◆ バブルは再来するか?:  nando ブログ

2013年02月26日

◆ バブルは再来するか?

 金融緩和によってバブルは再来するか? その可能性は少しはある。だが、実際に起こるのは、ミニバブルだろう。

 ──

 前項 では、「金融緩和で何が起こるか?」という標題のもとで、「資産インフレ(バブル)が起こる可能性がある」と示した。
 ただし、そう結論するすぐ前に、次のように示した。
 大幅な金融緩和によって、何が起こるか? たぶん、流動性の罠ゆえに、何も起こらないだろう。
 つまり、バブルが起こる可能性は数%ぐらいはあるにせよ、現実には 90%以上の蓋然性で「何も起こらない」(流動性の罠ゆえに)となるだろう。つまり、不況が続くだろう。
  
 前頁の漫画で言えば、いくら水色のマネーを流入しても、設備投資(左)も、資産投資(右)も、どちらもふくらまないだろう。
 おおまかには、そう結論できる。

 ──

 ただし、である。小規模であれば、バブルがふくらむことはある。つまり、「ミニバブル」だ。
 これは、小規模の「思惑」だけでふくらむ。その実例は? すでにある。
 いわゆる「アベノミクス」という標榜で、平均株価が 8000円程度から 11500円程度まで上がった。
  → 日経平均株価(チャート)

 なぜ株価が上昇したか? 実体経済が拡大したからか? 輸出企業については、そう言えなくもない。だが、それにしては国内企業の株価までこぞって上がっているのが不思議だ。
 簡単に言えば、これはミニバブルなのである。実体経済とは関係なく、思惑だけで株価が上昇した。その原理は、バブル時代の株価上昇と同じだ。人々が「株価が上がるぞ」と思ったから、株価が上がっただけのことだ。ケインズの「美人投票」に似ている。

 ──

 以上のことを理解することが大切だ。
 ミニバブルは、これからだんだんと起こるのではない。すでに起こっているのだ。人々が「アベノミクスの成果」と思っている株価上昇は、実体経済を反映したものではなく、「妄想ゆえにふくらんだ株価上昇」にすぎないのだ。
 なるほど、輸出企業については、利益増大と株価上昇はある。しかし同時に、輸入企業については、利幅減少がある。その額は巨額だ。
  → 貿易赤字最大1兆6294億円 1月、円安で膨らむ
  → 過去最大の貿易赤字、予想上回る−輸出増加も円安で輸入額膨らむ

 人々は「円安で景気拡大」なんて喜んでいるが、現実には、日本は円安のせいで貧しくなっている。当然だ。ドル表示の GDP は円安のせいで減少しており、これは日本の国富が減少することを意味するからだ。輸出企業がいくらか儲けるとしても、人々は輸入する原材料や化石燃料や食品などに支払う金が増えることで、どんどん貧しくなっていくのである。それで輸出が増えるとしても、「貧乏暇なし」になるぐらいのことだ。

 要するに、円安は景気拡大を意味しない基本的には、円安は景気にはほぼ中立である。短期的には、貿易赤字の拡大で、景気にはマイナスかもしれない。にもかかわらず、人々は輸出産業だけを見て、「景気が拡大する」と妄想する。
 だが、実際にそれで豊かになるのは、企業の帳簿(つまり内部留保)だけだ。現実の人々は、「給料が上がらないまま、輸入価格の上昇で支出ばかりが増える」という形で、かえって貧しくなる。それというのも、企業の「内部留保」ばかりが増えて、「賃上げ」がないからだ。
  → ロイター企業調査:アベノミクス効果薄く、賃上げ「前向き」1割
  → 自工会会長、賃上げに消極姿勢

 輸出企業がいくら儲けても、その儲けは労働者に還元されない。そのせいで、景気拡大は起こらない。むしろ輸入価格上昇の分、国民は貧しくなる。
 これは実は、小泉政権の後期にも起こったことだ。当時、(ドル高やユーロ高のせいで)円安が急激に進んだことで、輸出企業は大幅な黒字経営となったが、企業はその利益を内部留保として溜め込むばかりで、労働者には還元しなかった。そのせいで大幅な資金滞留が生じて、デフレからの脱却はまったくできなかった。
 今回も同様である。上記リンクのように、賃上げは起こらない。ゆえに、円安ゆえの企業収益の改善の効果で、株価上昇が起こっても、それは景気拡大には結びつかないのだ。そして、いつか、円安がふたたび円高となったころに、「円安で景気拡大」という夢から覚める。そして、夢から覚めたときに、バブルが破裂する。……今回は、ミニバブルだが。

 ──

 ともあれ、人々が「アベノミクスの効果」と思い込んでいるものは、ただのミニバブルにすぎない。つまり、妄想による膨張だ。
 このようなミニバブルは、金融緩和政策によっても起こる。とはいえ、金融緩和政策によって起こるのは、このようなミニバブルだけだろう。それがさらにふくらんで巨大なバブルになる可能性は小さい。また、ミニバブルを契機として景気回復が実現する可能性は、さらに小さい。
 実体経済を動かすものは、資金供給ではない。今の日本経済に欠けているものは、需要(消費)だ。需要(消費)を増やすために欠けているのは、所得だ。
 消費と所得。この両者を拡大するしか、方法はないのである。真の景気拡大のためには。
 


 [ 付記 ]
 上記では「円安がふたたび円高となったころ」と書いた。書いたあとで気づいたのだが、25日に急激な円高が起こっていた。
  → NY円、大幅反発 1ドル=91円75〜85銭 イタリア総選挙で
  → 91円まで一気に爆下げした深夜のドル円スレの様子 まさに阿鼻叫喚

 26日には一時、90円台にまでなった。
  → 東京株、212円安で始まる 一時1ドル90円台受けて
  → 外為・株式:NY市場、円急伸一時90円台

 「私の予言が当たった」……と書きそこねた。本項を書くのが1日遅れたせいで。 (^^);

 しかしまあ、ミニバブルによる円安や株価上昇は、いずれも妄想によるものなのだ。それが(現時点における)アベノミクスの本質だ。こういう妄想は、いつかは破裂するものなのである。

( ※ 前にも述べたが、現時点での適正な円レートは 85〜90円だ。現状でもまだ少し円安なので、もうちょっと円高になる可能性は十分にある。それがいつかはわからないが。1週間後かもしれないし、3カ月後かもしれない。時期は不明。)
 
posted by 管理人 at 18:55 | Comment(7) | 経済 このエントリーをはてなブックマークに追加 
この記事へのコメント
初めて拝見させていただきました!
ここの管理人さんはとても頭のいい方なのですね!もしかしてどこかの偉い人なんですか(・_・?)
これからもう少し円高になるんだったらそれを使ってお金が稼げそうですね!きっと管理人さんはお金にも困らない生活してるんだろうなぁ…
これからもがんばってくださいね!更新楽しみにしています!
Posted by はるか at 2013年02月27日 02:44
いくら企業が儲かっても、賃金を上げなければ景気が回復しないのは
誰もがわかっているはずなのに、誰もそれをやろうとしない。
もしかしたら減税しても効果が出るまではかなりの時間がかかるのでは?
まだ5年以上は不景気に耐える必要がありそう。
Posted by K'z at 2013年02月27日 07:33
>それにしては国内企業の株価までこぞって上がっているのが不思議だ

不思議な方が不思議。輸出企業の社員は、あるいは輸出企業そのものは国内企業の商売相手にはならないのですか?商売相手の景気がよければ国内企業にとっても有利なのはどこにも不思議に思う余地のないことです。
Posted by MT at 2013年02月27日 21:43
 輸出入が景気に影響する割合は、双方が打ち消し合うから、関係ありません。
 輸出企業が 10儲けて、輸入企業が 10損して、プラスマイナスゼロのときに、「輸出企業が 10儲けているから、おれもおこぼれですごく儲かる」と考えるなんて、馬鹿げているでしょう。そういう話。
 波及効果の話じゃなくて、輸出入の相殺の話。

 あと、輸出は GDP の 1割程度にすぎません。もっとも、株式市場では、輸出企業ばかりが目立つが。
 あと、平均株価では、ユニクロの影響が突出している。もとの株価が高いせいで。これも変なバイアスがかかっている。
→ http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1487188964
 

Posted by 管理人 at 2013年02月27日 22:02
非常に面白いコメントをわかりやすい表現で書かれて興味深く読ませていただいております。
別の項のインフレ目標に関する分析は「鋭い!」と合いの手をいれたくなる内容です。
批判ではなくご参考まで。
まずはマイナーな指摘を。「バブル」の定義は「実態に基づかない資産価値の上昇」です。ですから「ミニバブル」と表現されている昨年来の株価の上昇が「実態に基づかない」という分析を前提であれば現状は(ミニ)ではなく「バブル」と呼ぶべきでしょう。
それでは、「実態に基づかない」のか「基づいている」のかこれを判定するのは非常に難しいことです。なぜかというと、「実態」=「GDPの成長」です、が、短期のブレを除外して判断する必要があるためです。景気(=実態)の判定が2年ぐらい後になることもよくあります。
私のコメントとしては、管理人さんが別の項で解説しているとおり、物価と景気への世の中の期待に頼らざるを得ないところが大きいため、景気はなかなか浮上しないリスクはあるものの、黒田+岩田コンビの日銀と、安倍政権の政策(及びメッセージ)は非常に強力で、ジワジワと景気も心理(期待)も動いてくれると思っています。その意味では、先行きの改善を見込んだ価格形成で必ずしもバブルとは言えないと考えています。
ひとつ気がかりなのは、海外の経済が2008年以降の不況から脱出に手間取り日本ほどではないにせよデフレ傾向が強まっていることです。これが日本の景気回復に影響を与えることは否定できません。
さらに温暖化の影響と思われる異常気象や、その他の自然災害が景気回復の足を引っ張るリスクです。唯一の解決策は、経済=お金が動くことであるということを理解している日銀と政府が、理解していないメディアやその他政治家がうろたえ、その批判に負けずに、必要な借金=国債発行をして、すくむ企業と家計を財政で勇気づけ続けてくれることです。
今の日銀と政府であれば、実態が改善することは、かなり高い確率で期待できます。そして、20-30年程度で驚くほど国債残高が減少することもあり得ます。一方、無視したいが、起きたら困難な状況になりうるのは、首都圏での大規模災害と回復にかかる時間/影響です。
Posted by いぬわたり at 2013年09月21日 05:30
 景気回復の現状については、泉の波立ち http://www005.upp.so-net.ne.jp/greentree/koizumi/ の、9月07日b の [ 付記 ] を参照にしてください。
Posted by 管理人 at 2013年09月21日 07:19
バブル経済は何れ再来します。
構造改革・規制緩和・追加金融緩和・不良資産の再生化・貸付債権の証券化等により、バブル経済は再来します。
Posted by 名無しさん at 2017年09月15日 04:49
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