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最適な物価上昇率は、どのくらいか? この問題について、安倍総裁は2%を唱えて、野田首相は1%を唱えた。
党首討論会では、金融政策について民主党の野田佳彦首相(民主党代表)と自民党の安倍晋三総裁の主張の違いが鮮明になった。デフレ脱却に向けて、安倍総裁が物価上昇率2%の目標を設けて大胆な金融緩和を断行する方針を述べたのに対し、野田首相は日銀と連携して物価上昇率1%の達成を目指す考えを示した。この問題を考えてみよう。
( → サンケイビズ 2012-12-01 )
実は、この件について、私は次のようなことを語ったことがある。
「生産性の向上率が2〜3%だから、物価上昇率はこれと同程度か、少し上回る方がいい」
しかし、こう述べたのは、かなり初期のころだ。最初に述べたのが、2002年3月05日c で、最後に述べたのが 2004年1月11日だ。
では、それ以後はどう述べていたかというと、「需要統御理論」で詳しく述べたとおりだ。その「最適な物価上昇率」の項では、こう述べた。
需要統御理論の考え方では、物価上昇率は、「アメとムチ」である。つまり、まさしく現実の力をもち、その力が国民全体に作用する。こうしてわかるだろう。「最適の物価上昇率」というものは存在しない。なぜかというと、「物価上昇率」というのは、「速度」ではなくて「加速度」だからである。(比喩的に。)
これは、従来の経済学にはない、独自の考え方である。そして、この独自の考え方は、独自の結論をもたらす。
物価上昇率が、「アメとムチ」として現実の力をもつのであれば、その力の大きさは、状況に応じて変えるべきである。大きな力を必要とされているときには大きくするべきだし、小さな力を必要とされているときには小さくするべきだ。
つまり、物価上昇率は、一定の値ではなくて、状況に応じて可変化するべきなのである。(換言すれば、「理想の物価上昇率」という唯一の値は存在しない。)
具体的に言えば、不況がひどいときには、物価上昇率は高めにするべきだ。
たとえば、自動車の運転をするときに、「最適の速度」というものはあるだろうが、「最適の加速度」というものはない。高速道路において「時速 100キロ」という最適の速度(固定値)はあるが、最適の加速度(固定値)はない。かわりに、つぎのようになる。
・ 高速道路に入った直後 …… 大きな加速度
・ 定常運転の状況 …… 加速度はゼロ
このように加速度は可変化される。一定の「加速度」が推奨されるわけではない。
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経済の場合も同様だ。次のように言える。
・ デフレ期 …… 景気拡大に、大きな加速が必要
・ 通 常 期 …… 景気拡大に、加速は不要
・ インフレ期 …… 景気拡大に、マイナスの加速が必要
これを換言すれば、次のように言える。
・ デフレ期 …… 高い物価上昇率が必要
・ 通 常 期 …… 物価上昇率は現状維持でいい
・ インフレ期 …… 物価上昇率を下げるべき
ここでは、次のことに注意。
「通常期では、物価上昇率の理想値は、現状値である」(つまり現状維持がベスト)
この「現状値」というのは、固定値ではない。2%とか3%とか、固定的な数値ではない。現状値が何%であれ、そのとき景気状況が通常であれば(不況でも好況でもなければ)、そのときの物価上昇率をそのまま維持していいのだ。
たとえば、石油ショックのような状況で、資源価格が急騰して、輸入インフレが起こったとしよう。年率 10%の物価上昇が起こったとしよう。その場合、物価上昇率は高いが、景気拡大が起こっているわけではない。従って景気を冷やす必要はない。「物価上昇率が高いから景気を引き締めよう」という判断は必要ない。ここを間違えると、ひどい不況になってしまって、状況はいっそう悪化する。
逆に、円高によって、輸入物価が急激に低下して、輸入デフレが起こったとしよう。この場合、物価は下落するが、景気は悪化しているわけではない。従って景気を刺激する必要はない。「物価上昇率がマイナスだから景気を拡大しよう」という判断は必要ない。ここを間違えると、ひどいインフレ(特に資産インフレ = バブル)になってしまって、状況はいっそう悪化する。
いずれも、従来型の経済学を適用したことで、状況を悪化させてしまう。日本はその失敗をどちらも踏んできた。
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では、正しくは? すでに述べたとおりだ。物価上昇率に最適な値というものはない。景気が拡大しているか縮小しているか(好況か不況か)だけを見ればいい。そして、景気の状況に応じて、次のいずれかを取ればいい。
・ 好況期 …… 現状よりも物価上昇率を下げる
・ 不況期 …… 現状よりも物価上昇率を上げる
ここでは、最適の「物価上昇率」なんていうものはないのだ。あるのは、(現状比で)「プラスかマイナスか」という区別だけだ。いわば、「アクセルを踏むかブレーキをかけるか」という区別だ。ここでは、加速の程度だけが決まる。
これはちょうど、オートマチックの自動車の運転と同様である。オートマチックの自動車では、「最適のアクセルの踏み込み量」というものは存在しない。たとえば、「時速 100キロ」という定速運転でさえ、「最適のアクセルの踏み込み量」というものは存在しない。実際、それが固定値だとしたら、次のような変動が生じる。
・ 上り坂や向かい風では減速する
・ 下り坂や追い風では加速する
だから、アクセルの踏み込み量は、固定値ではありえない。「最適の速度」というものがあっても、「最適のアクセルの踏み込み量」というものは存在しないのだ。
景気についても同様だ。景気について言えるのは、「完全雇用」という状況だけだ。失業があふれるわけでもなく、人手不足でもない。そういう完全雇用の状況だけが理想値としてある。それは「最適な生産状況」である。そして、それが実現するように、物価上昇率を上げたり下げたりすればいい。自動車のアクセルの踏み方を変えるように。
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結論。
最適の「物価上昇率」なんていうものはない。あるのは、(現状比で)「プラスかマイナスか」という区別だけだ。それにあわせて、次のいずれかを取るべきだ。
・ 物価上昇率を下げて、景気を縮小する
・ 物価上昇率を高めて、景気を拡大する
なお、不況の際には、物価上昇率が高めであるほど、景気を拡大する効果は高くなる。ゆえに、ひどい不況から脱するときには、高めの物価上昇率が好ましい。高めの物価上昇率を許容することで、景気の急拡大が見込める。逆に、不況の状況で、低めの物価上昇率しか認めないと、不況から脱する力が弱くて、何年間もだらだらと高い失業率が続くことになる。
[ 付記 ]
以上の結論から、安倍と野田を評価すれば、「どちらも駄目」という結論になる。5段階評価で言うと、
・ 安倍 …… 2
・ 野田 …… 1
である。どちらかというと安倍の方がマシだが、どっちも劣等生だ。
3%を唱えれば、「普通」なので、評価は3だ。
4%を唱えれば、「良い」なので、評価は4だ。
5%を唱えれば、「とても良い」なので、評価は5だ。
ただしこれは、現状である。デフレを脱したあとで、失業問題(非正規雇用問題を含む)が解決すれば、もっと低い物価上昇率が妥当だろう。ただし、その場合も、「理想の物価上昇率」が存在するわけではない。そのことは、すでに述べたとおりだ。
私のような門外漢でもわかるようにたとえるとこうでしょうか;
今車は時速80kmで走っている。そのことで後続車に追い上げられ、エンジン内部も多大なムダ(失業率のたとえ)が発生する2つの問題が起きている。
最適な値は時速100kmであるので80kmから100kmまで加速することで2つの問題を解決したい。
ノダさんは「1年ごとに1%ずつ、80->80.8->81.608->...で加速すればいい。急加速は事故(ハイパーインフレ)の元だ)」
アベさんは「それでは遅すぎる、2%づつだ。むしろキンユウカンワ、200兆ターボエンジンで…」
判定:景気が大きく低迷しているので、踏み込みがより大きいアベさんの勝ち (でも10年後の将来も固定的に踏み込むという主張に難あり)
ということでしょうか。
で、南堂さんは「最初に強く踏み込み、徐々に弱め、目標時速100kmに近づくにつれて0%にしていく」を提案していると。
南堂さんのたとえのおかげでこういったイメージができました。
◆ 目標時速(最適な景気)という指標がそれぞれで異なる?GDP?需給Gap?
◆ 物価上昇率を政治や経済学者の手では、「XXパーセント!」と言えるのは1回きりで、徐々に弱めるという動作はできないことがわかっている?(南堂さんの論ではコントロール可能とのことですが、本当は技術的に不可能?)
◆ 目標時速と景気のかい離(オイルショックのときのような)が起きていることを分析できるとは信じられていない?(下り坂で一時的に100kmに到達したからといって、0%やマイナスにしてしまうことを恐れている?)
最大の原因は経済対策という問題の根源がみんなで共有されていないことだと思います。南堂さんの需要統御論が世に伝わり、なにを指標にして進めばいいのかが統一されないといつまで経っても対症療法しか出てこない。需要統御論に批判や擁護の議論が大々的におこり、揉まれ、いま関心がない人も需要統御論に興味を持ってもらえると変わってくると思うのですが。
最後に、南堂さんの既成の枠をも疑い、問題の本質を見極める姿勢が大好きですので、これからも幣ブログでは伝えていきたいと思います。
一定のベクトルに対して一定の距離を一定の時間で走り抜けた場合は”速度”であらわされます。
その速度を毎年2%上げることは、例えば毎時100キロメーターを毎時102キロメーターにし、翌年は毎時104.04キロメーターにすることだと思います。
たまたま、毎時102キロメータ−にするべき1年目の道が急な上り坂の道なら、エンジンを強く噴かし強烈な加速度を加えねばなりません。
二年目が平坦な道なら弱い加速度でたります。
「毎年2%ずつ速度を上げる。」ということは
加速度の問題ではなくて、速度の問題ではないでしょうか。
私は文系の人間で、数学・物理学に疎いせいか、この点がわかりません。
「景気を上げたり下げたりすることには、物価上昇率が力を持つ。高い物価上昇率があるほど、景気を拡大する力が大きい」
どうしてそうなのかは、下記ページで示しています。
→ http://www005.upp.so-net.ne.jp/greentree/koizumi/89_kaise.htm