブラック企業の倒産)
 つまり、褒めるべきことと批判するべきこととを、正反対に評価している。そして、それは、「企業の赤字化が優勝劣敗に基づくのか否か」という判断基準を見失っているからだ。
 物事の核心を見ずに、表面的な赤字にばかりこだわっていると、真実を見抜けないことになる。



 【 関連項目 】

 → JIC の高額報酬の問題 2: Open ブログ
 本項と関連する項目。本項の実例となるような、時事的なことを扱っている。


posted by 管理人 at 09:16 | Comment(1) | 経済 このエントリーをはてなブックマークに追加 
この記事へのコメント
たまには、ポジティブなコメントをしましょう。

この投稿には、感心しました。管理人さんに100%同意します。
Posted by 名無しの通りすがり at 2018年12月17日 22:20
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。