※ 最後に 【 追記 】 があります。
――
政府が違法行為をするというのは、とんでもないことであって、まともな人間ならばこれを容認するはずがない。良心というものがある首相ならば、ただちに赤面して、是正するだろう。
しかし良心というものをもたない人間ならば話は別だ。堂々と違法行為をして、首相自らが犯罪者となって、平気でいるだろう。厚顔無恥。
その事例が、前にあった憲法53条違反(国会召集義務の否定)である。この件は、前にごく軽く触れたことがある。話のついでに。
→ 緊急事態宣言の再評価: Open ブログ
この問題について、朝日新聞の社説があらためて論じている。
憲法53条は、衆参両院いずれかの総議員の4分の1以上の求めがあれば、内閣は臨時国会を召集しなければならないと定めている。ところが安倍内閣は17年6月に出された要求を放置。98日後にようやく召集したものの、冒頭で衆院を解散して実質審議は行われなかった。
森友・加計問題の追及から逃げるため、国民の代表で構成される議会での審議を力で封じたものだ。法の支配の何たるかをわきまえぬ安倍政権の体質を象徴する出来事だった。
4年前、当時の安倍内閣が臨時国会の召集要求に応じなかったのは違憲だとして、野党議員らが損害賠償などを求めた訴訟で、那覇、東京、岡山の各地裁の判決が出そろった。3地裁とも、内閣の行為が憲法に適合するか否かの判断に踏み込まないまま、請求を退けた。
一連の訴訟は、質問権などを行使できなかった議員が金銭の支払いを求める形で争われた。判決はどれも、個々の議員がそのような請求をすることはできないと述べて、いわば入り口論で決着をつけ、内閣の行為の違憲性という核心部分に立ち入らなかった。
( → (社説)国会召集訴訟 内閣の無法 放置するな:朝日新聞 )
「賠償金を払え」という要求はナンセンスだ、という理屈で、裁判所は原告請求を却下した。これはこれで理屈が通る。
これに対して朝日新聞社説は「そうだとしても違憲かどうか判断をせよ」というふうに主張している。しかし、これは筋が悪い。違憲かどうか判断を求めるのであれば、それ自体をテーマとして訴訟をするべきだ。そうしないで、ただの金銭請求というふうに「裏道から攻める」というふうにしたのが根本的な間違いだと言えるだろう。
――
では、どうすればいいか? 私としては、次のように提案したい。
ここでは、内閣が憲法違反をしているということ自体をテーマとして訴訟をするべきだ。そのためには、次のように法理を立てる。
・ 内閣は憲法53条を遵守する義務がある。
・ 遵守しない場合には、内閣は正当性を失う。(法的基盤がなくなる。)
・ 裁判所は、現内閣の法的基盤の喪失を宣言する。
・ 裁判所は、判決時に、内閣の解体を宣言する。(あとは選挙管理内閣のみ)
・ 国会は、新たな首相を選任する。
・ 新たな首相が、現首相でない別人であれば、それでいい。
現首相が再任された場合は、裁判所が選挙無効を宣言して、国会を解散する。(衆院・参院)
このようにすれば、「違法な行為をする違法な内閣」という状況は解消する。
だから、このようなことをするように、裁判所に請求するべきだ。つまり、「金を寄越せ」でなく、「内閣を解体せよ」と請求するべきだ。
「そんなことはできないぞ」と思うかもしれないが、そもそも、「政府が憲法を守らなかったら」という場合の想定が、現行憲法には記してないのだ。現行憲法は、「政府は法律を守る」という性善説で書かれている。従って、「政府が法律を守らない」という場合については新たに裁判所が新解釈を出すしかないのだ。
そして、そのことを裁判所が示さなければ、日本はもはや政府が法律違反のやり放題となってしまって、法治国家ではなくなってしまう。裁判所が法治国家を否定したのも同然となる。日本という国を生かすも殺すも、裁判所しだいなのだ。だからこそ、そのための訴訟をするべきなのだ。「金寄越せ」なんていう訴訟ではなくて。
【 追記 】
だけど、あとで考え直したら、この方法は失敗だった。というのは、この事例では「冒頭で衆院を解散した」というふうになっていたからだ。
だから「衆院を解散するのを要求する」という手は、この件では使えないことになる。他の件では使えるんだけどね。
「憲法違反をするような内閣は、衆院解散で不人気になる」というのが前提の提案だったが、今回は使えない結果になりそうだ。失敗。
……と思ったが、よく考えたら、そうでもない。なぜなら、本項の提案では、「現首相の再任」は否定されているからだ。解散後の再任に就いてまでは考えていなかったのだが、解散後の再任についても否定する方がいいだろう。
……さらに言えば、参院のこともある。衆院解散はなされたが、参院解散はなされていない。参院についても法的無効は言えるだろうから、参院も解散させることができる。任期については、上記半分については任期6年で、下位半分については任期3年にすればいいだろう。
ちょっと奇策っぽいが、裁判に訴える価値はある。「賠償金を寄越せ」なんていうのに比べれば、ずっとマシだ。
【 関連サイト 】
安倍首相の森友学園問題で、安倍首相を守るために嘘をつかず、正直に本当のことを言った事務次官がいる。前川喜平だ。
この人のことを、官房副長官の萩生田光一が「裏切り者」扱いしたそうだ。「次官連絡会議」で、並み居る次官たちを前に、そう言って非難したそうだ。
→ 「この前まで仲間と…」最側近の標的にされた前川喜平氏:朝日新聞
しかし、これを聞いた次官は、こう思ったそうだ。
萩生田の言葉を聞いた事務次官は「この時の萩生田氏の言い方は、目の前の次官たちに『お前たちはきちんと安倍政権のために尽くせ』と言わんばかりだった。俺たちが尽くす相手は国民のはずなのに」と振り返った。
まったくその通り。なのに、常識が通じないのだから、安倍政権はとんでもない独裁政権だったと言える。
なお、こういうことを人事を通じて信賞必罰ふうに実行していたのが、当時の官房長官だった菅義偉だった。その人物が今の首相なののだから、何をかいわんや。