◆ ナゴルノ・カラバフの紛争:  nando ブログ

2020年10月20日

◆ ナゴルノ・カラバフの紛争

 ナゴルノ・カラバフで戦闘状態が収まらない。これを解決する方法はないのか?

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 解説


 初心者にもわかるように解説しよう。
 ナゴルノ・カラバフは、アゼルバイジャンの一部で、隣国のアルメニアに近い。


Nagorno-Karabakh.png


 ここは、アゼルバイジャンの一部なのだが、住民のほとんどがアルメニア人だ。そこでかねて、アゼルバイジャンから独立して、アルメニアと合体したがっていた。最近になると、はっきりと独立をめざすようになった。これにアゼルバイジャンが反発して、戦闘状態となった。(国レベルでなく地域レベルで)

 これを聞くと、
 「独立したがっているのなら独立させてあげればいいじゃないか」(
 と思う人が多いだろう。だが、話はそう簡単ではない。この件はいわば、次の事情に似ている。
 「イスラエルがパレスチナの一部を占領して、住民が勝手に独立した。すると、追い出されたパレスチナ人たちが、元の土地を取り戻したがる。かくて紛争となる」
 だから、()のような話は、簡単には成立しないのだ。

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 ナゴルノ・カラバフがパレスチナ問題に似ているのは、次の二点だ。
  ・ アゼルバイジャンはイスラム教で、アルメニアはキリスト教だ。前者はイスラム教のトルコの支援を受けており、後者はキリスト教のロシアの支援を受ける。(つまり、宗教対立がある。)
  ・ 現状では住民はアルメニア人がほとんどだが、もともとはアゼルバイジャン人もかなり多くいた。そこにアルメニア人がたくさん入植して、アゼルバイジャン人を追い出した。だから、住民投票をすると、アルメニア帰属を唱える人がほとんどだが、もともと住んでいたアゼルバイジャン人にしたら、これは領土を奪われるのにも等しい。


 ナゴルノ・カラバフがパレスチナ問題とは異なるのは、次の二点だ。
  ・ パレスチナでは、2000年ほど前の大昔に、ユダヤ人が多くいたが、2000年ほど前に、ローマがパレスチナを侵略すると、ユダヤ人はパレスチナを追い出されて、流浪の民となっていた。つまり、パレスチナでは、もともとはユダヤ人はほとんどいなかった。
  ・ ナゴルノ・カラバフでは、20世紀ごろまで、双方の民族が混在していた。

 この二点については、次の説明がある。
 南カフカース南部に位置するカラバフは、古くからアゼルバイジャン人とアルメニア人による領土紛争の舞台となってきた。アルメニア人の側は、カラバフが古代アルメニア王国の時代から数千年に渡るアルメニア文化(ロシア語版)の中心地である、と主張する。一方アゼルバイジャン人の側は、自らがカフカース・アルバニア人(アゼルバイジャン語版)の末裔であり、アルメニア人よりも古くにカフカース・アルバニア王国を形成していたカラバフ一帯の先住者である、と主張する。
 カラバフのなかでも中部の山岳地帯(ナゴルノ・カラバフ)には特にアルメニア人が集中しており、1916年の時点でナゴルノ・カラバフのアルメニア人は総人口の約70パーセントまで達していた。しかし、アゼルバイジャン側によると、それは19世紀になってからアルメニア人が入植した結果に過ぎないという。やがてロシア帝国が崩壊し、両民族がアゼルバイジャン民主共和国とアルメニア共和国として独立してからも、カラバフは南西側のザンゲズル(ロシア語版)やナヒチェヴァンと併せ、両国の係争地となっていた。
( → ナゴルノ・カラバフ自治州 - Wikipedia

 こういう事情があるので、どちらも「譲るに譲れない」という状況になっているわけだ。かくて長年にわたって紛争がずっと続いてきた。

 ※ アルメニア人は現状を守るために譲れない。たとえそこがもともとは他国であったとしても、現状を守ることが最優先となる。アゼルバイジャン人は、そこがもともとアゼルバイジャンという広大な領域の一部であるのだから、そこを他国から来たよそ者に奪われたくない。
 ※ 比喩的に言えば、朝鮮半島から日本に来た朝鮮人が、日本の一部の場所を占めて、独立を宣言したら(そして朝鮮との合体を目的としたら)、日本はそれを「はいそうですか」と認めるか? そういう問題だ。

 ──

 それで現状はどうか? こうなっている。(薄色の部分。NKR と記されている部分。)


Artsakh.png
出典:Wikipedia

 これは《 1991年に事実上独立した「ナゴルノ・カラバフ共和国」(NKR)の領域 》と称される図だ。時点は 1991年〜 2020年のころで、おおむね、この範囲であるようだ。

 図を見ればわかるように、アルメニア人側は、NKR の大部分(北部を除く)を実効支配しているだけでなく、そことアルメニアとの間となる領域まで多大に支配している。

 ※ 比喩的に言えば、四国を朝鮮人の入植者に占領されただけでなく、戦闘を通じて、九州まで占領されてしまった、という状況だ。

 このまま何もしないで手をこまぬいていれば、完全に領土は奪われてしまうだろう。だからこそアゼルバイジャンとしては、何としても今のうちに領土を奪還したがるわけだ。一方で、アルメニアの側は、せっかく大量の土地を専有しているのに、今さら追い出されたくないので、何が何でも戦おうとしているわけだ。

 こうして、双方がどうにも譲れない状況にある。本当はどちらも戦争なんかはしたくないのだが、譲るに譲れないので、ずっと戦闘が続いて、多大な死者が出ているわけだ。

 解決案


 では、どうすればいいか? なかなかうまい解決案はなさそうだが、そこは、困ったときの Openブログ ならぬ nandoブログ。一応ながらも、解決案を出そう。

 二つの側は譲れないのだから、とりあえずは共存する形での並立を原則とする。そのために、「連邦制」を解決案とする。つまり、二つの州からなる連邦だ。
 それぞれの州では、アゼルバイジャン人またはアルメニア人が独自の疑似国家(州)をもつ。

 ここで、それぞれの州を、本国(アゼルバイジャンまたはアルメニア)とそっくりになるようにする。そのために、法制度を同期させる。
 同期というのは、パソコンで二つのパソコンのデータを合致させるのと同様だ。連邦における州を、それぞれの本国(アゼルバイジャンまたはアルメニア)と法的に合致させる。具体的には、こうだ。
 「この州の法律は、本国の法律を自動的にコピペする」
 この1行だけあればいい。そうすれば、その州では、本国の法律と同じ内容の法律が自動的に実現する。
  ※ ただし地域名に依存する部分は自動的に書き換えることにする。

 すると、どうなるか? 
 実質的には本国と同等の法制度が実現しているが、形式上はあくまで別の国(疑似国家)となっている。
 そして、そういう二つの州からなる連邦として、新国家が成立している。
 実質的には二つの疑似国家を内包しているが、形式的には二つ合わせて一つの国家となっている。
 
 ──

 問題は、二つの州の比率だ。現状で人口比で割り振ると、アルメニア人が圧倒的に多きので、9対1ぐらいの比率になるだろう。そうなると、アゼルバイジャンが悔しい。「土地を奪われた」という思いが湧く。とうてい納得できないだろう。
 そこで、以前の比率に戻って、 7:3 ぐらいにする。これでもアゼルバイジャンとしては受け入れがたい思いが強いだろうが、現状ではそこにはアゼルバイジャン人がほとんどいないのだから、それよりはずっとマシになる。
 実際、北部では、かなりの広い土地で、アルメニア人だらけの村が「アゼルバイジャン側の土地」とされて、たくさん戻ってくるのだ。いっぱい戻ってくるのだから、悪い歯話ではあるまい。

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 ここで、注意するべきことがある。
 二つの州ができるが、それぞれの州では、住んでいる人々は追い出されない。北部では、アルメニア人の住んでいる多くの土地が、「アゼルバイジャン側の土地」になる。(アゼルバイジャン側の州に組み込まれる。)
 だが、そうなったとしても、そこに住んでいるアルメニア人は、現在地から追い出されない。単に法制度が、現状(実効支配しているアルメニアの法制度)から、新たな状況(連邦制におけるアゼルバイジャン側の法制度 = アゼルバイジャン本国に同期している法制度)に転換する、というだけだ。
 つまり、適用される法制度は変更されるが、そこに住んでいる人々の財産権(土地利用権を含む)は侵害されないわけだ。

 ──

 以上のことは、十分に可能であろう。
 なぜか? これが、普通の肥沃な土地であれば、土地の価値が非常に大きいので、土地の奪い合いということが生じる。
 しかるに、このあたりは、肥沃な土地ではない。むしろ、山岳だらけであって、人口密度は非常に低い。日本で言えば、「山間の僻地」に近そうだがが、実は、それよりももっと人口密度が低い。「ぽつんと一軒家」という状況に近い。あるいは、「秘境の村」という状況に近い。ほとんどが人のいない山地だらけなのだ。( Google マップでわかる。)

 こういうふうに「山地だらけ」という領域では、「土地の争奪」という意味合いは小さい。「土地の争奪」をするひどの人口はない。土地はやたらとありあまっている。そんなものは奪い合いをするほどの価値はないのだ。
  ※ 平地ではない。山岳地帯である。

 その意味で、財産的・金銭的には、「譲るに譲れない」というような状況にはない。歴史的・精神的には「譲るに譲れない」のだが、金の面では争奪をするほどの価値があるわけではないのだ。
  ※ 石油や鉱物などの資源が埋もれているわけでもない。

 ──

 というわけで、紛争の根っこは深いにしても、紛争の実質面ではあまり大きなトラブルがあるわけではない。頭を働かせれば、十分に解決の余地はある。
 一番大切なことは、それぞれの民族の権限なのだから、そこをうまく解決すれば、紛争を止めることはできるのだ。その方法が上述の「連邦制」(法律の同期あり)というものだ。




 [ 付記1 ]
 法律の同期といったが、細かなところでは、細部のすりあわせが必要だ。
 また、それぞれの州が本国と法的に同期する(合致する)だけでなく、それぞれの州がたがいに相互融通する措置も取る必要がある。
 たとえば、個人の運転免許証などは、共用・共通化するといい。そうすれば、片方の州で取った運転免許証が、もう一方の州でも有効となるので、便利になる。
 こういう形で双方が生活の共通化を進めていけば、双方の対立も次第に少なくなるだろう。いわば、EU の各国が、別々の法制度を持ちながらも、たがいに融通し合って、親密になっていくように。

 なお、連邦制といっても、連邦政府はなるべく小さい方がいい。せいぜい、共通の外交をになう外務省があるぐらいでいい。州内の内政については、それぞれの州が独自に行えばいい。
 
 [ 付記2 ]
 実効性をもたせる(実現させる)には、強制力をともなうといいだろう。特に、次のようにするといいだろう。
 (1) 双方が受諾すれば、この方式を実行する。
 (2) 片方だけが受諾すれば、その側に全権を持たせる。つまり、その側の州が領土の 10割を占める。受諾しない側は、領土なし。この状態で、国連軍が治安維持を実行して、抵抗する側を武力で打破する。(国連軍には強力な軍事力を与える。)
 (3) 受諾しない側は、領土なしの状態に不満が高まって、そのうちテロ活動をするかもしれない。そこで、5年後における受諾権を認める。5年後には、当初の方式(領土分割7:3の連邦国家)を実行する。

 以上のことを最初から示しておけば、当然ながら、最初の時点で、(1) が実現するだろう。こうしてうまく妥協が成立する。

 ※ ここで述べた (1)(2)(3) の方式は、ゲーム理論(タカ・ハト・ゲーム)に似ている。双方がハトを選べば、平和的に安定する。片方がハトで、片方がタカだと、(タカ・ハト・ゲームとは逆に)ハトの方が圧倒的に得をする。双方がタカだと、双方が大損する。(現状はこれだ。)
 
posted by 管理人 at 21:18 | Comment(1) | 政治 このエントリーをはてなブックマークに追加 
この記事へのコメント
アゼルバイジャンがトルコやイスラエルから大量導入したドローンによって、
アルメニアの大砲も戦車も対空ミサイルもみんなやられ、弾薬庫もドローンに破壊され
アゼルバイジャンが圧倒的に優勢となってしまった。
もう後はアゼルバイジャンがどこまでやる気なのかだけになってしまった。
軍用ドローン大量のアゼルバイジャンと民間用ドローンしかないアルメニアとでは戦力差が違いすぎた
ロシア軍が介入すれば戦況はひっくり返るだろうが
Posted by 無人くん at 2020年11月01日 07:52
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