◆ 失われた 20年? 10年?:  nando ブログ

2012年02月07日

◆ 失われた 20年? 10年?

 日本の長期不況を「失われた 20年」と表現することが多いが、「いや、失われた 10年だ」という反論もある。どちらが妥当か?

 ──

 1991年のバブル破裂以来、現時点までの約 21年間は、その長期不況ゆえ、「失われた20年」と呼ばれることが多い。
 これに反論して、「いや、失われたのは 20年でなく 10年だ」という見解がある。その理由は、「 2000年以降の 10年間は、十分な成長があった」ということだ。次のような提唱者がいる。
  → 日本銀行の白川方明総裁とクルーグマン
  → ノア・スミス(Noah Smith)
 いずれの主張も同様だ。「2000年代には、日本は各国以上の経済成長があった。だから、この 10年間は別に失われたわけではない(不況だったわけではない)」というわけ。日本の実質成長率を見ての判断だ。
 しかしこれは、間違いだ。

 ──

 第1に、マクロ経済学の理解では、大事なのは成長率ではなく、 GDP である。たとえ標準的な成長率があったとしても、その初期値が不況の低迷した状況であれば、それは「穴の底に落ち込んだ状態が続く」ことを意味するだけだ。経済学用語で言えば、「縮小均衡」が続くことを意味するだけだ。
 どうも彼らは勘違いしているようだが、「不況」と「縮小均衡」とは異なる。「デフレ」というのは、経済が縮小していく過程だが、いったん縮小したあとでも、「縮小均衡」という状況は続く。そして、「縮小均衡」が続く状況は、決して「好況」でもないし「不況脱出」でもない。

 比喩的に言えば、こうだ。「風邪で熱を出した。初期はどんどん熱が上がったが、40度になったら、熱は 40度という高温状態で安定した。病状は安定した。悪化が止まって、安定状態になった。ゆえに、風邪はもう治った。万歳!」
 気違いじみていますね。悪化が止まったからといって、病気が治癒したことにはならない。状況の悪化が止まったからといって、状況が改善したわけではない。

 図示しよう。

        \_/
        悪化  低迷  改善

   ※ 悪化が止まったあとでは、低迷状態になるが、それは改善とは別のことだ。


 結局、この 10年間は「悪化」が止まっただけであり、それは「低迷」状態にすぎない。その間、「他国と同程度の成長率」があったとしても、それは「悪化」が止まったということを意味するだけで、「不況脱出」を意味しない。「不況脱出」を意味するためには、元の GDP 水準への回復が必要だ。そのためには、大幅な上昇の時期が必要となる。(上の図でいえば右上がりの時期)
 比喩的に言えば、秀才の点数が 90点から 60点に落ちたなら、そのあとで 60点の状況をを維持しても駄目で、60点から 90点に回復する(上昇する)必要がある。「 60点のまま現状維持が続けば、もう悪化は止まったぞ、万歳」なんて言えないのだ。
 「失われたのは 20年でなく 10年だ」なんて言う人々は、マクロ経済学というものをまともに理解できてない。そもそも、「ひどい悪化」が起こったのは、1991年以降の3年程度に過ぎない。それ以後、日本はずっと低迷状況が続いている。それは「悪化ではなく、「低迷」つまり「縮小均衡」の状況なのだ。そのことを正しくマクロ経済学的に理解する必要がある。

( ※ 実質成長率が2〜3%ぐらいのプラスになっても、それは単に「生産性の向上」によるものだから、意味はない。その程度の伸びは、どの国でも生じている。若干の誤差や国情を除けば、どの国でも同等だ。大事なのは、生産性の向上以外の分の、経済規模の拡大だ。それが起こらずにずっと低迷している、ということが本質だ。)

 ──

 第2に、この十年間が「改善」でなく「悪化」の傾向をもっていたことは、国民の実感からわかる。具体的に言うと、企業業績はそれほど悪化していないのだが、一般国民の所得が減ってしまっている。
 そのことは、統計を見れば、はっきりとわかる。
  → サラリーマン平均年収の推移(平成22年)
 これを見ればわかるように、サラリーマンの年収はこの 10年間に大幅に悪化している。しかしながら、国民所得(= GDP )は、生産性の向上の分だけ上昇している。国全体では所得が増えているのに、サラリーマンの所得は減っている。
 なぜか? 簡単だ。「貧富の格差」が拡大しているからだ。

 つまり、次の二点が同時に起こっている。
  ・ 一般のサラリーマンはどんどん所得が減っている
  ・ サラリーマン以外の人々は所得が増えている

 後者で、サラリーマン以外の人々とは、農家や商家のことではない。資産家だ。代表的なのは、たぶん、ネット関係の経営者や資本家だろう。SNS なんていう麻薬中毒みたいな事業や、ケータイのような寡占事業で、国民から莫大な金を奪い取る。そうして奪った金を、一部の経営者や資本家がたっぷりと独り占めする。たとえば、孫正義は、6000億円の資産家だが、ソフトバンクの過剰利益によって、さらに毎年莫大な試算を貯め込んでいく。それでいて、ろくに税金を払わない。(彼の自宅は会社所有だから、自分では固定資産税などをちっとも払わない。合法的な脱税。)
 というわけで、「一部の大金持ちがどんどん豊かになり、その分、サラリーマンはどんどん貧しくなっていく」ということが、上のグラフからもわかる。
 
 なお、次のグラフも興味深い。
  → 年代別 平均年収の推移 20代40代
 
 ──

 結論。

 「失われたのは 20年でなく 10年だ」という説は成立しない。日本はこの 20年間、ずっと長期低迷状況が続いていた。特に、一般国民は、富を奪われる形で、所得を大幅には失い続けた。……こういうことは、グラフを見ればはっきりとわかる。
 なのに、グラフを見ることもできず、数字を理解することもできない人々が、事実とは正反対のことを述べて、人々をだます。
 
 これは一種の洗脳キャンペーンだ。で、その結果は? 池田信夫その他の洗脳キャンペーンに引っかった人々は、「自分たちが所得を奪われている」ということに気づかず、「今はおめでたい状況なんだ、嬉しいな」と思い込まされる。そうした状況において、金持ちたちは、貧乏人の所得を奪い続けるのである。さらには、「法人税の引き下げと所得税の引き上げ」によって、国家もまた、金持ちのために富を貢ぎ上げようとしているのだ。バレにくい形で。
 かくて人々は、だまされっぱなしで、奪われっぱなし。



 [ 付記 ]
 日本では貧しい人々ほどいっそう貧しくなっていく。そのことは、次の数字からもわかる。
  → 生活保護、約 208万人=5カ月連続で最多更新
  → 単身女性 32%が「貧困」
 
 
posted by 管理人 at 23:20 | Comment(2) | 経済 このエントリーをはてなブックマークに追加 
この記事へのコメント
自分と違う意見の人間を非洗脳者呼ばわりとか見識を疑いますね。たとえあなたのおっしゃっていることが正しくても、私はあなたが嫌いです。
Posted by 神様 at 2012年06月28日 21:43
 あなたは「神様」と自称するだけあって、非常に聡明ですね。世界で一番頭がいいでしょう。あなたはとても利口で、完全無欠です。ゆえに反省することは何一つありません。

 ……そう言ってあげれば、満足でしょうね? 


 p.s.
 悪魔は甘い言葉で、おもねりつつ、賛美する。
 良薬は苦し。
 どちらでも、お好みの品をどうぞ。たぶん、前者がお好みでしょうが。
 たぶん、「高額の子供手当」とか「莫大な埋蔵金」とか「高速道路無償化」とかが、お好みでしょう。……で、それを信じたら、「消費税増税」をプレゼント。あなたにぴったり。

Posted by 管理人 at 2012年06月28日 22:02
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