円高にともなう企業の海外進出がある。これを見て、「空洞化だ」「雇用の流出だ」と騒ぐ人々がいる。しかし、妥当ではない。
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円高にともなって、企業の海外進出が進みつつある。朝日新聞 2012-03-20 は、自動車産業(特に自動車部品)の海外進出を見て、「空洞化だ」「雇用の流出だ」と騒いでいる。
だが、そのような事実が本当であれば、過去の 1ドル=360円や 240円や 170円のころに比べて、日本の企業は大幅に海外進出が進んでいるから、日本の産業はまったく空っぽ状態になっているはずだ。そしてまた、日本の貿易収支は大幅赤字になっているはずだ。しかしながら現実には、日本の貿易収支はずっと黒字が続いている。昨年は赤字になったが、これは東日本大震災やタイ洪水における工場停止という特殊事情があったからにすぎない。あくまで一時的な現象にすぎない(¶)。 要するに、「円高による空洞化・雇用流出」という事実は、存在していないのだ。
¶ → [ 付記3 ]を参照。
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では何が起こっているか? 簡単だ。「不況による経済規模の縮小」である。これは日本経済全体を縮小させるから、「雇用の縮小」が起こる。「空洞化」(≒貿易赤字)なしに、「雇用の縮小」が起こる。……つまり、(空洞化による)「雇用の流出」ではなく、(不況による)「経済の縮小・雇用の縮小」があっただけだ。
従って、その解決策は、「円高の阻止によって、輸出を拡大すること」ではなく、「内需の拡大によって、経済規模を拡大すること」である。そうすれば、失業は解消する。
物事の本質を見誤ってはならない。
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そもそも、輸出と輸入は原則として均衡する。「輸出が減る」としたら、それは「輸入が減る」ということを意味するだけだ。それは国家的に見れば、「働く量が減るので、(外国から)購入できる量が減る」ということを意味する。それを国民全体で見れば、「働く量が減るので、生活水準が下がる(物質的な豊かさが下がる)」ということだ。 ..... (*)
例示的に言えば、自動車や家電製品を生産する量が減るから、外国から輸入するブランド品や食品の量が減ってしまう(または質が下がってしまう)。……そういう意味で、「働く量が減るので、買える量も減る」というふうになる。つまり、「輸出が減って、輸入も減る」というふうになる。
一方、国民全体が失業するかどうかは、別問題だ。「働く量が減る」ということは、別に良くも悪くもない。過労死するほど働くことが好ましいわけではない。大事なのは、「失業が起こらないこと」だけだ。そしてそれは、「不況であるか否か」で決まる。今のように不況である状態では、「不況脱出」が必要であり、そのためには、「経済規模の拡大」が必要だ。そして、それをなすには、「内需の拡大」以外にはない。なぜなら、日本はもともと輸出は全体の1割程度しかないからだ。仮に輸出だけで不況脱出を図るとしたら、輸出量を一挙に5割もアップさせる必要がある。50%のアップ! そんなことは不可能だ。
一方、内需の拡大ならば、5%の内需拡大は十分に可能である。そのことは別項で述べたとおり。
→ 中和政策
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結論。
「空洞化のせいで、雇用の流出が起こる」という節は正しくない。
現実にあるのは、「雇用の流出」ではなく、「雇用の縮小」である。
「雇用の縮小」をもたらすのは、「経済規模の縮小」である。
問題の解決には、「経済規模の拡大」をすればいい。(「輸出の拡大」ではない。)
国がなすべきことは、「円高の阻止」ではなく、「内需の刺激」である。
( ※ マクロ経済学を理解すれば、このように正しい結論が得られる。素人が直感的に考えるだけでは、物事の真実を見抜けない。経済を論じるなら、経済学的に考えるべし。)
[ 付記1 ]
誤った認識の原因は、次の認識だ。
「企業が海外進出すると、その分、国内の生産・雇用が減少する」
これは物事を一面だけでとらえた認識だ。仮にそういう一面的な出来事が成立するとしたら、次のようになる。
「国内の生産・雇用が減少し、輸入量は無変化なので、貿易赤字が拡大する」
しかし、それはありえない。貿易赤字が拡大すれば、円安になり、輸出量が増えるからだ。
つまり、「変動相場制の下では、輸出入は均衡する」という原則があるから、「輸出だけが減る」ということはありえない。この「変動相場制」という効果を理解していないのが、誤った認識の根源だ。
現実には、変動相場制があるから、輸出入は均衡する。したがって、次のようになる。
「企業が海外進出すると、その分、国内の生産・雇用が減少する。だが、同時に、円安が進展するので、その分、他の産業が輸出を増やす。たとえば、自動車産業が輸出を減らした分、円安になるので、家電産業が輸出を増やす」 ..... (**)
ただし、実際にはもうちょっと複雑で、次の二点が同時に進行する。
・ 円安になった分、輸入商品が高額になり、輸入が減る。 (*)
・ 円安になった分、輸出が容易になり、輸出が増える。 (**)
[ 付記2 ]
ともあれ、本質的には、雇用の問題は、GDP の9割を占める内需しだいである。GDP の1割でしかない輸出は、雇用の問題にはあまり影響がないのだ。(少しはあるが。)
だから、「輸出が減ったから雇用が減る!」なんて騒ぐのは、問題の本質からはあまりにもズレている。それは、問題の本質を逸らして、どうでもいいような小さなことに目を向けさせるだけだ。ほとんど猫だましである。
[ 付記3 ]
本項を書いたあとで、新たなニュースが出た。
2月の貿易収支が黒字になったそうだ。( → 本日 2012-03-22 の各紙夕刊 )
貿易赤字が数カ月間続いたが、それも解消して、また貿易黒字に戻ったわけだ。これは、上記の ¶ で述べたことを証するものだ。
世間では「空洞化する!」「貿易赤字が続く!」なんて騒いでいる人が多いが、現実は正反対だ。日本は基本的には、貿易黒字の体質である。つまり、一部の産業は空洞化しても、日本全体では空洞化していない。むしろその逆だ。(貿易黒字だから。)
※ 貿易赤字の体質であるギリシアとは、正反対の事情にある。
【 関連サイト 】
輸出が GDP に占める割合は? 次の数字がある。
→ 日本の輸出 …… 65兆5547億円
→ 日本の GDP …… 506兆8333億円
以上から、割り算して、輸出が GDP に占める割合は 12.9% である。(2011年)
他の年も、だいたい同程度。(上下2%程度のブレはあるが。)
→ http://www.iti.or.jp/stat/2-008.pdf
2012年03月22日
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