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トランプ大統領の方針は、まったく理解しがたい。常軌を逸しているとしか思えない。これに関して、先に二つの項目で解説した。
→ 保守主義とエゴイズム
→ トランプの本質は人種差別か?
1番目の項目では、次の図式となる。
トランプ = エゴイズム = 保守主義
2番目の項目では、次の図式となる。
トランプ = 人種差別
この両者から、次の式も成立しそうだ。
保守主義 = 人種差別 ……(*)
実は、これはまさしく成立する。保守主義というのは、アメリカでは共和党のことだが、一般に、共和党の支持者は、人種差別をすることが多いからだ。
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まず、1番目の「エゴイズム = 保守主義」ということがある。(これについては、本項末の [ 付記 ] でも例示する。)
一方で、次のようにも記した。
保守主義 = 人種差別 ……(*)
さて。保守主義がエゴイズムと結びつくのはいいとして、保守主義がどうして人種差別とも結びつくのか? それが問題となる。
このことについて、以下のように答えよう。
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そもそも、米国は移民社会である。歴史的に、移民から成立した。特に、欧州からの移民(英国からの移民)が多かった。
ならば、米国社会は英国の文化を引き継いだはずなのだから、英国の文化的な傾向も引き継いでいいはずだ。つまり、社会制度を大切にして、極端な個人主義を排するような文化的な傾向も引き継いでいいはずだ。なのに現実には、極端なエゴイズムを採ろうとする。それは、なぜか?
その答えを知るには、次のことを理解するといい。
「共和党の支持者は、高所得の白人が多い」
ここから、次のことがわかる。
「共和党の支持者は、自分の所得を黒人層やヒスパニックに奪われる《 富の再配分 》を嫌う」
つまり、こうだ。
「高所得の白人は、自分の所得を黒人層やヒスパニックに奪われたくないので、《 富の再配分 》を嫌って、極端なエゴイズムに走る」
こう理解すれば、すべての根源はわかる。こうだ。
「米国では、歴史的に奴隷がいた。その後、南北戦争で、奴隷は米国市民となった。と同時に、国民は分断した。白人社会と黒人社会である。前者は富裕であり、後者は貧困だ。ここで、欧州や日本のような《 富の再配分 》を実施すれば、白人から黒人へと、富の流出が起こる。白人にとっては、富を黒人に奪われる。だから、《 富の再配分 》を極端にいやがる。それが、白人のエゴイズムをもたらす。この白人のエゴイズムが、共和党支持の保守主義となる」
つまり、エゴイズム・保守主義・人種差別は、固く結びついている。それは、「富の再配分を拒否する」という形で、共和党支持となって現れるのだ。
ここに本質がある。
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では、トランプ現象は、どう説明されるか? こうだ。
もともとは米国は豊かだった。そのときには余裕があるので、黒人に富を少しぐらい奪われても、鷹揚(おうよう)であることができた。白人は自動車工場の労働者として、世間水準の倍ぐらいの給料をもらって、ぜいたくができた。「人種差別をするべきではない」という風潮があっても、「そうだね」と受け入れることができた。とにかく、圧倒的に世界一の豊かな国の国民として、リッチな生活を謳歌できた。
その後、米国は日本の追撃を受けるようになった。断然トップだったはずが、日本や欧州に追いつかれそうになった。こうなると、あわててしまって、日本車をトンカチでつぶしたりした。このころは、自動車産業が衰えつつある時期でもあった。
その後、日本の自動車会社が米国に進出したので、とりあえずは雇用は守られるようになった。ただし、賃金水準は低下して、これまでのように「世間の倍」という給料はもらえなくなった。それでも、南部地域では雇用が増えたので、米国全体としては特に問題とならなかった。
21世紀に入ると、北部(デトロイト)の雇用が激減して、その地域の白人労働者は不満になった。特に、かわりの産業もないまま、白人の失業者が増えて、彼らの不満が募った。そして、その受け皿となったのが、トランプ大統領(候補)だった。かくて、トランプは多くの支持を得て、大統領に当選した。
以上をまとめると、こうだ。
「白人労働者は、余裕があるときには、人種差別をすることは多くなかった。しかし、自動車産業の衰退で、職をなくし、余裕をなくすと、人種差別をするようになった。おれたちがこんな目に遭うのは、有色人種のせいだ!」
というふうに。
ただし、以前と違うのは、有色人種というのが、黒人ではない、ということだ。このころの有色人種は、イスラム圏からの移民だった。別に、イスラム圏からの移民が自動車産業にどんどん就職しているわけではないし、移民が白人労働者の職を奪っているわけでもないのだが、それでも、「移民のせいだ」と白人は思うようになった。なぜか? 彼らは白人ではないからだ。
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ともあれ、白人の頭にあるのは、こうだ。
「おれたちが貧しくなったのは、有色人種のせいだ。メキシコのやつらが自動車を輸出したり、日本の奴らが自動車を輸出したり。とにかく、有色人種のせいで、おれたち白人は失業したんだ!」
これが、トランプや白人労働者の発想である。そこでは、「有色人種が悪い」という発想だけがある。そして、それを裏付ける論理は、滅茶苦茶だ。
「メキシコや日本からの自動車輸入を減らしても、ドイツや韓国からの輸入が増えるだけだ。米国内の自動車生産が増えるわけではない」
これが真実だ。前に述べたとおり。
→ トランプ大統領と自動車貿易
なのに、そういう真実を見ないで、とにかく「メキシコからの輸入に課税しよう」「日本からの輸入にも課税しよう」というふうに思い込む。なるほど、それによって、メキシコや日本からの赤字は減少するだろう。しかしその分、他国からの輸入が増えるので、米国全体の赤字は減らないのだ。
そういう道理を理解しないまま、短絡的に「輸入に課税すれば、米国の貿易赤字が減る」と思い込んでいる。呆れるほどの単細胞だ。
そして、こういうふうに道理の通らない馬鹿げたことばかりをやるのは、「人種差別」という概念で説明される。( → 前項)
そして、以上のすべては、下記の図式で説明されるわけだ。
エゴイズム = 保守主義 = 人種差別
これが、トランプ現象を解明するための、基本図式だ。
この傾向は、近年、だんだん高まってきたのだが、トランプ大統領の実現という形で、露骨に現れた。
そして、こういうふうになった根源は何かと言えば、米国の景気の不調だろう。リーマンショック以降、米国の景気は十分に回復していない。そのなかで、失業者は、ひどい状況になっている。その恨みが、トランプ大統領という形で現れた。
リーマンショック(2008年)の前には、米国の不動産バブルという景気過熱の時期があった。この時期には、人種差別は弱かった。特に、2008年の大統領選挙で当選したのは、黒人のオバマ候補だった。
豊かな時期には、白人は有色人種に寛容になれるのだ。そこではエゴイズムも強く出ない。
逆に、貧しい時期には、白人は有色人種に寛容になれない。そこではエゴイズムが強く出る。それが、2016〜2017年の現状だ。
【 補説 】
米国ではこのように「白人と有色人種」というふうに、社会が分断される。(欧州各国や日本のような「国民の一体性」はない。)
それはどうしてか? 欧州各国や日本と違って、人種が混合しているからだ。
欧州各国や日本は、人種がほぼ同一である。(一部に移民社会はあるが、限定的である。)
一方、米国は違う。白人は3分の2だけであり、有色人種が3分の1もある。特に都会では極端で、白人、黒人、その他がそれぞれ3等分されることもある。(例。シカゴ )
こういうふうに、米国では非白人が多いのだ。それが根源的な理由となる。
こういう社会では、国民の一体性はなくなる。「同じ米国人」という意識はなくて、「同じ国に住むよそ者」という意識が生じる。「おれはおれ、あいつはあいつ」というふうになる。当然ながら、「ともに分かち合う」という発想はない。かくて、エゴイズムが優勢となる。(特に豊かな白人層では。)
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ただし、こういうふうにエゴイズムが優先される社会では、白人が優遇されるのではなく、富裕層が優遇される。そのせいで、富の集中が起こり、貧富の格差が生じる。
白人労働者は、「移民のせいだ」「有色人種のせいだ」と思い込んで、移民排斥に進むが、実は、白人労働者の富を奪っているのは、移民や有色人種ではなく、白人の富裕層なのである。
したがって、一部の白人はますますリッチになるが、白人の多くはその恩恵にあずかれない。あぶれた一例が、自動車会社で失業した人々だ。
また、彼らだけではない。女性労働者も同様だ。米国でも、女性は不利だ。雇用機会は十分にあるのだがが、給料は安い。世界最悪レベルの日本に比べれば、ずっとマシではあるが、欧州諸国に比べると、女性の賃金格差が大きい。
→ 男女賃金格差が大きい20カ国と格差
ここでは、「富裕層以外はすべて搾取される」と見た方がいい。そして、その問題を解決するには、「富裕層の富を奪うべきだ」というのが正解だ。
→ トランプ大統領の誤りは?(輸入課税)
ところが現実には、その反対の方針を取ろうとする。共和党やトランプは、富裕層に減税しようとする。そんなことをすればするほど、白人労働者はますます貧しくなるばかりなのだが。
こういうふうに、白人労働者は、自分たちを傷つけてしまうトランプや共和党を支持することになる。どうせなら、民主党を支持すれば、もっと豊かになれるのだが。
かくて、誤った認識と誤った想像によって、誤った方針を取ったあげく、米国は「貧富の格差の拡大」という道へ進む。その結果、多くの白人労働者もまた、貧しくなるしかないのだが。
[ 余談 ]
今は白人が多数派だが、そのうち白人は少数派になる。
→ 2042年、白人もマイノリティになります
こうなると、アメリカは、白人の国ではなく、有色人種の国となる。今のアメリカとはまったく違った国になる。白人の国が有色人種に乗っ取られるわけだ。(かつてインディアンの国が白人に乗っ取られたのとは逆。)
そのとき、どうなることやら。

本項の冒頭で示したような、1番目の
エゴイズム = 保守主義
ということについては、下記の (1)(2)(3) のような例がある。
(1) 銃規制の反対
「自分さえ良ければいい」という方針で銃所持を維持しよう、という人が、共和党支持者には多い。ここでは明らかに、エゴイズムと保守主義の親近性がある。
トランプ大統領も、この方針だ。
→ トランプ氏、仏人が銃持っていれば「事態は違っていただろう」
(2) 拷問の是認
「自分さえ良ければいい」という方針で、他人を傷つけても平気でいる発想がある。それが「拷問の是認」だ。これも共和党支持者に多い発想だ。
トランプ大統領も、この方針だ。
→ トランプ氏、米当局による「水責め」復活を呼び掛け
(3) 温暖化ガス規制
温暖化ガス規制について、保守派の人々は反対している。たとえば、下記。
→ オバマ政権のCO2排出規制、無効求め25州が提訴
→ 米下院、CO2規制に反対決議 大統領は拒否権発動へ
共和党が多数を占める米下院は、CO2規制に反対しているわけだ。
トランプ大統領も同様だ。
→ トランプ次期大統領が引き起こす気候変動の危機
→ トランプ次期大統領就任後、米国の環境・気候変動政策はどうなるのか
これも、「自国さえ良ければ、世界がどうなろうと知ったこっちゃない。それより自分の金儲けが大切さ」というエゴイズム。これも共和党支持者に多い発想だ。
以上の(1)(2)(3) の例のように、エゴイズムと保守主義の親近性がある。
【 関連サイト 】
→ 「おバカで結構」米共和党綱領の呆れた中身