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結論を箇条書きで書くと、次のようになる。
・ 固定値という発想が間違い
・ 2%では低すぎる
・ 投資拡大という発想が間違い
・ 所得増加がなければ逆効果
・ 所得増加への過程がない
・ スタグフレーションになりかねない
・ 資産インフレになりかねない
以下では順に説明しよう。
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(1) 固定値という発想が間違い
2%というような固定値を目標とする、という発想が根本的に間違っている。金融政策の基準は、次のことだ。
・ 景気拡大のためには、金融緩和
・ 景気縮小のためには、金融緊縮
これだけが基準となる。一方、物価上昇率は、基準とならない。特に、固定された数値は、基準とはならない。
結果的には、次のようになる可能性が最も高い。
「物価上昇率は2%だが、景気はまだまだ悪い。なのに、(原油価格上昇や輸入食料価格上昇などのせいで)物価上昇率が2〜3%になったというだけで、金融緊縮の措置が取られ、ただでさえ冷えている景気がいっそう冷えてしまう」
つまり、「景気後退局面における金融緊縮」という逆効果の措置だ。こうなる可能性が一番高い。
詳しくは → 前項(最適な物価上昇率)
(2) 2%では低すぎる
物価上昇率が2%というのは、目標として低すぎる数値だ。
一般に、景気が中立の状態では、物価上昇率は 2〜3% であるのが普通だ。2%というのはその下限であり、どちらかというと景気悪化の状態である。そのような低い数値を目標とするということは、次のことを意味する。
「景気が中立または拡大しそうになったら、金融を引き締めて、物価上昇率を2%まで引き下げる」
つまり「景気回復の拒否」を意味する。これじゃ、怖すぎる。景気の先行きは「やや悪化」と見込まれるときには、企業は投資をしたがらない。
(3) 投資拡大という発想が間違い
そもそも、「金融緩和による投資拡大」という発想が根本的に間違っている。なぜなら、デフレの特質は、投資不足ではなく、消費不足だからだ。消費不足のさなかで、投資を拡大すれば、供給過剰の状況がいっそう拡大する。そんな馬鹿なことをする企業は少ない。
「金融緩和による景気拡大」という方針は、好況のあとで景気がいくらか後退した場面では有効だが、もともとデフレという局面では、ほとんど無効なのだ。
このことは「流動性の罠」という概念で説明される。
(4) 所得増加がなければ逆効果
デフレ期には、投資不足があり、それは金融緩和では解決しない。そこで、「インフレ目標」という案が生じたわけだ。しかし、それが成功するという保証はまったくない。なぜなら、それは次のことを意味するからだ。
「政府や日銀が『物価を上昇させます』という嘘をつくと、人々がその嘘を信じて、実際に消費を増やすから、実際に景気が回復する。ゆえに、『嘘から出たまこと』となって、本当に景気回復が実現する」
しかしこれは、次のことを前提とした発想だ。
「人々がそろいもそろって馬鹿だから、すっかり政府にだまされる」
実際には、そうではない。人々は馬鹿ではない。すると、次のようになる。
「人々は馬鹿ではないから、政府の言うことを信じない。『物価が上昇するのに、所得が増えなければ、実質所得はかえって減る』と気づく。ゆえに、かえって消費を減らす」
つまり、「物価上昇ゆえに需要の先取りをする」というのは、「銀行から金を借りる」という企業には成立しても、「所得から消費をする」という家庭では成立しないのだ。
(5) 所得増加への過程がない
なぜ家庭は消費を増やさないか? 所得増加への過程がないからだ。
このことは、小泉時代に顕著だった。当時、輸出が急拡大して、企業業績は好調だったが、企業は利益を内部留保にするばかりで、労働者に還元しなかった。ゆえに、
企業業績回復 → 所得増加 → 消費増加 → ……
という景気回復のスパイラルは生じなかった。金は企業の内部留保という形で、企業の内部に堰き止められるだけだった。
同様のことが、このあとでも発生する。たとえ物価上昇率が高めになる事態があっても、家庭は所得増加の期待が得られない。物価上昇の期待は得られても、所得上昇の期待が得られない。それは結果的には「実質所得の低下」を意味するから、消費はかえって減ってしまうのだ。
(6) スタグフレーションになりかねない
すると、どうなる?
・ 物価上昇
・ 消費縮小(生産量の縮小)
という両者が同時に起こる。これは「スタグフレーション」という状況だ。このような場合には、供給の拡大が必要だから、金利はむしろ引き下げた方がいい。にもかかわらず、「物価が上昇したから」という理由で、金融を引き締めれば、状況はいっそう悪化する。人々はもっともっと働かなくてはならないときに、「物価が上昇したから」という理由で、金融が引き締められて、失業が急増する。
これは最悪の事態だ、と言えるだろう。地獄である。
つまり、状況がどうであるかも理解しないまま、単に物価上昇率だけで金融政策を決めると、「悪化をいっそうひどくする」という地獄に突き落とす政策となる。
これが「物価上昇率だけに頼る金融政策」の最悪の事例だ。
( ※ 輸入物価が上昇した場合には、そうなる可能性が高い。というか、必然的にそうなる。自殺政策を取って自殺の道。)
(7) 資産インフレになりかねない
逆に、輸入物価が下がったときにはどうか? この場合、「物価が下がった」という理由で、金融は緩和される。すると、景気はいっそう加熱する。
その事例は、バブル期にあった。円相場の急上昇(円高・ドル安)によって、輸入物価は大幅に下がった。そのせいで物価上昇率が低下したので、日銀は「円高対策」と称して、金融を緩和した。その結果は? 猛烈なバブル発生だ。つまり、資産インフレだ。
ここでは、金融緩和にともなって物価は上昇しなかったが、資産価格が急上昇した。それによって人々は「資産価値が上昇した」と錯覚して、花見酒経済をした。土地や株の暴騰した市場価格を信じて、「おれはすごい大金持ちなんだ」と錯覚して、貯金をどんどん食いつぶしたり、借金をしたりして、豪遊した。
その後、バブルがはじけた。土地や株の暴騰した市場価格は画餅にすぎなかったと判明した。そのあとに残ったのは、すっからかんの預金通帳と、莫大な借金だった。……これがバブル破裂であり、今日に続く景気悪化の根源だ。
これは、一種の「躁病」的な状況である。そのあとで、躁病から冷めて正常に戻ると、おのれの愚行に気づいて、そのツケを払わされることになる。
( ※ 先の「地獄に落ちる」という地獄政策が「うつ病」的であったのと対照的。)
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以上のすべてからして、2%という物価上昇率は駄目だ。まとめると、次のように言える。
・ そもそも金融政策は効果がない
・ 効果があったとしても、資産インフレだ。
・ 下手をすると、スタグフレーションになる。
・ なぜ駄目か? 物価上昇率を基準にするからだ。
・ 正しくは? 景気状況のみに依存するべきだ。
・ そもそも、金融政策より、所得増加が必要だ。
・ 所得増加のためには、次のいずれかが必要だ。
企業による賃上げ or 国による減税
・ その前者が不可能ならば、後者しかありえない。
ごく簡潔に言うと、次のようになる。
「デフレ脱出には、金融政策は無効である。大型減税のみが有効である」
つまり、物価上昇率を定めようが定めまいが、金融政策そのものが無効になっている。インフレ目標という方法は、それだけでは効果をもたらさないのだ。(同時に巨大な財政政策と組み合わせなければ無効だ、ということ。)
【 関連項目 】
→ 「インフレ目標」簡単解説
インフレ目標という政策の原理
→ 財政赤字とリフレ
金融政策だけでは規模が小さくて効果が不足。
結果的に景気回復はできないまま財政赤字が拡大。
→ クルーグマンの景気対策
上記と同趣旨。(金融政策だけでは駄目。)
→ 公共事業の難点
公共事業は有効ではあるが副作用も大きい。
→ 公共事業と減税の乗数効果
公共事業と減税との比較。
→ 減税の意味
なぜ減税が有益か? 減税の分、得をするからか?
いや、損も得もないからだ。生産量増加だけがある。
(公共事業では、あとで物価上昇で損が発生する。)
【 関連サイト 】
→ 公共事業の乗数効果(朝日新聞・朝刊 2012-12-19)
内閣府の試算では、国内総生産(GDP)を増やす効果は、公共事業への投資額を「1」とすれば、20年前は他の産業にも波及して「1.33」に増えたが、今は「1.07」しかない。
先生が直接訴えていくことはだめなのでしょうか?
この項目は、「2% インフレ目標」でぐぐると、かなり上位に来ます。
できればもっと上位に来るように、なるべくあちこちでこの項目をリンクしてくださると、ありがたい。
安倍さん側が気づいて欲しいといえば先日おっしゃっていた対中戦略が慧眼だと思いました。
・ リフレ
・ インフレ目標
・ バーナンキの背理法
http://cruel.org/krugman/krugback.pdf
クルーグマンは「これで克服できる」(日銀が嘘をつけば国民がそれを信じて支出を増やすからデフレを克服できる)と言っているけれど、実際には成立しない、ということ。
もちろん、現実には、流動性の罠は克服されていない。マネーサプライはものすごく増えているのに、銀行貸出残高はろくに増えていない。つまり、現状は流動性の罠の状況にある。全然、克服されていない。