──
消費税増税の目的は、財政破綻を回避することだ、と信じられている。しかしこれは逆である。消費税増税は、かえって財政破綻をもたらす。
このことは一見、逆説のように見えるが、真実だ。そのことを以下で経済学的に説明する。
( ※ 増税するときの状況が、インフレであるかデフレであるかを、区別する。これが肝心なことだ。)
インフレ下の増税
インフレ下(好況下)ならば、増税は財政破綻を回避させる。これはおおむね正しい。
簡単に言えば、次のようになる。
「インフレ下の財政赤字拡大は、通貨発行量の増大をもたらし、通貨価値の低下をもたらす。通貨価値の低下とは、物価上昇のことである。これが過度になれば、財政赤字が極端に拡大して、高い物価上昇に至る」
このことは、一般原理では、ドーマーの定理 によって示される。
つまり、次の式が成立すれば、財政破綻に至らない。
名目成長率 > 国債金利
逆に言えば、国債金利が過度に上昇しない(つまり発行時の額面が極端に低下するほど大量発行しない)ようにすれば、財政破綻は免れる。
通常は、それが成立するから、財政破綻はありえない。
さらに言えば、次のことも成立する。
「財政破綻の前に、物価上昇率がどんどん上昇するから、その時点でインフレ抑止のために金利を引き締めればいい」
このような金融政策は、通常、普通になされる。ゆえに、普通は財政破綻はありえない。
では、財政破綻は、どういうときに起こるか? あくまで例外的な場合だ。下記のように。
(1) アルゼンチン
石油ショックのときに間違って金融緩和政策を取ったために、ハイパーインフレと財政赤字拡大に陥った。ここで通貨を切り下げれば済んだのに、固定相場制のせいで、通貨を切り下げられなかった。そのせいで、過度に高所得状態を維持していることになり、身の程知らずの贅沢ができたが、そのかわり、国全体で大幅な赤字が蓄積した。そのことは政府の財布を見れば、極端な財赤字となった。さらにはゼネストが重なったり、取り付け騒ぎが起こったした。かくて、経済力や政府は信用を失って、国債が暴落した。
その後、変動相場制に移ることで、状況は大幅に改善した。
( → 解説ページ )
(2)ギリシア
国家的に財政赤字が拡大していたのに、それを粉飾して、財政赤字がないように見せかけていた。そのうち知らず知らず財政赤字が極端に拡大した。あるときそれが発覚して、一挙に信用を失って、国債発行ができなくなった。
ここでも変動相場制に移る(つまりユーロを離脱して独自通貨を取る)ことにすれば、問題は解決に向かっただろう。しかし、ユーロ崩壊を恐れる欧州諸国がそれに反対したせいで、変動相場制に移ることができないままでいる。そのせいで状況はいつまでたっても解決しない。
( → ギリシャとユーロ離脱 )
(3) レンテンマルクの前
戦前のドイツはハイパーインフレに見舞われたことがあった。ただしそれはレンテンマルクの発行で収束した。この事情は、次のように説明される。
「ドイツ政府がヴェルサイユ条約に定められた賠償金支払義務に不履行があった」としてフランス軍とベルギー軍はルール地方を占領した。このフランスの横暴にドイツでは……ルール地方の工場停止など「消極的抵抗」を行ったが、その影響でドイツのマルクは壊滅的な暴落をして、ドイツはハイパーインフレになってしまった。このことは、参考記事 でも説明されているように、歴史的な珍事と見なされる。よくあることではなく、戦争みたいな特殊な事情があったときに起こったことだ。現在の日本のような平和状態では起こりえないことだ。
1923年11月20日から1兆マルクは1レンテンマルクで交換された。これにより奇跡的にマルクの信用は回復した。
( → Wikipedia「ヒャルマル・シャハト」 )
( ※ 逆に言えば、日本が北朝鮮に占領される、というような事態があれば、ハイパーインフレも起こるかもしれない。とはいえ、そのような特殊な事情がなければ、起こりえない。)
まとめ。
結局、(1)(2)(3) のような特殊な事情(つまり経済そのものの破壊)が起こったときにのみ、ハイパーインフレが起こる。
それ以外の通常の場合には、ある程度の財政赤字拡大が起こったところで、自動的に物価上昇率が上昇するので、そのときに金融政策や増税の措置を取ることで、物価上昇率の抑制を図ることができる。
つまり、いきなりハイパーインフレや財政破綻が起こることはない。そういうことが起こるのは、戦争とか粉飾とか、特別な事情があったときに限る。少なくとも、変動相場制の下では、そうである。固定相場制は別として、変動相場制の下では、急激な破綻は起こりにくい。問題が生じるとすれば、じわじわと起こるので、問題が拡大する前に対処することが可能である。
教訓。
ハイパーインフレや財政破綻が起こるのは、事象が突発的に悪化したときに限る。それは、次のような例だ。
・ 戦争のような事態が起こった。
・ 財政悪化が隠蔽されて、突然、暴露された。
・ 固定相場制の下でなだらかな変化が抑止されていた。
このようにして事態が突発的に悪化するときに、ハイパーインフレや財政破綻が起こる。(インフレ下では。)
デフレ下の増税
では、デフレ下ではどうか? デフレ下でも、インフレ下と同様に、増税は財政破綻を回避させるだろうか? 「イエス」と信じる人が多い。しかしそれは間違いだ。デフレ下では、増税はかえって財政破綻を招くのである。
なぜか? 「悪化させる度合い」が増えるからではない。「突発的な変化を招く」からである。換言すれば、「なだらかな変化を抑止するから」である。
このことは、「インフレ下の場合」の、アルゼンチンのレイに似ている。つまり、次の例だ。
「固定相場制の下でなだらかな変化が抑止されていた」
ここでは、なだらかな変化が起こるべきなのに、あえて無理をして、変化を抑制していた。そのあげく、耐えきれなくなった時点で、突発的な変化が起こる。
モデル的には、次の例が似ている。
・ ゴムを伸ばすが、耐えきれなくなると、ゴムが切れる。
・ 箱を積み重ねるが、限度になると、箱が崩れる。(下図)

もっと正確なモデルも考えることができる。次の図で示せる。

(上図の解説)
なだらかな傾斜の上に、箱がいくつかある。
(1) 普通は傾斜のせいで、箱が下方にすべっていく。上流側に箱がたまると、箱は次々と下流側にすべっていく。ただし、傾斜が緩やかなので、途中にいくらかの箱が溜まる。
(2) 傾斜が大きくなると、箱はさっさと下流にすべる。途中で停滞することはない。
(3) 傾斜が小さいと、箱はすべることがないので、途中に溜まる。そして、ものすごくたくさん溜まったところで、突然、耐えきれずに、一挙に下流にすべる。それはダムの決壊に似た現象である。(突発的に大量に流れ出す。)
──
ここで、次のように理解できる。
・ 傾斜とは、物価上昇率である。
・ 箱とは、財政赤字である。
このような比喩のもとで、次のように理解できる。
(1) 傾斜が普通だと、箱は少しすべって、少しずつ下流に移る。
それと同様に、物価上昇率が普通なら、財政赤字は普通に溜まるだけだ。特に良くも悪くもない、当り前の状況である。
(2) 傾斜が大きいと、箱がすべって、箱が下流に移る。
それと同様に、物価上昇率が高いと、財政赤字が消えて、国民の所得減になる。つまり、インフレ下では、財政赤字が溜まる前に、物価上昇が起こり、そういう形で、国民の所得減が起こる。それは実質的な増税と同様だ。こうして、常に少しずつ支払いをすることになるので、小刻みに増税をするまでもない。財政赤字が極端に拡大することもない。
この場合、国民生活は苦しいが、特に破滅的な事態だというわけでもない。適当にインフレを収束させることで、状況はなだらかに改善していくはずだ。
(3) 傾斜が小さいと、箱がすべらず、箱が途中に溜まる。
それと同様に、物価上昇率が低いと、財政赤字が溜まる。ただし、国民の所得減はないので、国民は一時的に過剰消費していることになる。借金生活だ。もちろん、好ましくない。こういう状況は、やめた方がいい。では、そのために、どうすればいいか?
ここで増税すると、消費が減るので、物価上昇率はさらに低下してしまう。つまり、傾斜がさらに低くなる。これでは、逆効果だ。換言すれば、こうだ。
「増税すると、物価上昇率がいっそう低下するので、なだらかな変化をもたらす状況から遠ざかり、かえって突発的な変化をもたらす状況に近づく」
これは、モデル的には、次のように説明される。
「箱(= 財政赤字)の蓄積が拡大するのを阻止しようとして、上流から流れてくる箱の量を減らそうとした。そこで、上流の上(上空)の方から落ちてくる箱を、途中で吸い取ってしまおうとした。いわば雨を掃除機で吸い取るように。それはまさしく可能だった。落ちてくる雨を掃除機で吸い取る糊塗ができた。ところが、落ちてきた雨を吸い取った掃除機は、その吸い取った雨を、ふたたび上空に吹き出してしまった。そのせいで、上空から降ってくる雨の量は前よりもかえって増えてしまった。吸い取る以上に、大量の雨が降ってくることになってしまった。そのせいで、掃除機で雨を吸えば吸うほど、たまる雨の量は増えてしまった。つまり、溜まる財政赤字の量は増えてしまった」
つまり、増税によって歳入の赤字を減らそうとすると、肝心の国民経済が弱体化してしまう(景気が悪化してしまう)ので、かえって税収が減ってしまい、財政赤字は拡大してしまうのだ。
このことは、過去の消費税増税でも示されている。(前出項目から)
《 日本の税収 》

※ 1985年 = 昭和60年 ,1990年 = 平成2年
1998年 = 平成10年 ,2010年 = 平成22年
※ 前者の出典は、Wikipedia (グラフ化は私 )
後者の出典は、財務省のページ
つまり、消費税増税(3% → 5%)のあと、税収は増えるどころか減ってしまったのだ。「増税が歳入増をもたらす」というのは、インフレ下には成立するのだが、デフレ下では逆に歳入減をもたらすのだ。そのことが過去の例から実証されている。
そして、その原理は、先にモデル的に述べたことから示される。
・ 増税は、物価上昇率率の低下をもたらすので、なだらかな変化を阻害する。財政赤字が物価上昇に転じるという状況を阻害するので、かえって財政赤字を大量に蓄積させる。(箱がすべらずに溜まるように。)
・ 増税は、景気悪化を招くので、歳入増どころか歳入減をもたらす。(税率は上がっても、課税対象が減る。)
結論
財政破綻を回避するには、税率を上げること(増税)だけでは無理だ。それどころか、逆効果だ。
増税が財政悪化を回避させるのは、インフレ下のみである。
デフレ下では、増税は景気悪化を招くので、かえって財政赤字を拡大させる。また、増税によって物価上昇率の上昇を阻害するので、「財政赤字が物価上昇に転じる」という過程を阻害して、財政赤字を拡大し、財政破綻をいっそう起こしやすくする。
では、どうすればいいか?
第1に、物価上昇率を高めて、財政赤字の拡大を物価上昇に転じる過程を機能させればいい。そうすれば、無闇に財政赤字が蓄積することはなくなる。いちいち増税をしなくても、物価上昇を通じて、国民は増税と同様に所得減少をこうむる。(特に金融資産の価値減少という形で損をする。資産課税に等しい。)
第2に、国民が実質増税(物価上昇)の損をこうむっても被害を受けないように、総生産(GDP)を増やすべきだ。換言すれば、失業や労働時間減少をなくして、国民がいっぱい働くようにするべきだ。こうして総所得が増えれば、増税や物価上昇に耐えることができる。
結局、次の二点だ。
・ 物価上昇率を上げる
・ 景気回復で総生産を増やす
これをもたらす方法は、明らかだろう。「減税」である。これによって、上記の二点が達成される。つまり、景気が回復する。同時に、財政は健全化していく。
逆に、次のことは不正解だ。
・ 物価上昇率を下げる
・ 景気悪化で総生産を減らす。
これをもたらす方法も、明らかだろう。「増税」である。これによって、上記の二点が起きてしまう。つまり、景気が悪化する。同時に、財政は破綻に近づく。
要約。
「減税をすれば、景気は回復し、財政は健全化する。その理由は、物価上昇とGDP拡大である」
「増税をすれば、景気は悪化し、財政は破綻に近づく。その理由は、物価下落とGDP縮小である」
核心。
「増税によって財政健全化を」と凡人は思う。しかしそれが成立するのは、インフレ下のときだ。デフレ下では、事態は逆になる。つまり、「増税によって財政破綻に」というふうになる。
こういうふうに、インフレ化とデフレ化では、増税の効果が逆になる。その違いを理解するべきだ。理解しないまま、インフレ下でなすべき政策をデフレ下で行なえば、狙った結果とは逆の結果を招くことになる。
[ 付記 ]
あとで思ったが、もう一つ、別のモデルを示せる。次のことだ。
「病人がいる。彼は毎日、午前中だけ働いている。それでは収入が少ないので、借金が溜まるばかり。さっさと借金を返せと言われたので、無理して、午前も午後も働いて、さらには残業もした。すると、その日の日給は3倍になった。ところが無理をしたせいで、体をこわしてしまい、翌日以降は寝たきりになった。結果的に、借金を返そうとして、借金は大幅に増えてしまった」
「もう一人の病人も、同じ状況だった。ただし、借金を返せといわれたあとで、働くのをやめて、一日中寝ていた。さらに、借金を増やして、よく効く薬を買って飲んだ。すると、病気がすっかり治ったので、翌日以降は、フルに働けるようになった。高価な薬を買うために借りた金も返済できた」
上記の例では、次のようになる。
・ 借金を返済しようとして金を返すと、かえって借金が増えた。
・ 逆に、借金を増やすと、薬を買って飲めたので、働く量(生産量)が増えた。結果的に、借金を増やしたので、借金が減った。
このような逆説を理解するということが、マクロ経済学を理解するということだ。(帳簿しか考えない財政主義者には理解できないことだが。)
【 関連項目 】
《 財政の話題 》
→ 日本の財政破綻 【 重要 】
※ 本項と同趣旨。(ただし本項ではモデル的理解がある。)
→ 財政破綻の難解さ
→ 財政破綻のポイント
→ 財政破綻 Q&A
→ ドーマーの定理
《 増税の話題 》
→ 増税と物価上昇
→ 増税で財政再建?
→ 消費税増税の問題点
《 増税と景気の話題 》
→ 増税の条件 1
→ 増税の条件2
→ 増税の条件 3
《 金融政策の無効性 》
→ バーナンキの背理法(「流動性の罠」批判)
→ バーナンキの背理法 2(モデル)
例えば消費税(資産家に大ダメージ)を上げて、その分をそっくり低所得者の所得税減税にあてるのはどうでしょう。デフレ脱却までという条件付きならば共産主義のレッテルをはられることもないのでは。
それじゃ富の配分が変更されるだけで、物価は上昇しません。物価を上昇させるには、金持ちにも貧乏人にも、減税しなくちゃ。
とはいえ、私の提案の「定額減税」というのは、「所得比例減税」じゃないから、おっしゃることの趣旨と結果的には似たことになります。「金持ちには減税しないで、貧乏人には減税する」というような効果になります。
物価が上昇すれば、それだけで資産家にとっては大幅な増税効果があるので、いちいち増税する必要はないんです。
本項では、基本的に、
「国民全体に減税で、勝つ、刻印全体に物価上昇」
です。配分の変更は、特に狙っていません。付随的に起こるだけです。
配分の変更は、経済政策とは別の理由で行うべきです。本項はあくまで景気対策を論じています。
ついでですが、貧乏人というのは、無年金高齢者や母子家庭や身体障害者など、生活保護家庭のことです。一般のサラリーマンは、「やや高所得者」に分類されるので、増税対象です。大金持ちは、日本全体ではごく少数しかいないので、増税してもしなくても、得られる国庫収入はほとんど変わりません。「金持ち増税」となった場合、無収入者でない人はみんな増税対象です。たぶん、あなたも。
すみません、ここがわかりません。
例えば人口が100人で、通貨が金塊のみの国があるとします。その国の金塊の合計が100トンで、1人の金持ちがそのうちの90トンを所有し、その他の99人が10トンを保有していたとします。ためこんだ金塊をほとんど使わずデフレを作り出している金持ちから金塊50トンを徴収し、それを残りの人たちに配れば、インフレ率は大分上がりそうですが。
紙の価値を 10 から 9 に減らす、というのが、物価上昇です。
> 金塊をほとんど使わずデフレを作り出している金持ち
金持ちが貯金をするのは当たり前のことで、デフレの原因でも何でもありません。
貯蓄 = 投資
という等式を理解してください。金持ちが貯蓄をするから、普通の企業は投資ができるんです。
デフレになるのは、金持ちが貯蓄するからではなくて、金持ちが貯蓄した金を、企業が投資に回さないからです。これが「流動性の罠」つまり「金利がゼロ」の状態です。金持ちは利子を得られないで困っています。
物価上昇率を高めるというのは、このような投資を増やすこと(金の循環を正常化させること)が目的です。経済の血液である金がちっとも巡らないので「血のめぐりが悪くなっている」という状態になっています。これを根本的に解決するのが、インフレ政策です。
金持ちの金をどうするかというのはあまり関係ありません。経済の血のめぐりをよくするという、根本的な体質改善が目的です。
比喩的に言えば、「体温が高いから、体温を下げるように、解熱剤を飲ます」というような対症療法ではなくて、「病気の原因を根源的に治す」ということが目的です。
名医の目的は、病気の症状をなくすことではなくて、病気そのものを根本的に治療することです。間違わないように。
なお、金持ちにいくら増税しても、景気にはほとんど影響しません。(米国でなく)日本の金持ちがもっている金の量は、ごくわずかです。5%以下だと思った方がいいでしょう。全体の9割なんて、とんでもない。
なお、高齢者は資産をたっぷり持っているように見えますが、金持ちじゃありません。たとえば、60歳で 3000万円を持っているとして、余命 30年で割れば、1年あたり 100万円にしかならない。年金のほかには年に 100万円だけ。夫婦二人なら1人 50万円。これじゃほとんど贅沢もできない。とても金持ちとは呼べません。
タイムスタンプは 下記 ↓
名目GDPが減少する国で投資をするのはアホです。借入コストがマイナスならともかく・・・。
デフレになるのは消費性向の高い人(サラリーマンなど)の賃金が低下していること、消費性向の低い人の所にお金が集まってくるシステムだと思います。(年金の下方硬直性、社会保障費の消費性向が高い人への押し付け等選挙を通じた多数派の暴力)
》金持ちは利子を得られないで困っています。
デフレなので実質金利は先進国でも最高クラスで笑いかが止まらないはずです。
個別の企業で考えればそうですけどね。国全体で企業が投資を増やせば、従業員の所得も上がるし、デフレ脱出が可能です。
それが「インフレ目標」とう発想。誰か一人がやるのと、全員がやるのとでは、異なる。これがマクロ経済学の発想。
デフレの理由は別項を参照。
→ http://nando.seesaa.net/article/168053526.html
> 実質金利は先進国でも最高クラス
物価上昇率は -1%〜0%の間です。
→ http://ecodb.net/country/JP/imf_inflation.html
たいした量ではありません。
景気低迷になる前ならば、物価上昇率が4%ぐらいで、普通預金金利が3%ぐらいで、長期預金金利が7%ぐらいでした。金持ちは物価上昇率よりもかなり高めの名目金利を得ていました。
実を言うと、金持ちが一番困っているのは、株式の配当所得が少ないことです。これがデフレによる、金持ちの最大の被害。あと、株価低迷の被害も大きいですね。株価が上がれば、資産価値は一挙に倍になるでしょう。
デフレで金持ちが喜ぶということはありません。デフレでは誰もが損をこうむります。資産家であればあるほど、損の絶対額は増えます。
──
基本的には、金持ちをいくらいじめても、貧乏人の憂さ晴らしぐらいにしかなりません。デフレ脱却をするには、一部にすぎない金持ちの金を奪えばいいのではなく、国全体の病気状態を健全化することが必要です。
チームのなかで、どこかでうまい汁を吸っているやつがいるからといって、そいつをとっちめても、チーム全体のパフォーマンスは向上しません。チーム全体のパフォーマンスの向上のためには、一人一人が全力を発揮しなくてはならないのです。全員がだらだらしたまま、「一番サボっているやつがサボるのをやめれば勝てる」と思うのは単純すぎます。
最後に一つ私見を。
前述の国の例えで、もし私がその国の王でありましたら、「金持ちよ、インフレになるまでその貯め込んだ金塊で、他人から何か購入せよ。さもなくば課税して私が消費する」と命令します。デフレ対策には金融政策より財政政策の方がしっくりくるような気がします。
金持ちの資産の総量は少ししかないので、一国経済にはたいして影響がありません。効果が皆無だとは言わないけれど、デフレ脱却をするにはまったく不足します。
そちらの説は、アメリカでならばいくらかは成立するかも。金持ちによる富の独占が強めなので。とはいえ、金持ちが無駄遣いするよりは、課税して金持ちの資産を奪う方が有効でしょうね。しかしもっと有効なのは、労働者によるストライキです。
> 貯蓄=投資と流動性の罠
矛盾するという認識は正しくない。前者が成立しない状況が流動性の罠です。定義の問題ですね。
「重力が働かない状況を無重力状態と呼ぶ」
というような。
ここで「重力という概念と無重力状態という概念は矛盾する」と表現するのは間違い。
財政赤字の拡大 = 国民の借金の増加
物価上昇 = 国民の貨幣価値の低下 = 国民の資産の減少 = 国民の現実の損失 = 国の借金の減少
たとえば、物価が 10%上昇すると、1000兆円の借金は 900兆円に減ったのと同じことになるので、国の借金は 100兆円も減ったことになります。ここでは、「金利の上昇による、国債の取引価格の減少」は考慮に入れていません。
そもそも、金利上昇によって国債の取引価格が下落したとしても、それは国債の途中売買をする人に影響があるだけです。国が満期に払う額と、途中で払う利子の額は、固定的です。それゆえ、金利上昇によって国債の取引価格が下落したとしても、それは国家にとっては損でも得でもありません。(途中売買はしないからです。)
国家にとって影響があるのは、貨幣価値だけです。
たとえば、10%の物価上昇があると、(景気効果を除いても)歳入も歳出も名目価格が 10%上昇するはずですが、過去の借金は額面価格が維持されるので、歳入の名目価格が上昇した分、国の負担は減ることになります。
物価上昇があると、借金をいっぱいした人ほど得になりますが、それが典型的に当てはまるのが日本政府です。
石油ショックのときには、年に30%ぐらいの物価上昇(同時に賃金上昇)が続きましたが、そのおかげで、直前に住宅ローンを組んだ人は、大儲けしました。借金が一挙に半額になったようなものです。ボロ儲け。
景気効果を除いた歳入の名目価格の上昇とは、企業の販売数量は増えなくても販売価格が増えて売上額が増加しその分税収が増加するということでいいのかな。
「他の条件を一定として」消費税だけ3%→5%にして税収が減っているのではないのです。単に、消費税を増税したけど他で減税したから税収は減ったのです。それにアジア通貨危機の影響もあります。
消費税増税が景気を冷え込ませるというのなら分かりますが、税収が減ると言うことは余程のことがないかぎり成り立つと思えません。「減税すれば税収が増える」といって減税して、税収を減らして双子の赤字に落ち込ませたアメリカのブードー経済学のラッファー曲線のようなもので、理論上あり得るかもしれないけど普通はあり得ると思えません。
もっというなら、増税という不人気な政策を、税収が減るならわざわざ実施するような政治家はいないでしょう。
正確にはこうです。
「消費税増税で税収が上がる、ということはない。税率の上昇による増収効果よりも、景気悪化による減収効果の方が大きいので、差し引きして、減収になりがち」
> 消費税増税が景気を冷え込ませるというのなら分かります
だから、そうだと言っています。消費税増税が景気を冷え込ませるんです。その効果は二つ。
・ 個人所得が低下する。
・ 企業利益が減って法人税減収。
前者は下記で、平均年収のグラフ。
→ http://nando.seesaa.net/article/284241249.html
後者は、所得税といっしょに、下記の折れ線グラフで。
→ http://uekusak.cocolog-nifty.com/blog/2010/06/post-90a7.html
> 理論上あり得るかもしれないけど普通はあり得ると思えません。
普通の景気のときはそうです。増税しても金利低下で景気調整が可能なので、増税はかえって好ましいことです。
しかしながらデフレのときには、金利低下の余地がないので、増税は単にデフレの悪化を招くだけです。デフレの悪化は、所得税の累進的な減少をもたらし、法人税の急激な悪化をもたらします。そのせいで消費税の増額以上の減収が生じます。
以上のことは、本サイトや泉の波立ちで何度も詳しく解説したので、そっちを読むとわかります。
→ http://nando.seesaa.net/article/152980498.html
→ http://nando.seesaa.net/article/152384891.html
→ http://nando.seesaa.net/article/180672142.html
→ http://nando.seesaa.net/article/223682214.html
> 増税という不人気な政策を、税収が減るならわざわざ実施するような政治家はいないでしょう。
税収が減るなら、とのことですが、「税収が減る」とは予測できずに、「税収が増える」と思い込んでいる(錯覚している)のです。財務省は特にそう思い込んでいます。
かくて、デフレ期と好況期の違いを理解できない政治家ならば、錯覚したあげく、「財政破綻によるインフレの阻止こそ、国家のために必要なことだ」と思い込んで、猪突猛進します。野田首相がそうでした。
比喩的に言えば、「体力が低迷していて問題だから、体力の増加を図らねば」と思って、ものすごくスポーツをしはじめるようなもの。自分が病人であることに気づかず、「まず病気を治すことが大切だ」と理解できずに、「健康なときにはこれで体力増加ができたから、今もそうすればいい」と信じるわけ。
経済学を理解しないということは、病気の状態を理解しないというのと同じです。そういう人が多すぎる。