◆ TPP と空洞化:  nando ブログ

2011年11月18日

◆ TPP と空洞化

 TTP で国内の農業を保護すれば、失業を避けられるか? いや、空洞化によって輸出が減るので、輸出産業で失業が発生する。

 ──
 
 「 TTP で国内の農業を保護すれば、失業を避けられる」
 という主張がある。TPP 反対論者の主張。
 しかしそれは浅はかだ。外国からの輸入を制限すれば、逆に、自国からの輸出が制限される。(円高になるので。)
 結果的に、空洞化が進むので、輸出産業で失業が発生する。それはすでに現実化しつつある。
  → トヨタ、円高で輸出1割減へ
  → トヨタ「(海外に生産を)シフトする選択肢もある」

 これは円高による空洞化だ。
 最近の円高は、欧州の通貨危機が理由だが、その分は 15円程度にすぎないだろう。むしろそれまで、大幅に円安状態だったので、その円安が解消された効果が大きい。
 つまり、欧州通貨危機のせいで円高が進んでいるように見えても、本当は基本的な円高傾向がある。それは長期的な円高傾向だ。
 その理由はもちろん、大幅な貿易黒字だ。それは二つの理由による。
  ・ 輸出が増えた。
  ・ 輸入が増えない。


 これを解決するには、次のいずれかしかない。
  ・ 輸出を減らす。
  ・ 輸入を増やす。

 このいずれかを取れば、貿易黒字が減って、問題はなくなる。では、どちらを採るか?
 
 TPP賛成論者は、「輸入を増やす」という道を取る。この場合は、輸出産業では空洞化が進まないので、輸出産業では失業は発生しないだろう。 
 TPP反対論者は、「輸入を増やさない」という道を取る。この場合は、輸出産業では空洞化が進むので、輸出産業では失業が発生するだろう。 

 結論。

 TPP に反対して、農業を保護すれば、農業では失業が発生しない。しかしその分、(円高によって)空洞化が進むので、輸出産業で失業が発生する。
 兼業農家は、副業としての農業を守られることで、年間 30万円程度の所得を失わずに済むだろう。しかしながら、本業としての工場労働者としての職を失い、年間 200〜300万円程度の所得を失うだろう。しかも、その場合、所得補償はない。
( ※ 農業自由化の場合には、所得補償がある。国全体の利益が増えるので、農業自由化の場合には、所得補償をする資金が生じる。)

 ──

 教訓。

 物事の一部分だけを見て、「ここの金を失うまい」とすれば、他の部分で金を失っても、気づかない。
 真実を見るには、物事一面だけを見るのでは駄目で、物事の全体を見る必要がある。
 自由貿易を推進すれば、全体の利益が増える。ここを見ることが大切だ。一方、「農業を守れ」というような局所的な見方をすると、一部の利益を守るかわりに、他所で大きな利益を失う。しかも、そのことに、気づかない。
( ※ イソップ童話にでもありそうな、馬鹿者の例。)



 [ 付記1 ]
 自動車産業が空洞化の問題にさらされていることには、円高のほか、もう一つ理由がある。それは、韓国車との競争だ。
 これまでは韓国車は、日本車のライバルではなかった。日本車のライバルは存在しなかった。ライバルはいずれも国内の他社だった。だから円高があっても、条件は同じであり、特に問題ではなかった。
 しかし近年、韓国車は非常に実力を付けて、少なくともデザイン面では日本車を上回るようになった。最新型の新車も、明らかに日本のライバルよりずっとカッコいい。
  → http://response.jp/article/2011/11/18/165627.html
  → http://www.hyundaiusa.com/vehicles/future-cars/2012/azera/
 こうなると、日本車は従来通りの台数を維持しようとしても、採算性がきわめて悪化する。韓国車の方が安くてカッコよくて高性能なんだから、どうしても価格を引き下げざるを得なくなり、採算性が悪化する。
 こういう理由で、国内生産が立ちゆかなくなる(円高への抵抗力がなくなる)わけだ。

 さらに最近は、追い打ちをかけられる形で、ユーロ安の欧州車とも競争しつつある。それまでは欧州車はユーロ高のせいでライバルになりそうもなかったのに、最近ではユーロ安のせいで価格帯が同じぐらいになってきている。ここでも苦しい戦いを迫られている。
  → カーオブザイヤーはVW パサート
 
 [ 付記2 ]
 いろいろと苦しい事情があるのに、日本は高関税で輸入制限をしているものだから、ますます円高が進んで、輸出産業は苦しむことになる。
 かくて兼業農家の人々は、将来的には工場で、どんどん首を切られるだろう。しかし、それはやむを得ない。自業自得というものだ。TPP 反対派の言葉にだまされたからだ、と自分を責めるがいい。「 TPP に参加しても輸出は増えない」と中野剛志は言う。そういう問題じゃない。「 輸入を増やさなければ輸出産業が縮小するので、兼業農家は工場で失業する」という問題なのだ。
 中野剛志みたいな半可通の言葉を信じた自分を、「愚かだった」責めるがいい。「本当ならば遊んでお金がもらえるはずだったのに、失業保険が切れたあとでは、無一文になったな。あとは生活保護になるしかないな」と自分を責めるがいい。
 ただし、TPP 反対論者も、その罪を分かち合う。だから TPP 反対論者は、兼業農家に向かって、「失業させてごめんなさい」と謝るべきだろう。

posted by 管理人 at 19:04 | Comment(2) | 経済 このエントリーをはてなブックマークに追加 
この記事へのコメント
初めてコメントさせていただきます。
巷にTPP反対のヒステリックな意見が溢れる中(あの中○とかいう教授はその筆頭ですよね、どうしてあんな人が教授を名乗れるのか…)、ここは経済学の理論から詳しく解説を行ってくださってとてもためになります。

とりあえずヒステリックなTPP批判論者はマクロ経済学とミクロ経済学の基礎本を勉強してから出直せと言いたくなりますね…。現状のTPP批判の大部分が、経済学を大学ですこし学んだだけの自分からみても論理的におかしい事が分かるというのに。

この間もネット上で「比較優位論は机上の空論である」という意見が。唖然。「自由貿易の罠」という本に書いてあったそうなのですが…誰でしょう、そんな無責任な事を書いたのは。
Posted by アルタ at 2011年11月19日 18:02
TPPに参加したところで産業の空洞化は止まらないと思います。


あと、国家運営というものは経済だけで見てはいけないと私は思っています。
食料、資源、(軍事)これらは安保上非常に重要な要素なので、余程リターンが大きくない限り、そう簡単に手放してはいけないと思います。
Posted by 太郎 at 2012年02月03日 17:17
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