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経済成長の話をしてきたので、そのついでに、小さな情報を紹介しておく。
1カ月ほど前の記事だが、東欧の経済成長の話があった。
→ (インタビュー)壁が去り、憧れも消えた 国際政治学者、リュボミール・トパロフさん:朝日新聞(2019年11月8日)
ベルリンの壁の崩壊以後、ソ連の体制が壊れて、東欧は民主化して、西欧とつながるようになった。しかし、「東欧が西欧のようになれる」という期待に反して、現実的には、ういつまでたっても東欧の経済レベル(生活レベル)が西欧諸国には及ばない、という不満があるそうだ。
東欧の識者に聞いた話。(インタビュー記事)
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現地の人の言い分はそうだろうが、日本人の目で客観的に言えば、上記の話は納得しがたい。
(1) 経済成長率
東欧の経済レベル(生活レベル)が西欧諸国には及ばない、というのは事実だが、その差は縮小しつつある。
というのは、東欧の経済成長率は、西欧よりも高いからだ。
→ 世界の経済成長率ランキング - 世界経済のネタ帳
もともと大きな格差があったのだから、その格差が一挙に埋まるわけがない。長い年月をかけて少しずつ格差を縮小していくだけで足りるのだ。
「格差が一挙になくなると思ったのに、なかなかなくならない」
というのなら、それは、最初の望みが課題であったというしかない。それだけのことだ。
(2) 通貨
東欧の通貨は、ユーロ(欧州共通通貨)か? 違う。スロバキア以外はユーロを導入していないそうだ。( → 朝日記事)
ここでは、「独自通貨を採用しているからこそ、高い経済成長率を達成できている」と言えそうだ。
なぜか? 次のことが成立するからだ。
・ 低い成長率 ≒ 低い物価上昇率
・ 高い成長率 ≒ 高い物価上昇率
西欧諸国では、インフレ恐怖症ゆえに、物価上昇率を低くすることを最優先とした。そのせいで、共通通貨のもとで、金融引き締めがなされて、成長率も低くなった。
東欧では、インフレ恐怖症がないので、物価上昇率を高くすることが許容された。そのおかげで、独自通貨のもとで、金融緩和がなされて、成長率は高くなった。
以上のような事情がある。ここでは、「独自通貨があったから、独自の金融政策(金融緩和)を取ることができて、そのおかげで経済成長を達成できた、と言えるだろう。
その逆が、スペインだ。ユーロ圏に残っているせいで、独自の金融政策(金融緩和)を取ることができないので、経済成長率は低めだ。上記のリンク先のデータでは、世界 137位という低い成長率だ。東欧よりもずっと劣る。
( ※ 170位の日本は、さらに悪い。その理由は、前項に記した。)
翻って東の島国は,独自通貨もあり(今の所は)インフレを恐れる必要のないレベルの供給能力もあるのに,無駄な緊縮財政で国を衰退させている。政治は国民の鏡というが,我々はそこまで愚かなのか。