「こうすれば いじめを免れることができる」という、うまい方法を示す。
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いじめられた生徒は、対策として、どうすればいいか?
次のような対策が紹介されていた。(読売・朝刊・コラム・藤原正彦 2007-12-03 )
「両腕を水車のようにぐるぐる回して、相手がひるんだスキに、ぶんなぐって、やっつける」
これでクラスのガキ大将をやっつけた、という話だ。
ふうん。ま、小学校低学年ぐらいなら有効かも。しかし、高学年や中学生では、無効だろう。
私としては、もうちょっと頭のいい方法を教えたい。次のことだ。
「暴力には暴力で対抗せず、頭で対抗する。いじめっ子に対して、いじめない方が得ですよ、というふうに、損得の理屈で、いじめさせないように仕向ける」
では、どうすれば、いじめっ子に得をさせることができるか? 次のような例がある。
- お金で買収する
- ゲーム機やカードなどで便宜を与える
- 女の子を紹介する
ただし、以上は有効だが、私としてはお勧めしない。だいたい、やれるはずもないし。
私としては、お勧めなのは、次のことだ。
「いじめっ子と、ふだんから会話をして、仲良くしておく。そして、遊んだり、ついでに、勉強を教えて上げたりする」
いっしょに遊ぶことと、勉強を教えてあげること。……この二点がとても重要だ。なぜなら、いじめっ子に欠けているものは、この二点だからだ。ここからストレスが生じて、他人を攻撃したくなる。だから、その根源を絶てばいいのだ。
いじめっ子というのは、実は、社会の被害者である。たいていは、親がリストラされたり離婚したりで家庭が不遇だったり、勉強がわからなくて困っていたりする。そういう社会の犠牲者に対して、救いの手を誰も与えてくれない。だから、彼は、自分よりも弱い者を攻撃する。
ここで「弱い者いじめをしちゃ駄目」と言っても、根源的な解決にはならない。ここでは、いじめられっ子は、いじめっ子の味方になって、助けてあげればいいのだ。そうすれば、誰だって、味方を攻撃なんかしない。
人からぶたれたとき、「それならぶち返す」というのは、アメリカンな方法だ。それで問題が解決することは、あまりない。イラクでもベトナムでもパレスチナでも、問題が解決するのではなく、問題を拡大してしまった。
憎しみに対して有効なのは、より大きな憎しみを返すことではなく、愛を返すことだ。それによって、問題の根源が解決するものだ。
上記は、「生徒のなす対策」であった。他に、次の二つがある。
・ 親 のなす対策
・ 教師のなす対策
これらについて、順に説明しよう。
・ 親 のなす対策
親は、次の対策をすることができる。
「子供がいじめを受けたとき、被害者である親が連絡を取り合う。その上で、親同士で集まり、教師を呼ぶ。さらに、加害者の親を呼ぶ。こうして話しあう。そのことを親から聞かされた加害者(いじめっ子)は、事態の重大さに気づく。親に諭されて、いじめをやめる」
これは、私のやったことではなくて、私の知人のやったことである。実際に効果はあった。これで、いじめはなくなった。
( ※ ただし、いじめっ子が凶悪ではないことが前提。死亡・離婚などで、親がいなかったりすると、これは無効になるかもしれない。その場合には、教師や行政の対処が必要となる。)
・ 教師のなす対策
基本的には、教師の対策が必要だ。
「いじめっ子に対して、親身にケアする。家庭の事情やら何やら、いろいろと親身に話を聞いて、いじめに至るようになった心の問題を解決する」
これが根本的な対策だ。物事の根源に対処する。
一般に、いじめが起こる理由の大半は、「教師による無視(シカト)」である。次のように。
「頭の悪い生徒子供にわかるような授業をやらないで、理解不可能な授業を延々と続ける。頭の悪い生徒は、ちゃんとした教育を受けることもなく、難行苦行の時間を過ごすばかり。回りの生徒は、理解可能な授業を受けて、どんどん頭がよくなるのに、自分はずっと馬鹿のままにされて、ほったらかし。他人は幸福になるのに、自分ばかりが拷問を受ける。あげく、最終的には、ほっぽり出される。そのあとは、路頭に迷うようなハメになる」
現行の教育制度は、こういう虐待制度である。こういう制度のもとで、いじめをしたがるのは、きわめて自然なことだ。……こういう根源をなくすことが、本質的な対策である。
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ただし、上記の根源対策(教育の改善)は、一人の教師の手には余る。次の二点が必要だ。
・ 出来の悪い子供をまとめて世話する特別クラス。
・ 家庭に問題のある子供の心を聞くカウンセラー(若い女性が適する。)
この二点だ。
こういうことは、学校や行政の対処が必要となる。そして、そのためには、行政の側で、予算をつけて、ちゃんとした対処をする必要がある。そのために、一般の人々も、税の負担を必要とする。逆に、
「税金を負けろ」
「公共事業をしろ」
なんてエゴイスティックに叫んでいる限りは、予算は教育には回らない。
要するに、何のことはない、いじめの根本原因は、あなたなのだ。あなたが自分のことばかりを考えて、「自分ばかりが儲かりたい」と考えているから、他人のことを考えなくなる。そのせいで、社会のひずみが、不幸な境遇の人にしわ寄せされる。そうして苦しんでいるのが、いじめっ子だ。だから、いじめっ子が、逆襲をする。
「キッズウォーズ・虐待された子供の復讐」
これが、いじめの意味である。だから、いじめへの根源的な対策は、こうだ。
「あなたがいじめっ子をいじめている、と気づくこと」
ここに、物事の本質がある。
( ※ すぐ上のことは、「あなたに悪意がある」ということを意味しない。人は、自分でも気づかないまま、他人を傷つけることがある。そういうことだ。……そして、それに対する対処は、「悪意をなくすこと」ではなく、「真実に気づくこと」である。)
( ※ 本件で言えば、次のように言える。「人々は自分でも気づかないまま、政府の悪政を支持して、社会を悪化させている。だから、真実に気づいて、社会を改善するべきだ。愚かな政府を、賢明な政府に変えるべきだ。……そして、そのためには、政府が自発的に変わるのを待つのではなくて、一人一人が政府を変える必要がある。そして、そのための大前提が、「真実に気づくこと」だ。)
※ いじめについては、社会全体が対処するべきだ、という件
については、次の箇所でも言及記した。
→ 「泉の波立ち」11月03日b
いつもながら南堂さんに教えられること大です。
現在の社会の異常な様を、分かりやすく短い言葉で言い得て妙と思います。このフレーズが、かつての「改革なくして云々」と同じ程度に広まることを願うも、空し、、