◆ 消費税増税とギリシャ化:  nando ブログ

2012年06月21日

◆ 消費税増税とギリシャ化

 消費税を増税しないと、財政赤字のせいで、日本はギリシャ化する、という主張がある。その理屈のどこがおかしいか?

 ──
  
 「消費税を増税しないと、財政赤字のせいで、日本はギリシャ化する」
 という主張がある。たとえば、岡田副総理は、次のように語っている。
 岡田副総理は説明の中で、財政破綻したギリシャなどよりも、膨大な借金を抱える日本の状況を示し、「今は金利も安定しているが、いつまで続くかわからない」と述べ、消費税5%引き上げと社会保障制度の維持を訴えた。
( → MSN 産経 
 これは岡田副総理の見解だが、野田総理も同様だ。
  
 さて。このような理屈がおかしいことは直感でわかっても、うまく説明できない人が多い。
  → 誰かこれに反論してくれ 反論できなくて悔しい

 上のページでは、「増税すると経済が悪化するので、かえって経済は崩壊する」という説明がある。
 それと同様のことは、テレビ番組でも、みんなの党が解説していた。
  → 消費税増税のせいでギリシャ経済が急速悪化

 ──

 さて。以上の反対論は、「消費税増税の反対論」としては、妥当である。私の見解とも一致する。
 しかしそれは、「消費税増税の反対論」であって、「野田の主張が間違っている」ということとは異なる。「どちらが正しいか」という比較にはなっているが、「野田の主張を論破する」ということにはなっていない。だから野田が、
 「そうかもしれないが、でもやっぱり財政赤字を縮小することも大切だよ」
 と弁解したら、うまく否定できない。

 要するに、上記の批判は、「AとBのどちらが正しいか」という比較で、「AよりもBが正しい」という結論を得ることはできるが、その場合は、「AもBもどちらも正しい。ただしBの方が正しい度合いが大きい」ということもあり得る。つまり、「Aは正しい」というのを完全論破できていない。
 その意味で、回答としては、不完全だ。というか、そもそも回答になっていない。
 
 ──

 そこで私が完全なる回答を示そう。
 基本的には、次のことが大切だ。
 「財政赤字と国際収支赤字とは異なる」


 財政赤字というのは、政府の赤字である。政府に赤字が貯まり、その分、国民に黒字が貯まる。政府は国債を乱発し、国民は国債をたくさん保有する。国全体としては、特に赤字になっていない。(外国人が日本国債を大量に買わない限り、そう言える。)

 国際収支赤字というのは、国家の赤字である。国家に赤字が貯まり、その分、外国に黒字が貯まる。国家は対外債務を乱発し、外国はその国への債務をたくさん保有する。
 ギリシャは、この対外債務が巨額に上った。では、日本はどうか? 実は、日本は国際収支は、赤字であるどころか、大幅な黒字だ。日本・ドイツ・ギリシャの三国を比較しよう。

経常収支の推移(1980〜2012年) - 世界経済のネタ帳

cf. → もっと見やすい図 )   

 国際収支を見よう。ドイツは近年になって、巨額の黒字をもつようになった。日本は数十年間、一貫して巨額の黒字がある。一方、ギリシャは、日本の1割以下の人口しかないくせに、かなり巨額の赤字をかかえている。

 このことから、次のことがわかる。
 「ギリシャは巨額の対外債務をかかえており、国全体が破綻状態にある。一方、日本は、巨額の国際収支黒字があり、国全体は大金持ちである。破綻どころか、それとは正反対の状態だ」


 その意味で、「日本がギリシャ化する」というのは、まったく見当違いの認識であるのだ。それは財政赤字と国際収支赤字とを混同した認識である。

  ────────────

 では、財政赤字と国際収支赤字とは、どう違うのか? 国際収支赤字は、国家としての破綻をもたらし、ギリシャ化することになるが、財政赤字は、何をもたらすのか? 

 答えよう。こうだ。
 「財政赤字は、国家の破綻を意味するのではなく、将来の巨大インフレを意味する」


 これが正解だ。財政赤字は、確かにまずいことなのだが、それがまずい理由は、「日本がギリシャ化すること」ではなくて、「将来的に巨大インフレが起こること」なのである。
 そして、「将来の巨大インフレ」を避ける唯一の策は、「増税」ではなくて、「今すぐマイルドインフレを起こすこと」なのだ。
 毎年3%ぐらいの物価上昇を起こしておけば、将来的に一挙に大幅なインフレが到来することはない。しかし、毎年0%またはマイナスの物価上昇になっていれば、将来、突発的に、巨大インフレが到来することは必然だ。(ただし、財政赤字が巨額の場合。)
  → バーナンキの背理法

 ──

 では、増税は、何を意味するか? 増税が意味することは、二通りである。
  ・ インフレ期 …… 景気冷却。財政黒字化。
  ・ デフレ期  …… 景気悪化。財政は両面価値。


 解説しよう。
 インフレ期ならば、増税は必要だ。それによって、景気冷却をなし、財政黒字化を図る。過度な景気過熱を防ぐので、有益なことである。(国民に不人気ではあるが。)
 デフレ期ならば、増税は逆効果である。それによって景気はいっそう悪化する。財政は、税率アップによる増収と、景気悪化による減収とが、どちらもある。そのどちらが上回るかは、ケースバイケースだ。日本の過去の例では、増収効果はまったくなかった。かえって減収になってしまった。

《 日本の税収 》

日本の税収

   ※ 消費税の税率アップは 平成10年(1998年)


 この件は、次のページにも記されている。
  → 増税しても税収は上がらない。これは「歴史の真実」

 次のページもある。
 デフレで増税しようとする野田内閣は世界の非常識なんです。
 そう言ったのはマサチューセッツ工科大学(MIT)レスターサロー教授。
 「デフレで増税はクレージー」
 ノーベル賞経済学者のプリンストン大ポール・クルーグマン教授も、
 「増税はデフレを加速するだけ」
 と言ってのけてますね。
( → 眼力Blog
 ──

 まとめ。

  ・ 財政赤字と国際収支赤字とは異なる
  ・ ギリシャが破綻したのは国際収支赤字のせい
  ・ 日本は国際収支黒字だから破綻しない
  ・ 日本は財政赤字がある
  ・ 財政赤字は、国家破綻でなく、将来の巨大インフレを意味する
  ・ 増税は、財政赤字の縮小には逆効果
  ・ 日本がなすべきことは、景気回復(増税ではない)



 【 関連サイト 】

 以下は、J-CAST からの転載。
 「野田首相も現在5%の消費税を2年後に8%、3年半後に10%まで上げようとしているが、いかにもタイミングが悪すぎる。いずれ消費税8 件を上げなければいけないことにはなるだろうが、それはいまではない。この時期に消費税8 件を上げたら、もっと消費が落ち込み、経済が悪化することは目に見えている。
 日本の政策当局はいつも、これといった大胆な政策を打たないできた。だからこそ、他国でショックが起きたときにはかなりきつく影響が波及してしまう」
これは「週刊現代」に載ったノーベル経済学受賞者ポール・クルーグマンの言葉である。インタビューの冒頭でクルーグマンは、ギリシャの財政再建計画は現実的に実行不可能だといっている。
 「現実が私の言っていたようになってきている。もはやギリシャにはユーロを離脱し、そこから改めてやり直す以外に道は残っていない」
( → http://www.j-cast.com/tv/2012/06/07134899.html
 クルーグマンはたいてい私と同じ意見だ。ただ、ユーロ離脱に関する限り、私の方が十年早い。ユーロ開始の時点で、私はすでにユーロを否定している。(別項参照。)
  → 欧州共通通貨 (まとめ)
  


 [ 付記 ]
 ギリシャのような「国家の破綻」は、日本では起こらない。そのことは、次のことからわかる。
 「もし日本の国債を、誰も引き受けてくれなくなったら、日銀が引き受ければいい」
 この場合、日銀が紙幣を印刷して、国債を買うわけだ。だから、「国債の引き受け手がいなくなる」ということは、日本ではありえない。

 ただし、その場合、物価は急上昇する。この件は、本文中で「巨大インフレが起こる」と述べたとおり。で、それがどういう形で起こるかを、「国債の日銀引き受け」という形で明示したわけだ。

 なお、ギリシャの場合、この手は使えない。ギリシャは独自通貨がないので、独自通貨を印刷できないからだ。そのおかげで、巨大インフレも引き起らないが。(逆に言えば、巨大インフレが起こらないようにする仕組みがあるせいで、勝手に紙幣を印刷することができず、かくて国家破綻が起こる。「インフレになるくらいなら、むしろ国家破綻を取る」という本末転倒の仕組み。)
 


 [ 余談1 ]
 以下は、米国の話。
 米国の場合は、(双子の赤字で)国際収支が大幅赤字だ。それでも、あまり問題にならない。なぜか? 米国は次のことが可能だからだ。
 「ドル札を大量に印刷して、それで(財政赤字と)国際収支の赤字を埋める」


 ドルは基軸通貨であるがゆえに、このようなインチキみたいなことが可能となる。
 もちろん、ドル札を大量に印刷すれば、インフレが起こるが、それによって損をするのは、ドルをもっている世界中の人々だ。(日本政府や中国政府を含む。)
 その一方で、ドル札を大量に印刷することの利益は、米国が独り占めできる。
  ・ 利益はすべておれのもの
  ・ 損失は他人にも等分に分ける

 こういうインチキが可能なのだ。基軸通貨であれば。

 ギリシャの場合も、自国通貨をもてば、それと似たことができる。「通貨切り下げ」によって。
 しかし、ユーロ圏に留まっている限りは、それもできない。
 
 [ 余談2 ]
 ま、ここから何か教訓を得るとすれば、「ドル建ての外国債券(預金)はもたないようにしよう」ということだ。ドルは将来的に暴落の危険がある。というか、すでに相当暴落していますよね。この先もどんどん暴落する。それが「双子の赤字」をかかえている米国の宿命だ。
 ユーロもやばいし、ドルもやばい。日本の円が人気なのは当然ですね。(池田信夫みたいに)外国に資金を逃避するなんて、あまりにも馬鹿げている。そういうことをする人は、財政赤字と国際収支赤字とを、ろくに区別できていないのだろう。
 「将来のインフレを回避するために、外国に資金を移す」
 なんて、インフレ対策としては、あまりにもお門違いだ。……そのことが、本項からわかるだろう。

( ※ インフレ対策なら、TOPIX でも買えばいい。ドルやユーロを買うのは、ほとんどギャンブルに近い。危険すぎる。貴重な財産を使ってギャンブルをするのは、あまりにも無謀だ。……池田信夫はすでに大損している。)
 
posted by 管理人 at 22:14 | Comment(0) | 経済 このエントリーをはてなブックマークに追加 
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