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最近の日韓関係は史上最悪と言えるほどまでに悪化している。対立は急激に拡大するばかりだ。
のみならず、韓国はほとんど自滅とも言えるほどにも、ひどい状況になっている。日本との軍事協力を破棄することで、米国との軍事協力までもないがしろにしているからだ。これでは北朝鮮が喜ぶばかり。あまりにもひどいので、トランプも呆れはてている。
G7サミットで、アメリカのトランプ大統領が、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領を「信用できない」などと、2日にわたって痛烈に批判していたことが、FNNの取材でわかった。
トランプ氏が文大統領を批判したのは、フランスで開かれているG7(主要7カ国)首脳会議の初日の夜で、首脳らが外交安全保障に関する議論をしている最中に、「文在寅という人は信用できない」などと切り出したという。
政府関係者によると、トランプ氏はさらに、「金正恩(キム・ジョンウン)は、『文大統領はウソをつく人だ』と俺に言ったんだ」と重ねて批判したという。
そして、トランプ氏は、2日目の夜に行われた夕食会でも、文大統領について、「なんで、あんな人が大統領になったんだろうか」と疑問を投げかけ、同席した首脳らが、驚いた表情をする場面もあったという。
( → 「文大統領 信用できない」 トランプ大統領 G7の席で((FNN)) )
トランプ個人だけでなく、米国の国務省が大々的に批判している。
韓国軍が、島根県の竹島周辺で、軍事訓練を実施したことをアメリカ国務省が、異例の強い表現で批判した。
韓国軍が25日と26日、竹島周辺で軍事訓練を行ったことについて、アメリカ国務省は、FNNの取材に対して、「日本と韓国の最近の対立を考えると、タイミング、メッセージ、そして規模の拡大は、問題を解決するのに生産的ではない」とコメントし、不快感をあらわにした。
国務省高官は、アメリカ政府が、韓国による竹島周辺での軍事訓練を批判するのは、これが初めてだとしていて、事態を深刻に受け止めていることがうかがえる。
( → 【独自】竹島での韓国軍訓練を米が批判 国務省「生産的ではない」(フジテレビ系(FNN)) )
米韓の関係は地に墜ちた、とも言えそうだ。
そして、そんなところにまで行き着いたとしても、それでもなおかつ日本を批判したい(喧嘩したい)というのが、韓国政府の方針であるようだ。
韓国としては、米国を喧嘩に巻き込みたくはないのだろうが、たとえ米国を喧嘩に巻き込んででも、日本との喧嘩では一切譲歩したくない、ということなのだろう。……つまり、それほどにも、韓国にとって日本との喧嘩や対立は最大のテーマとなっているわけだ。
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ここで問題だ。いったいどうして、こんなにひどいことになってしまったのか? こんなにひどい結果をもたらすような特別な理由があったのだろうか? (韓国にとって)
この疑問に答えようとするページがある。
→ 中国ウォッチャーが見た韓国人の頭の中−最近の日韓関係に添えて
ここでは、次の3点が理由だとされる。
・ 「中華思想」の延長にある「小中華思想」。
(中国が一番偉くて、次が朝鮮で、最低が周辺の日本)
・ 徹底した序列社会
(日本は格下なんだから、格上の朝鮮に従え)
・ 自分が絶対に正しいと考える
(私が換言すると、「自己を反省しない」)
なるほど。いかにももっともらしい。
しかし、これらのことは、ずっと昔から延々と続いていることだ。今になって急激に悪化したことを説明できない。
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では、いったい何が理由か? それについて、本サイトなりに答えよう。こうだ。
「日韓関係が急激に悪化したことには、特別の理由となる要素はない。原因となる特別な事象があるわけではない。ではなぜ、急激に悪化したかというと、それは、トポロジカル的な《 構造 》による」
このことは、カタストロフィー理論できちんと説明される。
→ カタストロフィー理論 - Wikipedia
この理論で説明すれば、次のようになる。
「山脈の頂点(分水嶺)に降った雨は、わずかな違いで、東に流れ落ちるか、西に流れ落ちるか、分かれてしまう。アンデス山脈では、最初のほんの小さな差のせいで、最終的に太平洋に流れ下るか、大西洋に流れ下るかが決まる。ここには「寝かせた三角柱」のような形の、トポロジカル(位相幾何学)的な構造がある。その断面図は、下記だ。
∧
この頂点の右か左かで、最終的にたどり着く地点が大きく隔たってしまう。
ここでは、
「最初にあった小さな差が、時間的な経過とともに、徐々に拡大していく」
という構造が、最初からあったのだ。
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韓国の政治構造も同様である。最初に、次の二つの選択肢があった。
・ 前大統領の方針を維持する (対日協調)
・ 新大統領の方針に変更する (対日敵対)
もともとは、前者だった。朴槿恵大統領が、慰安婦問題で最終的な解決をして、対日協調の路線を取った。
ところが、政治的なスキャンダルのせいで、朴槿恵大統領は失脚した。かわりに、それとは正反対の文在寅大統領が政権を取った。
このとき、韓国は向かう方向を変更したのである。「右でなく左に向かう」と。
その変更は、その時点では、ごく小さな変化しかもたらさなかった。 ∧ の頂点に近い位置で、頂点よりも少し右から、頂点よりも少し左へと、わずかに位置を変えただけだった。
しかしそのとき、右下りから左下りへと、方向性を変えた。この時点で、将来的には向かう地点が大幅に変化することは約束されていたのである。
そして、以後は、雪崩を打つようにして、左下りの道筋を進むことになった。
この間、左下りの道筋を進めるために、特別な力が働いたわけではない。外部からは特に大きな力が働いたわけではない。ただちょっと、最初に方向を左に変えるための力が働いただけだ。そのあとは、単に「先に進む」(時間の経過に従う)というふうにしただけだった。そのことで、非常に左側の位置に到達する結果になったのである。
ここで注意。「右/左」というのは、政治的な「右翼/左翼」のことではなくて、次のことを意味する。
・ 常識的で現実的な、合理的な思想
・ 観念的で理想的な、教条的な思想
前者にあるのは、「損か得か」という実利的な判断だ。プラグマティスティックとも言えるし、ただの金銭的な損得勘定だとも言える。
後者にあるのは、自分の信じている理想的な何かを信じるという態度だ。それはほとんど神を信じるのに近い。文大統領を初めとする人々が信じているのは、「民族主義」とも言えるが、「朝鮮という観念を神のように崇める」という方針だろう。
それは、日本にも似たものがある。日本における右翼の「天皇崇拝」「天皇制賛美」というのがそうだ。自分たちの信じたいものを絶対的に信じて、それへの批判を一切許さない。反対者がいくら合理的なことを言おうが、そういうことにはまったく耳を貸さない。
たとえば、
・ 夫婦別姓には断固反対 (夫婦同姓を崇める)
・ 女系天皇には断固反対 (男系天皇を崇める)
こういう方針を絶対的に信じて、あらゆる合理的な発想を否定する人々がいる。
それと同様なのが、文政権なのだ。日本の右翼が保守的な何かを信じて疑わないように、文政権は民族的な何か(朝鮮概念)を信じて疑わない。
それゆえ、いったんそういう方針を取った以上は、その方針がどんどん拡大していくばかりなのである。
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文政権のやって来たことは、おおむね、次のことだった。
・ 徹底した対日批判
・ 慰安婦の協定を反故にする
・ 最高裁の判事として、自分側の人を任命する
・ その判事のせいで、徴用工判決で大逆転。
(これまでの判例をすべてひっくり返す)
このあとで、日本では次の反応が生じた。
・ 日本が「条約無視は認められない」と全否定する。
・ 日本が韓国をホワイト国から除外する。
この二点が重要だ。日本はこれまで、我慢に我慢を重ねてきた。竹島が占領されても、慰安婦像でどれほど侮辱されても、自衛隊機が敵扱いされて撃墜されそうになっても、それでも我慢に我慢を重ねてきた。
しかし、徴用工判決は、もはや我慢の度を超えた。これは「日韓基本条約」という最重要のものを否定するからだ。このとき、日本は「堪忍袋の緒が切れた」状態となった。かくて、「ホワイト国から除外」という敵対的な方針が取られた。(もはや韓国を友邦とは見なさない、ということだ。)
ここで、韓国はいきり立った。しかし、それはおかしい。これまでさんざん、「日本は友邦ではない。むしろ敵だ」という立場を取ってきたのだ。なのに今さら、「友邦ではなくて敵だ」と言われたからといって、あわてふためくのはおかしい。
ただし、そう思うのは、合理的な思想を持つ人だけだ。韓国は非合理なので、こう考えていた。
「韓国は日本を敵として扱うが、日本は韓国を友邦として扱うべきだ」
※ こう聞くと、日本人は「????」と思うだろう。だが、韓国人の頭では、こういうふうになるのである。(正確には、文政権を支持する民族派の人々にとっては、だが。)
ともあれ、上で箇条書きしたような順番で、文政権は民族主義ふうの方針を取り続けた。それは、単に「おのれの信じた道を進む」というだけのことだった。しかし、その最初の方向がこれまでとは逆の「左向き」の方向だった。だからこそ、「単に先に進むだけで、自動的に状況が悪化する」というふうになったのだ。
ここでは、外部から特別な力(変動要因)が働いたのではない。単に「先へ進む」ということだけで、自発的に巨大な変動が生じたのである。
・ 東に向かう人は、単に先へ進むだけで、遠い東に行く。
・ 西に向かう人は、単に先へ進むだけで、遠い西に行く。
こういうことが起こったのである。ちょうど、アンデス山脈の頂点に降る雨のように。
こういう(政治的に)トポロジカル的な構造こそが、日韓に巨大な対立をもたらした真の理由なのである。
( ※ その最初の差をもたらしたのは、韓国の大統領選挙の結果だった。)
[ 付記 ]
ただし、その最初の違いをもたらしたのは、韓国人全体の民意であった。
文大統領の方針は、彼一人が独裁的に決めているのではない。韓国人の過半数がその方針を支持しているのである。
26日に発表された韓国の世論調査で、韓国政府が日本と軍事機密を共有するための協定、GSOMIA(ジーソミア)の破棄を決めたことについて、「支持する」と答えた人が半数以上にのぼることがわかりました。
( → 韓国の世論調査、GSOMIA破棄「支持」半数以上(TBS系(JNN)) )
「この親ありて、この子あり」という感じか。文大統領は、決して鬼子ではないし、「親に逆らう子」でもない。むしろ、「親の言うことをよく聞く子」なのである。つまり、国民の声に忠実なのである。
とすれば、「ダメな文大統領が次の選挙で交替する」というのを期待しても、無駄かもしれない。また、仮に次の大統領が別人になるとしても、その人は文大統領とウリ二つかもしれない。
文大統領の意思は、韓国人の意思なのである。その意思は、「日本との敵対」という方針を選んだのだ。
となると、この状態を改めるのは非常に困難だろう。私としては、「非常に大きな痛みを味わうことなしには、変革は不可能だ」と考えている。ちょうど、昔の日本の軍国主義が改まるには、ものすごく強大な痛みが必要であったように。
( ※ 似たことは前項でも述べた。
→ 日韓の対立の根源 : nando ブログ )
【 関連サイト 】
本項を書き終えたあとで気づいたが、本項によく似た内容の書籍があるそうだ。韓国でベストセラーのトップになっている。
→ これぞ韓国の「反日種族主義」の“病”か 異色研究者らが喝破した
一部抜粋。
「事実と異なった主張をする背景というのが反日種族主義。日本を絶対悪と見て、朝鮮を絶対善とする見方によるものなんです」
「韓国での反日種族主義というのは自由な個人がいません。朝鮮・韓国民族だけがある。つまり観念的で自由な個人が不在であること。そのため反日民族主義を近代的とみることが出来ない。なので民族主義と言わないで前近代的な種族主義ということになった」
本項で「民族主義」と呼んだものを、「種族主義」と読んでいるが、内容的には同じである。それが根源にある、と見なすわけだ。
( ※ 本サイトでは「左向きに進もうとする思想」というふうに示しているもの。)
深層心理を掘るのも歴史を学ぶことなのですが。